学園仮面ライダー ~インリデンとライド 乗り手求めて多重世界~   作:大島海峡

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18.最後の一手

()()()、なのか」

 絞り出すように、だが明瞭な物言いで、カグヤは眼上の邪竜に質した。

 

「あ?」

 そのダスクが、首を僅かに傾けた。

 

「貴様たちがこの学園を狙った理由だ。主流のライダーの力では、彼らが彼らたるが故に貴様らを打倒出来ないというのなら、その無敵の盾に穴を穿つ存在(もの)がいるとすれば、貴様らが過去に対峙していない未知のライダー、ということになる。そしてそれが数多集まる、この学園を排除しようとした」

 傾げたままの首筋に手を遣りつつ、ダスクは溜息を吐いた。

 だがそれは、弱点が露見したことによる弱音ではなく、呆れとしかとれない調子のものだった。

 

「あのな、ごくごく単純な事実確認するがな」

 身を屈ませてカグヤの上に長大な影を落としながら、ダスクは問う。

「確かに、この学園の一部のライダー、奴らの使う武器やフォームは俺らに有効打を加えられる。だが、見てみろよ」

 と、周りの惨状に見るようにアゴをしゃくって促す。

 

「俺らをまとめて倒せる千載一遇の好機に、その条件を満たす連中が雁首並べといて、しかも自分らホームで、オレ一人さえ倒せない。そんな雑魚どもに一体何の勝算があるのか。教えてくれましゅかね? ゴージャスのお坊ちゃん」

 茄子紺のスコープ越しに揶揄する彼の背に、影が舞い、音も無く羽ばたく。

 

〈Ready go! エボルテックアタック!〉

 それが、仮面ライダーマッドグリスという、明瞭な色形を持った瞬間、身体中の全エネルギーを総出力、急加速、急降下。ダスクの延髄目掛けて、左腕を振り下ろす。

 

 それを、顧みもせず砲身で防ぎ、

「そら、こんなザマだ」

 と揶揄し、立ち上がり、押し返す。その腕を掴み、自らの下に引き寄せんとする。その上で砲口を押し当て、ゼロ距離で胴を吹き飛ばす所存であった。

 だが、腕に力を込めた瞬間、ダスクの脇腹を鈍い痛みと熱が襲った。

 

 その箇所を見下ろせば、僅かに装甲は剥がれ落ちて、焦げた臭いを放って傷が開いている。そしてその穴から、詰め込まれた宝石が溢れ出るように、燦きが漏れ出ていた。

(こいつ)

 と、彼はなお傲然と睨み上げるカグヤを見返した。

 

 まさか、反撃したというのか。瞬時に撃ち返したとでも。

 砲撃で吹き飛ばされる、あの刹那に。

 

 その意識の逸れた時、拘束していたマッドグリスが動く。

 掴まれたのとは逆の手にスチームブレードを転送するや、大きく振り上げる。

 だが、その刃を叩きつけるのは敵ではなく、己。捕まえられた左腕である。

 

 躊躇いなくそれを、己の一部を、不二は断つ。

 金属音が響くと同時に、欠損と引き換えに自由になった彼女は、

 

「フェーズ3……ッ!」

 と、唸るが如くに呟きを落とし、武器を残された右側でもってドライバーのレバーを逆手に掴み、再び回す。

 

〈Ready go!〉

 抽送されたネビュラが彼女の足下で星雲となって渦を巻く。ボトルの粒子が星屑となって瞬く。ダスクがそれを迎撃しようとした矢先、

 

『おっと、人の(こと)を捕まえておいて、つれないんじゃないか?』

 切り離された腕から、嘲りが発せられる。

 

『まぁ俺が表に出ても、どうせ無効化されるんだろ? だったら、懐かしの万丈(ばんじょう)流だ』

 そう続けた手の内に、件のピストン付きのボトルが収まっている。

 それを上下に揺すって力を絞り出し、握り固め、推進力へと変えて火花を散らす。

〈エボルテックアタック!〉

 好まざる相手ながら、タイミングを合わせた隻腕の不二は、不死鳥の劫火を溜めた足裏を、ダスクへと叩きつけた。

〈チャオ!〉

 陽気なその声は、ベルトと腕、いずれのものだったか。

 今度は、ダスクが数層の建物を突き破り、飛ばされる番だった。

 

