日本国召喚 国際協力機構 異世界を往く   作:アニキ イン ザ スペース

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――― ロータリーを装着したトラクターは人々が見守る中、力強いディーゼル音と共にナエノデンエン村の土地を次々と耕していく……掘り起こされた土の匂いは異世界と言えど地球のソレと変わりなく、一目で農耕に適した肥沃な土で有る事が判った。

そして播種機を搭載したトラクターが次々と小麦の種を蒔いていく光景に村人達が驚く中、オレは畑の中で有る事に気が付いた。

「雑草の芽が見当たらない……!?」

播種前に荒起こしした土地には、何らかの雑草の芽が先に顔を出し、その対処に毎回の如く頭を悩ませるものだが、おかしな事に発芽の遅い小麦の芽が伸びても雑草の芽は一向に現れなかったのだ……。

奇妙に思いながら畑の土を調べると、土の中にいくつもの発芽していない雑草の種を見つけ、どうして発芽していないのか首を傾げていると、今度は別の事に気が付く……土の中に新芽を食い荒らす有害な昆虫の類が全く見当たらないのだ!

オレはまさかと思い、村の森の中からダンゴムシに似た(信じられないが、容姿だけで無く、性質や食性まで地球に居るモノと全く同じで有る!)生物を捕まえ、見失わない様に甲羅に蛍光マーカーを塗ると、動きが活発になる夜間に新芽の生えた畑へと放ってみた……。

地面に落ちた虫達は、最初はウロウロと足下の周りを蠢いていたが、しばらくするとマーカーを塗った全ての虫達が好物の新芽には目をくれずに畑の外へと一目散に駆け出したので有る。

逃げる様に駆け出した虫達は畑の外でその歩みを止め、枯れ草を食べ始める……マーカーを頼りに虫達の数を数えると捕まえた数だけいたので、全ての虫達が同じ方向に逃げて来た事になる、試しに虫達を数匹捕まえて再度畑に放つと同じ様に畑から逃げ出してしまった。

肥沃かつ雑草と害虫を寄せ付けない奇跡の土地……。

正に神に祝福されし豊穣の大地……これまで学んで来た農学を嘲笑うかの様なこのふざけた土地に、オレは希望と好奇心、そして妬みを感じるので有った……。

牧田 祥吾 著 『クワ・トイネ探訪記 神に祝福されし豊穣の大地』より


第二十二話 速報! ロデニウス沖大海戦

中央歴1639年(西暦2015年) 4月26日 正午前 クワ・トイネ公国 ナエノデンエン村 国際協力機構ナエノデンエン事務所

 

ロデニウス大陸北部沖の海域で海上自衛隊とロウリア王国の激戦が繰り広げられる中、戦場から600km以上離れた、ここナエノデンエン村では戦禍とは無縁な日常が続く中、村の南北を横切る川沿いに建てられた『国際協力機構ナエノデンエン事務所』の会議室にて、比留川と牧田らJICAの職員と公都クワ・トイネの日本大使館職員による無線を使った会議が行われていた。

 

「戦争中とはいえ、我々の都合で何度も会議を延期させてしまって申し訳ない……。」

 

会議室に備え付けられたスピーカーから田中大使の声が聞こえて来る、本来なら休館日で有る筈の土曜日まで会議を行う程に多忙な為か、大使の声には少し疲れが出ていた。

 

比留川はそんな大使の為にも今日の会議を早めに終わらせたいのだが、戦争が始まってから以前より依頼していたトラクター輸送用の大型トラックと温室の部材がいつ届くのか分からなくなってしまっている為、この件だけでもしっかり伝えないといけないと思っていたら、スピーカーから何やらゴソゴソ言う音と共に慌ただしい声が聞こえ始め、音が収まると再び田中大使の声が聞こえてきた。

 

「失礼、今届いた速報の内容に驚いてマイクを落としてしまいまして……。」

 

「何かあったのですか?」

 

「はい……先ほど、海上自衛隊が北部海域でロウリア王国の船団と交戦を開始したとの報告が有りました!」

 

田中大使の言葉に会議に参加していたJICA職員達から驚きの声が上がった。

 

「なんと、もう戦闘が始まったのか!」

 

「自衛隊は……自衛隊は勝っているのか!?」

 

