がんばれ聖騎士さん   作:アへ顔ダブルシールド

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勢いry



竜王国でがんばれ⑤

───ビーストマンとの戦いがあった日の夜。

都市で一番大きな酒場を貸切り、戦勝を祝う宴が催されていた。

 

「我等が英雄に!そして勝利に!乾杯!」

「「「乾杯っ!」」」

 

兵士達は皆、機嫌良さそうに酒を呷っている。

戦闘前に見せた悲壮感は、もはやどこにも存在しない。

 

今まで幾たびも自分達を蹂躙して来たビーストマンに対し、圧倒的な勝利を収め、自分達の街を守り抜いたという喜びを実感しているのだ。

 

「束の間の平和、か……」

 

外様に過ぎないからと、兵士達から離れた場所で休んでいたアルフォスは、先ほどまでの兵士達との会議を思い出していた。

 

 

 

 

 

───次のビーストマンの攻勢については予想がつかないらしい。

 

それも当然と言えば当然だ。

 

今回のビーストマン軍の総数は約三千。

撤退出来たのは、僅か百にも満たない程度。他は全て討ち取った。

そして、人間側の被害はゼロ。掠り傷一つ負うことなく、完全に無傷で勝利することに成功している。

 

補助魔法で装備すら耐久力が増していたので、消費したのは弓兵が使った矢くらいなものである。それも在庫はまだまだ残っているし、戦場から回収したものも合わせれば補充は必要ない。

 

まさに、圧倒的な勝利と言えよう。

 

これは人間側にとって今までで一番の戦果であり、ビーストマン側にとっては大打撃になる。それも、恐らく開戦当初から今まで、これほどの被害を受けたことはないと言えるほどの、壊滅的な損害を被ったはずだ。

 

初めて大攻勢を仕掛けて来た時、ビーストマンの軍勢は一つ目の城塞都市を素早く落とした。不意打ちに近いものだったため、城塞都市側は対応が間に合わずにあっという間に壊滅。

 

この戦いでは、ビーストマン側の死者は三桁に届かない程度。

 

そして、間髪入れずに二つ目の城塞都市を攻撃。

この戦いでは陽光聖典が参戦し、数多くのビーストマンを討ち取った。それでも戦力の差は圧倒的で、ビーストマン側の被害はまだ千に届かない程度だった。

 

彼等は一つ目の城塞都市を食糧庫に。

二つ目の城塞都市では市民を捕獲して後方へ送りつつ、軍事拠点として利用。この都市周辺に対して散発的に偵察部隊を送り込み(ついでに周辺の村々で食事をしつつ)、孤立したこの都市へ攻め込んできた。

 

 

『恐らくですが、今回襲撃して来た連中は精鋭中の精鋭でしょう。平均して難度60はあった筈です。ちらほら、難度80近いような化物もいたみたいですし……今回の戦い、奴らは負けるなんて微塵も考えてなかったはずです。それがまさかの返り討ちでほぼ全滅ですから、次の攻勢は慎重になってもおかしくありません』

 

 

───と言うのが、司令官の予想である。

 

辛うじて逃げ延びたビーストマンから、こちらの戦力が正しく伝わったとするなら……確かに、奴らが次にどう動くのか、確実な予想は難しい。

 

ビーストマンは人間を劣等種と見下しているので、プライドを刺激されて即反撃に打って出る可能性もあるが、奴らとて馬鹿ではない。

軍の指揮官、あるいは群れを束ねる族長などがいる筈だし、そうした者達が慎重な判断を下すかもしれない。

 

 

ちなみに、ここで言う『難度』とは、この世界における大まかな強さの指標だ。

ユグドラシルではレベル1~100だが、難度はそれをさらに細かく表している。

 

例えば、その辺の農作業に従事する村人(大人)は難度3。

兵士ならば弱くとも難度10を超え、精鋭ならば30を超える。

精鋭の中でも、さらに鍛錬と経験を積んだものなら難度45以上。

難度60を越えたら表の世界ではトップクラス。

難度80からは、大国でも数えるほどしかいない、最高ランクの冒険者と同程度。

 

難度90近くになると『英雄級』と評される。

『英雄級』は人類の中でも頂点と言える強さであり、有名な者ではリ・エスティーゼ王国の戦士長、ガゼフ・ストロノーフという戦士がいる。

 

