日本国召喚 国際協力機構 異世界を往く   作:アニキ イン ザ スペース

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第二十六話 生き残った人々

山内とヘラが扉の中へ入ると、田崎とチチーナもそれに続き中へと入って行く……ヘラが魔導ランタンで周囲を照らすと無数の木箱と(たる)が整然と置かれているだけで人の姿は見当たらなかったが、山内と田崎は手にしたM4カービンを構え始める!

 

「出てきな! そこに隠れているのはわかっているんだよ!!」

 

ヘラが大声でそう叫ぶと、木箱の陰から武器を手にした無数の男達が姿を現す……そしてその中の1人、顎髭(あごひげ)を生やした中年の男がヘラに向かって話掛けて来た。

 

「お前達は何者だ! どうやって此処に……まさか、あのスライムを倒して来たと言うのか!?」

 

その言葉を聞いて、山内はポケットからスライムジェムを取り出し、彼等に見せ付ける。

 

「コイツはそのスライムから取り出したモノだが、相当の価値が有るらしいなぁ!」

 

山内が手にしているスライムジェムの輝きと大きさに男達は驚きの声を上げる!

 

「なっ……アレは確かにスライムジェム! しかもあの大きさ、まさか本当にあのスライムを倒したと言うのか!!」

 

「馬鹿なっ! 奴を倒そうとして8人の仲間が犠牲になったんだぞ!! 小娘を連れた男如きで倒せる筈が無い!!!」

 

スライムジェムを見て騒ぎ始めた男達を見て、ヘラは呆れた顔で言い返す。

 

「ほぉ……人族の小僧共がアタシを小娘扱いとは、いい度胸だね! んっ……その顔と涙ボクロを見て思い出したよ! アンタ、ミカールの息子だね!!」

 

ヘラは顎髭を生やした中年の男に向かってそう言うと、男は慌てた様子でヘラを見つめる……。

 

「どうして父の名を? あっ……まさか貴方は『赤毛のヘラ』!?」

 

男は子供の頃に父から依頼を受けてやって来たエルフの女性が昔と変わらない姿で目の前にいる事に驚くと共に、男達に対して武器を納める様に指示を出した。

 

「お前達、早く武器を降ろせ……この方は昔、父がお世話になった冒険者こと『赤毛のヘラ』様だ!」

 

男達は『二つ名』を持つ冒険者の名前を聞いて、驚きながら手にした武器を降ろし始める……それを見た山内は確認を取るべくヘラに耳打ちをする。

 

「ヘラ……どうやら知り合いの様だが、彼等がギムの街の生存者で間違い無いのか!」

 

「あぁ……彼は以前、話した地下水路の探索を依頼した商人の息子だよ! 顔が父親そっくりだからちょっと驚いたけど。」

 

ヘラがそう言うと、二人の会話を(いぶか)しげに見ていた顎髭の男が話掛けて来る。

 

「あのぅ……ヘラ様、その者達は一体?」

 

「これは失礼した、自分は日本国陸上自衛隊所属の山内と言う者です、貴方達の生存確認の為にエジェイから参りました!」

 

山内は挙手の敬礼をしながら顎髭の男に向かって自己紹介をすると、彼は驚きの声を上げる。

 

「ニホン国!? 聞いた事が有ります……最後に魔信で交信した時、オコシ団長が話していました! ニホン国の援軍が来れば必ず自分達を助けに行く事が出来ると、そうか……貴方達が……。」

 

顎髭の男はそう言うと、山内達を地下の居住区へと案内し始める……到着した居住区には約60人程の人族とドワーフ、そしてエルフや獣人達が身を寄せ合っていたが、女子供を含め皆が疲れた表情を浮かべていた……。

 

「あぁ……まさか貴方は『赤毛のヘラ』様ですか!?」

 

1人の老婆が女性に支えられ足を引きずりながらヘラの元へと駆け寄って来る……ヘラは老婆を見て「奥様も元気な様で……。」と声を掛け、顎髭の男は老婆を「母さん」と言って気に掛けている……その様子を見て山内は有る事を思い出す。

 

(んっ……足の悪い老婆を母さんと呼び、オコシ団長と魔信で連絡を取り合える?…………そうか、街の有力者って!?)

 

「ちょっといいか! アンタには娘が2人いて、名前はアメリアとカマラって言う名前じゃ無いのか!?」

 

突然、娘の名前を聞いた顎髭の男は慌てながら山内の方へと振り返る!

