日本国召喚 国際協力機構 異世界を往く   作:アニキ イン ザ スペース

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第二十四話 潜入、ギムの街

中央歴1639年(西暦2015年) 5月1日 正午過ぎ クワ・トイネ公国 北の森 泉の拠点

 

ギムの街へと続く街道を抜け『北の森』へとたどり着いた4人は馬から降り、ひんやりとした空気が立ち込める鬱蒼(うっそう)とした森の中を馬の手綱を引きながら『泉の拠点』へと向かって行く……その様な中、山内はギムの街に潜入する前に気になっていた事を聞く為、隣を歩くヘラに話し掛ける。

 

「ヘラ、ギムの街に行く前に気になっていた事が有るんだが……。」

 

「何だいヤマウチ? アタシの知っている事ならいいんだけど!?」

 

「あぁ……俺はギムの街をこの目で見てきたが、敵対的な相手と接する国境の街なのに、後方のエジェイよりも防御がお粗末過ぎるのが気になってな……。」

 

ヘラは馬の手綱を引きつつ、その質問に答える。

 

「そうだね、アタシも詳しい訳じゃ無いけど、こんな話を聞いた事が有るよ……。」

 

ヘラの話ではギムの街は城塞都市エジェイに居住していた商人達が抜け出して造った街らしい……その昔エジェイの街は公王より西方の守護を任された当時の領主により、周辺の諸国が徒党を組んで侵攻した際の対策としてチョークポイントとなる場所に建設した城塞が起源で、街が造られた当時は西方諸国との交易拠点にもなっていたそうだ。

 

しかし、城壁に囲われた街は手狭(てぜま)な上に改築の度に税金を徴収(ちょうしゅう)される事に一部の商人達が反発し、遂には街を抜け出して国境の川沿いにキャンプを設営し独自に交易を始めたのがギムの街の始まりらしい……その後、規模を拡大したギムは交易の街として栄える事になるのだが、商人達の意見が街の治世に強く影響した為に西方諸国が初代ロウリア王に統一され、クワ・トイネに対して敵対的な態度を取る様になっても「今は敵対的でも、何れ態度を軟化(なんか)させる」と楽天的な推測を行い、侵攻が明らかになるまで、都市の防備を厳かにしていたとの事だ。

 

「……そう言う話を地下水路の探索を依頼していた商人が話していてね、その商人は敵対的なロウリア王が即位した事を警戒して街に城壁を建てる事を提案したけど相手にされなくて、そこで使われ無くなった地下水路を避難所として使える様にしたいと言っていたけど、まさか本当に使う羽目になるとはね……。」

 

「成る程、そう言う事か……。」

 

山内はそう呟くと「何処かの国でもあり得た話だ……。」と思いながら森の中を歩み続けた。

 

やがて森を抜けると周囲が開け、日の光を浴びて輝く泉が彼等の前に現れる……絶え間なく湧き水が溢れる清浄な泉と森の番人たる巨大なレントが大地に根を降ろす『泉の拠点』へと山内達は無事到着した。

 

 

「山内三佐、お疲れ様です……予定より早い到着ですね!」

 

偵察隊の隊長で在る、一ノ瀬 一尉が敬礼を行いながら山内達を出迎える……一ノ瀬は話に聞いた冒険者達が来たと言う事で彼女達に挨拶を行うが、何か様子がおかしい事に気が付く。

 

「貴方が『赤毛のヘラ』さんですね、お噂はかねがねお聞きしておりま……? あの……どうかしましたか!?」

 

ヘラは一ノ瀬の挨拶も耳に入らず、さっきから一点を見ながら動揺している……。

 

「ま・待ってくれ……いったいどうなっているんだ、どうしてこんな事が出来るんだ!!」

 

ヘラが見つめる先には森の番人たるレントの目の前に伐採された無数の材木が置かれており、その横で自衛隊員の一人がノコギリで木を切断している作業を行っている姿を見て、彼女は「こんな事、在り得ない……。」と震えながら呟いていた……。

 

「あ~! この材木なら『泉の見張り役』……レントに頼まれて伐採した倒木をここに置いているんです! 若木の成長を妨げている倒木を何とかして欲しいと言われまして……何でも彼らはこういう事では動けないらしいんですよ! で、切った倒木は好きに使って良いって言われましたので、シェルターを造る為にここに集めているんですよ!」

 

「えっ……レントに頼まれた!?」

 

一ノ瀬の言葉にヘラは素っ頓狂な声を出して驚く……この『北の森』で木を切り倒そうものなら、たちまちレントに捕まり殺されてしまう! しかし、この二ホンの兵士達に対しレントは動じないばかりか、彼らは『レントに頼まれて』木を伐採したと言っている……。

もしかしたらニホン人はハイエルフの様にレント達と言葉を交わせるのか……!?

 

ヘラは顔を引きつらせながら笑い始める……以前、二ホンを訪れたヤゴウから「二ホン人は基本大人しく善良だが、自分達の常識では計り知れない事を平然とやってのける」と言っていた事を彼女は思い出した……。

 

 

一ノ瀬の説明により、ようやく落ち着きを取り戻したヘラは田崎からコーヒーを受け取り、さっきまで取り乱していた事を恥じるかの様に深い溜息をつく……。

 

「スゲェなあ、あのエルフの人……写真で見るよりもべっぴんさんだ……。」

 

「ああ……隣のネコ耳の()も可愛いし、胸もマジデケェ!」

 

遠目から彼女達を見ていた特戦群の隊員達はその様に小声で話していると、田崎は釘を差すかの様に彼等に言い放つ。

 

「おいっ……小声で話している様だが、その距離だとエルフと獣人の彼女達には聞こえているぞ!!」

 

「うへぇ! マジかよ!?」

 

田崎の言葉に特戦群の隊員達が慌てて口を噤む姿を見て、ヘラとチチーナはクスリと笑みを浮かべた。

 

「さて……休んでいる所を悪いが、ギムの街に入る為の作戦を練らなきゃならねぇ! 一ノ瀬一尉、ギムの状況はどうなんだ!?」

 

山内の言葉に一ノ瀬は黒いケースから1枚の紙を取り出し地面に広げる……それが緻密に描かれた街の地図で有る事にヘラは目を見張った!

