日本国召喚 国際協力機構 異世界を往く クワ・トイネ編   作:アニキ イン ザ スペース

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第十三話 山が動く!!

中央歴1639年(西暦2015年) 4月23日 クワ・トイネ公国 ギムの街から北へ約15km程の『北の森』泉の拠点

 

クワ・トイネ公国の西側『北の森』に在る、泉の拠点に無事到着した山内と特戦群の隊員達は小休止の後、一ノ瀬一尉と2名の隊員が田崎の案内の元、ギムの街が見下ろせる南の丘への偵察へと出発し、残った隊員達は山内と共に本国との通信を行う長距離無線機の設置作業を開始した……。

 

森の番人で有るレントが見守る中、長距離無線機の設置作業はスムーズに進み、無事に試験運用を終えた事により本国との交信ができる様になった。

 

無線機の設置を終えた山内は退屈しのぎも兼ねて、取り出したタブレット端末を使い、これまで見て来たクワ・トイネ公国について特戦群の隊員達に語り始める。

 

山内が撮影したクワ・トイネの風景や街並み……そして、そこに住む人々の姿は、これまで日本で公開されていた映像や写真以上に幻想的な光景が写し出されている事に、隊員達は驚きの声を上げる……。

 

「……で、彼女がここへの案内をしてくれた冒険者で野伏のヘラだ!」

 

山内はヘラの顔をタブレット端末に表示させて見せると隊員達にどよめきが起きる。

 

「これがエルフかぁ……すごい美人さんですね!」

 

隊員達が赤毛のエルフであるヘラの容姿に見惚れる様子を見て、タブレット端末をスライドさせて次の写真を表示させる。

 

「んで……コイツが魔獣使いのチチ―ナだ!」

 

「ほうこれが例の獣じん!? てっ……でかっ!!」

 

彼女の上半身を写した写真を見た隊員達はその胸の大きさに驚きながらも凝視する。

 

「ふふっ……そしてこんな写真も有る。」

 

山内は笑みを浮かべながら、次の写真をスライドするとそこには倒れた田崎の上にチチ―ナが覆いかぶさり、その大きな胸に田崎の顔が埋もれている姿が写されており、それを見た隊員達は烈火の如く怒り始める。

 

「な……なんだコレは! 田崎の野郎、巨乳ネコミミの乳プレスだとっ!!」

 

「チクショーメ! 自分がイケメンだからと言って、ふざけやがって!!」

 

「俺達を差し置いて、自分だけこんな良い思いを……許せねぇ、ぶっ殺してやる!!」

 

騒ぎ立てる隊員達を目にして「やれやれ、こいつ等は……。」と思いながらも、山内は怒れる隊員達に釘を刺す。

 

「お前ら落ち着け! そう言うのは田崎の奴が戻ってからにしろ!!」

 

笑いながらも強面の表情で隊員達を窘める山内にさすがの特戦群の隊員達も大人しくせざるを得なかった……。

 

「あっ、はぃ………わかりました! 田崎の野郎は戻り次第、取っちめる事にします! しかし、この世界がこんなファンタジーな場所とは思いもしませんでした……。」

 

「エルフに巨乳ネコミミと来たもんだから、後はビキニアーマーの女戦士とくっころ女騎士がいればホント、最高なんだけどなぁ~!」

 

「何だよそりゃ!?」

 

「えっ! だって、ファンタジーの定番だろ!?」

 

一人の隊員の言葉に山内は「それなら……。」と言いながらタブレット端末フォルダから一枚の画像を表示し隊員達に見せる。

 

「くっころ女騎士は知らんが、エジェイの街でこんなモノを見つけたぞ!」

 

そこには木で作られたボディハンガーに掛けられた、金色に輝く甲手(こて)脚絆(きゃくはん)に合わせて作られた水着のビキニをそのまま金属の鎧にした衣装が写し出されており、それを見た隊員達は「はぁ……!?」と言いながらあんぐりと口を開けてしまう……。

 

「ここに来る前に、エジェイの道具屋で見かけたモノだ! 何でも店のオヤジの話では南方の女戦士が着る鎧らしい。」

 

山内の説明に特戦群の隊員達は、驚きと呆れが入り混じった表情でとても鎧とは思えない衣装の写真を見つめる……。

 

「こりゃ、たまげた……女剣闘士や見世物なら兎も角、本当にこんなの着て戦っている女がいるって事かよ!」

 

