学園仮面ライダー ~インリデンとライド 乗り手求めて多重世界~   作:大島海峡

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5.愛娘と、何者でもない少年

『言いたいことは分かる。けど、切らずに聞いてくれ。こっちとそっち、オーロラカーテンシステムはまだ不十分なんだ。だから、これからやってもらいたいことをまとめてデータとして送ってる』

 目の前に浮かび上がったその『男』は……

 顔も同じ、声も同じ。だが、穏やかな表情の作りは、明朗な口ぶりは、まるで自分の知るそれとは違う。

 世界が違えば、たとえ遺伝子上は同一であっても、人はこうも違うものか。

 

『そっちの事情は、だいたいそっちの姉ちゃんから聞いてる。もう一人の俺が、何したのかもな。でも、ライドライバーを持ち出してくれたことは、不幸中の幸いだった』

 と、『詩島剛』は言った。

『このライドライバーは、俺たちの世界のデンセツシューターと対に、なるよう、同時並行で作られて共同製作で作られていたライダーシステムだ。お前の世界を救う為……そして、いずれ来るだろうもっと大きな脅威に対抗するために』

 大きな脅威。一つの世界が滅ぶよりも?

 皮肉な感情を押し殺し、ライドは耳を傾ける。

 

『だけど、その前にヤケになった「オレ」が暴走しちまった。間に合わなかった……そんな詩島剛(オレ)の顔なんか見たくないってのは分かってる。それでも、もう頼めるのはお前しかいない……頼む』

 一度大きく深く頭を下げてから、いくらか落ち着いた様相の上着のポケットから彼が撮ったものらしい、一枚の写真を取り出した。

 

 そこには、グランドキャニオンらしきスポットを背景に、死んだはずの母と、剛自身と、そして彼らに挟まれた一人の少女が映っている。

 髪を引っ掴まれることなど一度も無かったであろう、艶やかに磨き上げられ、切り揃えられた長い黒髪。人に裏切られたことなどただの一度も無く、自分の正しいと思ったことが敗北することなど頭を掠めたことさえ無いような晴れ晴れしい満面の笑み。

 

『オレの娘だ』

 ――最初に見た瞬間から、そいつのことが嫌いだった。

 

『この娘が、オレたちの側で作っていたインリデンのユーザーに選ばれた。けど、まだ完成じゃない。お前が持っているライドライバーを併用してこそ、システムは完成する。それに――まだまだ彼女には、学ぶべきことが多く、仮面ライダーとしての覚悟も足りてない』

 

 若干重苦しい面持ちで、『剛』は唇を噛みしめた。

 

『だから、今お前がいるライダー学園にこの娘を編入させる。その間までに、お前にはライドライバーの調整と、代用……そして、彼女……広子の中に、ライダーとしての覚悟を見極めたその時、ドライバーを……彼女に渡してやって欲しい』

 

 そして映像が乱れ、激しいノイズの嵐の中で、唇が動きそしてプツリと音も姿も絶える。

 呟いたのは、最後まで娘を頼むという願いだったのか。それとも別の自分の子に対する詫びだったのか。何度見ても、それを読み取ることはできなかった。

 

「――詩島剛(あんた)にとって、俺は一体何なんだよ……?」

 という空しい独語とともに、ライドはドライバーを持ち上げたのだった。

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