学園仮面ライダー ~インリデンとライド 乗り手求めて多重世界~   作:大島海峡

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12.一発逆転……?

 ダスクは、一度大きく四方を見渡した。そこに参着した、熟練のライダーたちを見回し、そして鼻白んだ。

「誰かと思えば……ディケイド先輩の元付き人に、紛い物。燃えカスのマジェードに、その総元締めはオーマジオウの成り損ないってか? 笑える冗談だ。そんなイミテーションどもが加勢したところで、何も変わりゃしねぇよ」

「貴様と語る言葉はない。ただこの輝きが紛い物かどうか、その身で思い知るが良い」

 

 そう嘯くと共に、カグヤは自身のカードをドライバーにセット。

〈Chemy ride! Le-Le-Le-Legend!〉

 黄金の扉が開門する。銀のオーロラが開帳する。

 数多の世界、ライダーたちの軌跡が彼を包括し、ゴージャスそのものへと化身させる。

 憧憬を黄金の獅子として自分色に塗り替えた姿。

 

 仮面ライダーレジェンド。

 それが彼のもう一つの(あざな)だ。

 

 ダスクは嘲りと共に、肩をすくめた。

 だが、それはブラフである。ノールックで射撃した。

 

 その砲弾を、レジェンドは避ける。潜る。そして弾道の先、ダスクの懐中に潜り込むと、勢いそのままに裏拳を叩き込む。

(……初めて)

 ここまで幾多も狩猟を重ねて決して未熟ばかりではなかったライダー達から無数の攻撃を浴びせられても何ら痛痒に感じる様子の無かった怪物が、不意を突かれた。苦痛に呻いた。間合いを、詰められた。

 

「やるじゃん」

 そしてそれは彼自身が認めるところである。レジェンドを指差し、そのカグヤを正視する。

 そして身を躍らせて、レジェンドへと襲いかかった。

 

 剛対柔である。

 射撃を攻撃の主軸とするディサイダーでありながら、鉄柱のごとき重火器を軽々と振り回し、その猛攻をただの一度も受けることなくいなし続け、わずかばかりの隙に機を見出し、的確に制しつつ反撃の掌底を見舞う。

 

 不二の目で分かったのは、それのみだ。

 本来は、その裏で激しい読み合いの応酬があるのだろう。それこそ、生半の思考や判断力では、追いつけない領域での。決して相手の優位に持ち込ませない戦略性。それをおいても、あの怪物相手に対等に渡り合っている。

 

(これが……本物の、現時点においてトップクラスの、仮面ライダー)

 不二でさえも、思わず息を呑むほどだった。

 

 そして――

(わずかに、紙一重で、勝っている)

 驚嘆と共に、不二はもはやその成り行きを傍観しているほかない。

 

「くそっ、まさかここまでてこずるとはな……その上、もし()()で来られたら」

「ならば、その期待に応えるとしよう」

 

 毒づくダスクの前で、レジェンドはもう一枚カードをめくり取って、そして手にした兵器に装填。

 ベルトのバックルをそれに置換するとともに、引き金を弾く。

〈Final Chemy ride! Le-Le-Le-Legendary-Legend!〉

 ライダーの顔写真のみではない。獅子のモンスターをも収めたその究極の一枚。

 そこに内蔵された力が光の弾として打ち上がり、無数のカードの環となり展開、彼と一体化。さらにゴージャスな装いへと進化させる。

 

 その名乗り通りの、幾多の伝説を秘めた伝説。それがレジェンダリーレジェンドだ。

 先とは違い、ゆっくりとした足取りでダスクとの間を詰める。

 それは、増した装備分の重量化によるものではない。そうする必要がないがための、一分の隙もない進撃だった

 

「くっそが!」

 というダスクの破れかぶれの反撃も、その(デバイス)――レジェンドカメンライザーでいなしつつ、空いた拳をその正中に叩き込む。なお前進を続ける。

 

 ついに、ダスクは(ダメージ)を被るのを承知で、退いた。

 だが次の瞬間には、身を寄せていたはずのレジェンダリーレジェンドの姿はかき消えていた。

 

〈Final Chemy ride! Go-Go-Go-Gorgeous! Tycoon Bujin sword!〉

 どこからともなく立ち込め、ダスクを囲む墨染の煙幕の内、その背後より閃くは赤き眼光、金の輝き、そして白刃。

 

 無骨な刀から繰り出された居合抜きが、己らを覆い包んでいた帳を払う。

 黒いマントに鎧、紅のバイザー。仮面ライダータイクーン、創世の女神の一端を使った強化形態たる、ブジンソードの姿だった。

 オリジナルに勝るとも劣らない、その神速の太刀捌きでさらに追い立てていく。

 その軌跡に、宝石の眩さを宿して。

 

