日本国召喚 国際協力機構 異世界を往く クワ・トイネ編 作:アニキ イン ザ スペース
中央歴1639年(西暦2015年) 4月22日 クワ・トイネ公国 城塞都市エジェイ 銀山羊騎士団司令部
日本の防衛駐在官として城塞都市エジェイに滞在する山内三佐はギムの街への偵察任務後も情報収集や都市の位置測定を行うの為の電波を発信する作業を行う中、今日も朝早くから銀山羊騎士団司令部となった屋敷に設置された長距離魔導通信機を借りて公都クワ・トイネの日本大使館に連絡を行っていた。
「はい……今の所、小規模な騎兵の偵察隊を見かけるだけで、特に目立った活動は確認されていません……ロウリアの占領軍は本国からの主力がギムに到着するのを待っているのかと思われます……。」
これ迄、集めて来た些細な情報を日本大使館の久光一佐に話す山内は、魔導通信機のスピーカー前に置いているタブレット端末に映し出された文字情報に目を通すと、タブレット端末を手に取って素早く文字を入力する、そして『送信』のボタンを指で押して、魔導マイクの前にタブレット端末を置いた……すると端末の画面に「送信中…」の文字が表示され、ゆっくりと送信率のパーセンテージが上がっていった。
山内が手にしているタブレット端末には工作員との連絡用に作られた、文字情報を音声通信に紛れ込ませて送受信するアプリケーションが起動しており、人間には聞こえない音波を使った符号信号を送る事で、短い文章の送受信を行い画像に文字を表示させて連絡を行う事が出来た。
魔導通信機の音声通信でもこのアプリケーションが使える為、山内達は重要な事柄はタブレット端末にテキスト表示させる事で、隣の部屋で聞き耳を立てているクワ・トイネ騎士達の盗聴を防いでいた。
通信を終えた山内はタブレット端末を田崎に渡し、長距離魔導通信機が設置されている横の壁をドンドンと強く叩きこう叫んだ。
「悪いニュースだ! 昨日、日本が参戦を表明した!! これから到着する日本の部隊を歓迎する準備を始めたほうがいいぞ!!」
壁の向こうでは聞き耳を立てていたクワ・トイネの騎士がひっくり返る大きな音と共に騒ぎ始める声が聞こえる中、山内は田崎と共に通信室を後にする。
「田崎、見ての通りだ……お前は出発の準備を急げ! 俺はヘラに話をつけて来る。」
山内はそう言うと足早に屋敷を出て行き、残された田崎がタブレット端末に表示されている文書を見ると、この様に書かれていた。
「――― ギムの街を占領するロウリア軍の監視を行う偵察隊派遣の為、当部隊との合流と現地での案内を行われたし……現地到着予定時刻、4月23日 03:00時 ―――」
屋敷を出た山内が冒険者ギルドに到着すると入り口前にはアメリア姉妹の姿が有り、山内を見ると2人は残念そうな表情をしながら軽く会釈をして早々と立ち去っていった。
「おや、今日はタザキはいないんだ……あの娘達も、せっかく来たのに無駄足になっちゃったね!」
ギルドの入口で様子を見ていたヘラが笑みを浮かべながら山内に話しかけて来る……。
「アンタが来る前にあの娘達と話していたんだけど、今はエジェイに住んでいる叔母の家に厄介になっているって言っていたよ、それ以外は……タザキの事をアレコレ聞かれてね……。」
ヘラは苦笑交じりでその様に話す、どうやら姉妹たちは自分達を助けてくれた田崎に夢中な様で、ほぼ毎日の様に屋敷や冒険者ギルドの前で待っている姿が見られ、今日も田崎に会うべく冒険者ギルドの前で待ち構えていた様だ……それを聞いた山内も思わず苦笑いしてしまう。
「それよりも話したい事が有る……前に話した『北の森』のあの場所を俺達で使う話だが、問題は無いか!?」
「あぁ……あの場所なら以前に話した通りアタシとチチ―ナ、それと一部の冒険者しか知らない場所で、知っている奴らもアタシの案内無しで行こうなんてしないよ……ところで、あの場所を何時まで使うんだい?」
「ギムの街を解放する迄だな……この後、直ぐに俺と田崎だけで出発するから、今回は現地の案内は不要でいい! それと悪いが、俺達が『北の森』にいる間は他の冒険者連中に来させない様にして欲しい。」
「分かったわヤマウチ……多分、無いとは思うけど知っている連中には連絡が取れたら『北の森』には行かない様に言っておくわ。」
