がんばれ聖騎士さん   作:アへ顔ダブルシールド

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勢いで書いた。


竜王国でがんばれ①

───剣が、槍が、棍棒が、次々と振り下ろされる。

対象は、魔法で拘束され、無防備な姿を晒しているビーストマン達だ。鋭い刃が首を刎ね、槍の穂先が心臓に突き刺さり、武骨な棍棒が頭蓋をたたき割る。

 

その度に血しぶきが舞い、地面には夥しい量の血が流れていく。

ビーストマン達は既に絶命していたが、武具を持った村人達の動きは止まらない。

 

彼等の目は怒りと憎悪に染まっている。

子を、妻を、友人を、大切な人を目の前で食い殺された彼らの憎しみは、いつかなくなる日が来るのだろうか。

 

 

 

 

 

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時間は少し遡る。

 

聖騎士……アルフォスは目に映るビーストマン達を片っ端から殴り飛ばし、魔法で拘束していく。手加減したとはいえ、レベル100の腕力で殴られたビーストマン達は一撃で瀕死の状態になっており、自力で立ち上がれない程のダメージを受けている。

 

ものの数分で十数体のビーストマンを拘束。

残るは───

 

「動くんじゃねぇ!」

 

───声が聞こえた方に向き直る。

そこには、ビーストマンの最後の一人。最も体格の良い、二足歩行のライオンのようなビーストマンがいた。

 

その腕の中には、一人の女性が捕まっている。

 

細身の女性だが、一目見てわかる程に腹が膨らんでいる。どうやら妊婦のようだ。首筋に鋭い爪を突きつけられており、その顔は恐怖に染まっていた。

 

「そこの鎧を着たお前!お前だ!この雌の命が惜しければ動くんじゃないぞ!他の連中もだ!少しでも妙な真似をしたら、こいつの喉を掻き切るからなぁ!」

 

その言葉を受け、武具を持った人間達は憎々し気な顔をしながらも、ビーストマンを刺激しないように大人しくしている。

全員が動かないことを確認すると、ビーストマンは妊婦を捕まえたまま、じりじりと距離を離していく。彼女を盾にしたまま、この場から逃げるつもりなのだろう。

 

そんなビーストマンに対し、アルフォスは静かに問いかけた。

 

「───なぜ、君達は人間を襲う?」

「……ああ!?」

「教えてほしい。ビーストマンは人間を食べなくとも生きていける種族のはず……どうして彼らを襲った?彼らを喰おうとする?彼らが君達に何かしたのか?」

「………」

 

アルフォスの質問に対し、ビーストマンのみならず、周囲の人間達すらも呆気にとられたような顔をする。

 

しばらくの間、奇妙な空気が流れていたが、やがてアルフォスの近くにいた男が口を開いた。

 

「あ、あんた、この辺の人間じゃないのか?本当に何も知らないのか?」

「ああ。ついさっき来たばかりなんだ。どうして君達が殺し合いをしているのか、私には理由が全くわからない」

 

聖騎士は嘘偽りを言わない。

質問に対して素直に答えると、男は意を決したように事情を話し始めた。

 

男の簡潔な説明によって、いくつかの情報が判明する。

 

まず、この村は『竜王国』という人間種の国家に属していること。

竜王国は数年に渡り近隣のビーストマンの国から侵攻されていること。

ビーストマンが侵攻する目的は、彼等にとって美味とされる人間を食べるため……つまり、ビーストマンはただ美味しいものを食べにやって来ているらしい、ということ。

 

『竜王国』という国は聞いたことがないし、人間種を美味とするビーストマンの国家にも、やはり覚えはない。ユグドラシルの九つの世界は全て訪れているが、どちらの国の名前も初耳だ。

 

「彼の言うことは本当か?君達ビーストマンは悪意を持ってこの国を攻めているのではなく、ただ食事をしに来ているだけだと?」

「………」

 

ビーストマンは何も答えない。

警戒した目を向けて来るだけだ。

 

「答えるはずがない。こいつらにとって、俺達人間はただの餌なんだ」

「餌……」

「そうだ。餌ってのは、一方的に喰われるだけの存在なんだ。まともに話を聞いてもらえるような、対等な立場じゃないんだよ……昔は停戦交渉のために、女王陛下が使者を何人も送ったらしいが、一人も帰って来なかったって話だ。皆こいつらに喰われちまったのさ」

 

証言が彼一人の言、という点は気になるが、聖騎士としての直感が彼が嘘をついていないと告げている。彼から齎された情報を元に、状況を整理しよう。

 

まず、この村の村人達に罪はない。

ただ一方的に襲われていただけの被害者だ。

 

対して、ビーストマンはどうか。

竜王国に無断で侵入、侵攻し、住民を喰い殺す。

話し合いにも応じず、暴力を振りかざして弱者を屠り、喰う。そこに悪意はなくとも、襲われている竜王国の人間達からすればたまったものではない。

 