「ひゅ〜!! この世界にはビキニアーマー女戦士がいるのかぁ!?……見てみてぇ!!」

 

『ビキニアーマー女戦士』と言う言葉に特戦群の隊員達は大いに盛り上がる中、1人の隊員がこれまで見た写真の感想を口にする……。

 

「しかし、この異世界って本当に地球とは違う世界なんですね、そういえば写真に人が乗った大きな鳥がいましたよね! 黄色くてまるでチョコ……。」

 

「「それ以上いけない!!」」

 

うっかりアノ鳥の名前を言おうとした隊員をそこに居た全員で止めに入る、その中には南の丘の偵察から戻って来たばかりの田崎の姿も有った……。

 

「あっ……!?」

 

「えっ!?」

 

田崎は自分を見つめる隊員達の殺気じみた視線に本能的な危機感を感じると、その場で素早く装備を外し始める。

 

「田崎、コノヤロゥ! 待っていたぞっ!!!」

 

隊員達が田崎を捕まえようと一斉に飛び掛かると、田崎は素早く脱いだギリースーツを身代わりにして隊員達から逃れると脱兎の如く走り出した!

 

「待ちやがれこのヤロウ!!!」

 

「うああぁぁ~っ! 何なんだよ!!」

 

「オマエだけネコミミ娘とパフパフするとは許せんぞ〜っ!!!」

 

突如始まった特戦群同士の本気の鬼ごっこに、一ノ瀬一尉は何事かと山内に問いかける。

 

「山内三佐、なんですかアレは……!?」

 

「さあな……まぁ、しばらく好きにさせておけ! それよりギムの街はどうだった?」

 

逃げ回る田崎を尻目に、山内は我関せずと言わんばかりに、一ノ瀬一尉に報告を求める。

 

「あぁ……はい、田崎三曹の案内でギムの街を見下ろす南の丘まで無事に行けましたが、街の上空を2匹のワイバーンとか言う奴が哨戒飛行を行っていました!」

 

一ノ瀬一尉はそう言いながら撮影したカメラのUSBケーブルをタブレット端末に接続し、画像ファイルを表示させ山内に見せる。

 

「ワイバーンの哨戒か……だとしたら日中の移動はそいつ等に見つかる恐れが有るな。」

 

「明日にでも南の丘に監視所を設置したいのですが、これだと移動と交代は早朝前か日没後になりますね……。」

 

「そうだな……ロウリアの連中が直ぐに動くとは思えんが、監視体制は早く構築したい!」

 

山内はそう言いながら撮影された写真を確認していると有る事に気がつき、その部分を拡大して再度、刮目する……。

そこには、ロウリア王国への街道を列をなして向かう荷馬車の一団が写っており、その積み荷を見て山内はニヤリと笑いながら呟く。

 

「なるほど、なるほど……そう言う事か! この数から見て、連中はしばらく動けなさそうだ!!」

 

山内が拡大した写真には穀物が入った袋と果物や野菜が入った樽を大量に持ち運んでいる荷馬車が写っていた……。

 

 

同日 クワ・トイネ公国 占領下のギムの街

 

かつてロウリア王国を始めとする西方の周辺諸国との交易で栄えた国境の街ギムも、今や住民がいなくなった瓦礫の街と化し、戦災を免れた建物にはロウリア王国と諸侯軍の旗が掲げられていた。

 

ギムの街を陥落させたロウリア王国東方討伐軍の副将アデムは、焼失を免れた建物の中で最も大きく、街一番の豪商の邸宅だった屋敷を接収したのち、そこをクワ・トイネ侵攻軍の司令部とし、兵の休養と補給が済み次第、次の攻略拠点で有る城塞都市エジェイへと進軍する予定だった……。

 

「えぃぃ、全く……忌々しい!」

 

アデムは司令部で有る屋敷の2階の窓から、ロウリア王国へ向かう荷馬車の一団を睨みながら、酒の入った白鑞(しろめ)の杯を手に取り荒々しく飲み干す。

 

「閣下……ギムで接収した食糧の本国への移送は王の勅命で有る以上は……。」

 

「そんな事は分かっておる!!」

 

アデムは意見を述べる部下を怒鳴りつけ、手にしていた杯を机に叩き付ける! 部屋には鈍い音が響き、変形した白鑞の杯が床へと転がり落ちた……。

 

 