山内はヘラと話し有った後、屋敷に戻り準備を終えた田崎と共に馬に乗りエジェイの西門を抜けて『北の森』へと向かって行った……。
同日 正午前 日本国沖縄県石垣島 新石垣空港
山内達が『北の森』へと向かっている間、日本の首都で有る東京から南西に約2000km程離れた離島である沖縄県石垣島の新石垣空港では、2000m級の滑走路を見渡す事が出来る展望デッキに平日にもかかわらず多くの人々が集まっていた。
彼らの視線の先には誘導路を地上走行し滑走路へと向かう8機のまだら模様の飛行機の姿が有った。
3日前、転移により国内便の発着数がめっきり少なくなった新石垣空港に突如飛来して、駐機場の片隅で身を寄せ合うように駐機していたまだら模様の機体は、この日が来るのを待ちかねたかの様に滑走路に並ぶと、大きな音と共に次々と離陸を始め、大空へと飛び立って行く……飛び立つ機体を眺めていた展望デッキの人々は「本当に戦争が始まった……。」と口にしながら、轟音を響かせ上昇旋回していく機体を見つめていた。
新石垣空港を飛び立ったまだら模様の8機の機体……航空自衛隊第501飛行隊所属のRF-4EJ偵察機は編隊を組み上昇しながら高高度で空港の上空を通過すると、それぞれが指定された方位へと2機ずつに別れ、ロデニウス大陸が在る南へと向かっていった……。
4組に別れた分隊の内、408号機とペアを組んで飛行する380号機の操縦士で在る
「地球よりも水平線が丸みを帯びていない事を除けば空の色も景色も全く同じか……さて、間も無く陸地が見えて来る筈だが……!?」
座間三佐がそう呟くと、南の海に緑色の大地が見え始め、後方を飛行している408号機より撮影を開始するとの無線連絡が入った。
日本国は兼ねてより、クワ・トイネ公国に対して鉄道・道路といった交通網の整備を行う為には、航空写真による精密な地図が必要で有ると説いており、クワ・トイネ国内での飛行場の建設と航空機の飛行許可の交渉を行っていた……しかし、ロウリア王国による軍事侵攻により、今度は派遣される自衛隊の作戦遂行に必要な現地の地図が求められる事となる。
……しかし、クワ・トイネ公国から提示された地図は、地球の時代で言う所の測量術が確立されていなかった大航海時代以前のレベルの物で、住居が書かれている都市の地図は兎も角、国土地図になると地形は曖昧で、都市間の距離についても「徒歩で十数日、馬で数日」と注釈が書かれているだけで、これを見た防衛駐在官の久光一佐は軽い眩暈を感じたと話していた……。
この様にクワ・トイネ公国の地図作成に急遽迫られた為、統合幕僚監部では航空自衛隊の偵察部隊で有る第501飛行隊の偵察機を移動演習の名目で、ロデニウス大陸に一番近い中規模空港で有る新石垣空港へと派遣決議前に集結させ、日本政府の派遣決定とクワ・トイネ政府の領空飛行受け入れの受諾により、待機していた8機のRF-4EJが直ちに出撃を開始した。
8機4組のRF-4EJの分隊はブリーフィング時にそれぞれの都市から発信された電波の位置測定から割り出された方位へと真っ直ぐ飛行する様に指示されており、公都クワ・トイネと港町マイハーク、そしてナエノデンエンと呼ばれる村への方位に向かう分隊と、戦地に近い城塞都市エジェイ方面へと向かう座間三佐らの分隊に別れ、それぞれが目的の方位へと飛行を続ける……。
やがて陸地へと達したRF-4EJは偵察ポッドに収容されたカメラにて地上の撮影を開始し、カメラのフィルムと航続距離が許す限りクワ・トイネの空を真っ直ぐ飛び続けるのであった……。
――― 2機のRF-4EJは城塞都市エジェイの方位へと向かいクワ・トイネの内陸部へと飛行を続けるが、先に撮影を行っていた408号機よりフィルムが切れるとの無線報告を受け、座間三佐は後部座席の
離陸してからここまで一言も発していなかった吾妻二尉は既に撮影の準備を終えていたのか「了解、撮影を開始します……。」と言葉少なげに返答し地上の撮影を開始する。
偵察ポッドのフィルムを使いきった僚機で有る408号機が新石垣空港に戻るべく離脱を開始し、空と海の合間へと消えていく……ここからは座間三佐と吾妻二尉が機上する380号機の単独飛行となり、萌木色の大地が続くクワ・トイネ公国の内陸へと進んで行った……。
