夜、大きな貴族の屋敷内、
宿を貸してもらう剣心は現在この場所の一室を借りて腰に差していた刀を抱えながら座っていた
剣心は人斬りになってからというもの刀は必ず持っている、なぜなら襲撃や万が一があったとしても手持ちの刀さえあればどんな危ない状況に陥ろうと、困難であったとしても乗り越えれるからである
剣客として、刀を手放す事は幕末のあの時代からしたら剣心の様な人斬りや維新志士にとっては死を意味する
剣心はベットが用意された部屋であっても刀を抱えたまま、部屋の隅で目を瞑りそして寝るようにしていた
そして、そんな彼が目を覚ましたのはある騒ぎを聞きつけたのがきっかけであった
それは、血の匂い、そして何よりも刺客の幕末の維新志士の用心棒をしていた剣心には襲撃者の来訪が直感的にわかった
彼は抱えていた刀を握り、瞳を開け、その場から立ち上がる
「……刺客か…人数は、わからないが…どちらにしろここの家の者達を危険に晒すわけにはいかないな…」
刀を握る剣心は扉を開けて外にへと出る、そして、広い屋敷内から外部へと飛び出した
剣心は刀の柄に手を当て、常に抜刀が出来るように構えを崩さずに気配を消し、襲撃者の姿を探す
(…人数は…3…いや、4人か…もしかするとまだ数がいるかもしれないな…)
姿を隠したまま、その襲撃者の姿を探しつつ、剣心は自分をこの屋敷に招いたであろう人物の安否を頭の隅に考える
アリアという貴族の少女、宿無しの自分に一晩だけ宿を貸してくれる恩人
剣心には帝国の貴族という者達は腐敗しきっていると聞いていたが、彼女は得体の知れない流浪人である自分に宿を貸してくれた
(…一晩とはいえ恩がある、見殺しにはできない、貴族への襲撃者と考えると今回、屋敷を襲撃したのはナイトレイドと呼ばれる者達か…)
剣心がそう考えていると、暫くして外にある庭園にてアリアの姿を見つけた
が…しかし、彼女には凶刀が向けられそして剣心が予想していた通り、数人の刺客の姿が確認できた
剣心はすぐさま、物陰から飛び出すと抜刀の構えを取り、アリアと刺客の間に入り込む様に現れる
彼らは思いもよらない剣心の出現に度肝を抜かれた様に目を丸くする
「…!?…何者…!」
「え…!今、一体どこから!」
刺客の者達、いや、彼女達は次々と驚きの声を上げる
そして、剣心もまた、刺客の者達の正体に驚いた様に目を見開いた、それはそうだ、手練れな刺客として考えていた剣心が思っていた者達とは違い、目の前にいたのが刀を持っている少女であったのだから
確かにナイトレイドという組織は年端のいかない少女を入れていると聞いてはいたがまさか本当であるとは思いもしなかったのだ
「…、女…か…しかもまだ、年端もいかない…」
「何者だよアンタ…!、いやそれよりもなぜそいつを庇う!」
そう言って、刺客、いやナイトレイドの一人である獣の様な巨乳のグラマーな女性はそう剣心に質問を投げかける
だが、剣心は抜刀の構えのまま、その彼女の言葉にこう応えた
「お前達の目的は知らぬが、俺はこのアリア殿に宿を泊めて貰った恩がある。見捨てるわけにはいかない、彼女の命を狙うというなら死んで貰う」
「…そうか……なら…ッ!」
その剣心の返答とほぼ同時の出来事であった
刀を握る黒髪の少女はそれを剣心に向かい驚くべき速さで振るった、剣心はその剣技を見て納得する
貴族の家にいる護衛が何故悲鳴を上げる暇なく彼女達に殺されたのか、なるほどこの剣速や、磨かれた技から納得がいった
だが、次のその瞬間に、驚きを露わにしたのはナイトレイドの刺客達であった
「飛天御剣流…!」
「…!?」
その異変にいち早く気が付いたのは刀を振るった黒髪の少女であった
彼女はすぐさま、剣心との間合いから飛ぶと刀を防御の型に戻した、それを見た剣心はその防御の上から無理矢理叩き込む様に刀を振るう
「龍翔閃…!」
「く…!」
「アカメ…!」
アカメと呼ばれた黒髪の少女は剣心の刀をすぐに捌くようにしたが、剣圧により身体を吹き飛ばされる
それにより、当たってはいないものの頬から血を流し、アカメは自分の顔から流れるそれを確認する様にそっと手を添える
そして、彼女は冷や汗を垂らし、冷静に今の剣心とのやり取りを分析した
(やばかった…あと半歩でも間合いに入ってたら間違いなく斬られてた…!)
