学園仮面ライダー ~インリデンとライド 乗り手求めて多重世界~   作:大島海峡

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19.分け与えられた、技と力

「ほォ、ライダーお得意の同時変身からの暗雲払拭、と言ったところかな?」

 興が乗ったかのようにカリザキは色眼鏡を摘んで上下させ、小脇のタブレットを取り出した。

 

「ならば、こちらもライダーで対抗と行こうか」

 そう嘯いた彼は慣れた手つきでスワイプとタップを数手順。それで、彼の、そして広子たちの眼前に数体分のシルエットが描かれる。

 そのデータの再現は粒子によって実体化して厚みを持ち、やがて明確な色形を持つに至る。

 

 異形の生物種の特徴を持つ、鮮やかなカラーリング。そのベルトのバックルには、それに対応するスタンプが収まっている。

 

 リバイ、バイス、エビル、ライブ、ジャンヌ、ベイル、デストリーム。

 皆、バイスタンプと、五十嵐家由来のライダー達である。

 

「行けっ、ライダー! 地獄の軍団! 呪われた悪魔の遺伝子の力で敵を駆逐しろッ!」

 はしゃぐ主人の命じるまま、7人ライダーはめいめいの構えをとり、そして両ライダーに突撃していった。

 

 最初に激突したのは、ベイルとライドだった。

〈ベイリングインパクト!〉

〈シフトカー! トテモ、ハヤーイ!〉

 ベイルが片手で繰り出される神速の突きを、シフトスピードの力を借りたライドが両腕のラッシュで迎撃する。

 

 手数、速度ともに互角だが、如何せん威力が異なる。

 押し負け、体勢が崩れる。だがそれを承知(こみ)で、仕掛けた。その勢いを借りて、身を翻した。足を旋回させて、横向きの甲虫の角を蹴り付ける。そして敵の中央に躍り出る。

 

「詩島ライド!」

 敵の多くを受け持つライドに、広子は呼ばわった。

「ぞんざいに人のフルネームを……! なんだ!?」

 乱戦の中、広子が突っ込み、半ば強引に彼へと合流する。

 

「業腹ですけどね、一時、この一時だけ! 貴方を乗せてあげますよ! 今こそ騎手乗機一体となって、敵を撹乱するんです!」

 そう言い放って彼女に、

「要らねぇ」

 言下に切り捨てる。

「バラバラでいいんだよ、少なくとも、この場合」

 と。

 

 本来一つ者であったライダーが、何の因果か二つに分たれた。

 そのイレギュラーにこそ、おそらく戦機はある。

 

「これを使え!」

 と自身のシグナルバイクの一台を宙へと放り投げた。

 自走して敵の網を掻い潜り、やがて広子の『腰元』のデンセツシューターの基部に収まる。

 それは、トライチェイサー2000のカラーリングに寄せたもの。その乗り手の力と世界を内包したもの。

 

〈Legend in Ridden! Kuuga!〉

 そして彼女の機体もまた、それになぞらえた意匠と仮面に置き換わる。

「うおォン!」

 と、自ら排気音をあげながら彼女は前輪を持ち上げ、敵を退かせる。

 

 そして、クワガタ型の別個体、ゴウラムに変形すると、デストリームを押さえつけて空中へと急上昇し、そこから相手の重量と重力を利用して地面に落下させた。

 

〈Legend on Ride! Kuuga!〉

 ――そして、ライドの姿もまた、新たなる変容を見せた。

 オレンジに染まる棒状の角、丸みを帯びた両目のパーツ、真紅の装甲。それが足下から重なり、合わさっていく。

 

 ビートチェイサー2000。クウガの二代目の愛機をモチーフとしたアーマーと融合した彼は、振り下ろされたベイルの拳を防いだ。

 

「なるほど、こういう感じか」

 彼女の、インリデンの変化と、同期している。

 太古の力が、ライダーという概念を通してライドに何をすべきか伝えてくれる。浮かせた両足を敵へと叩きつけて、刻んだ紋章の力で対する甲虫の外郭を焼く。

 

 膝を立てての着地と同時に、両角をおもむろに掴み、引き抜いた。

 棒状のそれは両刃の剣、タイタンソードの二振りへと置換される。リバイとバイスの挟撃をそれで防ぎ、旋回した刃で押し返す。

 