ただ『美味しいから』という理由だけで、女も子供も、皆喰い殺す。

 

……これでは、本能で生きる野生のモンスターと何も変わらない。

ユグドラシルにいたような、知性溢れるビーストマンとは雲泥の差である。

 

「(そういうことなら、仕方ない……か)」

 

今後の対応を決めたアルフォスは、捕まっている妊婦に顔を向けた。

 

「今助けます。少しだけ待っていてください」

「あ……」

 

恐怖で震える妊婦に対し、安心させるように穏やかな笑みを浮かべると、アルフォスはゆっくりとビーストマンに近づいていく。

 

「お、おい!動くなって言って───」

 

 

───スキル発動、〈位置交換(トランス・ポジション)〉───

 

 

「───んだろ……は、は?何が───げぼぁ!」

 

周囲で見守っていた村人達も、ビーストマンも、捕まっていた妊婦も、何が起きたのかわからなかった。

 

ただ、気が付いたらアルフォスと妊婦の位置がそっくりそのまま入れ替わっており、動揺したビーストマンはアルフォスに殴られ、あっという間に魔法で拘束されるところだった。

 

 

 

 

 

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その後、捕らえたビーストマンの処遇については村人達へ全面的に任せた結果、冒頭へ移る。

 

そう、アルフォスは丸投げしたのだ。

もしかしたらもっと良い方法があったのかもしれないが、思いつかなかった。

 

そもそもの話。

不本意ではあるが、アルフォスもビーストマンと同じく、不法入国者である。完全な部外者である以上、あれこれ口出しするのは現場を混乱させるだけだ。

 

ビーストマンの処遇についても、それを決めるのは被害を受けた村人達、あるいは竜王国の法律に則って決められるべきだ。

 

現在、竜王国とビーストマンの国は戦争中。

 

ビーストマンは生きたまま捕らえた人間は後で食べるか、大陸中央にあるというミノタウロスの国家などに売り渡す。

竜王国は憎きビーストマンの捕虜なんていらないし、そもそも身体能力で人間を遥に上回るビーストマンを長期間拘束しておく力がない。よって、基本的にはビーストマンは捕まえない。可能な限り殺して戦力を減らす方針だ。

 

その結果、捕らえたビーストマンは皆殺しとなった。

 

ちなみに、今回の襲撃は二回目とのこと。

一回目の襲撃は駐留していた兵士達が命を賭して撃退したものの、死者が多数出たそうだ。兵士達は助からず、ここにいる村人達の家族や友人は殺され、あるいは目の前で踊り喰いにされたらしい。

 

 

アルフォスは、〈癒しの手〉で負傷した者を治療して回りながら、ビーストマンの死体を執拗に痛めつける村人達を、悲し気な目で見つめるのであった。

 

 

 

 

 


 

【スキル・魔法紹介】

 

・〈位置交換(トランス・ポジション)

射程距離内の味方一人と自身の位置を転移させ、入れ替えるスキル。

アルベドがザイトルクワエ戦で使用したスキルと同じもの。

 

ユグドラシルにおいては、パーティーの盾となる騎士系の職業を持つ者なら大抵は取得している基本的なスキルの一つ。

大技を放って隙を晒した前衛をカバーしたり、攻撃を喰らいそうな後衛の魔法詠唱者を助けるために使用したりする。そのまま攻撃を防いだり、敢えて攻撃を喰らうのを覚悟でカウンターで大ダメージを狙ったりと、使い方は幅広い。

類似する効果を持ったスキルも他に多数存在する。

転移後の世界では、お互いが相手を『味方である』と認識していないと発動しない。

……という設定です。本作では。

 

・〈癒しの手〉

前話でも使用した、パラディンの職業スキル。

手で触れることにより、対象の傷を治癒することが出来る。

正のエネルギーで治癒するため、アンデッドにはダメージを与えることが出来る。

自分自身の回復も可能。

 

使用者のレベルが高ければ高い程、治癒効果・アンデッドへのダメージ量も上昇する。

高レベルのパラディンはパッシブで追加効果を付与することが可能で、アルフォスも癒しの手に複数の効果を付与している。

1.疲労を回復。

2.病気を治療。

3.呪いを解呪。

4.毒を治療。

5.麻痺を回復。

など。

 

ただし、病気、呪い、毒に関しては低位のものだけ完全回復。

中位のものは、対象者のレベルの高さや状態異常への抵抗力に影響を受ける。それらの数値が高ければ高確率で完全回復。

上位のものは一時的な回復のみ。しばらくすると再び症状が出る。

 

例えば、レイナースにスキルを使うとする。

すると、レイナースの呪いの症状を一時的に消すことが出来る。

 

レイナースの顔は綺麗になり、膿は出なくなる。

レイナースは喜ぶ。

しかし、一時間くらいすると、再び顔から膿が出るようになる。

レイナースは泣く。

 

 

 

 

 

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