日本国召喚 国際協力機構 異世界を往く 作:アニキ イン ザ スペース
ー 神話の時代 太陽神の使者の帰還から3ヶ月後 ロデニウス大陸 マイハーク海岸
物語は一万二千年の時を
獣人達の手によって巨石を投じて造られた沖まで続く埠頭、海岸の高台に建てられた金属素材を作るドワーフの工房と秘術と言われている『複製の術』を行うエルフの
しかし、この場所も『太陽神の使者』の帰還後、人々は故郷に戻るべく1人また1人とこの場所を去って行き、遂には人の居ない無人の地と化してしまった。
そんな高台の拠点から少し離れた場所には不思議かつ巨大なリング状の物体が立っていた……。
『
そのリングの向こうには対となる転送門が有るクイラの地……日本軍により建てられた
そんな転送門の周囲をエルフの魔導師達が囲むかの様に立ち並ぶ……。
「これより
老エルフの言葉を合図に魔導師達は一斉に呪文を唱え始めた。
「ო, ქარიშხლის ღმერთო, გვიჩვენე შენი ძალა და დაანარყევე ცა მგრგვინავი ქუხილით ქვეყნის კიდეებამდე!」
魔導師全員が呪文を唱え両手を高く上げるとリングの真上に光球が現れ、
周囲が
「ふむ……これで『転送門」は二度と使えなくなった……。」
「……神官長、ここまでやる必要は有ったのでしょうか!?」
若い魔術師が神官長ことイルカンレシスに尋ねると彼は破壊された『転送門』を見ながらこう答える。
「まだ魔王が健在で在る以上『転送門』は破壊する必要が有る……魔王は
『転送門』はその作成にエルフの魔導師30人分と言う
しかしリングが魔力で具現化されている関係上、探知魔法を使える魔術師なら遠く離れた場所でもリングの解析が可能で、解析から複製したリングを作成し、そこに膨大な魔力を注ぎ込むとリングの乗っ取りが可能となる……最悪、魔王がリングを解析し『転送門』を乗っ取る事態となれば、魔王軍はグラメウス大陸から直接ロデニウス大陸への侵攻が可能となる。
この事態を防ぐ方法はただ一つ、どちらかのリングを物理的に破壊して使用不能にする事で有る……しかし魔力を具現化したリングは非常に固く魔導師7人の電撃魔法でようやく破壊する事が出来た。
「これで
立ち合い者の一人で在るドワーフが見えなくなった油井施設が使われていた時の事を思い出しながら一人呟く。
「我らの手に余るモノで有る以上、やむ得ぬが手放すしかなかろう、それにまだ一つ……
神官長イルカンレシスは立ち合いのドワーフにそう言いながらため息を付くので有った……。
それから三ヶ月後……神森の北部、
有る物を
零式艦上戦闘機二十一型……太平洋戦争序盤、圧倒的な力で連合軍を恐怖に
2年前の神森の戦いで日本海軍航空隊は魔王軍に大打撃を与えるも、一機の零戦が機関の故障で不時着を
不時着した零戦は後日、回収される予定で有ったが、日本軍は魔王軍の撃退と追撃に
「さて……始めるとするか。」
神官長イルカンレシスは飴色の機体を見つめながらこれまでの
その時の主な議題は「世界の扉」に配属される兵と補給の問題、魔王軍残党への対処等が話し合われたが、その議題の中で「神森北部で放置された空飛ぶ神の船」をどの様にするかが話し合われた……。
2年前の戦い以来、雨露をしのぐテントが建てられた後、ずっと放置されていた『空飛ぶ神の船』は、塗装が剥げた箇所から錆びない様にドワーフ達の手により油が塗られ
会議で話し合われた結果、いつか『太陽神の使者』が再来した時『空飛ぶ神の船』を返還出来る様に『
彼曰く、これまで異世界から来た『太陽神の使者』達に治療魔法を
その後、補給所となっていた海岸の洞窟倉庫の奥で片付けの手伝いを行なっていたエルフの魔術師が、その中で有るモノを見つけた。
それは『太陽神の使者』達が「タイヤ」と呼んでいた黒い車輪で有った。
弾力性の有る不思議な素材で出来たそれは『空飛ぶ神の船』や『鉄の荷車』の車輪として取り付けられていた物で、修理の為に「複製魔法」を行うエルフの館へと持ち込まれたが、素材となる「ゴム」と呼ばれる材料が無かった為、洞窟倉庫に置かれたままとなっていたらしい……試しに1本の「タイヤ」に『時間遅延式魔法』を掛けてみた所、何も問題が無い事が明らかになった。
