ブラック・ブレット Devils×Devil  〜悪魔を超えた悪魔、ブラブレ世界に舞い落ちる〜   作:ジョニー一等陸佐

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そろそろオリジナルの展開を入れたいのん…
猿語録を混ぜるの思ってたより難しいのん…
あと感想くれたらとっても嬉しいのん


4th MATCH 再びの邂逅

 日も落ち空がオレンジ色のグラデーションを見せる街中を一台の真っ赤なスポーツカーが疾走している。

 スポーツカーを操縦するのは鬼龍、助手席に蓮太郎が座っている。

 結局、鬼龍が警官二人組を再起不能にした後、放置するのも不味いと思い取り敢えず救急車を呼んだ後、蓮太郎は足早にその場を立ち去ろうとしたが…鬼龍が家まで送ってやろう、と蓮太郎を誘った。断ろうとしたが結局、半ば強引に鬼龍のスポーツカーに乗せられこうして家路に向かっているわけだ。

 車に疎い者でも明らかに高級車と分かるスポーツカーの車内で二人は会話を交える。

 

 「…で、あんた何でそもそも外周区にいたんだ」

 

 「フン、普段外周区で警察車両など見かけんからな。少し辺りを探したら案の定蛆虫が二匹ほどいたが…まさかこうして三度もお前に会うことになるとはな。全く、思わぬ出会いがあるものよ」

 

 ククク、と口角をわずかに上げる鬼龍。

 

 「お前も物好きな奴だな、何の関係のないガキをわざわざここまで追いかけて様子を見に来たんだからな。どこぞの偽善者を思い出す」

 

 「別に自分で助けようと思ったわけじゃねえよ。ただ、延珠に頼まれたからそうしただけだ」

 

 「それでわざわざ原付を盗んでまであそこまで遠出したわけだ。見かけに似合わず随分お人好しのようだな」

 

 「そういうあんたもこうして俺を乗せて家まで送ろうとしてるじゃねえか。あんたも見かけの割にお人好しじゃねえか?」

 

 「フン、勘違いするな。俺はただ少しばかり、お前に興味があるだけだ」

 

 「なにっ」

 

 「こう見えて色々情報に触れる機会があってな。あの天堂家の養子がエリートコースを歩むどころか場末の民警をやっている。民警をやるにせよ本来ならもっと高い序列にいてもおかしくないのにな。何故わざわざ実力を隠す?」

 

 防衛省で会った時と変わらない、威圧的で傲岸不遜な態度。蓮太郎も武術を修練する身、鬼龍が只者ではないことは既に感じていた。その肉体、佇まい、息遣い…こうして傍にいるだけで相手が怪物…いや、それを超える存在のように感じる。その上、どれくらいかは分からないが相手は蓮太郎の事情を知っているようだった。

 蓮太郎は鬼龍を警戒せずにはいられなかった。一方の鬼龍は興味や好奇を含んだ目で時折蓮太郎を見る。

 そうこうしているうちに蓮太郎の我が家が見えてくる。といっても、安いボロアパートを超えたボロアパートだが…

 明かりはついていない。延珠はまだ帰ってきていないのだろうか。

 車を降り、二人はアパートに向かって歩く。

 

 「お疲れのようだね、里見君、鬼龍君」

 

 蓮太郎は反射的に拳銃を抜き、声のほうに向ける。鬼龍も体を向ける。

 同時に両者の鼻先にも拳銃が一丁ずつ突き付けられる。

 マズルスパイクや格納式の銃剣アタッチメント、多弾倉マガジンなど随分大掛かりな改造が施されたベレッタ拳銃。邪神クトゥルフを象ったメダリオンに、銃の至る所につけられた夥しい量のスパイク…そしてそれを握っているのは――

 

 「ほう、随分と悪趣味な銃だな、蛭子影胤」

 

 「ヒヒ、こんばんはお二人とも」

 

 「人間の精神は創造物に宿るとダ・ヴィンチは言ったらしいが…なるほど、確かにその通りだな貴様の醜悪な精神が丸見えだ。おまけにセンスの欠片もない」

 

 鬼龍の愚弄の言葉に燕尾服に仮面の怪人は二丁拳銃を下して首を振る。

 

 「そう酷いことを言わないでくれたまえ。これでも私の愛銃なんだ。この黒いのは『スパンキング・ソドミー』、同じく銀色のほうは『サイケデリック・ゴスペル』と言う」

 

 「名前まで悪趣味だな。なるほど、確かにお前のような屑に相応しい銃だ。それで何の用だ?」

 

 「実は話をしに来たのさ。両者とも、銃を下ろしてくれないかね?」

 

 「断る」

 

 「やれやれ」

 

 影胤はパチンと指を弾いた。

 

 「――小比奈、邪魔な右腕を切り落とせ」

 

 「はいパパ」

 

 瞬間鬼龍は上体を捻りその太い右腕を振り上げる。

 風切り音と一瞬のきらめきとともに凄まじい速度の斬撃が空間を走る。

 同時に、パシッパシッという何かを叩く音が連続して響く。

 カラン、という音ともに何か金属製の棒状の物体が地面に落ちる。バラニウム製の小太刀だ。

 いつの間にか鬼龍の背後に黒いワンピース姿の少女――小比奈が立っていた。

 小太刀を鬼龍に叩き落され小比奈は泣きそうな表情を見せる。

 

