日本国召喚 国際協力機構 異世界を往く   作:アニキ イン ザ スペース

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第四話 ようこそナエノデンエン村へ

中央歴1639年(西暦2015年) 3月4日  クワ・トイネ公国 サージレイ丘陵地 トアル村

 

再び動き出した車列は大草原を抜けサージレイ丘陵(きゅうりょう)と呼ばれる丘陵地に在るトアル村と呼ばれる村へと到着したが、ここで思わぬ足止めを食らってしまった。

 

ここに来るまで何度か川を渡る事が有ったが、いずれも深さ30cm程の浅瀬だったので各車両は問題なく川を渡ってこれた……しかし、ここトアル村を流れる川には馬車が通れるほどの大きな橋が架かっていると聞いていたが、現地に到着して確認すると馬車1台がやっと通れるほどの古い木製の橋で、これでは重い車両が通る事も出来ず、更に川幅が30m程有る上に水深も1m以上有る為、車両が川を渡れない事も分かりここに来てJICAと自衛隊の車列は停止を余儀なくされる。

 

初めて見る二ホンと言う国から来た巨大な自動車の車列をトアル村の村民が遠くから恐る恐る見守る中、車から降りたノーグは想定外の状況に頭を抱えていた。

 

「まさか橋を渡れないなんて……ここを抜ければナエノデンエンまでもう少しだと言うのに、一体どうしたら……。」

 

この付近に浅瀬になっている場所は無く、他の場所より川幅が短く浅瀬だったと言う好立地の場所だった為、この場所に橋を架けた事をノーグは思い出す……彼が途方に暮れていると橋の上で調査をしていた諸星一佐が戻ってきた。

 

「やはりこの橋では重量の有る車両が渡るのは無理な様です……そこで、橋の横に車両が通れる橋を新たに架設(かせつ)したいが許可を頂けますでしょうか。」

 

諸星一佐の突拍子(とっびょうし)も無い発言にノーグは驚きつつも答える。

 

「いいですが……まさか橋を今から造るのですか!?」

 

「そこは我々にお任せください……ノーグ殿から許可が降りた! 架橋(かきょう)の準備に取り掛かれ、81式(はちひとしき)前へ!!」

 

諸星一佐はニヤリと笑うと部下達に指示を出す。 すると車列の中から巨大な鉄製の構造物を乗せたトラックがゆっくりと前に出て来て、後進しながら川の手前までやって来た。

 

「諸星殿、あれは……。」

 

「あれは81式自走架柱橋(はちひとしきじそうかちゅうきょう)と呼ばれている持ち運びができる橋です、これで車が通れる橋を造ります!」

 

「まさか、は…橋を持ち運んでいたのですか!!!」

 

諸星一佐の回答にノーグは言葉を失う……そうしている合間にも諸星の部下達は慣れた手つきで橋脚(きょうきゃく)橋桁(はしげた)が組み合わさった大きな構造物を川へと運び込み橋を掛けていく、更に驚く事にこれらの橋は重い鉄で出来ていると言う事だ! 石で出来た橋ですら大きな都市に行かないと見られない物なのに、鉄で出来た橋ともなれば列強国でも無ければ造る事すら(かな)わないだろう……そんな鉄の橋を彼らはここまで持ち運んで今、目の前で組み上げているのだ! ノーグと従者達、そしてトアル村の人々は初めて見る鉄の橋が組み上がる様に驚きを隠せぬまま、ただただ見入っていた……。

 

そうこうしている間に架柱橋は対岸にまで達し無事開通したが、既に夕闇が迫っている為、本日はここトアル村で宿泊する事となりJICAの職員と自衛隊員達は川の高台で宿泊用のテントを建てる中、ノーグは村長宅の一室を借り一晩過ごす事となった。

彼はパーパルディア製の携帯魔導(けいたいまどう)ランプの明かりを頼りに今日の出来事を振り返りながら日記に書き留める……。

 

 

“ 今回の一件、我が国の国政を担う首相であり無二の親友でも在るカナタの頼みと有って引き受けたと言うも、二ホン国の一団と会合してから毎日、驚かされる事ばかりである。

