ブラック・ブレット Devils×Devil 〜悪魔を超えた悪魔、ブラブレ世界に舞い落ちる〜 作:ジョニー一等陸佐
間隔が大分空いてごめんなあっ
感想くれたらとっても嬉しいのん…
休日。
蓮太郎は延珠と共におもちゃ屋に来ていた。それも大手の家電量販店のワンフロアを丸々貸し切っての大規模なものである。
休日故混みあっており、家族連れが目立った。
両親とその間に挟まれた子供が多い中、くたびれた格好の目つきの悪い高校生に幼女の組み合わせである。周囲からは自分たちがどのように見えているだろうか…
おもちゃのサンプルを見物しながらそんなことを考えているうちに、蓮太郎は延珠に連れていかれる形であるコーナーに着いていた。
「妾が用があるのはここだ」
そこは特大の干渉変調ディスプレイが置いてあるアニメグッズのコーナーだった。
ゴシック体で「力王 RIKI-OH」と書かれている。タイトルの下には炎をバックに主人公である筋骨隆々の若い男の等身大イラストが描かれている。
「おいおいマジかよ、力王かよ…」
アニメなどにはさして興味のない蓮太郎だが、力王については噂で知っていた。
近未来の荒廃した世界を舞台に、右手に六芒星の紋章を持つ男「雑賀力王」が戦うストーリー…なのだが、拳で人体を破壊する等グロテスクな描写が目立つうえ、内容的にも色々とアウトな描写だらけで、放映開始の時点で物凄い数のクレームが集まってきていた、悪い意味で話題のアニメだ。
しかもどういうわけか打ち切りになるどころか一年近く、それもゴールデンタイムで放送され続けているという代物だ。
「この間なんか六芒星と鉤十字が合体するシーンを放送して大炎上したアニメじゃねえか…こんなもんゴールデンに放送するなよ…というか延珠、こんな明らかに教育に悪いもん見てんじゃねーよ、あーっ!?」
「ふふん、分かっておらんのお蓮太郎は…そういうヤバい描写が良いのではないか。戦闘シーンもなかなか切れておるしな」
ああクソッタレ、あんな残酷アニメを好んで見るなんて延珠の将来はどうなってしまうんだ…そう頭を抱えながら周囲に目をやる。
様々なグッズが置かれているが、どうやら力王のグッズだけではないようだ。
『実写版力王~全年齢向け~』『エイハブ船長の金貨』『エイハブ船長のメカ・フット~これでも君も、我が名はエイハブだあっ~』『涅槃創生会入信セット』『異形人おに若丸フィギュア』『キモ傘コスプレセット』
…一体どういう層を狙っているんだろうか。というかそもそも売れるんだろうか。
「蓮太郎、こんなのはどうだ?」
延珠が差し出したのはブレスレットだった。小さいボタン状の部品をいくつもつなぎ合わせた構造で、ボタンには一つ一つ、合体した六芒星と鉤十字の彫刻が描かれている。
「…なんだこれ」
「見ての通り、アニメ力王のグッズ。期間限定のブレスレットじゃ。あの話題になった六芒星と鉤十字の合体シーンをもとに作られた限定品じゃぞ!もちろん値段もめちゃくちゃ手頃。その額…500円」
「そういう問題じゃねえよ!なに大炎上したシーンでグッズ作ってんだよ!?第一そんなもん着けてたら俺たちの人格疑われること間違いなしじゃねえか!?」
蓮太郎が止める間もなく延珠はレジに走り会計を済ませてしまう。
延珠の腕にはすでに六芒星と鉤十字の合体ブレスレットがはめられていた。
「ほら、蓮太郎も腕にはめろ」
「ゲ、俺もかよ?」
「これはペアリングの製品なんだぞ、二人ではめる製品なんじゃ。妾と一緒に蓮太郎がつけずに誰がつけるんだ」
延珠が右手に嵌めてるのを見て、蓮太郎も嫌々ながら左腕に嵌める。
延珠がニヤニヤしながら言った。
