がんばれ聖騎士さん 作:アへ顔ダブルシールド
ナザリックも倒すのだ。がんばれ。超がんばれ。
人間の住む世界『ミズガルズ』。
ユグドラシルの九つの世界の内の一つであるその世界には、『迷いの森』と呼ばれるエリアがある。
適正レベルは低く、出現するエネミーはゴブリンやオーガと言った弱いモンスターばかり。駆け出しの冒険者が戦いに慣れるための、チュートリアルが行われるエリアの一つであった。
かつては多くの冒険者達で賑わい……しかし、今となっては誰も訪れなくなってしまった、寂れたエリア。
その『迷いの森』の最奥。
一面に広がる美しい花畑の中に埋もれるように、彼はいた。
「(これで全てが終わるのか……)」
目を細め、ただジッと空を見詰める一人の青年。
純白の全身鎧。
左手には、これまた純白のタワーシールドと、右手には青白いオーラを纏った大剣を持っている。
顔立ちも美しく、まさに金髪碧眼の偉丈夫と言える立派な体躯。
彼はかつて、とある冒険者達と共に世界中を旅して回った聖騎士であった。
小さな城塞都市で、ありふれた聖騎士の一人として生涯を終える筈であった青年は、身も心も清らかで美しい聖女にその才能と力を見出され、共に世に平穏を齎すべく救世の旅へ出たのである。
聖女と共に旅へ出た青年には、多くの試練が訪れた。
『れべりんぐ』という名の過酷な修行。
一対一で互角、という強さのモンスターの群れに放り込まれ、何日も休まず戦い続けた。聖女が魔法やアイテムで支援してくれなければ、彼は何度も死ぬはめになっただろう。
だが仕方ないことだ。彼と聖女の間には大きな実力の差があったため、手っ取り早くその差を埋めるにはこれしか方法がなかったのだ……そうに違いない。
行く先々でクエストを受け、道行く人々を助けて回った。
人助けは聖騎士の本懐だ。
彼は喜んで人々のために東奔西走した。
簡単なものでは、迷子の子猫探しやちょっとしたお使い。
高難易度のものでは、強大な悪魔の王の撃退や、村人を攫った竜王の討伐など。彼一人では勝てない敵と戦うことも多く、聖女と、そして聖女の知己である冒険者達の助力がなければ達成は出来なかっただろう。
そうして、数多くの試練を乗り越え、偉業を達成し、聖騎士として一つの高みへ上り詰めた青年は……聖女から託された最後の命を守るために、この花畑にいる。
この花畑は、聖女がまだ駆け出しの冒険者だった頃に偶然見つけた場所。
聖女にとって思い出の場所であり、ユグドラシルを去る直前に聖女は彼をここに連れて来て、守護の任を言い渡したのである。
『この場所が心無い者に荒らされないよう、守ってください。それが私の最後の願いです』
だから彼はここにいる。
ユグドラシルが終わる最後の瞬間まで、この花畑を守る。
それが今の使命であった。
「(世界が終わるなんて……聖女様を疑うわけではないが、今でもまだ信じがたい)」
23:59:35……
「(いや、違うな。信じられないのではなく、信じたくないだけだ。だって、こんなに美しい世界が消えてなくなるなど……)」
23:59:48……
「(聖女様はご無事だろうか?なにやら、『ごうこん』という名の戦場へ向かわれるそうだったが……ああ、こんな思いをするくらいなら、せめて最後に想いを伝えておけばよかった)」
23:59:58……───
──────
────
──
───気づけば、世界が変わっていた。
「な……い、いったい何が……っ!」
自由に動き、喋れていることに違和感を覚えつつも、視界に飛び込んで光景に、聖騎士は走りだしていた。
「や、やめて!!お願いだから食べないでぇぇぇぇえ!!」
「おうおう、よく鳴く雌じゃねぇか……やっぱ喰うなら活きのいい雌だよなぁ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁああああ!!」
まだ十代前半であろう、年若い少女。
目に涙を浮かべ、悲鳴を上げる少女が片腕を、二足歩行の肉食獣のような種族……ビーストマンに掴まれている。
ビーストマンからは殺意も悪意も感じない。
感じるのは食欲だけだ。
ビーストマンが人間を食べれることは知っている。
