がんばれ聖騎士さん 作:アへ顔ダブルシールド
馬上から盾を振るう。
すると、一振りで十数人のビーストマンが木の葉のようにまとめて吹き飛び、盾に掠りでもした者は行動不能レベルの致命傷を負う。
余波の風圧で吹き飛ばされた者の大半はまだ生きているが、両足が小鹿のように震えている。既にまともな戦闘が出来ない彼等に対し、兵士達が止めを刺していく。
「お、
「爪が通らない!?硬すぎる……!お、お前ら人間じゃねぇ!」
当然ながらビーストマンも抵抗しているが、アルフォスはもちろんのこと、兵士達にすら傷一つつけることが出来ないでいる。
噛みつけば牙はへし折れ、振るった爪は砕け散った。
今の兵士達の防御力は、レベルにして40を超えるタンク相当のものだ。
稀に掠り傷程度のダメージを与えられる猛者もいるが、そのダメージも全てアルフォスが引き受けているために、ビーストマンからすると攻撃の一切が無効化されているように見える。
「くたばれ畜生共め!〈聖撃〉!」
「ぐわああ!」
「な、なんだ!?武技か!?」
「がああああ!!くそっ!あ、あんな鈍らに、俺の腕が……!」
兵士が振るった剣を、分厚い腕の筋肉で受け止めたビーストマン。しかし、兵士が〈聖撃〉を使用すると、僅かに食い込んでいただけの剣が、するりとビーストマンの腕を斬り落としてしまった。
ここにいる兵士達は歴戦の猛者であり、レベルにして15程度。
それでも、相手のビーストマンも戦闘や狩りを生業とする戦士達であり、レベルで言えば兵士達と同等以上。
人間種とビーストマンでは同レベルでも身体能力に圧倒的な差が生じるので、武技を使用しなければ兵士達の攻撃は大した有効打にならない。
しかし、今は違う。
アルフォスが事前にスキルと魔法で支援し、さらに戦闘中に追加で補助魔法を使用したため、武技を使わずともビーストマンに大きなダメージを与えることが可能だ。
それに加えて〈聖撃〉を使用して追加ダメージを与えて来るので、兵士達の攻撃一つ一つが、ビーストマン達にとって致命的なものとなっていた。
爪を持たず、鱗を持たず、翼を持たず。
夜闇を見通す眼も、野生動物のような嗅覚も持たない。
何の取り柄もない、自分達に搾取されるだけの劣等種共。
そんな奴らに、誇り高きビーストマンである自分達が一方的に蹂躙されている……理解不能な現実に直面し、ビーストマンの軍勢は大混乱に陥っていた。
「(順調だな。兵士達はレベルこそ低いが、連携は上手いし戦意も高い。きっと、長い間ビーストマン達と戦い続けて来たのだろうな)」
戦況に気を配りながらも、アルフォスは攻撃の手を止めない。
ビーストマンを弾き飛ばし、無人の野を行くかのごとく戦場を爆走する純白の
致命傷は与えない。
可能な限り広範囲のビーストマンを吹き飛ばすように、すくい上げるような打撃を喰らわせる。
今重要なのは、ビーストマン達を都市の中へ入れないことだ。
一体一体を確実に倒すよりも、複数を素早く戦闘不能にする方が良い。
直撃せずとも、レベル100の腕力で吹き飛ばされたビーストマンは瀕死一歩手前の状態になる。とどめは兵士達に任せれば問題ない。
自分一人で戦うのではなく、仲間と共に連携して戦う方が効率が良いのだ。
……なお、アルフォスは両手に盾を持っている。
左手に盾、右手に剣、ではない。
左手には体をすっぽり覆うサイズのタワーシールド。
右手には大剣……の、ように見える
そう、この大剣は剣ではない。盾である。
外見だけなら、青白いオーラを纏った白銀の大剣だ。
しかし、よく見るとわかるが側面に刃がついておらず、剣先も丸くなっている。鋭利な部分が一切存在しないため、どう頑張っても物を斬ることは出来ない。
出来るのは、敵の攻撃を防ぐことと、側面でぶん殴ること。
当然ながら殴打属性のため、命中した相手を大きく吹き飛ばす。
スキルと魔法を使い、味方へのダメージを引き受け、