 「パパ、こいつ嫌い!私の小太刀落とした!」

 

 「よしよし小比奈、こっちに来なさい」

 

 蓮太郎は背筋に寒いものが走るのを感じた。太刀筋が全く見えなかった。もし鬼龍ではなく自分が先に狙われていたら、次に来られたら。そしてその見えなかった太刀筋をものともせず瞬時に小太刀を叩き落とした鬼龍は一体――

 再び小比奈が土煙を巻き上げて視界から消えた。地面の小太刀も消える。目を凝らしていたのに動きが追えない。しかし、彼女の攻撃が二人に来ることはなかった。

 ギィン、という音がして二つの塊が空中で激突。ボッボッパンッパンッと擦過音を立てながら吹き飛ばされる。

 塊の正体は人間――小比奈と延珠だった。

 

 「蹴れなかった?」

 

 「えっ、斬れなかった?」

 

 「延珠ッ!」

 

 蓮太郎の横には灼熱色の瞳の延珠がいた。

 延珠が蓮太郎と鬼龍、蛭子達を交互に見る。

 

 「蓮太郎ッ!あいつら何者だ!それにおぬしはこの間の…」

 

 「敵だ」

 

 小比奈が影胤を守るように二刀を手に前に出る。バラニウム製の漆黒の刀身を交差させ独特の構えを取る。地面はしっかりと踏みしめられ、隙は感じられない。

 

 「パパ、気を付けて。あの男も、あっちの奴も…強いよ。あっちは多分蹴り主体のイニシエーター」

 

 「ふむ、小比奈にここまで言わせるとはやはり、なかなかの実力の持ち主だね」

 

 小比奈が叫ぶ。

 

 「そっちのちっちゃいの、名前を教えて!」

 

 「そっちだってちっちゃいだろ、無礼な!…第一それが人にものを頼む態度かの?人にものを頼む時は頭を地面にこすりつけるんじゃぞ?犬は土下座しろよ」

 

 「えっ」

 

 「無礼な奴に名乗る名前なんて知ラナイ、知ッテテモ言ワナイ」

 

 「パパ、やっぱりこいつ嫌い!」

 

 若干涙目になる小比奈。

 

 「冗談じゃ、妾は延珠、藍原延珠。モデル・ラビットのイニシエーターだ!」

 

 小比奈は下を向いたままぶつぶつ薄気味悪くつぶやく。

 

 「延珠、延珠、藍原延珠。――覚えた。私はモデル・マンティス、蛭子小比奈。接近戦では私は無敵…ねえあの兎斬っていい?首だけにするから斬っていい?」

 

 「何度も言っているだろう愚かな娘よ。ダメだ」

 

 「うぅ、パパ嫌いっ!」

 

 懇願を一蹴され再び泣きそうな顔になる小比奈に影胤はやれやれとばかりにシルクハットの位置を直し、蓮太郎と鬼龍に向き直る。

 

 「なんだか抜き差しならない状況になってしまったが、戦うかい?」

 

 「上等だ、前にも言ったが強ければ強いほど、クズはクズなほど倒した時楽しいものだ。今ここでグチャグチャにしてやるよ」

 

 「バカ言え、ここは市街地だろうがよえーっ!?要件をさっさと言えよクソボケがーっ、こっちは眠いうえに来週の小テストの勉強をしなきゃいけないんだよっ」

 

 影胤の言葉にフッと笑う鬼龍と、対照的な返答をする蓮太郎。

 周囲は住宅街、いたずらに戦えば被害が大きくなる。蓮太郎は拳銃を下した。

 影胤は相変わらず薄気味悪く笑い、拳銃をしまい、月をバックに鷹揚に両手を広げる。

 

 「単刀直入に言おう。里見君、鬼龍君、私の仲間にならないか?」

 

 「なにっ」

 

 「ほう…」

 

 「実は最初見た時から、なぜだか君たちのことが好きになってしまってね。殺すには惜しいと思っていた。こちらにつくなら私は君を殺さない」

 

 「ふさけんなっ、俺は仮にも民警だぞっ」

 

 「そうだ…それがどうした?私も元民警だ。残念ながらこれから東京エリアには大絶滅の嵐が吹き荒れる。実をいうと私には強力なバックがいてね。私の味方に付くなら金も、女も、力も、好きなものを好きなだけ与えよう」

 

 それに、と影胤は両手を後ろ手に組む。

 

 「君たち、この理不尽な世界を変えたいと思ったことはないか?東京エリアの在り方は間違っている。そう思ったことは一度もないかね?」

 

 蓮太郎は不意に脳裏に先ほどの外周区での光景を思い出す。縛られた少女、拳銃を向け黒い愉悦に口をゆがませた警官たち。そして口封じに殺されるのではないかと思い、とっさに飛び出していけなかった臆病な自分。