座間三佐達のRF-4EJ偵察機は航続距離を伸ばす為に、増槽と偵察ポッド以外の外装品は全て外され、自衛用のミサイルだけでなく20mmバルカン砲の弾薬すら搭載されていない……この作戦飛行で障害になるのは悪天候と『異世界由来の未知の存在』のみとブリーフィング時に言われたが、高度28000フィート(約8300m)を時速490ノット(約907km)で飛行するRF-4EJに追いつく事が出来る存在は未だ確認されておらず、非武装の偵察機は雲一つない戦地の空を悠然と飛行していた……。
「……まったく、このロートルにまだ乗り続ける羽目になるとはな……。」
長年使い込んで持ち手部分がすり減った操縦桿の感触を確かめながら、座間三佐はそう呟く……。
このRF-4EJはその古さから若手の整備員より「おじいちゃん」と呼ばれ、デジタル化が進んだこの世の中で、計器類や操縦方式はおろかカメラですら未だにフィルムで撮影してる時代遅れのアナログ偵察機で有る……そう遠くない将来に高精度なデジタル写真をリアルタイムで送信し、長時間飛行可能な無人偵察機と交代して全機退役する予定だった……。
長きに渡りこの機体と共にし、現役パイロットの中では最高齢に属する座間三佐もこの機体の退役と共にパイロットとしての現役を引退する予定だったが、異世界転移と言う前代未聞の出来事により後継機計画は無期延期となった為、当面はこの機体を運用し続ける事になり、これに合わせ座間三佐の現役引退も先送りされる事となった。
「……まぁ、重要なお役目を貰ったんだ! コイツとは最後まで付き合うとするか。」
座間三佐はそう思いながらも、そろそろ帰投する為の燃料が気になって来た頃、後部座席で撮影を行っていた吾妻二尉より「フィルムを使い切りました!」と報告が入った。
それを聞いた座間三佐は航空無線で帰投する旨を基地に報告すると、機体を大きく旋回させ帰投を開始した。
旋回中、地上に大きな街が見えたので、恐らくこれが目標にしていたエジェイの街だろうと思いながら、座間三佐達が乗るRF-4EJ・380号機は新石垣空港へと帰還した……。
その後も幾度と無く、501飛行隊の偵察機はロデニウス大陸へと渡り、撮影された航空写真のフィルムは現像後にデータ化され本土へと送信されて地図が作成されていく……。
この地図により統合幕僚監部は、クワ・トイネ派遣部隊の拠点を何処に建築するか検討を始め、数ある候補地の中から補給路となる街道や都市からも近く、ロウリアの武装集団の掃討と拠点制圧を行うのに相応しい場所として、城塞都市エジェイ東方に在るダイタル平野と呼ばれている土地が選定された。
同日 正午過ぎ クワ・トイネ公国 ギムの街から約20km程の街道
馬に跨った山内と田崎はエジェイの西門を抜け、ギムの街へと続く草原の道を再び『北の森』へと向かうべく進み始める……2人は敵や味方との接触を避けつつも街道沿いを進んで行くが、道中に立ち寄った村々には既に人の姿は無く、どの集落もロウリア軍に使われない様に全ての家々が焼かれており井戸も破壊されていた。廃墟となった集落を抜けて、以前ロウリア軍の騎兵達と交戦した丘陵地にたどり着くと、エジェイに戻る時には野ざらしのままだったロウリア騎兵の死体は敵によって回収されたのか無くなっており、辺りは風に靡く草木が地平線の向こうまで続く景色が続いていた……。
「ここまで何も無く来る事が出来たが……騎兵は兎も角、空からワイバーンに見つかったら一大事だ! 田崎、急ぐぞ!!」
馬上から双眼鏡で周囲を観察していた山内は田崎に向かってそう言うと空から微かにジェット機の音が聞こえて来た……彼は空を見上げ、ニヤリと笑みを浮かべながら馬の手綱を右に引き、急ぎ『北の森』へと向かって行った……。
中央歴1639年(西暦2015年) 4月23日 深夜 クワ・トイネ公国 『北の森』付近の草原
それから深夜を迎え、漆黒の夜に無数の星々が輝く空の下『北の森』に近い東の草原では、無線機を手にした山内と高く伸ばしたアンテナポールを真っ直ぐと両手で支えている田崎の2人が北の夜空を見上げていた。
「まだ、来ませんね……。」
田崎は左腕に嵌めた腕時計をちらりと見ると既に3時20分を過ぎており、彼はラジオビーコンを先端に取り付けた5m近いポールを真っ直ぐ支える為に1時間以上同じ姿勢を続けていた為か、疲れからか少しづつ傾くアンテナを真っ直ぐに立て直そうとしていると、山内が手にしている無線機からノイズ混じりの声が聞こえ始めた。