 

「それは私の娘の名前だが、どうしてアンタが!?」

 

「あの娘達はロウリアが街を攻めて来た時にはぐれてしまって、行方が分らなくなってしまったのです……私の足が悪いせいでこんな事に……!」

 

その言葉を聞き、確証を得た山内はスマートフォンを取り出して2人に話掛ける。

 

「娘さん2人は現在、エジェイで叔母の家に滞在しており無事です!」

 

スマートフォンにアメリアとカマラが写った画像を表示して見せると、彼等は食い入るように画面を見つめながら涙を流し始める……。

 

「ああっ……あの、娘達は本当に無事何ですねっ!?」

 

「2人の事はもう駄目だと思って諦めていたんです……。」

 

老婆を支えていた女性も画面を見て泣き始める、どうやらあの娘達の母親らしい……。

 

「ロウリア軍に追われている所をヤマウチ達が助けてくれたんだにゃ! 2人で20人のロウリア兵を倒して凄かったにゃん!!」

 

「なんと……本当ですか、それは何と言って御礼を言えば良いのか……。」

 

チチーナの言葉を聞いたアメリアとカマラの父親で在る顎髭の男は山内の手を握り深々と頭を下げる……2人の姉妹の無事と言う明るい話題に、地下水路の生存者達はギム占領以来、久しく忘れていた笑顔を取り戻した。

 

 

……その後、山内達は地下水路の生存者達と対談を行い、彼等の現状を知る事が出来た。

 

生存者達のリーダーで、アメリア姉妹の父親でも在る顎鬚の男の名はトビアスと言う名で、ギムの街の西区で大きな商店を経営しながら亡くなった父の遺産で有る地下水路跡の管理を引き継いでいた。

 

今ここに居る人々は彼の商店の従業員か取引先の同業者で、ギムの街がロウリア軍に襲撃された時、トビアスの案内でこの地下水路へと逃げてきたとの事だ。

 

これまで地下水路の出口から脱出しエジェイへ向かう事を試みたが、最初の調査でスライムに出くわした2名が命を落とし、次にスライムを討伐(とうばつ)すべく10名の若者達が地下の貯水槽跡地へと向かったが、更に巨大化したスライムにより6名が犠牲となってしまってからは地下水路からの脱出は諦め、地下に潜伏せざる得なくなった……。

 

そして何時か救援が来る日を信じながら、ロウリア軍の目から逃れつつ情報を収集し、エジェイの街に駐留する騎士団へと報告を行っていたが、ロウリア軍が魔力監視哨を建設した為に魔信が行えなくなり、遂に孤立無援の状態になってしまったと彼は話していた……。

 

又、スライムが退治された事で、今からでも地下水路を抜けエジェイの街へ行けないか意見を出す者もいるが、山内は直ぐにそれは止める様に伝える。

 

「ギムからエジェイまで歩いてまる2日掛かる上に、道中の集落は焦土戦術で破壊されて水の補給すら望めません……それにロウリアの部隊が街道の周囲を巡回している以上、ここに居た方が遥かに安全です!」

 

「………確かに、此処には老人や子供もいます、言われている通りの状況ならば、彼等を連れてエジェイへ向かうのは無理が有るでしょう……それに彼等を此処に置いて行く事も出来ない以上、水や食料が有る此処に居た方が賢明でしょう!」

 

山内の言葉にトビアスはそう答えながら深くため息をつく……。

 

「トビアスさん……今回、我々は皆さんの生存を確認する為にやって来ました……残念ながら今の我々では此処に居る皆さん全員を救い出す事は出来ません。」

 

山内はその様に現状を伝えながら、背負っていたバッグの口を開き中を物色し始める。

 

「……代わりにロウリア軍から検知されない『無線機』と言う我々の通信手段をお渡しします。」

 

山内はバッグの中からハンディタイプのトランシーバーと大陸共通言語の文字で書かれた手書きの説明書を取り出してトビアスに手渡す……彼は渡された無線機が、これまで使っていた『魔信送受信機』と全く異なる形をしている事に戸惑いを感じながらも感謝の言葉を伝えた……。

 

「有り難う御座います……しかし、これはどうやって使えば宜しいのでしょうか!?」

 

「使い方は説明書に書かれていますが、実際に使ってみましょう……何処か北側を見渡せる場所は有るでしょうか?」

 

「それなら、これまで使っていた『魔信送受信機』が置いて有る隠し部屋が良いと思います! 建物自体はロウリア軍に接収され厩舎として使われていますが、地下水路跡と繋がっている隠し通路が有りますので、ロウリア兵に見つかる事も有りません!」

 

その言葉を聞いた山内は無線機を持ってトビアスと共に隠し部屋へ向かうも途中、通路が非常に狭くなっている箇所が有り、大柄な体格の彼では通り抜ける事が困難だった為、代わりに田崎を向かわせる事にした……。

 

 

「うはっ……確かにコレは山内 三佐では無理が有る!」

 