「ペアルックだな、これで蓮太郎は妾を欺いたり噓をついたりはできないぞ。他の女に浮気は駄目だぞ。木更のおっぱいに見とれたりしても割れてしまうからな」
「割れる?」
「あれっ、蓮太郎お主知らないのか?ブレスレットには呪術的な意味合いもあるらしくてな、人を欺いたり嘘をついたりすると割れたり切れたりして嘘をついたのが分かってしまうのだ。」
「…えー、わたくし里見廉太郎は藍原延珠を愛しています…切れねえな」
「真実だからだろう」
「チクショウ、そう来たか。その返しは予想していなかった」
店舗を出て、延珠をくだらない話をしながら街頭を歩く。
不意に街頭テレビのパネルに聖天子が映っているのを見て足を止める。
ニュース番組だ。彼女の表情は厳しいもので、『呪われた子供たち』の基本的人権の尊重に関して再度法案を出す予定である、と話していた。今話題の『ガストレア新法』である。
この法案は通過するだろうか…いや、してほしい。蓮太郎は切に思った。
ガストレアウイルスを体内に宿す『呪われた子供たち』は世間一般では差別の対象である。一昔前までは人知れず川で産んで目も開かない状態のまま水につけて殺すのが一般的、なまじ再生能力があるせいで親からの過度な虐待になりやすい。遺伝子もガストレアウイルスに汚染されているためそこから飛躍して人間か否かを問う声さえある。
ガストレア戦争を経験した『奪われた世代』のほぼすべてが潜在的な『呪われた子供たち』差別主義者であるともいえるなか、彼女たちの味方はあまりにも少ない。
無論、新法案が成立したところで彼女たちへの差別が直ぐに無くなるわけではない。それでも、この法案が通過すれば呪われた子供たちや、そして延珠も少しでも生きやすくなるだろう。
東京エリアのトップが彼女たちの境遇に理解ある立場であることは歓迎したい気分だった。
物思いにふけりながら延珠を連れて歩いていると、通りの向こうに人だかりができていることに気づいた。
人だかりからは怒声が響き、殺気じみたものを感じる。
理由は分からないが、嫌な予感を感じた。直感がここからすぐに立ち去れと告げる。
「延珠、少し遠回りになるけど反対から帰――」
「――おいっ、そいつを捕まえろっ」
蛮声が響くのと、人垣から一人の少女が飛び出すのはほとんど同時だった。
彼女は食料品が満載になったスーパーのかごを持っていた。
少女は進路の先にいた蓮太郎と延珠を見てはっと立ち止まる。蓮太郎も金縛りにあったように動けなくなった。
服装は趣味の言い、年頃の少女らしいものだったがその生地は最後にいつ洗ったのか分からない汚れやシミ、修繕の後が目立ち、顔も煤けている。彼女が抱えている食料品も衣服も、どちらも盗品だろう。
そして何よりも目に付いたのは彼女の瞳。深いワインレッド。延珠と同じ呪われた子供たちだ。
一目でエリアの外側――『外周区』のスラム街に住む呪われた子供たちと分かった。
一瞬の睨み合い。
その隙に背後から無数の大の大人たち――否、野蛮人の手がその背に手をかけ荒々しく押し倒す。かごから食料品が転がってくる。こちらにまで骨がきしむ陰惨な音がはっきりと聞こえてくる。
「放せぇ!」
端正な顔をゆがめて野生のトラのように歯をむいて暴れる。
野蛮人たちはだれ一人彼女に同情を向けない。それどころか次々と愚弄の言葉を投げかける。
「泥棒め、貴様らは東京エリアのゴミだ」「おいっ、警察呼んできてくれっ」「よくやった!ざまあ見ろ、ガストレアめ」「あのう、チンチン見せましょうか?」「喚くなうぜぇんだよ、この人殺しが」「あのう、肛門見せましょうか?」「赤目をぶち殺せえっ、俺の家族を殺した化け物どもは皆殺しだあっ」「オ〇コ見せて」「変質者ァ、変質者がいるゥ」
蓮太郎は手近にいた一人の肩を叩く。
「何があったのか教えてくれよ」
