学園仮面ライダー ~インリデンとライド 乗り手求めて多重世界~   作:大島海峡

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一部表記変更しました


21.撤収

 炎寮が、その文字通り火炎に包まれている。

 無造作に放たれたドラゴンディサイダーの銃撃は、単騎で総てを掃討した。

 

 後に残されたのは、一人の例外も無く倒れ伏すライダー達と、元の形さえ残らず、ただ猟果(カード)となって散らばる有様。

 その中心で、咆哮の如くに仰け反り、邪竜は高く、笑う。

 

 ――その情景が、有り得た可能性が、収縮する。

 一つの手の中に収められ、そして砕かれ、そも存在しなかったものとなって消散する。

 

〈ジオウ・Ⅵ!〉

 その手を広げた男。歴戦の(つわもの)の佇まいを見せる。

 『ライダー』の四字を、そうとは一瞬見えないほどに崩したバイザー。その顔を象った金時計は、ジクウドライバーを挟み込む。だがその全身は金ならぬ赤錆と赤銅に染まり、マントに代わり、時針のごとき突起が肩より左右三本ずつ垂れる。

 

「あ、あれ……?」

「俺ら、死んだはずじゃ……」

 

 当惑する他のライダーには一瞥もくれず、

「ほう、錆びついてても、かつては時の魔王に列しようってところに手が届いた変異体か」

 と、ダスクは嘆を放ち、銃器を肩に担ぐ。

 

「可能性の感知、結果の改変……さぁーて、これはディサイダーにとっても脅威だなァ」

 と、茄子紺のマスクに手をやり、嘆く――正確には、嘆いて()()()

「なんて、言うとでも思ったか? そこが、お前さんの限界なんだろう? 数ある選択、可能性! シミュレート、やり直し! それでもギリギリのとこ、極力被害を最小限に留めて、()()なんだろッ?」

 ジオウⅥは、『学園長』は答えない。反応のない相手に大仰に肩をすくめてから、ダスクは天を仰ぐ。その視線の先より、落ちてくる光がある。

 

「まぁ、良いさ。気が向いたらまた遊びに来てやるよ。その時はせいぜい足掻いて、俺様らを楽しませてくれや」

 そう言い置いて、彼はその光のなかへと飲まれていく。そして、その転移技術らしきものによって、その場から離脱した。

 

 地に落ちていたカードを、不二は拾い上げる。

 それは、先んじてダスクに敗れたゲネシスライダー。おそらくは、不二とカグヤの反撃によって取りこぼしたものらしい。

 さらに彼女の手から、学園長がそれを取り上げる。摘み上げた指先で、光の泡となって、風に溶けていったのだった。

 

 〜〜〜

 

 爆炎の帷の向こうに、影が揺らめく。

 だがそれは、ふざけたテディベアのそれではない。

 無駄のないシルエットの巨躯。持ち上げられた太い右腕。一本一本が斧の剣呑さと鋭さを帯びた、巨大な爪。紛れもなくそれは、獣のものだ。

 

 そして人の面影を残す、左指にライダーカードが挟み込まれている。

 

〈Attack Verse:Ohma-Zi-O〉

〈Attack Verse:Eldo〉

 地の底より響くが如き音。

 

『黄金の時、貴様らも刻まれたいか』

 まるで色の異なる声そのものに、重圧があった。途端に、三人が身じろぎ一つ取れなくなるほどの。

 

「……なーんてね。ウソウソ☆ キミら相手に全力(マジ)になるワケないじゃん」

 と声色が戻った時、少女のごときものが炎の帳を飛び越えてきた時、その呪縛から解き放たれた。

 

「ていうか、ゲーム終了だし? 勿体ないけど、終わっちゃったら景品貰えないしね」

 と好き放題に言ってのけてから、天より注ぐ輝きに、飛び込んでいったのだった。

 

「……どう? 追う?」

「今は唯、自愛、忍耐、嘗胆あるのみ」

 フータロスが、ノコから分離するとともに、変身もまた解ける。支えを失ったその小柄な痩躯は、その場にへたりこんだ。

 と同時に、伐折羅の変身も解除される。自発的にではなく、核となっていたカチグリロックシードが何処ともなく消滅したがために。

 

 あれ? とノコが眼を瞬かせた直後、それと入れ替わりで、緒戦で敗退していた消滅していたライダー、マロンエナジーを本来持っていたライダー、イーノックが突然湧いて出た。

 ――ついぞ敵に届かなかった、拳を突き出して。

 

 そしてそれは、見事にクリーンヒット。ディサイダーならぬ、城介の顔面へと。

 拳に視界を潰されたまま、彼は静かに合掌。

 

「無明よ……」

 という独語と共に、そのまま倒れ伏した。

「センパァァイ!?」

 慌ててノコは這い寄る。

 果たして城介の中で鳴り響いていたのは、衝撃の余韻か、ノックダウンのゴングか、晩鐘か。

 

「やったァァァァァ! 勝ったぞォッ」

 そんな彼を尻目に、誰を殴ったのか理解していない風で、口吻冷めやらぬイーノック――ナッコォ・戸田(トダ)は諸手を衝き上げ快哉したのだった。

 

 ~~~

 

 鏡面を切り裂き、鬼が現れる。

 その斬撃が音さえ追従を許さず、散らばる硝片を間を抜けていく。

 

 そして剣風のみで、メルキーを追い討たんとしていたカリュドーンは彼方まで吹き飛ばされた。

 彼が体勢を立て直した時にはすでに、ダウン状態のメルキーは、セルケトに介助されていた。

 

「その健気なる気骨と機略に免じ、今日のところは見逃してやる。だが次に会った時は、こうはいかない……そうだな? メルキー」

 セルケトは、『弟』の意思を確かめるようにそう問う。

 穏やかな語調だった。実際に血の通い合った生物かはさておき、そこからは確かに、肉親の情めいたものを感じた。

 

 だが――獣性からくる次郎丸の本能は、同時に感じていた。

 もしメルキーがその答えることに躊躇したり窮するようなことがあれば、セルケトは彼を躊躇いなく、斬り捨てる、と。

 

 メルキーはこくこくとせわしなく首を上下させる。

 それを受けて、セルケトは再び刃を閃かせ、空間に二人分の穴を穿つ。その中にまず弟を押し込み、次いで己が歪なその門をくぐる。

 

「へっ……上手いこと、逃げやがって……」

 強弁するのは次郎丸とて同じ。だが、それに追いつかんとする意志は、震え萎える足にはなく、ただその場に身を投げ出したのだった。

 

 ――そして、襲来して来た者たちは、悠々と退き始めたのだった。

 追撃の心配など、脅威など、まるで意に介さないかのように。

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