 蓮太郎の逡巡を察したのか影胤はポケットから白い布を出し地面にかぶせて三つ数える。そして取り去る。そこにはアタッシュケースが出現していた。

 

 「聞くところによると、君は経済的にあまり裕福な暮らしをしていないそうだね」

 

 影胤はアタッシュケースを蹴りこちらに滑らせる。二人の前で止まると同時に蓋が跳ね上がる。中には案の定札束が詰まっていた。その額恐らく…500億(適当)。

 

 「これは私からのほんの気持ちだ。鬼龍くんも私と同様に強力な後援者がいると聞いたが…私と組めば今よりももっと望むものを望むだけ得られる。それにこれは個人的な意見なんだが君と私は良いと思うんだ。君も私と同じように闘争や混乱を望み好んでいるんだろう?」

 

 鬼龍はフンッと鼻を鳴らすとアタッシュケースを思いっきり蹴り上げた。ケースがひしゃげ、札束が中を舞う。

 

 「まさか金で釣ってくるとはな。だいぶ前にも俺を金で買おうとしたクズがいた…金さえあれば何でもできると思い、家や車、服や貴金属にこれでもかと金をかけ虚栄心を満たす…そこにあるのは劣等感の裏返しとしての自尊心や何でもできると思い込む愚かしさだ。そこに品性や美意識、プライドの欠片もない。…俺が最も軽蔑する下劣なクソだ。強さは本物だと思ってただけに残念だよ」

 

 「いやいや、先程も言ったようにこれはほんの気持ちだよ。あくまで私と組んで欲しい、という気持ちが決して気まぐれなどではないと理解して欲しくてね…それに里見君はそこの延珠ちゃんを人間のフリをさせて学校に通わせてるそうだが…何故そんな真似をするのかね?彼女たち呪われた子供たちは既存のホモ・サピエンスを遥かに超えた存在…新人類を超えた新人類とでも言うべき存在だ。大絶滅を越えた後で生き残るのは我々のような力ある存在だ。その点だけでも我々は共通し共感するはずだよ。私につけ、里見蓮太郎、宮沢鬼龍」

 

 今度は蓮太郎が動いた。

 拳銃をまだ札束が詰まっているアタッシュケースに向けて3発発砲する。明確な拒絶の意思。

 影胤はため息をつく。

 

 「…君達は大きな間違いを犯したよ」

 

 「そうだな蛆虫、あの時防衛省でお前を殺さなかったのは間違いだった」

 

 「くだらん!君達二人ともあくまで依頼を遂行するつもりか。だが幾ら奴らに奉仕したところで奴らは君達を必ず裏切るぞ」

 

 影胤を睨む鬼龍と蓮太郎。影胤も二人を睨む。

 

 「勘違いしているようだが俺は別に奉仕してる訳でも何でもない。ただ俺のやりたいことや興味と奴らの求めるもの…利害が偶然一致しているだけだ。それにこの世界が理不尽だという意見には同意するが…見境なく破壊をしようとする姿勢には好感が持てない。お前からは何の美意識も感じられない…まずもってそりが合わない」

 

 ふと気付けば遠方からパトカーのサイレンが響いてきた。

 発砲音を聞いて駆け付けて来たのだろう。

 

 「フン、水入りだ。こういうやり口は趣味じゃないが…明日学校に行ってみるといい。君もいい加減現実を見るんだ」

 

 捨て台詞を吐くと影胤達は大きく後ろに飛び闇夜に消えていった。

 消えた方を睨みながら蓮太郎は延珠に問う。

 

 「あの二人、どう見る?」

 

 「…強いな。恐ろしく強い」

 

 「勝てるか?」

 

 「…そうか」

 

 「フンッ強いなら何よりだ。その分楽しめるからな」

 

 鬼龍がコートの襟を直しながら口を開く。

 

 「俺は戻らせてもらうぞ。俺も色々と用事があるんでな。だが…」

 

 そのままスポーツカーに向かって歩き始めていたのを止め、鬼龍がこちらを振り向く。その目は延珠を見つめていた。

 

 「奴が最後に言っていた現実を見ろというのには俺も賛同する。人間というものはお前が思う以上に残酷なものよ。遅かれ早かれそれを痛感することになる…なら今のうちにでも覚悟を決めていた方が良い。そしてその時どうするかはお前達次第だ」

 

 「お主…」

 

 「…何が言いたい」

 

 「地獄を見せる愛情もある。ククク…愛ってのは痛みを伴うものなんだ」

 

 そう言いながら鬼龍は何かをポイッとこちらに投げてきた。

 慌てて受け取り見ると、それは名刺だった。名前に住所が書かれている。

 

 「俺の事務所の住所だ…さっきも言ったように俺はお前達に興味があるしまた会うことになるだろう。その時はここに来るといい」

 

 じゃあな、と言って鬼龍はスポーツカーに乗る。鬼龍を乗せたスポーツカーはエンジン音を響かせながら闇夜に消えていった。

 蓮太郎の脳裏には影胤や鬼龍の最期の言葉と、鬼龍が名刺を投げる時に見えた手の甲の痣かできもののようなものが、しばらく浮かんでいた。

 

 

 

 

 




◇因縁の相手、再び…
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