それがアルフォスの戦闘スタイルだ。
「っ!〈
兵士達を無視し、都市へ向かおうとしたビーストマン達を魔法で足止めする。
両方とも低位の魔法だが、レベル差が大きいので抵抗出来ずに地面でばたばたと藻掻くビーストマン達。それに対して兵士達が次々に止めを刺す……が、他にも多数のビーストマン達が兵士達を素通りして、城壁の方へ抜け出してしまった。
しかし、焦る必要はない。
戦闘開始当初ならともかく、今は心強い援軍が来ている。
城壁に接近する十数体のビーストマンに、矢の雨が降り注ぐ。
城壁の弓兵による一斉射撃により、ほとんどのビーストマンが倒れる。それでも、一際大柄でタフなビーストマンが、矢を受けながらも突撃を止めないが───。
「〈
「〈
「〈
不可視の衝撃波で脳を揺さぶられ、足を一瞬止めたところを魔法で拘束。完全に無防備になったところで、光り輝く正義の鉄槌───文字通り
その後も魔法と弓矢による攻撃は続き、ビーストマンは誰一人として城壁に辿り着けない。
「(あの三人……都市へ接近するビーストマンを優先して倒してくれている。弓兵達への指示も上手い。雇われた傭兵か、冒険者かわからないが、ありがたいものだ)」
魔法を使用したのは、城壁の上にいる三人の男(?)。
頭のてっぺんから足のつま先に至るまで、素肌を一切見せない異様な格好をしており、見た目からして竜王国の兵士達とは明らかに趣が異なる。
そのため、アルフォスは彼等を竜王国の外の人間だと予想していた。
「(三人共、第三位階の魔法が使える信仰系
そう考えたアルフォスは、追加でスキルを起動する。
〈
〈
アルフォスの背中から純白の翼が生え……次の瞬間、その翼は金属のような光沢を放つ。
「(敵戦力はあとわずかだが、こちらもそろそろスキルの効果時間が切れる。早く決着を着けねばなるまい。手荒なことをしてしまうが、許しは乞わん……恨んでくれ)」
翼はアルフォスの意思で自在に動き、周囲のビーストマン達を吹き飛ばしていく。
羽根は一枚一枚が名剣のように鋭い。
当たったビーストマンは空中に吹き飛ばされつつ、ズタズタに切り裂かれた体中の傷から、地上に向けて真っ赤な血を撒き散らした。
【スキル・魔法紹介】
・〈
不可視の衝撃波を飛ばす。\ショックウェイッ/
本作では第三位階の信仰系魔法。
威力は同位階の他の攻撃魔法より低めだが、発動と命中までの早さ、射程距離が非常に優秀で使い勝手が良い。
・〈
魔法の鎖で敵を拘束する。
本作では第三位階の信仰系魔法。
発動までに多少のラグがあるため、勘の良い戦士や獣には寸前で回避される可能性がある。そのため、直前に〈
・〈
光り輝く
本作では第三位階の信仰系魔法。
威力は高いが、命中までの時間が少々長い。
確実に当てるため、しっかりと足止めしてから使用した。
現地世界のスーパーエリート
なお、今回登場した三人は碌でもない理由で都市に残っていた。
理由を都市の人間が知ったら、ぶちぎれること間違いなし。
・〈
天使の翼を生やす。飛行可能。
飛行速度は地上にいる時と同じだが、重武装の場合は速度が落ちる。
アルフォスは空中戦が苦手。
仮に、レベル100の
・〈
〈
打撃と斬撃属性による攻撃が可能になる。
攻撃を受ける側にとっては一撃の重さも増すが、実は重量は変わらない。そのため、移動速度に悪影響はない。
羽根を飛ばして遠距離攻撃とかは無理。
力づくで引きちぎってぶん投げれば、投げナイフの代わりにはなるかもしれない。
【装備紹介①】
[ガーディアン・オブ・オーダー]
純白の全身鎧。
全身鎧の中では防御力が低い方だが、移動速度・攻撃速度を強化する能力を持つ。
実はデータ容量が絶妙に少なく、性能の一部もアルフォスの戦闘スタイルと噛み合っていない。そのため、ゲームシステム上はギリギリ
アルフォスが師と仰ぐ純銀の聖騎士が昔使っていた鎧。
譲り受けた後、素材を使用して強化している。