アデムは占領したギムの街の南に有る巨大な穀物倉庫を無傷で接収した際、ロウリア王国との国交が回復した時の為に準備していたのか、食糧を長期保存できる様に氷魔法の魔法陣が描かれ、ひんやりとした穀物倉庫の中に穀物や干し肉、そしてチーズなどの加工食品が大量に保管されているのを発見し「これで本隊が来ても1年は余裕で戦える!」と大喜びしながら、ロウリア本国へと報告をした。

 

しかし、本国からは『徴収した穀物を始めとする食料を直ちにロウリア本国へと移送せよ!』とのロウリア王、ハーク・ロウリア34世からの勅命により、兵站を担う馬車だけでは無く、騎兵の馬までもが本国への食糧輸送に使われた事で、アデムが描いていたエジェイへの電撃侵攻が出来なくなってしまった……。

 

ロウリア王国はこれまで食糧を輸入して来たクワ・トイネ公国との断交と農作物の不作が相まって、前年の蓄えを春までに食べつくしてしまう『春窮(しゅんきゅう)』と呼ばれる事態が各地で発生しており、ロウリア王は民の不満を解決すべく、優位な戦況を停止させてでも食糧を運ぶ必要に迫られていたのだ。

 

そしてアデム自身も、食料の運搬を荷馬車では無く、捕らえたギムの住民を使って徒歩で食糧を運ばせようと自ら提案し、これを実行したが、荷物を運ぶ住民の監視に多くの兵を割く必要が有り、枷を嵌められたまま重い荷物を持たされたギムの住民達の多くは国境の川を渡る前に力尽きて倒れた為、運んでいた食糧の殆どを駄目にしてしまった……更には住民の中に自ら枷を外して逃げ出す者まで現れる始末となり、一粒の麦もロウリアに運べていない酷い有り様となった……。

 

流石にこれはまずいと思ったアデムは関係者を脅して口封じをし、運搬に従事した住民を全員殺害する事で『無かった事』にしてしまったが、一部の兵士や諸侯達は口にこそしないが、アデムに対して更なる不信感を抱くようになってしまった。

 

当面、エジェイへの進軍が出来ない事にアデムは腹を立てながらも、次にどうするか考え始める……。

 

「ギムに駐留している間は、食糧の確保に困らないのは何よりです……このままパンドール将軍の本隊が来るまで待機していても問題は無いでしょう、ギムを取り戻す戦力すら無いクワ・トイネの連中に時間を与えても増援なぞ高が知れています! そしてエジェイの攻略は……ドワーフ共の砦を陥落させた時と同じように破岩猪(はがんしし)の突進で城壁に穴を開け、そこに百足蛇(むかでへび)を潜り込ませれば……さぞかし愉快な事になるでしょう……ヒッヒッヒッ!」

 

後年、歴史家達の間ではロウリア王国がギムを占領後、直ちにエジェイへ向かい攻略すれば、日・ク連合軍は公都クワ・トイネでの防衛戦を余儀なくされ、戦争は長期化していたであろうと語られている……しかし、その様になったとしても最終的にロウリア王国は敗北し、史実以上の死傷者を出す事になるのが歴史家達の一致した意見で有った……。

 

 

同日 クワ・トイネ公国 ナエノデンエン村の広場

 

「私も見たんです! 村の空を、灰色の龍が唸り声を上げながら飛んでいる姿を!!」

 

比留川と牧田が村の広場に有る井戸の前を通りかかると、屋敷のメイドで在るリドルが、昨日見たと言う龍の事を大声で集まった人々の前で話していた。

話を聞いて見ると、外で農作業をしていた時に空から唸り声を聞いたとか、同じ灰色の龍の姿を見たと言っている村人が他にも居る為、デマや見間違い等では無い様だ。

 

「これは吉兆じゃ! クワ・トイネを救うべく、神龍がやって来たに違いない!!」

 

「おおおおおぉぉぉぉっ!!」

 

老人の予言めいた言葉に村人達が盛り上がる中、比留川は『神龍がやって来た』と言う言葉を聞いて、外務省から聞いた異世界の情報について思い出す……。

 