「闇あればこそ、光はさらに輝きを放つ」

 そう嘯いたカグヤは、さらに一枚のカードを抜き取り、タイクーンのそれと入れ替える。

 

〈Final Chemy ride! Go-Go-Go-Gorgeous! Agito shining form!〉

 黄金の飾りはそのままに、空裂けてもなお健在の太陽の光を浴びたレジェンドの姿は、黄金飾りはそのままにまったく別のライダーのものになっている。

 一瞬体表を覆った熔岩のごとき皮殻を破り、レリーフの彫り抜かれた白銀の胸甲。赤き角。

 手にした無骨な居合刀は神代の双刀に変わり、二つに分かれ、その速度と手数を増して、なお壮烈に攻め立てた。

 

「これでフィナーレだ」

 その宣告通り――終わりの時は間近に迫っていた。

 

〈Legend Final attack ride! A-A-A-Agito! Go−Go−Go−Gorgeous!〉

 一度大きな動作と共に抜き取ったレジェンドカメンライザーのトリガーを、カグヤは天へと向けて再び弾く。

 降り注ぐ紫の煌めきがシャイニングカリバーに分かれて宿る。それを振り下ろした時、二筋の斬光となってダスクの両の肩口に叩き込まれたのだった。

 

 ~~~

 

「あああ、早く早く早く」

 自らの愛護するケミーが一体、タイムロードの助けを借りて、ノコは握りしめたロックシードの修復と改良を推し進めていく。

 足踏みしながら指を虚空に舞わしめ、離れた戦況を時折盗み見る。

 無防備になったノコを守り、その戦いを引き受けたのは、増援としてやってきたマジェード、デイブレイクである。

 

 地下より汲み上げられた水圧が、ベアディサイダー目がけて襲いかかる。

「鬱陶しいなぁ」

 心底煩わしげな声とともに、それを払いのけるも、瞬間、それは水蒸気に代わり、高密かつ多段的な爆発を発生させた。

 

「んもうぅっ」

 普通ならまず肌が焼けるなんてものでは済まない力の収縮、解放にもダメージを負うことなく、斧刃を地面へと叩きつけ、抉り上げるように振り抜く。

 彼女、『九堂先生』を飲み込まんばかりに地は裂け、巻き上がった石辺はそのまま殺傷に十分な威力を備えた投擲武器としてマジェードたちに迫る。

 その威力たるや、

「ちょちょちょ!?」

 異形(イマジン)の肉体を持つフータロスをして、動揺を誘うに十分な代物だった。

 

 だが、おもむろに手をかざした彼女は、それを中空に固定した。

 そして風の圧で削り取り、槍の如くに加工するや、それを飛ばし返す。

 地の亀裂の軌道上に手を置くや、さながら時が巻き戻るかのように塞がっていく。いや、それどころかイーラブに向けて裂け目が返っていく。

 

 のみならず――

 

〈ドラゴナロス!〉

 大地より離れたその手に、一枚のカードが握られている。

 鉱石の煌めきを持つ、翼竜。

 それを空いた自身のドライバーにセットし、再起動をかける。

 

〈ガガガガッチャンコ! マイティザワールド! ガイアードラゴン!〉

 その手から青きが干からび、真紅の竜爪が生え変わる。我が身さえも貫かんばかりに突起させた装甲が、マジェードに被さり、より狂猛な出で立ちとなった。

 

「レベルナンバーX同士の二重錬成!? んなバカなっ、そのドライバーでそんなことしたら、あっという間に干上がっちゃうよ!?」

 思わず仰天の声をあげるノコを庇いつつ、城介が返す。

「かくも修羅に入らねば抗しえぬ敵ということよ……それよりも、手を動かされよ。九堂師(せんせい)は止めよと申しておらぬ」

 

 その爪を突き立てると、断裂よりマグマが吹き溢れ、火竜のごとく踊り狂い、イーラブの前後左右を閉ざす。

 その頭上には暗雲が立ち込め、赤雷を落とす。

 まさしく森羅万象、天地の摂理(ルール)を我が物とした、怒涛の攻めだった。

 

「いや――」

 術式を再開させつつ、ノコは低く呟いた。

「このまま、押し切る気だ」

 一切の反撃たりとも、許さないために。

 これ以上誰をも、傷つけないように。

 

「う――あぁっっ!」

 だがそれは、ノコの見立てに違わず、苦痛という代償を伴う(てだて)なのだろう。

 苦悶の声をしきりに漏らしつつ、だがその手に渾身の力を込めて、自らのドライバーに錬金術師としての指輪をスキャンさせる。

 

〈ハイアルケミスリング! ガイアードラゴン! ビッグバンヴァ!〉

 

 かざした片手の指を、握りしめるように閉ざすと、それに倣って雷が、マグマが、隆起する地面がイーラブを閉ざす。

 周囲の酸素を一気に吸い上げ、それを業火に変えて、邪悪な熊を焼き上げた。

 

「――もう、全部あの人だけでいいんじゃないかな」

 その威力に圧倒されるノコは、放心して呟いた。

「いや――」

 未だ落ちたままの声音で、

 

 だが、上体を屈め、肩で息をする九堂は

「やっぱり……」

 と、喘ぎ喘ぎ呟いたのだった。

 