「………ちら……ーバー1、こちらウーバー1、バッドアス聞こえますか……。」
「来たっ!」と山内は小さく呟くと無線機のプレストークボタンを押して交信を開始する。
「こちらバッドアス、聞こえている、どうぞ!」
「ウーバー1より、バッドアスへ、そちらのビーコンを確認した、位置確認の為、レーザー照射されたし、どうぞ!」
「バッドアス了解、これよりレーザーを照射する!」
山内は無線でそう告げると、予め設置していたレーザーポインタ装置のスイッチを入れると、装置から暗視ゴーグルで判別できる非可視の光線が夜空を貫くかの様に光り出した。
「こちらウーバー1、レーザーを確認した、これより降下準備に取り掛かる!」
無線が終わると上空から微かな風の音とは別の唸る様な音が聞こえ始め、山内達が見上げると……夜空の中を沖縄から飛来してきた航空自衛隊のC-130H輸送機が2つの月明かりに照らされながら飛行しているのが見えた。
「田崎、アンテナはもういい……連中を出迎えるぞ!」
山内がそう言うと、上空を飛行しているC-130Hの後部から黒い小さな影がバラバラと飛び出して来た……その小さな黒い影はしばらくの間真っ直ぐと降下していたが、黒い落下傘を開くと夜空を舞うかの様に旋回しながら山内達がいる方向に向かって、一人また一人と地上へと降りて来た。
C-130Hから自由降下で地上に降りて来た1人が、
「自分は第2中隊、偵察班所属、
「一ノ瀬三尉、ようこそクワ・トイネへ! しかし、こう俺の悪名ばかり広がるのも困りものだな……。」
偵察班を名乗る一ノ瀬ら降下して来た8人の隊員達は田崎と同じ陸上自衛官の中でも最精鋭達が集う特殊作戦群の隊員達で有り、ギムの街を占領したロウリア軍の動向を監視すべく、クワ・トイネ公国にも知られる事無く密かに派遣されたので有った。
「山内三佐、輸送機より物料投下を行うと連絡が有りました!」
「分かった……おいっ、荷物が降って来るぞ! 皆、レーザーポインタから離れるんだ!!」
無線機を預かっていた田崎の報告に山内は全員に声を掛ける……しばらくすると夜空の中をC-130Hのシルエットが山内達の上空を通り過ぎると同時に一個の大型投下容器が地上へと投下され、パラシュートが開き降下するとレーザーポインタから10m程離れた場所にドスン!と言う大きな音と共に地面へと降りて来た。
「ウーバー1より、バッドアスへ……配送を完了、RTB(リターントウベース)!」
荷物を投下したC-130Hが北の空へと飛び去ってくのを見送った山内達は投下容器の前へと集まって来る……。
「これ、どれぐらいの重さが有るんだ……!?」
「このパレットのサイズだと約250kgぐらいだな……。」
「うへぇ……1人辺り25kg荷物の追加かよ!」
特戦群の隊員達は追加で持たされる荷物の量にうんざりとしながらも、投下容器の解体を行い中の荷物を取り出し始めた。
東の空が少しずつ白み始める頃、山内と特戦群の隊員達はパラシュートを纏め、投下容器のパレットを解体し残った荷物を背負子に詰め込み、空挺降下した痕跡を全て消し去り終えると、目的地で在る『北の森』へと出発を開始する。
「よ~し! これから『北の森』の泉が在る場所へ向かう! 万が一、道に迷った時はブラックライトでマーキングした木を探せ、森の奥で迷ったら帰れなくなるぞ!」
山内が皆にそう伝えると、暗視ゴーグルを装着した田崎を先頭に特戦群の隊員達は木々が深く生い茂る真っ暗な『北の森』へと入って行く……。
「山内三佐……今向かっている場所は敵も味方もやってこない『聖域』だと言う話ですが、どうして街の近くにその様な場所が在るのですか?」
一ノ瀬三尉の質問に、山内は「良い質問だな!」と言わんばかりの表情を浮かべながら答える。
「結論から言うと、この『北の森』に生息しているレントと言う生き物の生態が知られていないからだ……レントは木が進化した様な奇妙な生き物だが、見た目以上に強い上に自分達のテリトリーで在る森を破壊する連中には容赦をしねぇ……これまで森に入った奴らはその事を知らずに森の木を切ったり、火を起こすからレントの怒りに触れて森を追い出されてからは誰も『北の森』には入らなくなった……。 案内してくれた冒険者のヘラもレントの事は森に住むハイエルフの師匠から教わったと言っていた、それとレントは…………これは現地に着いてから話すとするか。」