 

今日は二ホンの自動車に乗る機会に恵まれたが、これは馬車よりも早く乗り心地もとても良いと言う使節団の報告通りの物であった……最初に使節団の報告を聞いた時は余りにも荒唐無稽(こうとうむけい)過ぎると一笑(いっしょう)()したが、私自身が二ホンの技術に接した今となっては彼らの報告は事実で有ったと言えよう、取り分け二ホンの工兵達が持ち運び出来る頑丈な鉄で出来た橋を日が沈む前に対岸まで架ける光景を見て言葉に出来ないほどの衝撃を受けた。

 

さらに驚く事に、重い鉄の塊を動かす程の力が働いていたにも拘わらず魔術が使われた形跡(けいせき)が全く無いばかりか、それを操作する二ホン人達からは何の魔力も感じられなかったのだ! 彼らは魔法が使えない民族で有るとの報告が在ったが、そんな魔力の無い彼らがどの様な理屈であれだけの事が出来るのかは未だ謎で在る。

 

しかし、この目で見た彼ら二ホンの力は本物で有り友好国となった彼らの力が、恵まれているが故に停滞している我が国に新たな光をもたらさん事を願うばかりである……。”

 

 

ノーグは日記を書き終えると携帯魔導ランプの明かりを消し用意されたベッドに横になる……そう言えばナエノデンエンへの到着は出発から2週間近くの日程を予定していたが、この分だと明日には到着してしまうだろう……。

 

そう思いつつもベッドに横になるや、今日一日の疲れからかノーグはそのまま沈むように寝入ってしまった。

 

 

中央歴1639年(西暦2015年) 3月5日 クワ・トイネ公国 ナエノデンエン村

 

翌日、朝食を済ませ再び4WDワゴン車に乗り込んだ比留川達は自衛隊が架設した架柱橋にて無事に川を渡り終え、ナエノデンエンへと向け出発を再開した。

 

道中、短い草が生えたなだらかな丘ばかりの景色に牧田が「まるでパソコンの画面を見ているみたいだ!」との冗談に笑いながらも、丘陵地を進む車列が小高い丘を昇り終えると、ノーグが比留川達に呼び掛ける。

 

「ようやく到着しました! ここが皆さんに農地を提供する私の領地、ナエノデンエンです!!」

 

目の前には色取り取りの花を咲かせた土地とその向こうに広がる広大な農地、そして石造りの家々や風車が建ち並ぶ中世ヨーロッパの農村の様な牧歌的な景色が広がっていた。

 

「わぁ~っ! ここがナエノデンエン村ですかぁ……まるで絵画の様ですね!!」

 

車の窓から見えるナエノデンエン村を見て、車の後部座席に座っていた大屋が歓喜(かんき)の声を上げる……車列が村に入って来るとここでも他の村と同じ様に村の人々は驚いて家の中に入ってしまったが、領主で在るノーグが車から降り村人達に呼び掛けると、人々はこちらを(うかが)いつつも家から出て来て集まって来た。

 

 

同時刻  ナエノデンエン村 ノーグ家の屋敷

 

「ねぇ、リドル……何やら外が騒がしい様ですね、広場に大きな荷馬車の様な物がいっぱい来てますが、あれは何なのでしょうか……?」

 

ナエノデンエン村を一望出来る小高い丘の上に建つノーグ家の屋敷にて、ノーグの娘である若きエルフの少女ジョレーンと、ノーグの屋敷でメイドとして働いているドワーフの少女リドルの2人は外の騒ぎに気付いて何事かと窓を覗き込んでいた。

 

「ジョレーンお嬢様! あれは魔獣の類かもしれません、危険ですから窓から顔を出さないで下さい!!」

 

リドルはそう言いながらつま先立ちでふらつきながら窓から外の様子を窺っていると、馬車の様な物から誰かが降りて来た……すると、それまで家に閉じこもっていた村人達が次々と外へと出て来た。

 

「あら? でも何だか皆さん集まっている様ですよ!? あっ……あれはお父様! もう帰って来られていますわ!!」

 