戦闘力を持たない非力な村人がレベル1。

この都市の熟練の兵士達のレベルは15くらい。

魔法で援護してくれた手練れの魔法詠唱者(マジック・キャスター)三人のレベルが約20程度。

 

それぞれを三倍した数値が難度だとすれば、大体は合っているだろうか。

 

「(しかし、この都市の兵士とビーストマンのレベルはほとんど変わらなかった。兵士の難度は自己申告で40を超える程度。だが、ビーストマンの難度は60以上だと判断している……単純なレベルだけでなく、ステータスの差も考慮に入っていると見るべきか)」

 

ビーストマンの強さは人間の約十倍だと言う。

これはユグドラシル的に言えば、間違いではないが、完全に正しいわけでもない。

 

ユグドラシルでは、亜人種や異形種は単純なステータスで人間種より強い。レベル50くらいまでなら、ステータスの暴力で同レベルの人間種を圧倒出来なくもないだろう。

 

レベルが低い程、人間種とそれ以外の種族のステータス差は大きい。

逆に言えば、高レベルになればなるほど、その差は縮まっていく。

 

人間種は希少、あるいは専用の職業を取得することで強力なスキルが使えるようになるし、装備制限も一番緩い。上級職を複数取れば、職業補正でステータスも大幅に強化され、最終的なステータスに大きな差はなくなる。

 

人間種以外は特有の弱点を持っていることもあり、特に異形種は複数の弱点を抱えている。どんなに強力な装備でも弱点を全てカバーすることは出来ないので、レベル100の段階になると、強力なスキルを多数使用可能な人間種の方が強くなるのだ。

 

だからこそ、ユグドラシルでは人間種が頂点に君臨していた。

数でも質でも他種族を凌駕し、ゆえに増長し、傲慢になり、ついには異形種狩りと言うおぞましい所業に手を出す冒険者まで出る始末だった。

 

「……しかし、この世界は違う。全体的にレベルが低いのはなぜだ?ビーストマンのように、この世界の人間種はユグドラシルとは違う存在なのか?それとも───」

「失礼します。少しよろしいでしょうか?」

 

ユグドラシルとの違いに頭を捻るアルフォスの前に、一人の男がやって来た。

 

 

 

 

 

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やって来た男───陽光聖典の一員だと名乗る男に連れられ、アルフォスは通りから離れた場所にある小さな一軒家へとやって来ていた。

 

ここは空き家であり、彼等が任務のための仮初の拠点として利用しているらしい。

 

「宴の最中にお呼び出ししてしまい、申し訳ございません」

 

そう言って男が頭を下げると、この拠点で待機していたらしい残りの二人も合わせて頭を下げる。

 

「謝る必要はない。私もあなた方と話がしたいと思っていたところなんだ」

「話、ですか?」

「ああ。先の戦いでは、あなた方の援護のおかげで戦闘を優位に進められた。おかげさまで、兵士達にも被害を出さず、都市を守り切ることが出来た……礼を言わせてほしい」

 

そう言って、今度はアルフォスが頭を下げた。

彼等三人は途中で戦闘に参加したため、アルフォスのスキルの対象外となっていた。魔法詠唱者(マジック・キャスター)である彼等の防御力では、ビーストマンに接近されると少々厳しい。

 

兵士達はアルフォスのスキルで守られていた以上、あの場で一番危険な立ち位置にいたのは彼等三人になる。

 

危険を冒してまで援護に駆け付けて来てくれたことに、アルフォスは深く感謝していた。

 

「そ、そんな、頭を上げてください!」

「人類を守るために戦うのは、我等陽光聖典の使命ですから!」

「当然のことをしたまでです!()が頭を下げる必要など……!」

「……神?神とはいったい……まさか、私のことか?」

 

唐突に出て来た『神』という言葉に困惑すると、三人は先ほど以上に畏まった様子で話しかけて来た。

 

「唐突で申し訳ないのですが、アルフォスさ……殿に、お聞きしたいことがございます」

「ふむ。共に戦った仲だ。何でも聞いてくれ」

「で、では───アルフォス殿は先ほどの戦場で、多数の魔法を使ったとお聞きしましたが……ずばり、何位階の魔法まで使用出来るのでしょうか?」

 

使用出来る魔法の位階の確認。

つまり、アルフォスが魔法詠唱者(マジック・キャスター)としてどの程度の実力なのかを知りたいのだろう。

 

