いいだろ?ミレニアム屈指の技術者だぜ? 作:わかめこんぶ
かのアーサー・C・クラークは、クラークの第三法則と言う物を定義した。
一つ、高名だが年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている、と。
二つ、可能性の限界を測る唯一の方法は、その限界を少しだけ超越するまで挑戦することである、と。
三つ、充分に発達した科学技術は、魔術と見分けが付かない、と。
要約すれば、不可能というものは限界までやってみなければ存在しないのと同義であると言う事だ。俺は、この言葉を非常に気に入っている。
俺はこの言葉を胸に、キヴォトスの最先端。ミレニアムサイエンススクールにて常に技術の研究を進めている。
どこまでやるかの目標は設定していない。クラーク氏はニュートンが三つの法則の定義で満足したので、自身も定義は三つに抑えた旨の発言をしている……だが、俺は三つでは満足できない。
俺の生涯限界まで科学技術を十分に発達させるつもりだ……だが、どうやら俺の技術は、まだまだ科学の段階らしい。
ミレニアムサイエンススクール。そのとある区画は、丸ごと一人の
区画といってもそう大きなものではないのだが、一人の生徒が持つには普通なら確実に持て余す程度には広い。
そんな場所を持つのは、ミレニアムサイエンススクールの三年生。先ほど少年として紹介したように、キヴォトスでは唯一の男子生徒。
彼を一言で表すのなら……技術者。それ以上の言葉は必要がない。地位、立場、その何よりも彼は技術の進歩を求めている。
彼が求めるのは、科学技術を魔術へと昇華する事。クラークの第三法則を証明する事を目標の一つにしている。
元はエンジニア部に所属し、いつしか勝手に抜けて一人の領域を持つようになり、只管に科学の進歩を探求する。
その執念は凄まじい……彼は手足は既に切り落として、義肢にするのはもちろんの事。胴体も半分を機械化、かろうじて生身と言えるのは頭だけ。
その頭もヘルメットのような物を被り保護する。もちろんただのヘルメットではなく、脳波を受診し記録する外付けの記憶媒体のような代物だ。
それは事故に合ったせいでそうせざるおえなくなったと言う訳では無い。
もはや、人の狂気ではない。ある種の化け物だ。
何より恐ろしいのは、かれはその執念を見せて尚行うのが科学を進歩させる事。そして進歩させる理由は……愛と平和の為、人々の暮らしをより良くする為なのだ。
探求と無償の恵み。それを行うだけの機械と言われても仕方がない……それが、その少年だった。
ついたあだ名が、彼の信念を汲み取って――『科学の魔術師』……しかし、それでも彼の技術は、まだまだ科学の段階だ。
当然だ。彼は未だに理論を確立し、それを証明し、形にする……そんな
話を戻して――彼はその日も自身の研究室に閉じ籠もっていた。そんな研究室に無作法にノックなしで入る影がある。
入ってくるのは、金髪の髪色に桃色の差し色のされた制服を着込んだ少女――その名は、才羽モモイ。一年生だ。その後ろからひょっこり顔を出すのは、その妹才羽ミドリ。
モモイは、机に向ったまま作業を続ける少年に対して良いことを思いついたように不敵な笑みを浮かべる……そして、次の瞬間大声で叫ぶのだ。
「やっほぉぉぉぉぉ!!!」
「ん……?あぁモモイ、ミドリ。おはよう。」」
少年はなんともないようにケロッとした表情で言う。モモイはつまんなさそうに顔を膨らませてしまう。
「むぅ〜。
「お姉ちゃん……流石にそれは理不尽すぎるよ。すいません、先輩。」
妹たるミドリは冷静にモモイのヤケクソな当てつけを収める。ヘルメットをつけた少年――名は妙高ツムグ。彼はかたを軽く窄めながら呟く。
「相変わらずで何よりだ。」
「……それで、先輩今日は何を作ってたの?」
モモイの質問に、ツムグは笑みを浮かべてあるものを手元から取りだす。
それは、スイッチのついた小型の箱ににケーブルが伸びていた代物だった。
これだけでは、何に使うものかのかさっぱりわからない。ミドリは小首を傾げて問いかける。
「先輩、それ何に使うんですか?」
「あぁ、それはね。」
すると、ツムグは嬉々とした様子で自身の(ゲーム用の)タブレットを取り出す。
「ゲーム用のタブレットやスマホにこうしてケーブルをさして……スイッチを入れる。」
「入れるとどうなるの!?」
すると、ツムグは威風堂々と言い放つ。
「ソシャゲのデイリーミッションを消化してくれる。」
「すっごぉい!!!」
「すごいけど!?」
素直に感心して声を上げるモモイに対して、ミドリはすごいにはすごいが、なんとも言えぬ表情で声を上げる。
「これ……自費ですか?」
「何を馬鹿な。セミナーから降ろしてもらった金に決まってるだろう。」
「何やってんですか!?」
「日常の小さな面倒を解消する為の発明って体で申請したら通った。」
「詐欺師か貴方は!?」
ミドリは思わず頭を抱えてしまう……まさか、ミレニアムの『科学の魔術師』とも呼ばれる男が、ミレニアムでもマイスターと肩を並べるほどの屈指の天才発明家と呼ばれる男が……こんな茶目っ気のある男だとは。ミドリは思わずジト目を向けて問いかける。
「良いんですか?せっかくの技術をこんな所に使って……」
すると、ツムグはしっかりと頷いて呟く。
「良いのさ。本来技術とはこうあるべきだ。『どうでも事だけど、あったら便利。』そう言う願いを叶えることこそ技術の本懐だと俺は思ってる。」
「……それっぽいこと言ってますけど、本音は?」
「ソシャゲのデイリーミッションだるいんだよな。」
「もぉ〜!」
ミドリも気持ちはわからんでもないが、だからって態々作る必要もないだろうに……すると、ツムグはモモイの方を見て呟く。
「そう言えばモモイ。この前の新作のクリーチャーハンター、ちょっとつまずいたから助けてくれないか?」
「良いよぉ!誰で止まってる?」
「雷猫竜なんだけど……」
「まったく……」
そう言ってゲーム談義を始めるモモイとツムグ。ミドリは本当に目の前の人間が
だが……ゲームの話となってはミドリも黙っているわけが行かない。静かにミドリも助言をする。
「雷猫竜ならお手の後の隙狙ってみたら?」
「アレ狙いづらいんだよなぁ……」
「ツムグ先輩ゲーム下手だもんねぇ。」
……因みに、デイリーミッション消化装置に関しては後ほどセミナーにバレて大目玉を食らった。
妙高ツムグ:某ナチス軍人みたいに体を機械化してる男。キヴォトスでも屈指の発明家だが、発明する代物は便利だけどもっとこう、あるだろ!?的な発明が多い。才能の無駄遣い。ゲーム好きだけどゲームは下手。
才羽モモイ:ツムグのゲーム友達。ツムグの発明に一々目を輝かせている。ツムグに良くゲームを教えている。多分だけど色んな人の脳焼いてるしツムグも多分焼かれてる。
才羽ミドリ:ツムグのゲーム友達(2)ツッコミ役。一応ツムグはミレニアムでも著名な人なので合う度に内心ビクビクしつつ容赦なくツッコミする。もはやツッコミマシーン、ツッコミの代名詞、ツッコミウーマン。
デイリーミッション消火装置:便利だけど頼ってばっかだとゲームがつまんなくなるという理由で保管庫送りになった。