 だが、鉄の楔が突如として撃ち込まれた。咄嗟に防いだ双剣を弾き飛ばす。

 見れば、否見ずとも分かる。剛――ゴルドマッハだ。かつては父だったものが、下法を用いて足場を変質させて飛ばしたのだ。

 

 それが、今の奴だった。前線は部下や味方に押し付け、安全な場所から、死角より拗けた攻めで隙を狙う。かつては良きことにせよ悪しき所業にせよ、前に押し出す男だったろうに。

 友人の影を追ううちに、奴自身が冥黒と金色に染まって、錬金の影法師になってしまった。

 

 素手になったライドを、同じく影のライダー達が総じて取り囲む。

 だが、インリデンゴウラムの特攻が、それを外から切り崩した。

 旋回するそれの後ろ脚に、ライドは飛び移って掴む。

 

「ちょっと!? 乗らないんじゃないんですか!?」

「乗ってねぇよっ! ブラ下がっただけだ!」

 一度大きく傾き沈んだ後、上昇する。

 安全圏に至ったライドは、静かにゼンリンシューターを引き抜いた。

 それが形を変えて、ボウガンとなり、同時に彼の知覚が超強化される。

 

 地上、それを咎めるように各ライダーの武器から飛び交う弾丸、砲丸。だが、それは見え透いたブラフだ。そちらに注意を向けるだけの。

 

 神経を一点、この空中においてのみ研ぎ澄まし、必要なノイズを意図的にカットする。わずかな異変も漏らさない。

 数ステップ間隔で空間を跳躍しながら、真正面から高速で迫る羽音さえも。

 

「そこっ!」

 絞った弦から、必殺の一矢が放たれる。

 それは真正面から、飛翔するベイルを穿ち、爆散させる。

 

「次はこいつだ!」

 彼女のデンセツシューターに『ZECT』の四字とカブトムシのマークを後輪に刻んだバイクを換装する。

 

〈Legend in Ridden! Kabuto!〉

〈Legend on Ride! Kabuto!〉

 

 インリデンは赤いバイクに塗装、変形。ゆるやかに下降しつつも空を滑り征し、ライドは降り立つと同時に、その上から蒼き鋼が六角形の単位で貼り付いて、別のクワガタの化身となる。湾曲して落下してきた両角の双刀を両手に掴み取り、自身の時間を高速化させて機動戦を展開しつつ、それを振りかざすことで地を制する。

 

 自身のドライバーを黒い短刀に変形させて迫るエビルの猛攻を剣撃でいなしつつ、すれ違い様にその胴を、並列に並べた蒼刃の二太刀で一閃して抜く。その爆散によって生じた風を助けに旋回しつつ、背に迫るデストリームの肩口に叩き込む。

 

 つんのめった彼の懐に素早く飛び込むや、(カリバー)で自らの上に、捧げ持つように、掲げた。

 そこに、光速の突撃が、突き出されたインリデンの一本角がデストリームを叩き伏せて、その硬い装甲を打ち砕いた。

 

〈Legend in Ridden! EX−Aid!〉

〈Legend on Ride! EX−Aid!〉

 

 背後から殴りかかったライブの拳を、二つ重なるゲームの画面が防壁となって防ぐ。

 そこをくぐり抜けたインリデンの姿は、仮面ライダーレーザーとエグゼイドの仮面が融合した、元よりユニークな形態をさらに奇特にしたものとなっていた。

 

〈爆走クリティカルストライク!〉

 そして鋭いターンでマフラーを向けた彼女は、そこから放射された火炎で敵を薙ぎ倒していく。

 

 一方で……続いて画面を通過したライドの上体は、エグゼイドの世界と技術におけるレベル3・スポーツゲーマーのアーマーに保護されていた。

 憮然と両肩のタイヤを弄びつつ、

「おい、これバイクじゃなくて自転車だろうがッ!」

 と苦情を申し立てた。

 

「いや、どっちも『バイク』でしょ? じゃあスケボーにされたいんですか」

 そう言い返され、舌打ちする。そしてそのホイールごと抜き取ると、駒のように我が身を旋回させて、敵にさらなる追撃を加えて、ライブを轢破した。

 

