がんばれ聖騎士さん 作:アへ顔ダブルシールド
───ビーストマン襲来。
その知らせは、都市にいる人間達にとって、地獄の始まりを告げるものであった。
竜王国軍が考えていた作戦は、都市そのものを利用した時間稼ぎだ。
数でも質でも劣るこの国の兵士達が、開けた場所でビーストマン達と戦うのは、まさに死にに行くようなものである。
だからこそ、都市を利用する。
城壁の上から弓である程度敵の数を減らした後、敢えてビーストマン達を都市の内側へ招き入れる。そして、地の利のあるこの都市の兵士達が少しでも優位に戦えるよう、予め都市内に設置しておいた障害物や罠を利用して戦う……というものであった。
せめて数的に有利ならば、外で迎え撃つという選択肢もあったのだが……ない物ねだりをしても仕方ない。
都市を脱出した市民達が少しでも距離を稼げるよう、自分達の命と引き換えにビーストマンをこの都市内部に封じ込めることこそが、今の彼等にとって最善の策なのだ。
……しかし今、この作戦は使えなくなってしまった。
最後に脱出するキャラバンはまだ出発準備中。先ほど合流した村人達も合わせ、いまだ数百人程の民が残っている。
この状態でビーストマン達を中に入れてしまえばどうなるか……末路を想像することは容易い。
「───外で迎え撃つぞ!ビーストマン共を一匹たりとも中へ入れるな!」
司令官と思しき年嵩の兵士が声を上げると、兵士達は慌ただしく動き出す。
都市にいる兵士達は約六百人程。四百は外へ、百五十は城壁の上へ、そして、残った五十人は最後の砦として、内部に入り込んだビーストマン達を迎撃するというが……。
「(……外にいる兵士達は間違いなく全滅する。この城壁は立派なものだが、ビーストマンの身体能力なら登るのは容易い。どう考えても、民が脱出するより先にビーストマンは内部へ侵入するだろう)」
アルフォスは、兵士達の間で飛び交う会話から情報を拾い上げ、自分がどう動くべきかを考える。
攻めてきたビーストマンの軍勢は最低でも千を超えるという。
ビーストマンの戦闘力が村を襲った連中と同程度と考えた場合、アルフォス一人でも無傷で殲滅することが可能だ。
では、自分一人で突撃するか?
───否。範囲攻撃に乏しい自分では、討ち漏らしが出る可能性がある。それではこの戦闘に勝利することは不可能だ。万が一にでも兵士達の中から犠牲者が出るようなことはあってはならない。
アルフォスにとっての勝利と、兵士達にとっての勝利は条件が違う。
ビーストマンと人間、どちらからも一切犠牲者を出さず、この戦闘を平穏に終わらせるのが完全勝利。だが、先日の村で知ったこの世界のビーストマンの特徴───人間を餌としか見ない。対話不能───を考慮すると、これは難しいと言わざるを得ない。
次点が普通の勝利。
都市にいる兵士を含む、全ての人間から犠牲者を出さずにビーストマンを撃退すること。蘇生魔法は使えるが、それがユグドラシルの頃と同じように機能するかどうかはまだわからない。一人でも犠牲者が出た時点で敗北と考えるべきだ。
「(こちらの条件なら何とかなるか?私一人では難しいが、この都市の兵士達に協力して貰えれば何とかなるかもしれない……いや、何とかするしかない)」
考えをまとめると、必死に脱出の準備を進める村長に一言告げ、アルフォスは城壁へと駆けだした。
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既に城門は閉まっていたため、アルフォスは一旦、城壁の上に飛び乗った。
「(随分多いな……)」
一キロ程先にビーストマンの群れが見える。
数は……千どころではない。二千は超えているはずだ。
この都市の兵士達だけでは食い止めることは絶対に不可能だろう。
「だが大丈夫だ。この都市の人々は私が守る……そう、私が皆を守るのだ……」
城壁から見下ろし、城門の前に集まった兵士達を見る。
皆、一様に悲壮な覚悟を決めた顔をしている。ここで死ぬことを完全に受け入れてしまっているのだろう。
アルフォスは唐突に城壁から跳躍し、司令官のすぐそばに降り立った。
「な、なんだお前は!何者だ!?」
「自己紹介は後程。今は時間がありません」
慌てる司令官を押しとどめ、アルフォスは魔法を使用する。
「〈
防御力を強化し、闇属性の魔法への耐性を得る支援魔法だ。
鎧が淡い光を放ち、それに気づいた多くの兵士達が何事かと振り向いて来る。
そんな兵士達全員に聞こえるよう、アルフォスは大きく声を張り上げた。
「───私は聖騎士ですが、信仰系
兵士達は困惑している様子だったが、アルフォスの意図を察した司令官が追加で声をかけてくれたため、周囲に兵士達が集まって来てくれた。
兵士達が十分に射程距離に入ったことを確認すると、アルフォスはスキルと魔法を次々と使用した。
〈善なるオーラ〉
〈
〈
