日本国召喚 国際協力機構 異世界を往く クワ・トイネ編   作:アニキ イン ザ スペース

3 / 22
第二話 マイハーク上陸

中央歴1639年(西暦2015年) 3月2日 大東洋沖 海上自衛隊 輸送艦 くにさき

 

東京湾を抜け前世界では太平洋だった異世界の海を輸送艦「くにさき」はロデニウス大陸へ向け航行を開始する。

「くにさき」の操舵室の艦長席に腰を掛ける艦長の笹川(ささがわ)二等海佐と、その横で立っている先任伍長である蒲生(がもう)海曹長が見つめる先には、先行して航行する2隻の護衛艦……「はたかぜ」と「いかづち」の姿が有った。

 

「艦長、護衛艦2隻がついて来るとは随分と物々しいですね……。」

 

「万が一の為だよ! ほら、例の竹島に現れた怪物……クラーケンとかいう奴が出てこないとも限らないからな!」

 

「ええ……話だと大きさが100m近い怪物だとか? そんな化け物がいるなんて一体、何なんでしょうね? この世界は!?」

 

さる2月19日に元日本海だった海域にて竹島を不法占拠している韓国の警察隊に、食料を補給すべく航行していた韓国籍の公船が、この世界由来の巨大生物……全長100m近い海魔クラーケンに襲われ乗員7名が行方不明になる事件が起きており、この事を受けて政府は未知の怪物への警戒の為、クワ・トイネ公国へ向かう「くにさき」に対し2隻の護衛艦「はたかぜ」「いかづち」を同行させていた。

 

「しかも今度行く場所は、翼竜みたいな生き物が人を乗せて飛んでいるとか……全く、とんでもない所に来てしまったな。」

 

「艦長、自分はちょっと楽しく思っていますよ……正直、異世界の土地に行ける陸の連中が(うらや)ましいと思っています!」

 

蒲生海曹長は好奇心旺盛(こうきしんおうせい)な子供の様に笑みを浮かべると笹川艦長は呆れ顔で答える。

 

「まったく先任らしいな……今回の上陸は難しいと思うが、先に向こうに行って来た「いずも」の艦長の話では、現地は地球では見た事のない不思議な地形だとか……それも明日の朝にはマイハーク港に到着するからどんな所かは着いてからのお楽しみだな!」

 

艦長と先任伍長がその様な話しを続けている内に日は西へと傾き始め、青かった空と海を宵闇(よいやみ)朱色(しゅいろ)に染め上げた後、二つの月と見知らぬ星々が輝く夜が訪れる……「くにさき」と2隻の護衛艦は(わず)かな海図情報(かいずじょうほう)慣性航行装置(かんせいこうこうそうち)のみを頼りに夜の異世界の海を一路、南西へと向かっていった。

 

 

中央歴1639年(西暦2015年) 3月3日  クワ・トイネ公国 マイハーク港沖

 

翌日早朝……2隻の護衛艦と別れて海面にまだ朝靄(あさもや)が残るマイハークの湾口を抜け港の沖合いに到着した「くにさき」は停船する為、海に(いかり)を降ろした。

 

「くにさき」の後部甲板では田中大使を始め外務省職員を乗せて公都クワ・トイネへと向かう海上自衛隊のCH-101が飛行の準備を行っており、ヘリコプターの発艦を待っている外務省職員と手の空いた隊員達は甲板上より初めて見る異世界の陸地を見て驚きの声を上げていた。

 

「これは……訓練航海で世界中の港は色々見てきたけど、こんな地形の場所は見た事がないぞ!」

 

「とても巨大な大木がいくつも連なってそのまま岩になったような……まさしく異世界の光景だ!!」

 

甲板からマイハークの港を囲う奇妙な岩山を見ている自衛隊員と外務省職員に混ざって、比留川も異世界の光景に目を見張った。

 

「凄く大きな大木がそのまま化石になった様な……その自然の地形が防波堤となって天然の良港となっているのか……ん? あれは!?」

 

比留川は岩がアーチ状になっている港の入口付近に日章旗を掲げた2隻のクレーン付き貨物船と大量の大袋を乗せた自走式の(はしけ)の姿を見つけた。

 

「比留川さん、クワ・トイネとの交易は小規模ですが、既に始まっているんですよ!」

 

手荷物を持ちながらヘリコプターの発艦を待っていた田中大使がそう答える。

 

「交易が行われているって……確かクワ・トイネとはまだ為替レートが決まっていないとニュースで聞きましたが、どうやって!?」

 

