学園仮面ライダー ~インリデンとライド 乗り手求めて多重世界~ 作:大島海峡
「
絞り出すように、だが明瞭な物言いで、カグヤは眼上の邪竜に質した。
「あ?」
そのダスクが、首を僅かに傾けた。
「貴様たちがこの学園を狙った理由だ。主流のライダーの力では、彼らが彼らたるが故に貴様らを打倒出来ないというのなら、その無敵の盾に穴を穿つ
傾げたままの首筋に手を遣りつつ、ダスクは溜息を吐いた。
だがそれは、弱点が露見したことによる弱音ではなく、呆れとしかとれない調子のものだった。
「あのな、ごくごく単純な事実確認するがな」
身を屈ませてカグヤの上に長大な影を落としながら、ダスクは問う。
「確かに、この学園の一部のライダー、奴らの使う武器やフォームは俺らに有効打を加えられる。だが、見てみろよ」
と、周りの惨状に見るようにアゴをしゃくって促す。
「俺らをまとめて倒せる千載一遇の好機に、その条件を満たす連中が雁首並べといて、しかも自分らホームで、オレ一人さえ倒せない。そんな雑魚どもに一体何の勝算があるのか。教えてくれましゅかね? ゴージャスのお坊ちゃん」
茄子紺のスコープ越しに揶揄する彼の背に、影が舞い、音も無く羽ばたく。
〈Ready go! エボルテックアタック!〉
それが、仮面ライダーマッドグリスという、明瞭な色形を持った瞬間、身体中の全エネルギーを総出力、急加速、急降下。ダスクの延髄目掛けて、左腕を振り下ろす。
それを、顧みもせず砲身で防ぎ、
「そら、こんなザマだ」
と揶揄し、立ち上がり、押し返す。その腕を掴み、自らの下に引き寄せんとする。その上で砲口を押し当て、ゼロ距離で胴を吹き飛ばす所存であった。
だが、腕に力を込めた瞬間、ダスクの脇腹を鈍い痛みと熱が襲った。
その箇所を見下ろせば、僅かに装甲は剥がれ落ちて、焦げた臭いを放って傷が開いている。そしてその穴から、詰め込まれた宝石が溢れ出るように、燦きが漏れ出ていた。
(こいつ)
と、彼はなお傲然と睨み上げるカグヤを見返した。
まさか、反撃したというのか。瞬時に撃ち返したとでも。
砲撃で吹き飛ばされる、あの刹那に。
その意識の逸れた時、拘束していたマッドグリスが動く。
掴まれたのとは逆の手にスチームブレードを転送するや、大きく振り上げる。
だが、その刃を叩きつけるのは敵ではなく、己。捕まえられた左腕である。
躊躇いなくそれを、己の一部を、不二は断つ。
金属音が響くと同時に、欠損と引き換えに自由になった彼女は、
「フェーズ3……ッ!」
と、唸るが如くに呟きを落とし、武器を残された右側でもってドライバーのレバーを逆手に掴み、再び回す。
〈Ready go!〉
抽送されたネビュラが彼女の足下で星雲となって渦を巻く。ボトルの粒子が星屑となって瞬く。ダスクがそれを迎撃しようとした矢先、
『おっと、人の
切り離された腕から、嘲りが発せられる。
『まぁ俺が表に出ても、どうせ無効化されるんだろ? だったら、懐かしの
そう続けた手の内に、件のピストン付きのボトルが収まっている。
それを上下に揺すって力を絞り出し、握り固め、推進力へと変えて火花を散らす。
〈エボルテックアタック!〉
好まざる相手ながら、タイミングを合わせた隻腕の不二は、不死鳥の劫火を溜めた足裏を、ダスクへと叩きつけた。
〈チャオ!〉
陽気なその声は、ベルトと腕、いずれのものだったか。
今度は、ダスクが数層の建物を突き破り、飛ばされる番だった。
「いってー……」
そして落ち着いた先でダスクは身を起こす。
しかし、彼を取り巻く環境は、形勢は、一変していた。
そこは篝火や聖火台のごとく、火を吹く煙突が並ぶ野外の施設。
事前に仕入れた情報から推察するに、炎寮の中枢たるラウンジ。
そこに、未知の形状の、形態のライダーたちがひしめいている。
先に、そこに合流した、0型を始めとする疾風寮の面子が校舎の屋上に拠り立ち、
〈Core on〉
上空には、フォーゼらしき姿。だがロケット然とした頭部を黄色の近未来的なクリアパーツで保護し、またそれらモジュールの浮力を必要とせず、全身から迸るコズミックエナジーで空中に留まっている。
――仮面ライダーフォーゼ コアステイツ
〈Tengan! Ghost!〉
メガウルオウダーを装着したライダーが、十文字を施したオレンジのマスクから妖光を放ちつつ、その周囲を漂う。
――仮面ライダーネクロムゴースト
〈セイウチ! シロクマ! ペンギン!〉
太陽の如き形状のバックル、ポセイドンドライバーを力の起点とした、白き海獣の仮面ライダーが、ハルバートを片手に携え背後に回る。
――仮面ライダーコールド
〈神獣・合併! 感情が溢れ出す……!〉
金色のバックルに騎士物語の
――仮面ライダーアスカロン
〈Get the glory in the chain, Perfect Puzzle〉
黄色い双眸で見下ろす格闘技者然とした佇まいの、丸みを帯びた上半身が特徴的な漆黒のゲーマー。
――仮面ライダーアナザーパラドクス パズルゲーマー
「カモがネギしょってやってきたぜェ……グヘヘヘヘヘ……」
