学園仮面ライダー ~インリデンとライド 乗り手求めて多重世界~   作:大島海峡

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20.雷弩、亡者を貫いて

〈ゼンリン!〉

 再び元の形状に戻ったゼンリンシューターを振りかざし、交錯の瞬間にゴルドマッハの胴を払う。

 

 飛び散る火花が、その形と大きさを変える。

 朧車が如き炎の車輪と化して、ライドへと叩きつけられる。

 胸部装甲に刻まれた轍が、そのまま黄金の牙となって、内へと食い込み、皮膚を縫い、その動きを停止させた。

 

 だが、そんな彼の身体に小さな三つの影が潜り込む。

 それは、かつてチェイサーが使っていたバイラルコア。その残影。

 蜘蛛の爪、コブラの牙、蝙蝠の翼。それらを模るエネルギーがライドの内より膨れ上がり、彼を蝕む一切を弾き飛ばした。

 

「悪趣味な金接ぎなんざ、御免被る」

 そう吐き捨てたライドの手には、ブレイクガンナーもすでに握られていた。

 その二丁の銃型デバイスの引き鉄を絞り、無数の光弾を八方より撃ち当てていく。

 

 それでもなお迫るゴルドマッハの回し蹴りを飛んで躱す。その頭上より、さらなる斉射を畳み掛ける。

 

「返せェ……それは、俺たちの武器だァ……!」

 地の底より響くような呪詛を吐き捨て、ゴルドマッハは手を伸ばす。

「もうあんたのじゃない」

 着地したライドは両の銃器を納め、静かに、だが力強く首を振った。

「妄執のために、家族も正義も捨てた、あんたのものじゃない」

 そう繰り返しつつ、ドライバーのスロットを上下させる。

 

〈ヒッサツ! フルスロットル! レジェンド!〉

 と鳴るに合わせて、ゴルドマッハも同じ所作で応戦の体勢を整える。

〈ヒッサツ・フルスロットル・ゴールド〉

 似た文言を濁った音で囀る。白銀と黄金の波濤が親子だった彼らの総身から迸り、発せられるたび、互いに打ち合い、消散する。

 

 だがその勢いは断続するごとに、ゴルドマッハ側の勢いが押しがちになる。そして可視化されたそれは、傍目からも瞭然である。だが、両人とも、一歩たりとも退く機会がない。

 

「なにを根拠にした自負かは知らないが、ただのマッハに毛が生えた程度で、彼に勝てるものか」

 カリザキは、そう冷ややかに断じた。

 

 互い、飛び上がって蹴り出す。

 先んじて行われたエネルギーの迫合いの比率そのままに、正面からの撃ち合いは、ゴルドマッハに分があった。果たして押し負けたライドだったが、落下する彼を拾う機影がある。

 

 それは、トライドロンに擬態した広子だった。ボンネットでもってライドの身体を中心、対峙へと押し戻し、自らは常に似合わぬ蛮声と、ドリフトと共に彼らの周囲を巡る。目にも留まらぬ速さでもって、赤光と鉄の環を作る。

 

 そこに、ライドは我が身を飛び込ませた。

 弾かれる駆け巡る広子を足場に、剛を中心点に。ライドの影は交錯し、倒すべき敵を打ち据える。

 そのパワーも、スピードも、弾かれるたびに

 速威が極った時、突き出したライド――マッハの爪先は紫焔を帯びて、ゴルドマッハの胸部を穿ち抜く。

 

「自分の父親を手に掛けるってか……、血筋だな」

 影と成って削れる我が身を顧みる様子もなく、その直撃を受けた剛は低く嗤う。

 

「ほざくな」

 と、ライドはそれを一言の下に切り捨てた。

「それとも、自覚が無かったのか? ……とうに置き換わってんだよ、あんたは。そうなっちまうより前に、死者(デスマスク)にな」

 

 そして雷弩は悪鬼の幻影を、貫く。

『ダァーッシュ!?』

 彼に憑りついていた、レプリカタイプのゴルドダッシュが主人の無力化と同時にその身体より表出し、その禍々しき黄金の宿主もろとも、断末魔と共に砕け散る。

 

「さよなら――父さん。俺の未練」

 ライドは着地と同時に緩やかに歩みを始め、そしてその爆散を背に受けたのだった。

 もう、顧みることはなかった。

 

 〜〜〜

 

 自らの足下に吹き飛ばされて来た『詩島剛』だったものを見下すカリザキ。

 その視線の先で、テクスチャが剥がれ落ちるように、剛という概念、存在が、『猟犬』より急速に消滅していく。何かが焦げ付くようなわずかなノイズと共に、あの白いボディスーツへと再置換される。

 だがそのメットのバイザーの一部は割れ、中から涼やかな、男のものの眼が覗いていた。

 

(What?)

 だがカリザキの方の、サングラスの奥底の眼は、少し意外に見開かれていた。

 

 メタバースシステム。一たび倒した既存の仮面ライダーの攻撃を概念ごと無効化する、絶対の盾。

 それはディサイダーのみならず、ゲームの裁定者兼サポーターたるハウンドのスーツにも搭載されている。

 その一部が――破られている。

 

 如何なる手管によるものか?

「まぁ良い」

 思索を即座に打ち切った。その絡繰りを追究するには、この場は手狭かつ材料が足りない。

 自らが戦闘のうえ彼らを捕らえ、拷問して口を割らせることはおそらく容易だが――そもそもライドたちとて明確な答えを持っているとも思えない。

 

「持ち帰って検証、だな……どうして中々、楽しませてくれる。やっぱりwonderfulだね、仮面ライダーってのは」

 一度それとなく手にした、漆黒のジュウガスタンプを収めつつ、ハウンドに目配せする。

 わずかに視線をそちらに目線を合わせた後、ハウンドはその欠損部を掌で覆いつつ、もう一方の手で銃型のデバイス――ライドユニバーサーの銃口をガンスピンと共に天へと向け、絞り撃つ。

 

 そこから発せられた、七色の光は緩やかな弧を天頂で描き、そして分散して降り注ぐ。

 その内の一柱がカリザキらを飲み込み、覆っていく。

 

「待ってください!」

 それが離脱の手段と察し、駆け出そうとしたインリデンを、ハウンドが翻した銃口が制する。

 その威圧感に(タイヤ)を止めた彼女を嘲るように、撃った反動の所作(マネ)だけをしてみせて、その後、光の中へと踵を返した。

 

 彼らと同調し、蔓延っていた怪物たちが霧散していく。それらの消失こそが、この地獄(ハンティング)の終了の合図に他ならなかった。

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