「物々交換ですよ……今、あそこに見えている貨物船に積み込まれている袋は小麦なんですが、聞いた話では小麦1トンでコピー用紙一箱と交換している様です。」

 

「小麦1トンでコピー用紙ひと箱って……そう言えばコピー用紙の一箱っていくらでしたっけ!?」

 

「えっと……たしか2000円くらい? 高級なものでも5000円程だったと……。」

 

田中大使の答えに比留川は考え始める……農業に関わっている手前、地球に居た時の穀物の相場を大まかに把握していた彼は、去年の小麦の相場価格を思い出す。

 

(去年、2014年の小麦相場の平均は1トン=約3万円程だった筈、それがコピー用紙一箱とは……そうか! 中世レベルの技術しかないこの世界では紙は高級品なんだ!!)

 

「当面は割の合う取引が出来そうですが、如何(いかん)せんマイハーク港の水深が浅いので日本の貨物船が入港できず、今の様なやり方でやっているとの事です……それにマイハークの方も港への大量の穀物の輸送で大変な事になっているとか……。」

 

そう話し合っている比留川と田中大使が「くにさき」甲板でマイハーク港を見下ろしていた頃、当のマイハークの街はかつてないほどの(にぎ)わい……と言うより騒擾寸前(そうじょうすんぜん)の大騒ぎの()只中(ただなか)であった。

 

 

同時刻  クワ・トイネ公国 マイハークの街 中央広場

 

日本国との国交樹立後、それまでクワ・トイネでは足代が価格と言われていた小麦を始めとした穀物が日本との交易が始まると大袋で小銀貨1枚の価格で取引される様になり、話を聞いた付近の農夫達が我先にと小麦の入った大袋を抱えてマイハークへと殺到した……また『鉄で出来た巨大な異国の船』の噂を聞きつけ、一目見ようと多くの人々が港に詰めかけた為、マイハークの街はひと月前の白い鉄竜(P-3C)飛来事件以来の騒ぎとなっており、街の防衛騎士団の団長を務めるイーネとその部下達は、今日も街へと押し寄せる大量の穀物を積んだ馬車の列と野次馬達の対応に追われていた……。

 

「誰かそいつを捕まえてくれ~!」

 

穀物の入った大袋を背負っていた陸鳥が突如荷物を放り出し、朝市が開催されている中央広場へと逃げ込んで来た。

 

陳列している品物を踏まれまいと人々が捕まえようとするも、威嚇(いかく)の声を上げる陸鳥を前にたじろいでいると横から忍び足で近づいて来た小柄な兵士が素早い動作で陸鳥の左足を捉え持ち上げた。

 

「コラッ! おとなしくしろ!! よ~し、いい子だ!!」

 

兵士に片足を持ち上げられ動けなくなった陸鳥は直ぐに大人しくなり、(くつわ)と荷を付け直された後、バツが悪そうに何度も頭を下げている馬丁(ばちょう)の元へ返された。

 

「全く、陸鳥にあんなに荷物を担がせては、嫌がるに決まっているだろうに……。」

 

小柄な兵士は大通りへと戻って行く馬丁と陸鳥を見ながら一人愚痴(ぐち)をこぼしていると、後ろから鎧姿の黒髪の若い女性が彼に声を掛けて来た。

 

「サラエ、ご苦労だった……さすが陸鳥騎兵だけあって陸鳥の扱いに慣れているな!」

 

「これは、イーネ団長!!」

 

急な騒ぎに詰所(つめしょ)から駆け付けて来たマイハーク防衛騎士団の団長であるイーネは彼に(ねぎら)いの言葉をかける。

若くしてマイハークの街の防衛と治安を一任している彼女は連日の激務の疲れを感じさせない(りん)とした(たたず)まいで、中央広場で開かれ活気づいている朝市の会場を見渡す。

 

「今日もまた一日騒がしくなりそうだな……ん! 今度は通りが騒がしい様だが!?」

 

「あぁ……なんか御者同士(ぎょしゃどうし)が言い争いになっている様ですね、たぶん馬車が割り込んで来た事で口論になっているかと……。」

 

イーネとサラエが大通り方面を見ると、獣人族の御者同士が荷馬車から降りて口論となっている姿が見えた……イーネはため息をつきながらサラエに指示を出す。

 

「サラエ、スマンが喧嘩になる前に行って来てくれないか!」

 

「分かりました、行ってきます!!」

 

サラエが部下を連れて早足で大通りへ向かう姿をイーネが見送ると、彼女の首に下げていた小型魔信受話器から部下の声が聞こえ始めた。

 