こうして異世界由来の物質に『時間遅延式魔法』を掛けても問題無い事が明らかになり、遂に『空飛ぶ神の船』への時間遅延化がエルフの魔導師達により開始される。
「これより
神官長イルカンレシスの言葉により零戦を囲う様に並んだエルフの魔導師達は精神を集中し、ゆっくりと呪文を唱え始めた。
「ო, დროის ღმერთო, ო, წარსულის, აწმყოსა და მომავლის მმართველი სამი ქალღმერთო, მიანიჭეთ მარადიული სიმშვიდე ზეციდან ჩამოსულ ხომალდს, რომელიც სხვა სამყაროდან მოვიდა!」
呪文を唱え終えると、零戦の機体が青白くぼんやりと輝き始め少しづつその光が消えて行く……やがて何事も無かったかの様に元の状態へと戻った。
「悠久の儀は成功した……!」
イルカンレシスは額に汗を流しながら魔導師達に告げる……一見、何も変わっていない様に見えるが、不時着から2年が経過しても時折
「皆の者、もうひと踏ん張りじゃ……最後に
疲れた顔を見せている者もいる魔導師達にイルカンレシスは最後の儀式を行う事を告げる、『時間遅延式魔法』が掛けられた零戦の周りをエルフの少年少女達が植物の種を蒔き始め、魔導師達は再び呪文を唱え始めた……。
「ო, ნაყოფიერების ქალღმერთო, ელფების ღმერთო, გთხოვთ, გადასცეთ ეს თქვენს მეგობარს, ღრმად მწვანე ღმერთს, ხეების სულს: ჩვენი კეთილისმოსურნისგან ბოძებული საგანძურის დასაცავად, ამ მიწას ახალ მწვანე სავანედ ვაქცევთ.」
すると蒔かれた種から次々と芽が生え始め、零戦をドーム状に大きく囲いながら凄い速度で成長していく……。
やがて周囲を完全に囲うと自ら白く光り始め、零戦を包む光のドームが完成した。
「皆、良くやってくれた……これよりこの地は聖域となり、千年を掛けて守護の木々が育ち新たな森となろう……。」
こうして『空飛ぶ神の船』を守る聖域が完成し、神森のエルフ達は長い年月の間、この地を守り続けた。
そして『時間遅延式魔法』を掛けられた「タイヤ」はイルカンレシスの指示で洞窟倉庫に戻された後、その入口は人が入って来ない様に岩で塞がれた……。
何故、イルカンレシスがその様な事をしたのかは不明だが、それから一万二千年後……岩の崩落により古代の遺跡の入口が発見され、ドワーフのダイス、獣人のザンタス、エルフのノーグ達を始めとする冒険者達の調査により遺跡の奥から奇妙な遺物を発見し持ち帰ったので有った。
続く
用語
クイラの油井施設
神話の時代、異世界方面軍の工兵部隊により設営された「クイラの黒い沼」で原油の採掘と精製を行う施設で「転送門」を通じて設置されたパイプを使い、埠頭に停泊している油槽艦に直接、燃料となる重油の給油を行っていた。
(航空機や戦車の燃料となるガソリンや軽油は油槽車やドラム缶を使用して輸送していた。)
転送門
「時間遅延式魔法」「複製の術」と共に並ぶ失われた古代エルフの魔法の一つで、物語の時代には一部の魔術師を除き、その存在すら忘れられている。
「転送門」と呼ばれている膨大な魔素を魔力で具現化したリング状の物体の間を距離に関係なく一瞬で移動する事が可能となる。
事前に決め合った魔法陣の形状を鍵として移動したい場所に「転送門」を設置する事で使用可能となるが、エルフの魔導師30人分の魔力と触媒となる大量の魔石が必要となる。
神話の時代、マイハークに設営された補給処と原油が取れるクイラの荒野との間に「転送門」が設置され、現地で精製した重油やガソリンを異世界方面軍へ輸送する為に使われていた。
「転送門」自体が魔力の固まりの為、存在と位置が判れば探知魔法の応用で遠距離からでも構造の解析が容易な為、簡単に妨害や乗っ取りが行える問題が有り、作中でもイルカンレシスが魔王軍に乗っ取られるのを恐れて「転送門」を破壊している。
ただし物質としては非常に強固な為、壊すのは容易では無く、一万二千年以上経過した物語の時代でも風化する事無く残っている。