――― クワ・トイネ公国からの話によると、この異世界には地球では伝説上の存在で有った『龍』が実在し、超常の存在として全ての生物から畏怖の念を抱かれており、中でも『神龍』と呼ばれている龍は伝説の時代と呼ばれる大昔から今に到るまでこの世界の何処かに生息しているとの事らしい……。 『神龍』は山の様に巨大な者もいれば、天候を自在に操り、地形すら変える力を持つ者もいると言う……そんな何処まで信じたら良いのか判らない怪獣みたいな奴の話が外務省からの報告で上がっていたが、幸いにもこのロデニウス大陸にはその様な龍は生息していないとの話だったのだが……。 ―――

 

「あぁ……『龍』ねぇ!? 何も知らなければ確かにそう見えるよな……アレは!」

 

比留川の横を歩いていた牧田は胸ポケットからスマートフォンを取り出すと画面を操作し始め、比留川に見せた。

 

「恐らくコレが『龍』の正体! 昨日、外で作物の発芽状況を撮影しにデジカメ持っていたんで、そん時に撮影したんだ。」

 

牧田が比留川にスマートフォンの画面を見せると、青一色の画面の真ん中に灰色の小さな三角形の様なモノが写っており、牧田が画面を操作して最大に拡大するとぼんやりとしているが、形が解るシルエットが写し出された。

 

「んっ……牧田、これって!」

 

「こいつは空自のF-4ファントムだな、ここに飛んで来たって事は偵察機の方だろう!」

 

「遂に来たのか!」

 

比留川は画面を見ながら、日本がクワ・トイネ救援の為に動き出した姿を見て、期待感と共に胸に熱いモノが込み上げて来るのを感じていると、リドルが彼らの元へと駆け付けて来た。

 

「ヒルカワさん聞いて下さい! 昨日、村の空を灰色の龍が飛んでいるのを……!!」

 

大きな声で話しかけて来るリドルに比留川と牧田は顔を見合わせて困惑する。

 

「なぁ牧田……俺達『龍』の正体を知っているんだけど、どうする!?」

 

「う〜ん! 説明するのも大変だし、そもそも理解してくれるのやら……。」

 

2人は「今回は話さなくて良いか!」と小声で確認し合うと、途切れる事無く話を続けるリドルに苦笑いをするので有った……。

 

 

同日 日本国東京都千代田区永田町 首相官邸

 

クワ・トイネ公国への自衛隊派遣の決議から2日が経過した首相官邸前では、自衛隊派遣に反対するデモ隊の姿が見られるも、参加人数が少ない為に数倍の数で警備を行う警官隊に囲まれて行うデモ活動の様子がSNSサイトにアップされると、それを見たユーザーからの失笑と哀れみでコメント欄が埋め尽くされていた……。

 

「うむ……もう少し数を揃えて来ると思っていましたが、某国からのパトロンを失うとこんなモンですか。」

 

首相官邸の会議室でSNSサイトを見ていた三津木がそう呟くと、総理を始めとする各大臣と官僚達が入室して来た為、慌ててスマートフォンを胸ポケットにしまい込み、他の自衛官達と共に一斉に立ち上がり挙手の敬礼を行った。

 

関係者が集まった事で『クワ・トイネ公国への自衛隊派遣』に関する会議が開催され、懸案となっている部隊と物資の輸送について、統合幕僚監部所属の三津木が説明を担当する事になった。

 

(やれやれ……まさか会議で説明する担当者をアミダくじで決めるとは思いもよりませんでした……。)

 

くじで見事『アタリ』を引き、一番面倒な大役を押し付けられた三津木は自分のくじ運の悪さを呪いながらも、大臣と官僚達が並んで座っている会議室を見渡しながら説明を始める……。

 

「まずクワ・トイネ公国への物資輸送の件ですが……現在、彼の国の港湾施設は北部に在るマイハーク港とその隣の海岸に我が国が設置した臨時の浮き桟橋のみで、大型船の接岸と重量物の荷揚げが行えない為、これまでは海自のおおすみ級のLCAC……エア・クッション型揚陸艇と呼ばれているホバークラフトを使用して重量物の荷揚げを行っていました……しかし、現状の施設と3隻の輸送艦だけでは、今回の自衛隊派兵に必要な物資を運ぶ事が出来ません! ちなみに派遣される予定の部隊が一日に必要な量は、事前に配布した資料に書いていますのでご参照ください。」

 

テーブルに置いてあった資料を読んだ、経済産業省と財務省の官僚はその内容に愕然とする……。

 

(ちょっと待て……この燃料の消費量は! 飛行機と戦車を動かすだけでこんなに使われたら節約どころでは無いぞ!!)