 

(これは、ギムの街の地図……建物の位置が1件づつ描かれているのか? 一体どうやって……!?)

 

「報告に有った街の西側の地下水路跡は我々の監視所からは見えませんが、事前の偵察で場所を特定出来ています……ココです!」

 

一ノ瀬が地図の地下水路の入口が有る箇所を指差すと、ヘラは頷いて答える……山内は「どうやら、場所は合っている様だと」思いながら話を切り出す。

 

「一ノ瀬 一尉……可能なら今夜にギムの街に行きたいが、街の警備はどうなっている?」

 

山内の言葉に一ノ瀬は手にしていたタブレット端末から画像データを読み出し、撮影されたロウリア兵の画像を見せながら答える。

 

「警備が厳しいのは前線となる街の東側だけで、西側の兵士は簒奪(さんだつ)した物資を本国へ運んで数が少ない為か、立哨(りっしょう)は行われておらず定期的な巡回だけです……それと昨日からロウリアに戦利品を持って行った部隊がギムに戻って来ているのが確認されていますので、行くなら早い方が良いかと思われます!」

 

それを聞いた山内は左手の腕時計をチラリと見た後に決断する。

 

「解った……ギムの街の地下水路跡への潜入は今夜2000時(フタマルマルマルじ)に決行する、潜入は俺と田崎 三曹、それと案内役のヘラとチチーナで行う! 一ノ瀬 一尉、入口迄の案内は出来るか!?」

 

「はいっ、案内は自分が行います……出来れば自分も潜入に参加したかったですが!」

 

一ノ瀬が笑いながらそう言うと、他の隊員達も「自分も行きたいで有ります!」と笑いながら声を上げる。

 

(ヤダもぅ……ヤマウチやタザキだけじゃ無く、ココに居るニホン人全員が、危険大好きの変態の集団なんだにゃ〜!!)

 

田崎に対して「俺と代われ!」と叫ぶ特戦群の隊員達をチチーナは呆れ顔で見ながらそう思った……。

 

その後、山内達は小休止と準備を挟み、一ノ瀬 一尉と彼の部下1名と共に夕闇が迫る森の中をギムの街へと向かって行った……。

 

 

中央歴1639年(西暦2015年) 5月1日 19時57分 ロウリア軍占領下のギムの街 西区の郊外

 

 

間もなく満月を迎える2つの月が輝く夜空の下、ギムの街の郊外へと到着した山内と田崎、そしてヘラとチチーナは、巡回を行うロウリア兵達の目から逃れるべく草むらへと身を隠していた……。

 

「バッドアスからフリッキーへ! 此処からはロウリア兵の様子が見えない……今、どうなっている!?」

 

山内は無線機で自らのコールサイン(バッドアス)を呼び、一ノ瀬のコールサイン(フリッキー)へと通信を行う……山内から500m程、離れた位置から部下と共に監視を行っていた一ノ瀬は双眼鏡を見ながら山内へと返信を行う。

 

「フリッキーよりバッドアスへ、地下水路跡入口の上にロウリア兵が5人、動きは無し……移動するまで待機されたし、どうぞ!」

 

「バッドアス了解!」

 

山内に待機を指示した一ノ瀬は引き続き周囲の監視を行う……彼の隣には狙撃手の部下がM24ライフルを構え何時でも射撃出来る様、待機していた。

 

やがて松明を手に持った5人のロウリア兵は移動を始め、街の中へと入って行った……。

 

「フリッキーからバッドアスへ……ロウリア兵が移動を開始した! 周囲に敵兵の姿無し、どうぞ!」

 

「バッドアス了解……これより地下水路跡入口へと移動する!」

 

通信を終えた山内は無線機をベルトに取り付け、3人に向かって頷くと月明かりを頼りに地下水路跡入口へと歩き出す……地下水路跡の入口付近は水が溜まっているが、靴底が濡れる程度の深さだった為、問題無く歩く事が出来た……。

そして地下水路跡の入口へと到着すると、錆びた鉄格子が水路への侵入を阻んでいたが、ヘラが左から3本目の格子に手を取り力を入れながら引き上げ始めた!

 

「ここの格子だけ回しながら引き上げると取れるんだ……ぐっ……錆びて前より固くなっている! 手伝って……!!」

 

ヘラの言葉に田崎が加勢に入ると格子は動き出し、外す事が出来た……格子を取り外すと、人1名が入れる程の隙間が出来た為、山内達は一人ずつ地下水路の中へと入って行く……。

 

「ここ迄はあっさりと行ったな……だが問題は此処からだ!」

 

カビ臭くひんやりとした空気が何処からか流れて来る地下水路跡の暗闇を見つめながら、山内達は地下水路の奥へと足を踏み入れた……。

 

続く




山内達は敵占領下のギムの街へと潜入を開始しました。
書くの遅いのは堪忍してや〜! って事で、次回は潜入に成功した山内達の話と、完成した臨時埠頭から「以外なモノ」が陸揚げされます。
本来ならもう少し続きを書くつもりでしたが、本編が一万字を超えた為、ここで区切らせて頂きます。
この物語は20話辺りで完結させる予定でしたが、更に分割化を進めていますので40話辺りまで行きそうです
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