「いってー……」

 そして落ち着いた先でダスクは身を起こす。

 しかし、彼を取り巻く環境は、形勢は、一変していた。

 

 そこは篝火や聖火台のごとく、火を吹く煙突が並ぶ野外の施設。

 事前に仕入れた情報から推察するに、炎寮の中枢たるラウンジ。

 

 そこに、未知の形状の、形態のライダーたちがひしめいている。

 先に、そこに合流した、0型を始めとする疾風寮の面子が校舎の屋上に拠り立ち、

 

〈Core on〉

 上空には、フォーゼらしき姿。だがロケット然とした頭部を黄色の近未来的なクリアパーツで保護し、またそれらモジュールの浮力を必要とせず、全身から迸るコズミックエナジーで空中に留まっている。

 ――仮面ライダーフォーゼ コアステイツ

 

〈Tengan! Ghost!〉

 メガウルオウダーを装着したライダーが、十文字を施したオレンジのマスクから妖光を放ちつつ、その周囲を漂う。

 ――仮面ライダーネクロムゴースト

 

〈セイウチ! シロクマ! ペンギン!〉

 太陽の如き形状のバックル、ポセイドンドライバーを力の起点とした、白き海獣の仮面ライダーが、ハルバートを片手に携え背後に回る。

 ――仮面ライダーコールド

 

〈神獣・合併! 感情が溢れ出す……!〉

 金色のバックルに騎士物語の書本(ライドブック)を収めた、白鋼の騎士。肩のパーツに刻まれた竜の双頭で繋ぎ止められたマントを打ち掛け、靡かせ、銀光を閃かせて大剣で床を小突く。

 ――仮面ライダーアスカロン

 

〈Get the glory in the chain, Perfect Puzzle〉

 黄色い双眸で見下ろす格闘技者然とした佇まいの、丸みを帯びた上半身が特徴的な漆黒のゲーマー。

 ――仮面ライダーアナザーパラドクス パズルゲーマー

 

「カモがネギしょってやってきたぜェ……グヘヘヘヘヘ……」

 そして龍のような角を天高く尖らせた(ライダー)は、隆々と盛り上がる二の腕を前面に競り出し、黒々とした影を伸び上がらせ、霞の如き闘志を滾らせ、周囲の空間を歪ませる。

 ――仮面ライダー龍鬼(りゅうき)

 

 仮面ライダーと分類される戦士たちの中でも、学園内屈指とされる実力者が、今この天地を埋め尽くしていた。

 

「たとえ今は至難の路であったとしても」

 自らの汚れを払いつつ、追いついてきたカグヤは言った。

「いずれ、この星々の輝きは、その刃は、貴様たちの身に届く。それが、仮面ライダーというものだ」

 と総括する彼を胡乱気に顧みながら、

 

「群れて遠吠えだけは一丁前だな」

 そう、冷ややかに言った。

「何勘違いしてるかはしれないが……お前らには選択肢なんざある訳がねぇだろ。なんだったら、今から全員、狩り尽してやっても良いんだぜ」

「その前にお前とベントしてやるよっ、ダスクッ!」

 

 そう豪語するとともに、音撃棒を一対、次いで我が身を前方に突き出し、無作為に突出して龍鬼の喉笛は、あえなくダスクの手によって掌握された。

 

「ぐッ」

 そのダスクに負けず劣らぬといった堂々たる体躯が、吊し上げられ地上から足が離れる。情けないうめき声が絞り出される。

 ぞんざいに投げ捨てられたその身が、仁王立ちの立ち姿で傾斜をつけつつ、アナザーパラドクスに向けて飛んでいく。

 

「ったく、ソロプレイやってんじゃないよ」

 毒づきつつ、虚空に展開させたメダル型のエナジーアイテムを手の動きに合わせて操作していく。組み合わせ、龍鬼の身に投じていく。

 

〈回復!〉

〈高速化!〉

〈鋼鉄化!〉

〈マッスル化!〉

〈ジャンプ強化!〉

 

「はーっ、完全復活だっ」

 種々様々の強化(バフ)をかけられた龍鬼は、空中で体勢を立て直し、壁を蹴って反転。あらためて双棒を振りかざし、その即答へと叩き込む。

 