 ~~~

 

「はぁぁぁ!」

 『巨人の剣』を横倒しにしたまま、ユウスケはその刃をセルケトへと叩き込む。

 だが、微動だにせず、その半分にも満たない厚みと幅しか持たない剣によって直受けされる。

 

 その競り合いの最中、シンクローは鉄棒を死角に向けて振りかざす。

 だが、その間際に剣鬼はタイタンソードの太刀筋を流し、フリーとなった剣を翻してその迎撃に当たった。

 

 ――受ける? このまま押し込む? 肉を切らせて骨を断つ?

(いや、これは……避ける!)

 全神経を回避に傾注し、シンクローは地に転がった。その判断は、間違いなくベストだった。

 頭上を通過した一斬は、掠めていればドーパント(ライダー)体の外骨格を貫通して、まず致命傷だった。

 

 タイミング、速度、威力ともに備わった、完璧な奇襲だったはずだった。

 にも関わらず、それを眼で捉えたような動きによって、完璧に対応された。

 

(まいったね……)

 自他ともに認める学園トップクラスの二人が息を合わせても、まるで勝ち筋が見えない。

 ならば、無理やり埒を開けるしかない。少なくとも、他の仲間たちから遠ざける手立ては、講じねば。

 

 他事を考えている合間に、再び分離した切先が、シンクローの握りしめたシャフト型の武装を吹き飛ばした。

 ――そういう体で、手放した。迂闊を装い、流れをコントロールする。むろん、命の危機を最大限に晒すのを、覚悟のうえで。

 

「ッ!」

 すぐさま、シンクローはベルトのサイド部分のスロットに、ガイアメモリを装填した。

〈ジュエル! マキシマムドライブ!〉

 宝石の障壁をまとったウェザーはしかし、相手の斬撃を直受けすることはない。ジュエルの特性をして、その剣圧を喰らえば、一溜りも無いだろう。さながら、振り下ろされたハンマーに、ダイヤモンドが他愛なく粉砕されるように。

 ゆえに、出来ることは、最大限その硬質化を活かすには、身を屈め、スライドし、皮一枚で受け流すしかない。

 

 そして浮き上がった棒は、ユウスケが掴む。

 瞬間、その長得物は彼自身の薙刀、ライジングドラゴンロッドへと変換される。

 

 気声と、そして鈴鳴りにも似た風音と共に、空気を裂いてセルケトの背を衝かんと腕を伸ばす。

 と同時に、ウェザーも玉石の属性を帯びた拳を撃ち出した。

 

 黄金の刃は膝と肘の間に挟み込まれてセルケトの身に届かず、もう一方で繰り出した剣に、拳は受け止められる。

 ――それも、織り込み済みだ。

 

「今だっ!」

 とユウスケは声を放つ。だが、それはきっと、シンクローに向けての言葉ではない。

 それに応えるのは、空間、あるいは世界そのもの。

 オーロラの帳がその三者を覆い、それが払われた時、荒廃した砂利の山。ここでなら、生半な者たちを巻き込むことはない。

 

「はぁぁぁっ……!」

 腰を落としたクウガは、武器を手放し両手を広げ、腰を落とす。そして駆けだした。蹴ったその地に、焔の足跡を刻みつつ。

 

「ぅおりゃァァ!」

 咆哮、跳躍と共に、金色の烙印を宿した足裏を、オーガディサイダー目掛けて繰り出す。

 

 そう、恐れるべきは、究極を超えたクウガの一撃。ともすれば、ディサイダーズよりも先に学園の崩壊を招きかねない。だから、この戦闘用の世界(フィールド)に奴を誘い込んだ。

 

 シンクローはセルケトに肉薄し、その動きを阻む。そしてクウガとセルケトとが激突する間際に、自ら飛び退いた。

 

 そして激しく黄金に輝く光と炎とが嵐となり波濤となり、三者の姿を悉く呑んだのだった。

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