「ああ、見ての通りこのガキッが盗みをやらかしたんだぜ。ちなみに声かけた警備員を力使って半殺しにして血祭りにしたらしいよ。やっぱクソッすね呪われた子供たちは…忌憚のない意見ってやつっス」
延珠は案の定真っ青になって震えている。
その時ふと、名も知れぬその少女が延珠を見た。
呪われた子供たちは赤い目さえ隠せば外見は普通の子供と変わらず、普通ならば延珠が呪われた子供たちとは分からないはずだ。だがいかなる理由か、少女は延珠に向かって手を伸ばし助けを求める。
やめろ、延珠を巻き込むんじゃねえ――
蓮太郎はその手をはたき彼女を睨む。
「ッ!」
少女が蓮太郎の表情に怯えを見せる。
「貴様ら一体何をやっている!」
不意に声が響いた。
警察官の二人組が事態を収拾すべくやってくる。一人は鶏ガラのように痩せたメガネの男、もう一人はガタイのいい角刈りの男だ。
メガネの警官は群衆と組み伏せられた少女を睥睨して状況を悟ったのか、「ああ」と冷たい呟きを漏らす。
ガタイのいい警官が無理矢理少女を立たせ、あろうことかろくに状況を聞くこともなく彼女の手に手錠を嵌めてパトカーに押し込んだ。メガネの警官が代表の一人に謝意を述べ、そのまま警官二人組はパトカーで走り去っていった。
野蛮人たちはぶつぶつ文句を言いながら三々五々に散っていく。
一瞬の出来事。後には蓮太郎と延珠の二人だけが残された。
仕方なかった。自分にはどうしようもない出来事だった。ばつの悪さを感じつつ帰ろうとしてはっとした。延珠が拳を握り蓮太郎を睨みつけている。
「なぜ、あの少女を助けてやらなかった蓮太郎!」
蓮太郎は気圧される。彼女の瞳は薄赤くなっていた。慌てて延珠の腕をとってビルの隙間の一本路地に連れてくる。
「仕方ないだろっ、あの状況でお前まで正体がバレたらお前もあの野蛮人たちにリンチにあってたんだぞ」
「しかし助けを求めている者の手を振り払った!」
「俺にだって出来ること出来ないことがある!それにアイツがやってたのは犯罪だ!たとえ外周区の生活環境が劣悪だからって犯罪が許されるわけじゃねえんだ、悔しいだろうが仕方ないんだ」
思わず正論で返す。延珠は首を振る。
「そんなの言い訳だ!助けようと思えば蓮太郎は助けられる。蓮太郎は正義の味方だ、出来ないことなんてない!」
「子供の幻想を俺に押し付けんな。俺には何もできない…何一つ…」
そこで蓮太郎は我に返った。延珠は嗚咽をかみ殺して泣いていた。蓮太郎はもしやと思った。
「…もしかして知り合いなのか?」
頷く延珠。
「昔妾が外周区にいた頃、何度か見かけたことがある。話したことはないがお互いに覚えていた」
「…あの時手を払ったのは必死で、深く考えてやっていたわけじゃ…」
蓮太郎はもう延珠の目を見ていられなかった。もうわざわざ考えるまでもなかった。蓮太郎は決断した。
「延珠、一人で家まで帰れるか?」
「えっ」
気付けば足が動いていた。
路地から飛び出し左右を見渡す。一台の原付に乗って信号待ちをする少年を見咎めた。肩を叩き声をかける
「民警だ。ガストレアがエリア内に現れた、君の原付を借り受けたい」
「いやちょっと待てよ。いきなり何言ってんだよ、えーっ!?」
「ボクゥ?背格好からして中学生やね?ちょうここはお互いに穏便に済ませようや」
怯んだ少年を見てその隙に原付を乱暴に奪い取ってUターン。パトカーを向かった道をたどる。
思えば警官たちは聞き取りもせずいきなり手錠をかけて少女を連れて行った。
この法外な手続きは何を意味するのか。
しかも今蓮太郎が向かっている先はめぼしい警察署はおろか派出所さえないはずだ。このまま進めばどんどん外周区寄りになる。
不意に蓮太郎は嫌な予感がして首を振った。