 

「な……なんだ、このふざけた金額は! アンタら自衛隊は国を破産させるつもりかぁ!!」

 

経済産業省の官僚が顔を真っ青にしている横で、物資に掛かる金額を見た財務省の官僚は顔を真っ赤にしながら食って掛かるが、三津木は眠たそうな表情を変える事無く、冷徹に言葉を返す。

 

「兵站に掛かる費用の質問については、後で受け付けます……それと今は予算会議では無く、国家の命運が掛かった事態を話しあう場で有る事をご理解頂けたい!」

 

嗜める様に言い放った三津木の言葉に財務省の官僚は顔を赤くしたまま黙り込んでしまう……そんな彼をを尻目に、三津木は手元に有るノートパソコンに接続されたマウスを操作すると、会議室のモニターに画像が浮かび上がる……その画像には『オペレーション・マルベリー マイハーク海岸の臨時埠頭設置工事について』と書かれていた。

 

「オペレーション・マルベリー!?」

 

「はい、この作戦名は第二次大戦時に連合軍がノルマンディー上陸作戦で建設した人工港の名前が由来となります。」

 

官僚達の問いに三津木はそう答えると再びマウスを操作し、画面を切り替えるとモニターにはマイハーク港の写真が表示される。

 

「写真のクワ・トイネ公国北部の港マイハークは、公国の中で最も大きく周囲を天然の護岸に覆われた良港ですが、水深が浅く我が国の貨物船が入港出来ません……又、現地で調査を行ったJICAの専門家によるとマイハーク港の海底は硬い岩盤の為、海底を掘り下げる浚渫(しゅんせつ)工事が行えないとの報告が有り、自衛隊の輸送拠点に向かない事が判明しました。」

 

モニターの画像が切り替わり、今度は航空機で撮影されたと思われる海岸を上空から見た画像が表示される。

 

「その為、別の場所に新たに埠頭を作る必要に迫られまして……現在、モニターに映し出されているのは、マイハーク港の近隣に在る海岸をヘリコプターで撮影した航空写真ですが、画像の右側を見て頂けますでしょうか……。」

 

画像には砂浜から海に向かって徐々に深くなっている海岸の右側の一部に『くの字』に道を引いたかの様に砂浜から沖まで続いている浅瀬が在り、一緒に写っているボートと比較しても1キロ近くの長さは在るだろうと推測できた。

 

「この浅瀬を調査したJICAの報告では一番深い所でも、満潮時で水深3m未満で、地盤もしっかりしているとの事です……まずは、ここを埋め立てまして海岸と繋げます、次に……。」

 

三津木が次の画面に切りかえると、今度は日本のとある場所の航空写真が写し出された……それはここに居る大臣や官僚達、全員が知る場所で在った為に、どよめきが起きる。

 

「これは、福島第一原子力発電所じゃないか! どうしてここが……!?」

 

官僚達の驚く姿を眼鏡越しに眺めながら、内心ほくそ笑んだ三津木は眠たそうな表情のまま話を続ける。

 

「見ての通り、ここは福島県に在る福島第一原発です……ここには原発事故時に臨時の貯水タンクとして導入され、最近になって役目を終えた物が有ります、コイツをクワ・トイネに持って行き、臨時の埠頭として使用します!」

 

三津木はそう言いながら画像を切り替えると、モニターには海に浮かぶ長方形の物体が映し出された。

 

「!?……コイツは、メガフロートかっ!」

 

副総理はそう言いながら身を乗り出して画面を見つめる。

 

「はい、管理している電力会社の話では残留していた放射能は既に除染済で、外洋への移送にも耐えられるだろうとの事です……会議での承認が取れ次第、コレを含め全国から必要な機材をかき集めて突貫で工事を行います!」

 

三津木の説明にそれまで黙って聞いていた総理大臣が静かに手を上げて発言を行う。

 

「解りました、直ぐに承認と手配が取れる様にして置きます!」

 

総理が発言していると会議室の通用口から海上自衛隊の制服を着た女性自衛官が海上幕僚長に早足で駆け寄り、耳打ちをしながらメモを渡した。

メモを読んだ海上幕僚長は険しい表情で統合幕僚長と防衛大臣にメモの内容を報告すると、2人の表情も同じ様に険しくなる姿を見て、総理大臣は防衛関係者が座る席に向かって問いかける。