「イーネ団長! 港行きの馬車の渋滞は収まるどころか、街にやって来る馬車の数が増える一方です……どうします!!」

 

「分かった、馬車の通行規制を行おう! 街に入る馬車は中央門のみとして、港への大通りを一方通行として港行きの馬車だけ通せ! 荷下ろしが終わった馬車は日の入り横丁の

通りへと誘導して西門を馬車の専用出口にして早く街から出すように……。」

 

イーネは手に持っていた街の地図を広げながらテキパキと魔信で部下に指示を与える……だが二ホンとの交易が始まってから穀物を積んだ馬車の数が日増しに増えている事にただならぬ不安を感じていると、再び彼女の小型魔信受話器から別の部下の声が聞こえ始める。

 

「イーネ団長! 埠頭で鉄船を見に来た見学者が海に転落しました!!」

 

「またか……早く船を出して助けてやれ!」

 

イーネは頭を抱えながら魔信に応答する、昨日も海に落ちた見学者の数が多すぎて、救助に来た船が救助者の重さで転覆しそうになった事を思い出す……。

 

「イーネ団長! この子、迷子になったと言ってるニャー!!」

 

「はぁ……ミーリ、すまないが君が対応してくれないか!」

 

部下である獣人族のミーリが泣き止まない迷子の男の子を連れて来る姿を見て、イーネは再度ため息をつく……そうこうしている内に大通りの方が騒がしくなっている事に気が付く。

 

「イーネ団長! 大通りの口論がケンカになりましたー!!」

 

大通りの方を見ると御者同士の殴り合いが周りを巻き込む大喧嘩となっており、乱闘に巻き込まれ顔にアザが出来たサラエが大柄な獣人族の御者に飛び掛かる姿が見えた。

 

「まったく……サラエは何をやっている!」

 

イーネはその光景を呆れ顔で見ていると、彼女の小型魔信受話器から次々と部下達の通信が入って来る。

 

「イーネ団長!! 西門の出口で馬車が脱輪して立ち往生しています~!!!」

 

「イーネ団長!!! 港に全裸の不審者がっ!!!」

 

「イーネ団長~!!!!」

 

「………………」

 

(あああああぁぁぁぁっっ!!! まったくなんなんだー!! これでは息を付く暇すら無いぞ!!!!!)

 

イーネは心の中で悲鳴を上げる! しかし、多忙なるマイハーク防衛騎士団団長の一日はまだ始まったばかりである……。

 

 

同時刻  マイハーク港沖 輸送艦「くにさき」の甲板

 

「おい……アレを見ろ!!」

 

「すげえ! 話は本当だったんだ……竜が人を乗せて空を飛んでいる!!」

 

マイハーク沖に停泊している「くにさき」の甲板に出ていた隊員達が騒ぎ始め、隊員の一人が西の空を指さすと、人を乗せた2騎の翼竜……ワイバーンの飛ぶ姿がそこに有った。

ゆっくりと羽ばたきながらこちらに真っ直ぐと飛んできた2騎のワイバーンは「くにさき」の上空で大きく旋回し始める。

 

「まったく、今日一日で色々と驚く事ばかりだけど……これは!!」

 

上空を旋回しているワイバーンの姿に驚いてばかりの比留川に大きなバッグを抱えた田中大使が声を掛けて来た、後ろではローターを回転させ発艦準備ができたCH-101に外務省の職員が乗り込む姿が見える。

 

「迎えが来たようです……これから外務省の職員は大使館開設の為、公都クワ・トイネへと向かいます! 比留川さん、後はよろしくお願いしますよ!!」

 

「あっ……はい! 田中大使、お気を付けて!!」

 

田中大使と外務省の職員が乗り込んだCH-101は耳を塞がんばかりの大きな音と突風を「くにさき」の甲板にまき散らしながら発艦を始める、空高く舞い上がった機体はワイバーンに先導され、比留川や自衛隊員達が見送る中、西の空へと飛び立っていった……。

 

 

やはり同時刻  クワ・トイネ公国 マイハークの街 大通り

 

そのころマイハークの街の大通りでは、馬車同士の割り込みが元の口論が大喧嘩へと発展しており、大柄な獣人族の御者同士が仲裁に来た騎士団を巻き込んでの乱闘が続いていた。

 

「テメェ! 衛兵だからって容赦(ようしゃ)しねーぞ!!」

 

「うるへー! テメェなんかに負けたら陸鳥騎兵が務まるかってんだっ!! この唐変木(とうへんぼく)めっ!!!」

 