JICAの職員達の言葉に田中大使は「続報が入り次第、直ぐにお知らせします。」と伝え、遅れている会議を進行させる。

……その後、会議は予定時間よりも早く終了し、終了後に届いた『自衛隊は翼竜(ワイバーン)の大群を壊滅させ、圧倒的な戦力でロウリア船団を撃退している!』と言う続報に会議室では大きな歓声が上がった……。

 

 

会議が終わり、比留川と牧田は片付けを終えて広くなった会議室でこれからどうするかを話し合っていた……。

 

「比留川! 無事に会議も終わって、自衛隊の活躍も聞けたんだ! 今日の事をジョレーンのお嬢様に報告した方が良いんじゃないか!?」

 

「そうだな牧田……でも、たった8隻の船で4000隻以上の大船団を撃退したなんて言っても、絶対信じて貰えないぞ!」

 

「それは確かに……おっ! ソレならいい考えが有るぜ、コレだよコレ!!」

 

とんでもない戦果を信じてもらう為に、牧田は『我に策有り!』と言わんばかりの表情で、棚の上に置いていた古めかしいデザインの短波ラジオを手に取り比留川に見せた。

 

 

同日 夕刻 クワ・トイネ公国 ナエノデンエン村 村の広場

 

「うむ……コレがお前さん達の『魔信放送受信器』かぃ! エラく小さいクセにデカい音が鳴るのぅ!?」

 

村の広場に設置され、外付けのスピーカーが接続された短波ラジオを見たドワーフのダイスは赤い顎髭を(さす)りながら感心していると、今日の仕事を終えた村人達がこれから放送が始まるとの話を聞いて次々と広場へと集まって来た……そんな村人達の姿を見ながら領主の娘で有るジョレーンは困惑の表情で横に居る比留川に話しかける。

 

「あのぅ……ヒルカワ様が嘘を吐くとは思いませんが、信じられません! 4000隻もの数の敵を相手に勝利するなんて……。」

 

ジョレーンは屋敷を訪ねてきた比留川から、クワ・トイネに侵攻していたロウリア王国の大船団を二ホンの海軍が撃退したとの報告を聞いた時は驚きと喜びでこれを迎えた……しかし、彼の話を聞けば聞くほど、その内容の突拍子の無さに彼女は首を傾げざる得なかった……だが、領主で在る父から聞いた「ニホンは鉄で出来た船を海に浮かべ、ワイバーンよりも巨大な鉄竜を従えている!」と言う言葉を信じるなら、それも有り得るかと思っていると、比留川が彼女にある提案をして来た……。

 

「夕方に我が国で放送が始まります……放送を受信出来る装置が有りますので、村の皆さんと一緒に聴きましょう! そうすればハッキリする筈です……。」

 

比留川の自信有りげな言葉を聞いて、ジョレーンは屋敷の使いの者達に夕方に広場で放送が始まる事を村人達に伝える様に指示を出し、彼女自身もメイドのリドルを連れてラジオが設置された村の広場へとやって来た……。

 

「お嬢様……こんな音楽、初めて聴きます……。」

 

ラジオから流れる音楽を聞いて、リドルは不思議そうにスピーカーを見つめる……。

 

「ジョレーンさん、間もなく放送が始まる時間です!」

 

比留川は左手に付けた腕時計で時間を確認して彼女にそう伝えるとラジオの音楽が途切れ、時報を伝えるアナウンスが流れて来た。

ちなみに日本では転移以降、緊急放送用の短波ラジオ局が臨時開局されており、現在は公共第一ラジオ放送局の放送が24時間放送されている。

 

そして時報の音が鳴り終えると、男性アナウンサーの声にて夕方のニュースが始まる。

 

「午後5時になりました、ニュースをお伝えします……本日正午、日本から南西に3000km沖のロデニウス大陸北部の海域にて海上自衛隊第三護衛群と『ロウリア王国』を自称する武装集団の船団との間で武力衝突が発生し、武装集団側に多数の死傷者が発生した模様です……これより内閣官房長官の記者会見が行なわれる為、首相官邸より中継を行います……。」

 

ニュースの第一報を聞いた村人達はその内容を聞いてざわめき始める……。

 

「ニホンとロウリアが武力衝突! ホントなのか……!?」

 

「……静かにっ! また何か聞こえて来た!」

 

スピーカーからカメラのシャッター音が聴こえ始める……首相官邸の記者会見室では内閣官房長官が檀上に上がり、国旗に対し一礼すると演壇の前に立ち、記者達と向かい合った。