だが、ユグドラシルにいた冒険者のビーストマン達は人間を食べるようなことは滅多にせず、基本的に人間を対等な存在と見做し、共に手を取り合うことも珍しくなかった種族だ。
そんなビーストマンが、一体なぜ……。
一瞬疑問が浮かぶものの、聖騎士の体は淀みなく動く。
地面が砕けるほどの脚力で踏みしめ、音を置き去りにするかのようなスピードで地を駆ける。
ビーストマンも少女も、接近する聖騎士に気づいていない。
二人ともレベルが低いのだろうか?聖騎士には二人の動きが止まって見えた。
少女からビーストマンを引きはがすべく、盾を振りかざして殴ろうとする。が、ビーストマンは恐らく自分より遥かに弱い。
自分が全力で殴ってしまえば、恐らく死んでしまうだろう。
まだ状況がよくわかっていないし、対話もしない内に問答無用で殺してしまうのは聖騎士のすることではない。
そう判断し、可能な限り優しくビーストマンを殴りつけた。
聖騎士自身の主観では、殴ったというよりちょっと小突いた程度だ。
「ぐぅおっ!?」
案の定、ビーストマンは攻撃に反応することすら出来ず、近くの家屋に勢いよく叩きつけられ……そのまま、家屋の崩壊に巻き込まれて見えなくなってしまった。
……ビーストマンは頑強な肉体を持った種族だ。あれくらいなら死にはしないだろう。
「大丈夫かい?」
「あ、あの……いたっ」
ひとまず残った少女に話しかける。
すると、少女が口を開こうとすると同時、呻きながら片腕を押さえた。
少女の左腕からは、真っ赤な血がだくだくと流れている。
恐らく、先ほどのビーストマンが力強く握っていたせいだろう。食い込んだ鋭い爪は、少女の細腕を容易く貫き、骨まで届いていたのかもしれない。
「今治そう。私に任せてくれ」
少女の左腕にそっと手のひらを触れさせると、スキルを発動する。
「〈癒しの手〉」
パラディンの職業スキルだ。
手で接触することで、対象の負傷を癒すことが出来る。
高レベルのパラディンなので、追加で疲労を治すことも可能だ。
「あ、ありがとう、ございます……」
「気にすることはない。聖騎士として、当然のことをしたまでだ」
傷を治し、座り込んでいた少女を立ち上がらせると、彼は周囲を見渡した。
粗末な武具を用いて、必死の抵抗をする人間達。
対するは、原始的な暴力で彼らを蹂躙するビーストマン達。
彼我の戦力差は圧倒的だ。
このまま放置することは出来ないが、さりとて問答無用でビーストマン達を倒してしまうのは……それは彼の正義ではない。
なぜビーストマン達が人間達を襲うのか、知らなければならない。
もしかしたら、人間達がビーストマンにちょっかいを出してしまい、その報復をされている……という可能性だってある。
……まぁ、今のところは食欲しか感じ取れないので、その可能性は低いだろうが。
「(まずは、この状況を終わらせよう。ビーストマン達を戦闘不能状態に追い込み、対話の場を設けるのだ……行くぞ!)」
聖騎士は震える少女を近くの家の中にいれると、ビーストマンを無力化すべく、盾を構えて走り出した。
【主人公プロフィール】
名前:アルフォス
種族:
分類:傭兵NPC
異名:純白の聖騎士
役職:なし
住居:放浪中
属性:極善
カルマ値:300
種族レベル:人間種のため無し
[職業レベル]
パラディン:10.Lv
トランクィル・ガーディアン:10.Lv
ディバインナイト:5.Lv
クレリック:10.Lv
バトル・クレリック:10.Lv
テンプラー:5.Lv
ホーリー・ヴィンディケイター:5.Lv
その他:45.Lv
合計:種族0.Lv 職業100.Lv 合計100.Lv
サブデータ
身長:183cm
年齢:20代中盤
性別:男
趣味:人助け
備考:童貞。初心。
[ステータス]*1
HP:90
MP:60
物攻:75
物防:90
素早:70
魔攻:60
魔防:85
総合耐性:80
特殊:50
合計:660
[強さ]
タンクの聖騎士。正確には聖騎士+神官戦士のビルド。
タンクとしての数値的な防御力はアルベドに劣る。
ただし、人間種らしく多数の職業を取得しており、HP回復やダメージ減少などの職業スキルを使用するので非常にタフ。肉盾。
神官戦士系を始め、信仰系魔法詠唱者としてカウントされる兼任職業を取得しており、信仰系魔法を第八位階まで使用可能。第九位階も少し使える。