 

「どうしました、何かあったのですか?」

 

総理の問いに斎藤統幕長はメモの内容を報告する。

 

「報告します、先ほどロデニウス大陸北部の沿岸を哨戒活動中の潜水艦より、東へ航行するロウリア王国の旗を掲げた船団を発見したとの報告が有りました……これまで400隻を超える船を確認して、更に後続が続いているとの事です!」

 

「4・400隻!! そんなにいるのか!?」

 

「お言葉ですがクワ・トイネ公国からの報告では、その10倍……4000隻以上の船が出港したとの報告が上がっています!」

 

「えっ!?…………………」

 

斎藤統幕長が口にしたロウリア軍の船の数を聞いて大臣と官僚達は思わず沈黙してしまう中、防衛大臣がすっと右手を上げて発言する。

 

「総理……現在、那覇港に邦人救助の名目で第3護衛隊群が陸自の対戦車ヘリコプター隊を搭載して待機しており、何時でも出港可能です!」

 

「相手は4000隻を超える大群だが、大丈夫なのか!?」

 

「これまで、クワ・トイネ公国から得た情報を総括しても、我々が負ける事は有りません!」

 

総理の質問に海上幕僚長が力強く答えると、官僚達からどよめきの声が上がる。

 

「分かった……こうなった以上、君達に任せよう!」

 

「総理、『交戦規定』については閣議決定通りで宜しいでしょうか!?」

 

ここで斎藤統幕長が問う『交戦規定』とは………

 

1・武装勢力と遭遇した時は、移動の停止と自国領へ引き返す様、警告を行う。

 

2・武装勢力が警告に従わない場合、威嚇行動、又は警告射撃を実施し再度、警告を行う。

 

3・武装勢力が攻撃等、敵対的行動を取った場合、現地指揮官権限で排除目的の攻撃を行う事を許可する。

 

4・武装勢力がクワ・トイネ、クイラ両国の軍・民間人を攻撃していると現地指揮官が判断した場合、1・2を実施しなくても、排除目的の攻撃を行う事を許可する。

 

5・武装勢力に対する武器の使用制限は無制限とする。

 

であり……相手を国家・軍隊とは捉えず、武装勢力として見ている以上、事前に警告を行う様にしたが、下手に制限を付けた事で自衛官に死傷者が出る事を恐れた為か、現地指揮官の権限の強化と武器の使用無制限等、かなり攻撃的な内容になっている。

 

「うん……それで問題無い、陸・海・空、自衛隊3軍に命ずる! ロウリア王国を自称する武装勢力の船団を排除し、これ以上の侵攻を阻止せよ!」

 

「はっ!!!」

 

総理の言葉に、陸・海・空の幕僚長と斎藤統幕長は立ち上がり挙手の敬礼を行いながら返答する! 前世界でも世界第3位の大国で、有数の軍備を保持していた日本と言う巨大な山が静かに動き始めたので有った……。

 

 

続く




特戦群の偵察活動が開始される中、海上自衛隊の艦隊に出港命令が下されました!
次回は海の底からロウリアの大船団を監視する海の忍者の活躍と臨時埠頭の建設が開始される中、海戦の結果を固唾を呑みながら聞くJICA職員とナエノデンエン村の人々の姿がメインとなります。


用語

破岩猪

牛程の大きさの身体を持つ猪に似た魔獣で、突き出た頭の部分が金属の様に非常に硬い為、弓矢や槍を防ぐだけでは無く、突進すると岩をも砕く事が出来る。
太古の昔に魔術師が敵の要塞を攻略する為に創り出した魔獣とも言われ、魔獣使いのアデムはロウリア王国内で難攻不落と呼ばれたドワーフ族の砦を使役した破岩猪の突進で城壁を破壊して陥落させており、この功績を高く評価された事で『ロウリア王国東方討伐軍副将』の地位を得たと言われている。

南方の女戦士

ロデニウス大陸より遥か南の群島に住む、『アマゾネス』と呼ばれてる女性だけで構成された部族の戦士は、傭兵や冒険者として、又は優秀な子種を得る為に島を出て他の国に出向く事で知られている。
彼女達はスピードを重視する戦闘スタイルで、非常に軽量かつ軽装な鎧を好む為、ビキニの様な露出の高い鎧を着る事が有り、それらが展示品や商品として武具店や道具屋に置いている事が有る。
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