がんばれ聖騎士さん   作:アへ顔ダブルシールド

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いきry



竜王国でがんばれ⑥

───『ぷれいやー』

 

それはズバリ、この世界に転移して来たユグドラシルプレイヤーのことである。

 

プレイヤーは、およそ百年ごとにこの世界に現れると言われている。

レベル100のプレイヤーは、強さの水準がユグドラシルより遥かに低いこの世界で、神に等しい存在と言える。

 

プレイヤーに匹敵する力を持つのは、古の時代から生きている『真なる竜王』という強大な竜王達のみ。

 

しかし、そんな竜王達も『八欲王』によってほとんどが滅ぼされた。

『八欲王』は五百年前にこの世界にやって来た八人のプレイヤーであり、その圧倒的な力で世界中で暴れ回った後、最後は仲間割れの末に自滅していったという。

 

そして、スレイン法国の歴史では、六百年前に降臨した『六大神』が最初にして最も偉大なプレイヤーとされており、当時絶滅寸前の状況にあった人類を救済し、この地に人類繫栄の礎を築いたとされている。

 

スレイン法国は六大神が作った国であり、人類の守護と救済を目的として活動している。彼等が守るのは人類という種そのものであり、人類圏全てを守るために日夜様々な活動に従事している。陽光聖典が竜王国に派遣されて来たのもその一環だ。

 

とはいえ、スレイン法国も限界が近い。

六大神が残した遺産は減るばかりであり、人類圏全体を守護するには、とてもではないが戦力が足りない。

 

他国を頼ろうにも、そう簡単にはいかない。

 

様々な要因で腐りきってしまい、人類全体の癌になりつつある国*1。野望の為に他の人類国家へ戦争を仕掛ける国*2。宗教的に反りが合わないために足並みが揃わない*3など、様々な理由から人類全体が協力することが難しくなってしまっている。

 

このままスレイン法国が疲弊していき、万が一にも滅びるようなことがあった場合……人類の生存圏を維持することは出来なくなる。

残された人類国家が奇跡的に団結出来たとしても、スレイン法国の真似は出来ないだろう。人類圏はあっという間に異形種や亜人種に喰らいつくされ、人類は滅亡する。

 

 

「───ここで神とお会い出来たのは幸運……いいえ、きっと運命だったのでしょう。救済を求める我らの声を聞き届けた光の神が、お導きくださったに違いありません!」

「竜王国の兵士達を率い、ビーストマンを蹴散らすあなた様のお姿のなんと雄々しく、神々しいことか!まさに英雄を越えた存在、超越者すら足元にも及ばぬ偉大なる御方!」

「新たなる我らの神よ……どうか、人類をお救いください……」

 

陽光聖典の三人は跪き、祈るように手を組んでいる。

というか、祈っている。完全にアルフォスのことを神だと認識しているようだった。

 

「い、いや、感動しているところ申し訳ないが、私はプレイヤーではない。ユグドラシルではプレイヤーと共に世界中を旅していたが、私自身はただのNPCに過ぎない」

「えぬぴーしー……従属神様、ということでしょうか?」

「それでも、あなた様が神であることに変わりはありませぬ。我等が信仰する六大神に仕えた従属神様方の中には、仕える神に匹敵する力を持った方もいらっしゃったと聞きます」

「第九位階魔法を操り、味方に無敵の加護を授け、三千のビーストマン相手に無双する戦士としての強さ……これら全てを兼ね備えた存在が、神でないはずがありません」

 

『従属神』は、六大神に仕えていた者達のことらしい。

六大神が去ったあとは堕落し、魔神となって世界の敵になってしまったという。

 

アルフォスが聞くまでもなく様々なことを語ってくれたため、期せずしてアルフォスはこの世界に関する多くの情報を得る事に成功していた。

 

「違う。私はただの聖騎士だ。レベルは100……難度で言えば300はあるだろうが、ユグドラシルでは私より強い者は大勢いたんだ。とてもではないが、神などと呼ばれるような者ではないよ、私は」

 

これは事実だ。

ユグドラシルの世界には、相方である聖女を始め、自分より強い者はいくらでもいたのだ。

 

自分程度が神を名乗るなど、失笑ものである。

 

「……ところで、君達に一つ聞きたいことがあったのだが」

難度300!?やはり神に違いない───はっ、何でしょうか!?」

「神の質問に対し、お答え出来ぬことなどありませぬ!」

「何でもお聞きください!」

 

相変わらず跪いたままの三人に対し、アルフォスは何気なく一つの質問をした。

 

「陽光聖典は既にこの都市から撤退したと聞いていたのだが……君達三人はどうしてまだここに残っていたんだ?ここで何をしていた?」

「「「──────」」」

 