「なんだとっ!! チビのクセにっ!!!」

 

獣人族の御者と陸鳥騎兵のサラエは互いの顔がたんこぶとアザだらけになりながらも取っ組み合いを続けていると、何処からか奇妙な音が近づいている事に気付いた。

 

「ん……何の音だ!?」

 

「なんだ! アリャいったい!?」

 

バタバタと言う聞きなれない大きな音が喧嘩を煽る野次馬達の声をかき消し、それが頭上からする事に気付き二人が空を見上げると、2騎のワイバーンに先導されて飛行する……巨大な昆虫の様に見えるが明らかに生物では無い何かが翼を回転させながら空を飛ぶ姿が有った。

 

サラエと獣人族の御者は互いに掴んでいた手を放しポカンと口を開けたまま空を飛ぶ何かを見続けていた……。

 

「ねぇ! 見てアレを!!」

 

「何てすげぇ音だ!! また街に化け物が飛んできたぞっ!!!」

 

突如、マイハークの街の上空に現れ、凄まじい音と共に飛翔するCH-101を見て街は騒然となる。

 

「なんなの、あのトンボみたいなモノは……アレも二ホン国の鉄竜だと言うか……!?」

 

街の人々は異様な音に驚きながら耳を塞ぎ空を見上げる……イーネも小型魔信受話器からの応答を求める声を聞き忘れる程に茫然(ぼうぜん)となる中、CH-101は街中に轟音(ごうおん)(ひび)かせながら2騎のワイバーンと共に公都クワ・トイネへと飛び去って行った。

 

 

同時刻 クワ・トイネ公国 マイハーク湾の海岸

 

「見ろ! 鉄船から鉄竜が飛んだぞ!!」

 

「おおーっ!!」

 

マイハークの街から少し離れた東の海岸の丘の上で隊列を組みながらマイハーク湾の沖に停泊している「くにさき」を眺めていたクワ・トイネの兵士達からヘリコプターが飛び立つ姿を見てどよめきが上がる。

 

兵士達と共にヘリコプターが飛び立つ姿を見ていた貴族の衣装を着たエルフの男性……クワ・トイネ公国の評議員(ひょうぎいん)であるレーキ・ゾラ・ノーグは彼の横にいたジーパンとジャケット姿の男に話しかける。

 

「マキタ殿、アレが二ホンの鉄竜なのか!? 話に聞いていたのと少し違うようだが……。」

 

「ノーグさん、あれはワイバーンの様な生き物では無く、ヘリコプターと言う乗り物です……以前、飛来した機体とは別の物です!」

 

レーキの質問に対しジャケット姿の男……国交樹立後、農作物の調査の為にクワ・トイネへ先行してやって来たJICAの技術協力専門家の農学者である牧田(まきた) 祥吾(しょうご)がそう答える。

 

「ヘリコプター? 乗り物!? あんなワイバーンより大きなものが、どんな魔導を使って飛んでいると言うのだ!?」

 

「えっと……あれは、魔法では無く揚力……つまり、蝶や鳥が空を飛ぶのと同じ方法で空を飛んでいるのです!」

 

「確かに蝶や鳥はワイバーンと違って飛んでいても魔力を感じる事は無いが……しかし、あんな大きなものが魔法を使わずにどうやって空を飛ぶのか……。」

 

レーキはヘリコプターと言うモノが自分の理解を超えている方法で空を飛んでいる事に驚きと関心を示していると、今度は鉄船から人を乗せた黒色の小さな船が驚くべきスピードで砂浜へ向かって来るのが見えた、そして黒色の小さな船……マキタがゴムボートと呼んでいた船が砂浜に勢い良く乗り上げると乗っていた4人の緑の服を着た男達が船から降りて海岸の芝生地まで歩いて行き、何やら地面を調べながら小型魔信受話器の様な物で何処かと連絡を取り合っている姿が見えた。

 

「今度は()(かい)も無い船があんな早く海の上を移動するとは……しかし、船から降りたあの緑の服の者達はいったい何をやっているのか!?」

 

「船が大きすぎて港に入港出来ない為、荷物を海岸に降ろすと聞いています……彼らはその為の準備を行っている様です。」

 

「海岸に……荷物とな!? 二ホンの代表者との会合はこの海岸で行なうと伺ったが、荷物もココに降ろすと言うのか!?」

 

「はい……あっ、どうやら始まる様です!」

 