そして龍のような角を天高く尖らせた
――仮面ライダー
仮面ライダーと分類される戦士たちの中でも、学園内屈指とされる実力者が、今この天地を埋め尽くしていた。
「たとえ今は至難の路であったとしても」
自らの汚れを払いつつ、追いついてきたカグヤは言った。
「いずれ、この星々の輝きは、その刃は、貴様たちの身に届く。それが、仮面ライダーというものだ」
と総括する彼を胡乱気に顧みながら、
「群れて遠吠えだけは一丁前だな」
そう、冷ややかに言った。
「何勘違いしてるかはしれないが……お前らには選択肢なんざある訳がねぇだろ。なんだったら、今から全員、狩り尽してやっても良いんだぜ」
「その前にお前とベントしてやるよっ、ダスクッ!」
そう豪語するとともに、音撃棒を一対、次いで我が身を前方に突き出し、無作為に突出して龍鬼の喉笛は、あえなくダスクの手によって掌握された。
「ぐッ」
そのダスクに負けず劣らぬといった堂々たる体躯が、吊し上げられ地上から足が離れる。情けないうめき声が絞り出される。
ぞんざいに投げ捨てられたその身が、仁王立ちの立ち姿で傾斜をつけつつ、アナザーパラドクスに向けて飛んでいく。
「ったく、ソロプレイやってんじゃないよ」
毒づきつつ、虚空に展開させたメダル型のエナジーアイテムを手の動きに合わせて操作していく。組み合わせ、龍鬼の身に投じていく。
〈回復!〉
〈高速化!〉
〈鋼鉄化!〉
〈マッスル化!〉
〈ジャンプ強化!〉
「はーっ、完全復活だっ」
種々様々の
「ってぇなっと!」
そして、見事なカウンターパンチを喰らい、顔の半ばほどまでを地面に沈めた。そしてアナザーパラドクスは自らを二の矢として放つ。
と同時に、上空のフォーゼも動いた。
「合わせろっ、グッズ!」
レーダーのモジュール越しに変身者らしき名を呼ぶと、
〈Limit break〉
ドライバーのレバーを前後させて、セットした武装を全開放。脚部より多段的に射出されたランチャーのミサイルを、蹴ることによって押し出す。さらにその攻勢の裏で、ファルシオンのアメイジングセイレーンが幻光の泡沫を帯びた剣撃を浴びせにかかる。
「だから、
彼らの遠近からの攻めを、薄皮一枚のだが絶対の隔壁が防ぐ。そのうえでアナザーパラドクスを蹴たぐり、セイレーンを拳で突き倒す。彼らが崩れたところに跳ねあがり、両足によるさらなる追撃の踏みつけが加えられる。
〈暗黒!〉
〈透明化!〉
〈幸運!〉
パラドクスは再びエナジーアイテムを手繰り寄せ、かき集め、即時自分達に投じた。
闇に紛れ、間一髪その場を離脱する。
「確かに俺たちの攻撃は通じない……だが、目眩しにはなった」
と、頭上でフォーゼが嘯く。
瞬間、フォーゼのそれとは異なる弾頭が射出される。
それを射放ったのは、双肩に砲口を載せたライダー。
「キャストオフッ!」
その上層の部位をパージすることで、その真なる姿が露わとなる。
すなわち、黒い双角と、緑の目を持つ甲虫のライダー。
言うなれば――ダークガタックである。かつては別の名を持っていたらしい謎の男だが、正体は不明とされている。
「ふわぁぁぁぁっ!」
何処か気の抜けるような、だが本人としては至って真面目な声音を発し、突き出した黒いマイザーボマーから小型機を総出撃させる。とともに、何故か銃型のデバイスたるギャレンラウザーで連射を浴びせかけながら、インファイトに突入する。
〈アーマータイム! V-1!〉
そしてスードゥが飾り気ない白銀の装甲を我が身に被せ、その掌中に転送した小銃、V-1ショットをもってその無謀とも思える吶喊を援護射撃する。
「鳩が豆鉄砲使いやがって」
鬱陶しげに毒づくダスクの腕、その影より、無数の蛇頭が生じて蠢く。彼らを絡め取らんとする。
「はい、ワン・ツー・スリーっと」
そこに横合いから割り込んで来たのは、コールドだった。
自らの身の丈を上回る長柄物を軽々と扱い、余人には不可視のそれを捌くと、雹を孕む矛先を地面へと突き立てる。
「露払い、ご苦労」
そこを起点に競り出した氷柱を嵐子が駆ける。
〈Strorming the end!〉
〈エモーショナル必殺撃!〉
〈Daitengan! Ghost! Omega Uruoudo!〉
液状化して頭上に回り込んだネクロムゴーストが実体化して拳を振り下ろす間際、牙の如きアッパーが迎撃する。一気に呼気を吐き出したダスクは、両手から繰り出す連撃でもって、空気を裂き、地を砕く。それを横っ飛びに躱し、一度身体を大きく撓ませてから、嵐を巻いて跳ね上がって槍穂の如く爪先を突き出す。空いたその鳩尾に、アスカロンの三つの竜頭を宿した一閃が叩き込まれる。
そしてほぼ完全に合致したタイミングで、前後側面の三方より、その資格を有するライダー達が挟み撃つ。
だが、その瞬間、わずかな時間差において、彼から切り離されていた重火器が何処ともなく飛来し、その手に戻る。
「さて、どうにも
攻撃をその身で受けたままダスクは、低く宣う。そしてゆっくりと、大きくその銃身を旋回させ始めた。
そして、その口から発せられた射光が、その場に居た影の悉くを呑み尽くした。