「…なかなかやるな…そうやってしっかりと刀を構えてろ…でないと次は死ぬ事になる…」
「…あ、あぁ…!」
アリアは目の前で行われた信じられないアカメと剣心のやり取りに目を奪われたまま硬直する
間違いなく彼らは自分を殺しに来てる、しかし、自分がこの屋敷に呼んだこの男もなんだ
彼女は、地方から来た人間を言葉巧みに誘い込み、拷問しながら死に追いやって愉しむ残忍なサディストであった、彼女の実態は地方の民を家畜としか思っていない外道であり、本来ならこの剣心も同様に拷問し残虐に殺す予定だった、あの地方から来たという二人組と同様にして…。
だが…この男は圧倒的にあの二人とは次元が違っていた、神業の様な命のやり取り、下手に彼を突いていれば自分は今頃…
そう考えるとアリアの背筋は凍りついた
だが、それ以上に凍りついたのはナイトレイドの者達であった、ツインテールの少女は目の前にいるアカメが今やりあっている剣心の殺気に震えた
(…やばい!あいつは相当やばい!、あれは普通の人間の眼する眼なんかじゃない…!抜刀の瞬間なんて全然わからなかった!)
(こりゃ…やり合うのは得策じゃないわね…)
また、彼女の横でやり取りを見ていた獣の様なグラマラスな女性も同じことを考えていた
神業の様な抜刀術にアカメが見切れない程の剣速、そして、身軽さ
何よりもその冷たく冷えきった剣心の人斬りの眼は心底背筋を凍りつかせる程の迫力があった
グラマラスな女性は未だアカメに対し、抜刀の構えを見せる剣心に向かいこう告げる
「おい、そこのお兄さん、待ちなって何か誤解があるようだから話を聞いておくれよ」
「ちょ…!レオーネ!アンタ何言って…!」
「誤解したまま殺し合いなんて不本意だろ?それにあのまんまじゃ…下手するとアカメが斬られるよ、マイン」
そう言って、鋭い目つきで、隣にいるツインテールの少女を制する様に告げるグラマラスな女性、レオーネ
彼女達の言葉に顔を曇らせる剣心、だが、剣心とて無闇やたらに人を斬りたい訳ではない
それに剣心には誤解という言葉が何よりも気になった
抜刀の構えをひとまず解いた剣心は彼女達の方へ顔を向けると訊ねるようにこう聞く
「どういう事だ…?」
「ひとまず、話は通じるみたいだね、よかったよ、とりあえず双方とも構えを解きな」
「…レオーネ、私はまだやれる!」
そう言って剣心に向かい刀を構えるアカメと呼ばれた黒髪の少女
だが、無駄な命のやり取りだと彼等の戦いを静止したレオーネはそんなアカメにこう告げ始めた
「アカメ、私達はナイトレイドだ、無闇やたらに人を殺す人殺し集団じゃない、やらないでいい命の殺生はしない方がいいに決まってる」
そのレオーネの言葉を聞いたアカメは顔を険しくし、自分の刀を仕舞った
何よりも人殺しが良くない事であるのはアカメにもわかっている、しかし、剣心の抜刀術に刀捌き、そして何よりもその身のこなしを見切れなかった事
その事が、剣士としてプライドがあるアカメにとっては腑に落ちない事であった為に剣をまだ交えたいという願望があった
だが、アカメもナイトレイドの一員、自分勝手な行動で組織に損失を与える事はわかっている為、この場はレオーネの言葉に従った
剣心はアカメが刀を納めるのを確認すると、戦いを静止したレオーネに訊ねる
「それで…説明して貰えるんだな…?」
「とりあえずその糞貴族連れて追いてきな…話はそれからだよ、それと貴族のお嬢ちゃん…アンタは余計な事をしない方がいい、死にたくないならね…」
そう言って、アリアの側を固める様に大きな鋏を持った眼鏡を掛けた女性がそれをアリアの首筋に当て現れる
それを見ていた剣心は、人数的にも無理な事を悟ったのか、レオーネの言葉に従う事にした
話を聞くだけ聞いて納得出来る応えでなければ隙を見つけ、全員始末すれば良い
剣心はこうして彼女達に連れられて、屋敷の庭にある、とある倉庫の前まできた、中からは隠し切れない程の血の匂いが剣心の鼻についてきた
そして、その扉をレオーネが屋敷にあったのであろう鍵を使い開ける、するとその中にあったのは…
「なんだ…これは…」
大量の死体とそれに、拷問やにより病気に感染させたり薬漬けにされた人間達の阿鼻叫喚とした空間が広がっているのだった