外の広場に父親であるノーグの姿を見つけたジョレーンはすぐさま屋敷の扉を開け外へと飛び出して行った。

 

「ちょっとお嬢様!? お・お待ちください~っ!!」

 

走り出すジョレーンを追ってリドルも慌てて外へと走って行く……。

 

 

村の広場では停車している車列を背にノーグがこれまでの事を集まってきた村人達に話していると、屋敷の有る丘の方から自分を呼ぶ声が聞こえて来た。

 

「お父様~!!」

 

「おおっ! ジョレーンかぁ、今帰ってきたぞ!!」

 

ジョレーンが父であるノーグの元へと駆け寄って行く、その後ろではメイドのリドルが息を切らせながら付いて来る。

 

「お父様、あの方たちは!?」

 

ジョレーンは車列側の見たことの無い異国の衣装を着た人々を見ながら父親に訊ねる。

 

「あぁ……あの方々は、以前話していた二ホン国の方だよ! 国との協定で我が村の未耕作地を二ホン国に貸し出す事になったんだ、ヒルカワ殿、モロボシ殿……こちらは私の娘、ジョレーンです!」

 

「レーキ・ゾラ・ノーグの娘、ジョレーンと申します、二ホンの皆さま、ナエノデンエン村へようこそ。」

 

ジョレーンは両手でスカートの(すそ)を軽く持ち上げ挨拶を行う……リドルはまだ警戒しているのか、ジョレーンの後ろに隠れながら一緒に挨拶していた。

 

( あの方々が、お父様が話していた新しく国交を結んだ二ホン国の人々ですかぁ……皆さん人間族の様ですが、黒目の黒髪で顔が平たい方達ばかりで……奇妙な緑色の服を着ている方々がいっぱい居ますが、ベルベットの様な明るい色の不思議な生地の服を着ている方もいますわ……。)

 

ジョレーンは初めてみる二ホン人達が着ている服装に興味を持っていると、横にいたリドルが大きな声で騒ぎだした。

 

「お・お嬢様……この荷車、鉄で出来ていますわっ!! それにこんな大きなガラス……私、初めて見ます!!!」

 

自衛隊の73式大型トラックを見てリドルは驚きの声を上げる、木や石で造られた物ばかりの土地で住んでいた彼女にとってこんなに大きな鉄で出来た物は初めて見る上に、ナエノデンエン村ではノーグの屋敷にしか使われていないガラスが……しかも大きな一枚ガラスが荷車に使われている事に驚くも、ジョレーンの反応が鈍い為、リドルは捲し立てるかの様にしゃべり続ける。

 

「だ・だってお嬢様! お屋敷の窓ガラスよりも大きなガラスなんですよー!! それに大釜よりも大きな鉄で出来た物が動くなんて!!!」

 

立て続けにしゃべりまくるリドルの「大釜」と言う言葉を聞いてジョレーンは何かを思い出す……。

 

「ん~!? 大きな釜??……あ~っ!! 大変ですわ、お父様~!!!」

 

比留川達と会話を続けていたノーグに対し、ジョレーンがおっとりとした口調で父親に話しかける。

 

「お父様達が早く戻って来られるものだから、歓迎の準備やお料理も何も出来ていませんわ~!」

 

彼女の言葉に比留川は、そう言えばまだ昼食を取っていない事を思い出すと、何処からか「ぐう…」と誰かの腹が鳴る音が聞こえてきた。

 

続く




日本国召喚 国際協力機構 異世界を往く、第四話にて本篇の舞台であるナエノデンエン村に到着しました。

次回はクワ・トイネでの事務所建設と調査を中心に異世界の伝承で在る『太陽神の使者』の足跡を辿って行く話が中心となります。

用語

トアル村

ナエノデンエン領では無いがノーグが統治しているサージレイ丘陵地の有る村、村の対岸へ行く為の大きな木造の橋が架かっているが、強度の問題でトラック等の車両の通行は不可となっている。
最初は『トリアエズ村』と呼ばれる予定でした。
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