田崎は頭1つが入る程の幅しか無い狭い階段を身体を横にしながら上がっていく……階段を上り終えると、古い鉱石ラジオを彷彿(ほうふつ)させる『魔信送受信機』が置かれた畳1畳程の広さの小部屋へと辿り着く……案内をしていたトビアスが部屋の端に有る窓枠をずらしながら田崎に呼び掛ける……。

 

「タザキ殿、此方が北側に面した窓になります……。」

 

トビアスの案内に田崎が窓に近づき覗き込むと、月明かりに照らされた街の建物の向こうに『北の森』が見て取れ、窓の下では飲酒をしていると思われるロウリア兵達の笑い声が聞こえる……。

 

「ここなら声を聞かれる心配は無さそうですね、まずは通話出来るか試験を行います……では、この無線機を使う時はこの場所を押した後に、ランプが緑にしたのを確認して…………。」

 

田崎はトビアスと『魔信送受信機』を扱っていたと思われる術士の男にトランシーバー型の無線機の扱い方を教えながら、通話試験を開始する。

 

「トムキャットより各局、トムキャットより各局へ! これよりギム水路跡拠点での通話試験を開始する、本日は月夜なり!……受信した局は応答されたし、どうぞ!!」

 

「…………フリッキーよりトムキャットへ……受信を確認した……感度良好、 どうぞ!」

 

「……タフボーイよりトムキャットへ! こちらも受信を確認、どうぞ!」

 

「………コンボよりトムキャットへ、受信を確認した! 今夜は満月なり、どうぞ!!」

 

「……トムキャットより各局へ、3局全て受信を確認! 交信終わり。」

 

待機中の一ノ瀬 一尉と丘の監視哨、そして『泉の拠点』の駐留地の3箇所全てで、無線が送受信する事を確認した田崎は笑顔を見せながらトビアスに無線機を手渡す。

 

「トビアスさん、ここからの通信は可能なのが確認出来ました、これで我々と交信が出来ます!」

 

「おおおっ!!」

 

田崎の言葉にトビアスは術士と共に喜びの声を上げながら無線機を受け取る……その後、2人は田崎より無線機の使い方を学び、自ら『北の森』の特戦群と交信を行う事で、ギムの街の生存者達は新たなる通信手段を確保するので有った。

 

 

こうして任務を成功させた山内はトビアスに予備の無線機とバッテリーを渡し、深夜の内にギムの街を出る事を彼に伝える……すると出発を見送るべく生存者達全員が山内達の元へと集まって来た……。

 

「……ヤマウチ殿、貴方のお陰で失っていた希望を取り戻す事が出来ました! 娘の事と言い感謝の言葉が絶えません……これから我々は、連絡が取れ無くなった他の生存者達を見つけ出し、解放の日までロウリア兵に見つからぬ様、此処で耐え忍んで行きます。」

 

「トビアスさん、自分も危険を冒して此処に来た甲斐が有りました……我々は必ず助けに来ます、それまで無事にいて下さい!」

 

山内とトビアスは手を固く握り握手を行なう……その時、山内はやり忘れた事を思い出し、笑いながら彼に話しだす。

 

「そうだ……トビアスさん、エジェイに居る娘さん達にメッセージを送りましょう!」

 

山内はそう言いながらスマートフォンを取り出すと、トビアスと生存者達の撮影を始め、トビアス達は彼の指示に従いながらスマートフォンの画像に収まった。

そして撮影を終えた彼等は自分達の姿が四角い薄い板に映って入る事に驚きながらも、そこに映った表情が笑顔で有る事に皆で笑い合っていた……。

 

山内達は貯水槽の扉を抜け、地下水路の出口へと戻るべく階段を降りて行く……途中、田崎とチチーナは振り返って人々に別れの挨拶を行なう。

 

「それでは皆さん、次に会う日を楽しみにしてます!」

 

「元気でいてにゃ〜っ!」

 

見送りの人々は彼らの無事を祈りながら手を振り続ける……階段を降りた4人は魔導ランタンの明かりを元に地下水路の暗闇の中へと向かって行き、やがて明かりが見え無くなると共にその姿も見え無くなった……。

 

山内達を見届けたトビアスは貯水槽の扉を閉め、術士に施錠の封印を行なう様命じながらこう呟く……。

 

「行ってしまわれたか……今は彼らの無事を『緑の神』に祈りましょう……。」

 

 

山内 三佐達が決行した『ギム潜入作戦』は「情報部別班」と「特戦群」の隊員が参加した関係上、日本とクワ・トイネ公国との秘密協定で「非公開」となり、長きに渡り人々に知られる事が無かった。

そして後世の情報公開による文書開示後も、参加した人物の所属とその名前は全て黒塗りとなっていた……。

 

続く




遂に山内達はギムの生存者達の接触を果たし、新たな通信手段を確保しました。
次回、山内達が無事に『北の森』拠点へと戻って来る中、森では奇妙な異変が起きます……。
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