「ってぇなっと!」

 そして、見事なカウンターパンチを喰らい、顔の半ばほどまでを地面に沈めた。そしてアナザーパラドクスは自らを二の矢として放つ。

 

 と同時に、上空のフォーゼも動いた。

「合わせろっ、グッズ!」

 レーダーのモジュール越しに変身者らしき名を呼ぶと、

〈Limit break〉

 ドライバーのレバーを前後させて、セットした武装を全開放。脚部より多段的に射出されたランチャーのミサイルを、蹴ることによって押し出す。さらにその攻勢の裏で、ファルシオンのアメイジングセイレーンが幻光の泡沫を帯びた剣撃を浴びせにかかる。

 

「だから、()()が違っても『フォーゼ』と『アナザーパラドクス』なら意味ねぇってんだ」

 彼らの遠近からの攻めを、薄皮一枚のだが絶対の隔壁が防ぐ。そのうえでアナザーパラドクスを蹴たぐり、セイレーンを拳で突き倒す。彼らが崩れたところに跳ねあがり、両足によるさらなる追撃の踏みつけが加えられる。

 

〈暗黒!〉

〈透明化!〉

〈幸運!〉

 

 パラドクスは再びエナジーアイテムを手繰り寄せ、かき集め、即時自分達に投じた。

 闇に紛れ、間一髪その場を離脱する。

 

「確かに俺たちの攻撃は通じない……だが、目眩しにはなった」

 と、頭上でフォーゼが嘯く。

 

 瞬間、フォーゼのそれとは異なる弾頭が射出される。

 それを射放ったのは、双肩に砲口を載せたライダー。

 

「キャストオフッ!」

 その上層の部位をパージすることで、その真なる姿が露わとなる。

 すなわち、黒い双角と、緑の目を持つ甲虫のライダー。

 言うなれば――ダークガタックである。かつては別の名を持っていたらしい謎の男だが、正体は不明とされている。

 

「ふわぁぁぁぁっ!」

 何処か気の抜けるような、だが本人としては至って真面目な声音を発し、突き出した黒いマイザーボマーから小型機を総出撃させる。とともに、何故か銃型のデバイスたるギャレンラウザーで連射を浴びせかけながら、インファイトに突入する。

 

〈アーマータイム! V-1!〉

 そしてスードゥが飾り気ない白銀の装甲を我が身に被せ、その掌中に転送した小銃、V-1ショットをもってその無謀とも思える吶喊を援護射撃する。

 

「鳩が豆鉄砲使いやがって」

 鬱陶しげに毒づくダスクの腕、その影より、無数の蛇頭が生じて蠢く。彼らを絡め取らんとする。

 

「はい、ワン・ツー・スリーっと」

 そこに横合いから割り込んで来たのは、コールドだった。

 自らの身の丈を上回る長柄物を軽々と扱い、余人には不可視のそれを捌くと、雹を孕む矛先を地面へと突き立てる。

 

「露払い、ご苦労」

 そこを起点に競り出した氷柱を嵐子が駆ける。

 

〈Strorming the end!〉

〈エモーショナル必殺撃!〉

〈Daitengan! Ghost! Omega Uruoudo!〉

 

 

 液状化して頭上に回り込んだネクロムゴーストが実体化して拳を振り下ろす間際、牙の如きアッパーが迎撃する。一気に呼気を吐き出したダスクは、両手から繰り出す連撃でもって、空気を裂き、地を砕く。それを横っ飛びに躱し、一度身体を大きく撓ませてから、嵐を巻いて跳ね上がって槍穂の如く爪先を突き出す。空いたその鳩尾に、アスカロンの三つの竜頭を宿した一閃が叩き込まれる。

 

 そしてほぼ完全に合致したタイミングで、前後側面の三方より、その資格を有するライダー達が挟み撃つ。

 だが、その瞬間、わずかな時間差において、彼から切り離されていた重火器が何処ともなく飛来し、その手に戻る。

 

「さて、どうにも合図(ホイッスル)が聴こえんが……そろそろゲームセットだ。ポイント荒稼ぎといこうか」

 攻撃をその身で受けたままダスクは、低く宣う。そしてゆっくりと、大きくその銃身を旋回させ始めた。

 そして、その口から発せられた射光が、その場に居た影の悉くを呑み尽くした。

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