山内はそう答えると、周囲が明るくなって来たので暗視ゴーグルのスイッチを切り頭から外した……彼らが目的地の泉に着くころには日が昇り、木々の間から見える空が明るくなり始める中、山内達は僅かな水が流れる小川の横を泉へと向かい歩いて行った。
同日 早朝 クワ・トイネ公国 ギムの街から北へ約15km程の『北の森』泉の拠点
木々の間から青空が見える時間帯となり、山内達は目的地で在る『北の森』の泉に到着した。
泉の傍には杭に手綱を付けられた2頭の馬達が大人しく佇んでいる姿が有り、隊員達はようやく到着したとホッとしながら荷物を載せた背負子を降ろし始めた。
「おーい! 休む前に紹介したい奴が居るんだ、皆こっちに来てくれ!!」
山内が巨大な大木の前に全員集まる様に指示を出すと一ノ瀬達、特戦群の隊員達は「紹介したい奴?」と言う言葉に首を傾げながらも山内の前に集まる。
「紹介するぜ、彼が木人ことレントの『泉の見張り役』だ!」
山内は目の前の巨木を指差すと、木の幹に有る目と口が開き、巨木はとても低くゆっくりとした声で喋り始めた。
「うむぅ…………しゃべれるニンゲン……いっぱい……おどろき…………こんごとも……ヨロシク……。」
「しゃ……喋ったぁ!!!!」
一ノ瀬三尉を始め、特戦群の隊員達は巨木が日本語で喋る事に、腰を抜かさんばかりに驚いているのを見た山内は笑いながら答える。
「実は昨日、この泉に到着した後、このレントに挨拶をすると返事を返して来てな……あん時は俺も田崎と一緒にビックリしたの何のって!」
一ノ瀬達、特戦群の隊員達は人間以外の生き物が言葉を話す事に呆然となっている中、山内は再び笑みを浮かべ話し始める。
「一ノ瀬三尉……これが異世界だ! どうだい、楽しくなって来ただろう……。」
山内の言葉に一ノ瀬三尉率いる特戦群の隊員達は互いに顔を見合わせた後、同じ様に笑みを浮かべた。
続く
ついにその重い腰を上げた日本国がクワ・トイネ公国を救うべく動き始めました。
次回からは、ロウリアとの戦いの向け自衛隊の部隊を送るべく日本と言う巨大な山が動き始めます。
用語
可聴外音波符号信号送受信アプリ
(正確な名称が不明な為、この様な名称とする。)
本来、別班の諜報部員の連絡にはテレグラムやシグナルに類似する秘匿性の高いメッセージングソフトウェアを使用しているが、一般のAМ放送に紛れて発信される可聴外の音波や極秘の短波放送(俗にジャパニーズスロットマシーンと呼ばれている。)から発信される暗号文を復号する為のソフトウェアが別班により使用されている。
このソフトウェアはスマートフォンやタブレット端末の差し障り無いのアプリケーションに偽装されており、使用には(可聴外の音波を効率良く送受信する為に)外付けバッテリーに偽装したマイクとスピーカーが必要となる。
クワ・トイネ公国との国交時に研究用に持ち込まれた魔導通信機器を調査した際、この装置が使用出来る事が判明した為、山内はクワ・トイネ公国に持ち込んで使用している。
新石垣空港
沖縄県石垣市(石垣島東部)にある地方管理空港であり、定期便が発着する空港としては日本最南端の空港で有る。
(日本最南端と空港としては波照間島の波照間空港が在るが、滑走路が800m程しか無い為、戦闘機の発着陸に不向きなので今作では使用されていない。)
日本本土とロデニウス大陸の中間に位置する空港の為、参戦序盤には偵察機部隊の拠点として、又は輸送機の緊急着陸場所として使用された。
泉の見張り役
『北の森』の泉に定住?している、樹齢推定4000年のレント。
普段はその名の通り、森の中に在る泉付近に根を張って周囲の木々と共に過ごしている為、大木で有る以外、他の木と区別がつかない。
レントは独自の言語を持つ為、ハイエルフ以外の種族とは意思の疎通を取れないが、どういう訳か山内達とは会話が可能で有る。
彼らの名前は、自身が普段根を降ろしている場所の環境から 名前を取るらしく、稀に森から森へと大きく移動する個体はその都度名前が変わるとの事らしい。