この世界では、第三位階の魔法が使えたら魔法詠唱者(マジック・キャスター)として大成したと言える。そして、人類が使える魔法は第六位階が限度と言われており、第七位階以上の魔法については御伽噺の中にしか登場しない。

 

……という話はアルフォスも知っている。

普通の転移者であれば、他に転移している者がいる、という可能性を考慮して実力を秘匿しようとするかもしれない。使用位階から情報が漏れるのを恐れて、嘘を答えることもあるだろう。

 

しかしアルフォスは聖騎士である。

聖騎士は嘘偽りを嫌い、いついかなる時も正直かつ素直であることを美徳とする。無論、中にはそうでない者もいるだろうが、少なくともアルフォスは嘘を言ったり他人を騙したりするようなことはしない。

 

つまり……。

 

「───私は信仰系魔法を八位階まで使用出来る。九位階の魔法も多少使えるが、私の本業は聖騎士なので、魔法はあまり得意ではない」

「き、九!?九位階が使えると!?」

「あ、ああ。だが、九位階は最低限だけだ。先の戦闘で追加で使用した、防御魔法の〈秩序の盾(シールド・オブ・オーダー)〉や、蘇生魔法の〈真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)〉などの攻撃系以外だな」

「で、では、第七位階の〈善なる極撃(ホーリースマイト)〉などは……」

「転移魔法も使われるのでしょうか……?」

 

善なる極撃(ホーリースマイト)〉は、対象のカルマ値が低ければ低い程、威力が跳ね上がる神聖属性の魔法だ。〈転移(テレポーテーション)〉は五位階の魔法だが、彼等が聞きたいのはその上である七位階の〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉のことだろう。

 

「ああ、どちらも使える。」

「なんと!?やはりあなた様は……」

「……漆黒聖典の装備を遥かに超える、魔法の輝きを宿した装備」

「そして、あの戦場での戦いぶり。もしやと思っておりましたが……」

 

三人は顔を見合わせると、代表してアルフォスを連れて来た男が口を開いた。

 

「あなた様はもしや、ぷれいやー様であらせられますか?」

 

 

 

 

 


 

【スキル・魔法紹介】

 

・〈秩序の盾(シールド・オブ・オーダー)

信仰系第九位階魔法。補助魔法の一つ。

対象の防御力と状態異常耐性を強化し、魔法への抵抗力を上げる。

受けた魔法が悪属性である場合は、追加で魔法抵抗力にボーナスを得る。

カルマ値が中立以下の存在から近接攻撃を受けた時、相手に〈鈍足(スロー)〉と同様の移動速度低下のデバフを与える。

 

・〈真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)

信仰系第九位階魔法。最高位の蘇生魔法。

レベルダウンを最低限に抑えつつ、対象を蘇生させる。

ダウンするレベルは2だが、レベル100を蘇生させる場合はレベルダウンを引き起こさないことがほとんど。

これは、蘇生魔法は相手のレベルではなく、あくまで相手が溜め込んだ経験値を消費しているため。

レベル100だと莫大な余剰経験値を貯めていることが多いので、その分を蘇生で消費されてもレベルダウンまでには至らない。

……というのが本作独自設定。

 

・〈善なる極撃(ホーリースマイト)

信仰系第七位階魔法。???「〈善なる極撃(ホーリースマイト)〉を放て!」

神聖属性の攻撃魔法。相手のカルマ値によって威力が大きく上下する。

カルマ値が高い相手にはほとんど効果がないが、低い相手には格上だろうと有効なダメージを与えることが出来る。

 

・〈転移(テレポーテーション)

移動系第五位階魔法。系統に関係なく習得可能。

転移魔法。転移する距離が遠ければ遠い程、失敗する確率が上がる。

視界に映る範囲内であれば大体成功するが、遠くに転移するなら転移先の詳細な情報を術者が知っておく必要がある。

そうしないと転移位置が大きくずれたり、そもそも発動に失敗したりする。

……というのが本作独自設定。

 

・〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)

移動系第七位階魔法。系統に関係なく習得可能。

転移魔法。失敗しない〈転移(テレポーテーション)〉。

転移先の情報が曖昧でもほぼ成功する。

多少位置がずれることはあるが、発動が失敗することはない。

……というのが本作独自設定。

 

 

 

 

 

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