マキタがその様に話すと、鉄船の後部からさっきの黒色の小さな船より遥かに大きな灰色の奇妙な船とは思えない物が2隻現れ、大きな水しぶきを立ち上げながら陸地へと向かい始めた。

 

その奇妙な船は先ほどの鉄竜とは比較にならない程の轟音を出しながら、その大きさからは想像できない速度で海の上をまるで滑るかの様に海岸に向かって来たかと思えば砂浜へと船体を乗り上げ、そのまま海の上と同じ様に砂の上を滑りながら移動を始めた事にレーキや兵士達を驚かせる。

 

「これは……奇妙な船かと思っていたら、まさか宙に浮いているのか!!」

 

砂浜に上がった奇妙な船……海上自衛隊のLCACこと2隻のエアクッション艇1号型は海岸の芝生地に乗り上げ停止すると浮遊ファンの推力を弱めて姿勢を下げ艦首側斜路(かんしゅがわしゃろ)の扉を降ろす、そして搭載した車両が降りて来るのを見てレーキはさらに驚かされる。

 

「あれがヤゴウの言っていた自動車と言うものか……あんな大きなものが本当に馬を使わずに動いているとは、これはすごい!!」

 

2隻のLCACから多くの車両が陸揚げされる中、3人の男達がレーキ達が居る丘の方へと歩いてくるのが見え、レーキの横にいた牧田が彼らに知らせるかの様に大きく手を振り始めた。

 

「牧田!!」

 

比留川が軽く息を切らせながら丘を登り終えると待っていた牧田に声を掛ける。

 

「比留川、それに自衛隊の皆さんもようやく到着かぁ!! 紹介するよ……こちらのお方が今回、耕作地の提供と案内をしてくれるナエノデンエン領主のノーグさんだ!」

 

「ご紹介に与かりましたレーキ・ゾラ・ノーグと申します……二ホンの皆様、ようこそクワ・トイネへ!」

 

牧田が紹介するとノーグは3人に対し恭しく礼をする。

 

「日本から来ました、国際協力機構現地技術協力プロジェクトの団長を務めます、比留川 克義と申します。」

 

「国際協力機構への民生支援依頼により現地での施設建設を担当致します、日本国陸上自衛隊第1施設団所属、第4施設群隊長の諸星(もろぼし) 淳一(じゅんいち)一等陸佐で在ります!」

 

「同じく副長を務めます、卜部(うらべ) 敬三(けいぞう)三等陸佐です!」

 

紹介を終えた比留川とノーグは互いの手を差し出し固く握手をする。

 

「今日一日でこれだけ色々と驚かされるとは……思いもよりませんでした。」

 

「いえ、人を乗せて空を飛ぶ竜や元居た世界とは全然違う土地なんで私も驚いてばかりですよ!」

 

比留川とノーグがお互いに笑いながら丘から見下ろす海岸では「くにさき」を往復輸送するLCACから降ろされた車両が列を組みがら丘の上の広場へと移動を始めていた。

 

比留川は広場に集結する車両を見ながら、これから向かう事になる異世界の未知の土地がどの様な場所なのか思いを馳せるのであった。

 

続く




というわけで、第二話が投稿出来ました。
今回はマイハークの街が舞台となっていますので、本篇からイーネ団長とミーリが出演しています!
なんか茶番にしか見えないけど、気にしてはいけない!!
次回で今作の舞台であるナエノデンエンへ向う事になります。


用語

小型魔信受話器

本作でイーネが使用しているパーパルディア皇国製の小型魔信受話器は、初期の携帯電話と同じぐらいの大きさで有りながらマイハークの街をほぼカバー出来る広い通信範囲を持つ魔道具で有る。
これは100年以上昔に作られた物で有るが、現在のクワ・トイネ公国の技術を持ってしても造る事が出来ない高度な魔道具で有り、この事からも文明国と文明圏外国との技術差を伺い知る事が出来る。

小銀貨

この物語のクワ・トイネ公国では銅貨→真鍮貨→小銀貨→銀貨→金貨の順番で通貨の価値が上がり、通貨の価値は古代ローマ時代をモデルとして、銀貨1枚が都市部の労働者の平均的な一日の賃金と設定しています。
通貨の詳細な設定はその世界観に非常に大きな影響を与える為、今回の話ではこれ以上の設定は行いません。
ちなみに小麦の大袋が小銀貨1枚と高額で取引された事により、クワ・トイネの都市部では前代未聞の食料品の高騰が起き、この騒ぎ以後、通貨レートが確立するまではクワ・トイネ政府が直接、マイハーク港での日本との交易を管理する様になった様です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。