学園仮面ライダー ~インリデンとライド 乗り手求めて多重世界~   作:大島海峡

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17.灯火の継ぎ手たち

「やっぱり……」

 そう呟いた『九堂りんね』の視線の先。炎天の向こう側。

 

〈Meta Verse:Majade〉

 そこから、一対の斧が天地あまねく引き裂きながら、マジェードへ急進してきた。

 地面の際まで身を屈めて躱すのが、精一杯だった。

 だが起き上がった瞬間、

 

「バァッ」

 驚かすように、無傷のベアディサイダーが顔を寄せ、腕や顔にスイッチの類を貼りつかせている。

 

〈Magic hand〉

〈Eleci〉

〈N・S Magnet〉

 

 それらがひとりでに起動して、着ぐるみめいたボディの双肩から、無骨な機械の腕が伸びる。

 その腕は、強力な磁場によってマジェードの腕を吸い上げ、万力の如く締め上げ、そして容赦のない電流を流す。

 衣を裂くような、絶叫が一帯に轟いた。

 

「コソコソとアタシたちを嗅ぎまわってたユウスケちゃんから聞いてない? 貴方たちの攻撃はぁ、まー大体効かないの。だから、どんなことやったって、ムダなワケ」

 と、舌っ足らずな調子で揶揄する。さらにその締め付けを強くする。

 

 ……だが、その中で、

「通じないことは分かってる。『私達』じゃ、敵わないことも」

 仮面の奥で歯を食いしばって、噛み返すが如く、電流迸るその手首を握りしめる。

 

「それでも、前へと進み続けること。考えることを止めないこと……最後まで諦めないこと。そしてそれを、背を見守るに、示し、残し続けること」

「はぁ?」

「それを私は、先に生きた人たちから、あいつから学んだッ!」

 血の吐くような独白に対して、イーラブは笑声を転がした。

「いやん、健気過ぎて泣けちゃう! でも残念、アナタはここで終わるし、ぜーんぶイーラブちゃんが頂くから、後輩ちゃん達には何も残せないの」

 

 無邪気な声音に反し、彼女はその責め苦をさらに酷で激しいものに転じていく。

 まるで自分に吠え立てる犬を躾けるが如く。そこに、相手が挽回するなどという認識はただの一片もなかった。

 

「……そんなに、欲しければくれてやろう」

 そんな低い声と共に、イーラブの手元に、一個の代物が投げ込まれる。

 何となしに、かつ好奇心ないし収集欲からか。彼女はそれを掴み取った。

 

 それは、柘榴のロックシード。イーラブの手中で点滅を繰り返す。警告音と共にその間隔を狭めていき、やがて――

 

「きゃあっ!?」

 その手の中で、大きく爆ぜた。

 千切れるマジックハンドから逃れ出たマジェードは、とっさに飛び退いて手と足を地につけた。

 

「え、何あれ」

 と、当惑するのは味方も同じ。目を白黒させるノコに、変身の解けた城介は、

「殉教用の自爆装置だ」

 と事もなげに答えた。

「殉教!? 自爆!? ……あぁ、まぁちょうど良いや! 代わりにコレ、使ってみ」

 そう言って戦友が差し出したのは、その錬金術によって再生したロックシード。

 廃棄物となっていたマロンエナジーは、より荘厳に作り替えられ、生まれ変わっていた。

 

「かたじけない」

 と古風な口ぶりでそれを受け取ると、戦極ドライバーにセット。

「変身」

 再度の掛け声と共にバックルのブレードを落とすとクラックが生じ、そこから茶褐色の重装備が、頭目がけて落とされる。

 

〈カチグリアームズ! いざ天誅! サン・ケン・ギ!〉

 搗栗(カチグリ)、すなわち勝栗。勝利を願うがための儀を基とする。

 それを頭部より端を発して重装甲を展開する。より僧兵の向きを強くしつつ、要塞のようでもある。

 

「ふぃー、逆にこっちもからっからだけどね」

 そう言って、融汽もまたその力と色を失い、変身が解除された。

 

「たくっ、仕方ねぇな、っと!」

 軽い気合いを発すると共に、作業中のノコを保護していたフータロスが実体を捨ててその肉体へと侵入した。

 

 へたり込みかけていたノコの身体が、砂を吐き出しつつ再びもたげた。

 上を向いた髪の一房と目が朱色に変化し、どこで調達したものか、出立はパンタロンに帽子と風来坊然としたものに。

 

「変身」

 ノコ……否、取り憑いたフータロスは、身につけたままのベルトに、自身のパスを通す。

 

〈ウインドフォーム〉

 という音声と共に、再び戦闘スーツをノコは纏う。

 だが、その意匠は汽車の形状を要所に残しつつも、軽量化され、色は朱色に。忍者のそれに近いものとなっていた。

 

 腰に帯びたデンガッシャーを十字に組み上げ、手裏剣状に変形させた刹那、それを投擲する。

 事もなげにそれを弾いたイーラブに、伐折羅が正面から突貫をかける。

「カチカチちゃんなら、こっちにもあるんだよね!」

 腰を低めて組み打とうとする城介に向けて、空中に展開されたDJ銃の斉射が浴びせかけられた。

 

「ふぅっ!」

 重い呼気を放つや、伐折羅の腕部が膨れ、尖る。イガグリの針の如きものを発して無数に殺到する弾丸を迎撃する。その裏に秘した重火の撃を、その拳を盾に防ぐ。

 

 そして融汽は、その背に後より続き、追いつき、そして踏み台にして飛び越える。

 所在なく宙を漂う手裏剣を掴み取り、振り下ろし、火縄橙DJ銃を墜落させる。

 

「邪魔!」

 とぞんざいに振り抜く双斧が、それに生じた刃風が、ノコとフータロスを押し退けんとする。

 その腕を、デンガッシャーの交差点で受け止める。受け流す。そして追撃が加わり叩き落とされる直前に、虫が這うようにその巨体の表層を滑って下へ着地する。

〈フルチャージ〉

 パスを再リーディングさせると共に、輝度を高めた十字の刃が水面を払う。イーラブの足下を刈り取る。

 

『最後の一押しってね!』

 ノコの手が持ち上がり、その着地とほぼ同時に地に落下したDJ銃を再錬成。支配権を奪いつつ、再塗装。

 

〈火縄勝栗DJ銃!〉

 形状はほぼそのままに、茶褐色に変わったそれを奪取したのは、懐中、至近の間合いに至った城介だった。

〈ロックオン! ウォーターメロンチャージ!〉

 空いたソケットに自前の錠前をセットし、傾いたイーラブに密着させた銃口から緑と黒の巨砲が射出された。

 

「きゃあっ!?」

 という軽い悲鳴に反し――

 その熊の化身が、浮かび上がる。その至近で打ち上げたエネルギーは飽和し、やがて周囲の空気を吸い上げて、中空でイーラブを巻き込んで爆発したのだった。

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