信じてもいない神に祈る。杞憂であってくれと。
やがてモノリスが大きく見えるようになり、周囲には壊れたままの建造物が目立つようになる。華やかなりし東京エリアの暗部、外周区に突入する。
半ばから折れた電波塔の脇にパトカーが止めてあるのを発見する。
原付を止め、廃墟の脇に原付を隠すと慎重に近づく。
パトカーに近づいて中をのぞくと、案の定少女も警官も乗っていない。
次に電波塔施設に向かって進む。壊れた鉄柵をくぐったところで、思いがけず近くから声が聞こえ、慌てて蓮太郎は近場の壁に背をつける。
ゆっくり角から顔を出すと、こちらに背を向けた状態で例の瘦せ眼鏡と角刈りの警官がいた。
そこから離れた場所に、鉄柵を背に立たされた先ほどの少女が佇んでいる。その顔にはこれから自分がどうなるのかという不安で真っ青になり、小さな体を震わせている。よく見れば少女はその手錠を掛けられた両手を鉄柵にきつく縛られ身動きできないようにされている。
背を向けている警官は黙っており、剣呑な雰囲気を漂わせている。
蓮太郎は目を見開いた。
警官の腕が動いたかと思うと腰のホルスターに手を伸ばし拳銃をその手に取る。
少女がひっ、と短く悲鳴を上げた。
蓮太郎もこれから何が起こるかを察した。リンチどころではない、銃殺する気だ。
二人の警官が構えた拳銃が少女の頭部を捉え、引き金が引かれようとしたその時だった。
「おい蛆虫」
不意に新たな、聞き覚えのある男の声が響いた。
「?…ぶべっ」
「ひいっ!?」
警官二人が振り向いた瞬間、角刈り警官の鼻っ柱に凄まじい速度で拳が直撃。角刈り警官が後方に数メートル吹き飛ばされる。角刈り警官の鼻から大量に血が噴き出す。あの勢いでは明らかに鼻の骨は折れただろう。顔を抑えてのたうち回る角刈り警官。突然の事態に瘦せ警官は悲鳴を上げる。
警官の背後にはいつの間にか大柄な男が立っていた。
蓮太郎は目を見開いた。まさかここでも再びあの男に会うことになるとは。
大柄で屈強な筋肉質の肉体、夏場に似合わぬたなびくコート、オールバックの髪形に、何より特徴的な鼻の上を走る一本線の傷跡…
鬼
龍
!
警官達を蛆虫を見るような目で睥睨しながら鬼龍は口を開いた。
「ここじゃパトカーなど見慣れないから様子を見たら…なんだ、こいつは?この国の警官はガキで射的訓練をするようになってるのか?」
「ひ…ひいっ、何だお前はぁっ、そ、そこを動くんじゃないっ」
痩せ警官が先ほどまで少女に向けていた拳銃を鬼龍に向ける。
「ずいぶん手慣れた様子だったが…以前も同じようなことをやっていたのか?」
「ふ…ふんっ、こいつは呪われた子供たち…バケモノだっ。バケモノはさっさと駆除するべきだろうっ」
「あべべ…こいつはさっき窃盗を働いた蛆虫だ…蛆虫に同情するようならお前も射殺するぞっ」
鬼龍に吹き飛ばされた角刈り警官も何とか立ち上がり拳銃を鬼龍に向ける。が、鬼龍は全く動じない。
「仮にも治安維持を任されてるやつがこれとはな。東京エリアの民度もたかが知れたものよ。モラルの欠片もない下品で下卑で下衆な連中だ、醜悪なのは顔だけにしろメガネに角刈り」
「なにっ」
嘲笑するように薄く笑う鬼龍。
拳銃を二丁も向けられているのに彼は全く余裕の態度…それどころか何か覇気のようなものさえ蓮太郎は感じた。対する警官二人は拳銃を構えながらも気圧されたように怯えた様子で後ずさる。
「確かにそのガキは訳アリのようだが…拳銃を持って寄ってたかって暴力を振るう…お前たちのような社会のダニは生理的に受け付けない」
「ひいっ、く…来るなあっ…え?」
ゆっくりと近づく鬼龍に瘦せ警官は拳銃の引き金を引こうとする。…が、いつの間にか彼の両手から拳銃が消えていた。
「蛆虫は消えろ」