「ったく、ワガママだなぁ。じゃ、次コレで」

 

〈Wizard!〉

 進路の前に生じた魔法陣をくぐり抜け、彼女は魔法使いの箒代わり、愛機マシンウィンガーの姿をトレースする。元より、フロント部にウィザードの顔をあしらった造形であるからして、ほぼ大差がない。

 

 その背に飛竜の翼を負い、魔的なまでの高さを飛翔する。

 そして急降下の後のストンピングは炎風を伴い、リバイの『擬き』を焼却し、影さえ残さない。

 

 一方で、ライドはと言えば。

「……また自転車じゃねぇか!」

 虎の爪とホイールが合体したかのような己の腕部の得物を青いバイザーで睨みつつ、金色の鬣を逆立てる。

 

「ええい、ままよ!」

 と捨て鉢気味に叫ぶや、ジャンヌの後髪より伸びた蛇を躱す。

 まともに対すれば、蛇が獅子に勝てる道理などあるわけもなし。

 

 瞬く間に伸び上がった蛇を輪切りに裂きつつ、やがてジャンヌの胴体を穿ち抜く。

 

「グィィエエアアアアアッ!?」

 筆舌に尽くしがたい断末魔と共に、押し負けたジャンヌは吹き飛ばされていく過程において爆発した。

 

〈Faiz!〉

 二人の身体を血管の如き光の迸りが覆う。それが収まらない内に、インリデンの車体は持ち上がり、無骨な鉄人となる。

「こっちはようやく人型になれました!」

 オートバジンの身体の上に取り付けられた、シンプルなファイズのマスクを左右に揺すりつつ、広子は嘯く。

 

「だから定型止めろっての」

 毒づくライドは重火器、重装甲を負わせられた。

 狼狽えるバイスが背を向けて逃げるのを、紫色に閃くバイザーが見逃さない。

 粉塵を巻き上げてその重量感でそぐわぬ高機動でそれに追いつく。上空から、浮遊したバジンが回り込み、バスターホイールに搭載された機関銃で牽制、進退の一切を潰す。

 ライドは、両腕に展開したミサイルを多段的に乱射する。

 その火力に浮き上がったバイスの身体を、赤いポインタが楔のように打ち込まれ、中空に固定する。インリデンの繰り出したものだった。

 

 彼女自身もやがてその渦巻く円錐の内に飛び込む。その勢いで抽送されたエネルギーを流し込まれて、バイスの影は粉砕された。

 

「やれやれ、所詮は『廃材』で作ったボロ人形か。悪魔作って魂入れず、といったところか」

 次々と倒れていく兵隊たちを眺めつつ、カリザキは肩を大仰にすくめた。

「まぁ折角だ。今後の参考とさせてもらおう。ほら、残りは一人だ」

 敵か味方か分からない口ぶりで、カリザキは促す。それはそうだろう。いくらモルモットが跳ねっ返ったところで、それを敵視する者などいはしないのだから。

 言われるまでもなく、残りは詩島剛、その亡霊のみだ。

 

「……譲ってあげます。だから、目の前の不愉快なもの、とっとと清算してください」

 隣に降り立った広子がそう言い放ち手を差し出す。

「礼は言わん。元から、俺がやるべきことだ」

 傲然とそう言い返しつつ、その手の意味を汲み、先に使っていたシフトスピードを……泊進ノ介とクリムの形見を、彼女に渡す。

 

〈Legend in Ridden! Drive!〉

〈Legend on Ride! Drive!〉

 

 彼女の姿が、再び地に伏す形態へと変わる。ただし、バイクではなく自動車に。真紅のボディにドライブの顔面をエンブレムとした、トライドロンの姿へ。

 そこから射出されたタイヤを右肩に装着したライドの身体が、素体をベースに塗り替わる。

 すなわち、白いボディに赤いライン。それに合わせたマフラーを首に巻いてなびかせる。

 そしてその右手に、黒い籠手に紫焔を刻み込んで。

 

「その姿は……」

 わずかな反応を示すゴルドマッハに、ライドは軽く頷き、言い放つ。

「あぁ、あんたが捨てた、力だよ」

 胸の前で、拳を握り固めて。

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