〈信仰の恩寵〉
〈
〈守護の盟約〉
〈
〈信仰の大盾〉
〈
〈
〈
〈
出し惜しみはしなかった。
城壁の上にいる者達も対象に含め、HPを自動で回復させ、防御力を大幅に強化し、彼らが受けたダメージを全てアルフォスが肩代わりする、という状態にした。
弱者を守るための戦いにおいて、聖騎士が手を抜くことはありえない。何があろうと、この場にいる兵士達に被害が及ばぬようにしなければならない。
ただ、きちんと保険はかけている。
もしも命を落としたり、大怪我を負う者が出た場合を想定し、蘇生、回復魔法が使える十分な魔力を残しておく。
アルフォスを筆頭として、この場にいる者の体が妙に光り輝いている。普通なら眩しくて直視するのがちょっと厳しいレベルだが、魔法的な光なので視界に悪影響は一切ない。
「来たれ、友よ───〈
最後に、乗騎となる
今のアルフォスはスキルのデメリットで移動速度が大幅にダウンしているため、戦場ではこの
「魔法の使用は終わりました。司令官、指示をお願いします」
「え?あ、ああ……何が何だかわからんが……よし!全員突撃だ!ビーストマン共を返り討ちにしてやれ!」
「──────!!!」
司令官の号令に呼応し、兵士達が威勢よく声を上げる。
多大なバフを受け、アルフォスと魔法的な繋がりが作られた結果、今の彼らは(精神的に)無敵の聖戦士と化している。
本能的に、自分がダメージを受けないことを把握しており、防御をかなぐり捨てて攻撃に専念するのが最適解であることを理解していた。
「聖騎士は誰よりも前に行かなければならない!我らも行くぞ!」
相棒に合図を送ると、純白の
走る兵士達をあっという間に追い抜き、アルフォスはビーストマンの軍勢へと正面から突撃して行くのだった。
【スキル・魔法紹介】
・〈
信仰系魔法。
防御力を上げ、闇属性の魔法に対する耐性を強化する。
鎧が光り輝くため、暗所では明かりとして機能する。
・〈善なるオーラ〉
オーラ系のパッシブスキル。
基本的にそれぞれの効果は範囲内の味方にも付与される。
レベル1:恐怖・恐慌に対する完全耐性を得る。
レベル2:魅了や精神支配に対する完全耐性を得る。
レベル3:聖撃の使用回数が増える。味方は聖撃が使えるようになる。
レベル4:攻撃の全てに神聖・善属性が追加される。
レベル5:即死に対する完全耐性を得る。悪属性の敵、悪属性の攻撃のダメージ大幅減。
・〈
パラディンの職業スキル。
オーラ系スキルの有効射程距離を延長する。
・〈
パッシブスキル。自身のHPが僅かに回復し続ける。
回復量と回復速度は極微量。
・〈信仰の恩寵〉
パラディンの職業スキル。
一定時間の間、自身のHPを自動で徐々に回復する。
カルマ値が下がると回復量と回復速度が減る。
・〈
信仰系魔法。
一定時間の間、自身のHPを自動で徐々に回復する。
アンデッドでも回復可能。
・〈守護の盟約〉
高レベルのパラディンが使用する職業スキル。
長時間、三つの効果を発揮する。
①HPを自動で回復するスキル・魔法の回復量を微強化。
②HPを自動で回復するスキル・魔法の回復速度を微強化。
③HPを自動で回復するスキル・魔法の効果時間を僅かに延長。
このスキルの発動中に「防御力を強化する」効果を持つスキルを発動するたび、上記三つの効果が追加で発動する。
追加で発動した効果は累積される。
・〈
騎士系の職業スキル。
自身を含め、射程距離内にいる味方全ての物理防御力を大幅に強化。
人数制限はないが、発動中は自身の移動速度が大幅にダウンする。
・〈信仰の大盾〉
パラディンの職業スキル。
自身が持つ盾が攻撃を受ける度*1に、自身の防御力が僅かに上昇する。
カルマ値が極善に近い程、上昇量がアップする。
・〈
ホーリー・ヴィンディケイターの職業スキル。
自身が持つ盾に聖なる力を流す。
盾の耐久力、及び自身の防御力を大幅に強化する。
敵が盾に触れた時、カウンターで神聖属性ダメージを与え、大きく吹き飛ばす。
・〈
トランクィル・ガーディアンの職業スキル。
広範囲に聖なるオーラを展開する。
範囲内の味方のHPを自動で徐々に回復させ、精神に関する状態異常耐性を大幅に強化する。さらに自身の防御力を僅かに強化し、敵の攻撃により位置を変更されなくなる。*2
・〈
ディバインナイトの職業スキル。
自身の防御力と状態異常耐性を少し強化する。
さらに、射程距離内にいる味方のステータスに対し、自身の防御力と耐性の30%分を上乗せする。この30%分はスキル発動時点での自身のステータスを参照する。
・〈
パラディン専用の魔法。
発動時、自身が触れている相手と魔法的な繋がりを作る。
相手がダメージを受けた際、そのダメージを自身が全て受ける。
オーラ系スキルを使用中は、オーラの効果範囲内にいる味方を対象にすることも可能。その際は複数を対象にすることが出来る。