いつの間にか鬼龍の手には瘦せ警官の拳銃が握られていた。次の瞬間、鬼龍の手が瘦せ警官の顔面を擦過したと思ったら、瘦せ警官の右顔面の皮膚が無残に剝がれ肉がむき出しになる。警官が口を開く前に更に鬼龍の強烈なパンチが瘦せ警官の顔面に炸裂。眼球が飛び出しかけ、肉は裂け骨は折れ、血が噴き出し地面を赤く染める。
う
ぎゃ
あ
あ
あ
あ
あ
顔面を完全に破壊された瘦せ警官が両手で顔を抑えながら地面をのたうち回る。両手の隙間からさらに血が噴き出し地面を地で染める。
「うおおお、貴様ぶっ殺してやるっ」
角刈り警官が雄叫びを上げながら突進、鬼龍の頭部のすぐ近くに拳銃を向け引き金を引く。
銃声が響き、銃口から火が吹く。
が、銃口の先にいたはずの鬼龍はいつの間にか消えていた。
「えっ」
「生殺与奪の権は我にありっ」
鬼龍は角刈り警官の背後にいた。銃弾が放たれるとほぼ同時に瞬時に彼の背後に移動していたのだ。
何というスピード。
そのまま鬼龍は回し蹴りを角刈り警官の頭部めがけてお見舞いした。
ゴキッという音が蓮太郎の耳にもはっきりと聞こえた。
角刈り警官の首があらぬ方向に折れそのまま崩れ去る。
角刈り警官は口をから泡を吹きだしながらピクピク痙攣している。死んではいない。が、首を折られ神経に大ダメージを折っている。もはやこの角刈り警官は残された人生を一生寝たきりで過ごすことになるだろう。
「殺しはしない…そんな価値もないからな。お前たちは蛆虫だ…この後の人生を悪臭を放つ糞にたかる蛆虫のように…ゴミのように生きるんだ」
顔を顔面破壊されてのたうち回る瘦せ警官と、首を折られ寝たきりの人生を過ごすことが確定した角刈り警官…最早社会復帰は不可能となった二人を後に鬼龍は縛られた少女に近づく。
「…」
彼女をきつく縛っていた紐を素手で難なく引き千切り、警官からとった鍵で手錠を外してやる。
解放された少女は鬼龍のことを知ってるのだろうか。怯えた様子は見せながらも後ずさることはなくおずおずと彼の顔を見る。
「あ、あの…」
「ふんっ勘違いするな。俺は日曜朝にやる番組に出てくるヒーローじゃねえよ。ただ鬱陶しい蛆虫がいたから踏み潰しただけだ。さっさと行け」
「!」
少女は深々と頭を下げ鉄柵を乗り越えて足早に去って行った。
後に残されたのは鬼龍と蓮太郎、のたうち回る警官達だけ。
一瞬の出来事だった。
まったく気付かれることなく背後を取り、銃を持った警官二人に動じることなく瞬殺。その動きも素早く強力で、そして暴力的だった。
が、どういうわけか蓮太郎は警官を打ちのめした鬼龍に怒りや嫌悪感は不思議と湧かなかった。
民警とは、無辜の市民を守り正義を遂げる偉大な仕事ではなかったか。
警察は社会の治安を維持し、犯罪を取り締まり正義をなす仕事ではなかったか。
だがあの警官たちは法的な手続きを無視して少女を連行し、あろうことか銃殺しようとした。そして鬼龍はその警官達をぶちのめした。子供が虐殺されるのを阻止したとも見れる。
何が正解で、何が間違っている?そもそも俺が倒すべき敵とは一体――
その時鬼龍がこちらを振り向く。角に隠れて見えないであろう蓮太郎に口を開く。
「おい、いるんだろう?さっきから様子を盗み見ていたようだが…気付いてたぞ」
「!」
蓮太郎は一瞬躊躇したが隠れるのをやめ、鬼龍の前に姿を現す。
「…ほうまさか天童の養子とはな。これで会うのは三度目だな」
蓮太郎の姿を見ながら鬼龍はニイッと傲岸不遜に笑うのだった。
◇出会い再び…
マネモブじゃない一般人に説明すると、作中に出てきた「力王」や「エイハブ」はタフと同じ猿渡哲也先生の作品なんだァ
猿先生による猿要素がふんだんに詰まった名作だから買って読め…鬼龍のように