 

「あのぅ……『ないかくかんぼーちょーかん』」って、誰なんです!?」

 

「……日本で3番目ぐらいにエライ人です!」

 

リドルの質問に対し、比留川が大雑把(おおざっぱ)な回答で答えると、スピーカーから内閣官房長官の声が聴こえて来た。

 

「これより本日、正午にロデニウス大陸北部海域にて、海上自衛隊第三護衛群と『ロウリア王国』を自称する武装勢力の船団との間で起きました『武装組織強制排除行動』についての報告を致します……。」

 

村人達はスピーカーの前で固唾を呑みながら聴き続けるが、内閣官房長官が言う『武装組織強制排除行動』と言う聞き慣れない言葉に首を傾げるも、ラジオから語られる報告の内容に驚愕するので有った……。

 

いわく……二ホンの軍艦は目には見えない遥か向こうの船団の姿を捕らえ、鉄竜と鉄の軍艦を向かわせ船団に退却する様に(うなが)すも、これを拒絶され火矢による攻撃を受けた為、警告として1隻の敵船を沈めた……それに対しロウリア軍は250騎ものワイバーンの大群を向かわせ反撃に転じるも、二ホン軍は全てのワイバーンを返り討ちにし、返す刃でロウリア軍の大船団に攻勢を仕掛けたと言う……その数、8隻対4399隻!! しかし二ホン軍はこの絶望的とも言える数の差を物ともせず1400隻もの敵船を沈め、遂にロウリア軍を撤退させるに至らしめた! その後の報告で600名以上のロウリア兵を拘束し、その中にはロウリア軍の司令官も含まれていると言う……しかし何よりも信じられないのは、これだけの激戦を行いながら二ホンの損害は皆無だと言うのだ!!

 

(いったい、何をどうすればこんな事が出来るのだ……。)

 

ラジオから流れる、嘘にしても盛り過ぎな発表に村人達は戸惑う……だが、広場に止めて在る巨大な二ホンのトラクターの姿を見ると、この荒唐無稽過(こうとうむけいす)ぎる内容も本当なのではと思えて来た……。

 

(こんな怪物めいたモノを何台もこの村に持ってくるだけで無く、俺達に使い方を教えてくれる人達だ……有り得ないとは言えない。)

 

村人達はそう思いながらも、ラジオから流れる記者会見を聴き続ける……。

 

「……また、武装勢力の船団を撤退させた事で、ロデニウス大陸の北部海域の制海権は現在、海上自衛隊が握っており、この事から武装勢力側は北部からの侵攻を断念せざるを得なくなったと防衛省では見ており……。」

 

「えっ……ヒルカワさん! 侵攻を断念って、ロウリアはもうクワ・トイネには来ないのですね!!」

 

ラジオを聴いていたリドルは比留川の手を強く握りしめながら訊ねる、そんな彼女に対し比留川も「ええ……」と戸惑いながら答えると、リドルは花が咲いたかの様な笑顔を見せ喜び始める。

 

「なら、もう怯えなくても……誰も傷つかなくてもいいんだ! あはっ……!」

 

そう言いながらリドルは喜びの余り、くるくると回りながら踊り始める……そんなリドルを見て戸惑い気味の比留川に対し、ダイスが話しかけて来る。

 

「やれやれ……まだギムは占領されていると言うのに気の早い娘じゃ! じゃがヒルカワ殿、アンタらのおかげでこのクワ・トイネにも希望の光が見えてきた……感謝しとるよ!」

 

ダイスはそう言いながら比留川と共に笑顔で踊るリドルを見つめる……いつしか他の若い娘達も踊りに加わり、手を取り合いながら輪となって踊り続ける……。

 

後の歴史家達により『ロデニウス沖海戦』こそ、日本を第三文明圏の新たな盟主に成る切っ掛けと、滅亡の危機に瀕したクワ・トイネ、クイラ両国に希望を与えた歴史の転換点で有ると歴史書に記載されるので有った……。

 

続く




ついに自衛隊とロウリア王国軍との本格的な衝突が発生し、戦争は早くも大きな転換期を迎えました。
次回は、山内と田崎、そしてヘラとチチ―ナの異世界混成パーティがロウリア占領下のギムの街へ潜入を行う話がメインになります。
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