その質問を聞いた瞬間、三人の空気が凍った。

 

 

 

 

 

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結論から言おう。

彼等三人の目的は、都市の住人を生贄にすることである。

 

「生贄とは……どういうことだ?」

 

その言葉を聞き、無意識に軽い怒気を発してしまうアルフォス。

軽くとは言っても、レベル100の威圧は彼等三人に耐えられるものではない。

 

跪いた態勢から、今度は両手を床について頭を深く下げた態勢*4になった三人は、恐怖で震えながらも必死に語った。

 

「お、お待ちください!どうか怒りをお鎮めください!」

「り、理由があるのです!我等とて望んでいたことではありません!」

「全てを!全てをお話しいたします!嘘偽りなき真実を!」

 

そうして彼等は語りだした。

 

どうして都市に残っていたのか。

ここで何をしていたのか。

その目的は何なのか。

その全てを───。

 

 

 

 

 

───陽光聖典は金がかかっている。

 

第三位階が大成した魔法詠唱者(マジック・キャスター)であると言われるこの世界において、陽光聖典はエリート中のエリートが集まった超高級な部隊だ。

全員が()()でも信仰系第三位階魔法を使用出来、現隊長を筆頭として第四位階に到達した天才も幾人か所属。さらには、神官戦士として戦えるように肉体能力も優れている。

 

その上、全員が高い信仰心を持っており、厳しい訓練の末に人外染みた連携すら可能とするなど……とにかく、この世界の純粋な人間種としては上澄みも上澄み。全員が超人の超人部隊なのである。

 

だからこそ、そんな部隊を育成するには相応の金がかかる。

無論、維持するにも金はかかる。装備も上質なものばかりだし、ポーションなどの消耗品も全て超一級品。

 

陽光聖典は出撃するたびに多大な戦果を持ち帰るが、同時にスレイン法国の財政にダメージを与えてしまうのだ。

 

 

だからこそ、陽光聖典の価値は値がつけられない程に高く……時として、彼等を生かすための犠牲が必要となることもある。陽光聖典がいなければ、人類圏全体を守護することが困難であるために。

 

 

「───先行した陽光聖典本隊を確実に撤退させるべく、この都市の住人の避難を妨害し、ビーストマン襲来の際には魔法で負傷させ、身動き出来ない彼等を餌にすることで時間を稼ぐ……そのために、我等三人は残されました」

 

その言葉で、アルフォスはあることを思い出した。

兵士達から聞いたことだが、最後のキャラバンの出発が遅れたのは、原因不明の体調不良や、荷を運ぶ馬が言う事を聞かなくなったりなどが原因らしい、と。

 

恐らく、彼等三人が魔法で妨害していたのだろう。

 

彼等以外に魔法詠唱者(マジック・キャスター)はいないから気づかれる可能性は低いし、まさか今まで自分達を助けてくれた陽光聖典が、裏切り同然の非道を行うなど、兵士達は想像もしていなかったに違いない。

 

「……だが、それでは君達三人も生贄になるのではないか?ビーストマン達から逃げおおせる手段があるのか?」

「はい。我々三人はレンジャーの職業(クラス)を修めた、陽光聖典の中でも隠密工作を得意とする者です。本職のレンジャーには及びませんが、足もそれなりに速く、姿や臭いを消すマジックアイテムを持たされておりますので、我々だけなら逃走は容易なのです」

「………」

 

何気ない質問に対して帰って来た、重い返答。

思わず黙り込んでしまったアルフォスに対し、三人が恐る恐る口を開く。

 

「人類の守護を謳っておきながら、自国の部隊を守るために他国の罪なき民を犠牲にする……」

「我々は訓練によって、これらを必要な犠牲であると……割り切ることが出来るようになってしまいました」

「こんな我等を……軽蔑なさいますか?」

 

神に軽蔑されることへの恐怖か。

あるいは、新たな神が人類に失望してしまい、再び去ってしまう可能性に対してか……三人の声は哀れなほどに震えていた。

 

そんな彼等に対し、しばらく考えに耽っていたアルフォスが、ゆっくりと口を開いた。

 

「……褒められた行いではないな」

「っ!」

 

小数を犠牲にし、残りの大多数を救う。

それ自体は決して間違いではないが、聖騎士であるアルフォスにとっては、到底受け入れられるものではない。

 

しかし───。

 

「(……昔の、未熟だった頃の私であれば、きっと彼等を罵り、軽蔑しただろう。聖女様と、そして尊敬する()()()()と出会えなければ、今の私はなかった)」

 

目を瞑れば、かつての記憶が鮮やかに蘇る。

 

ありふれた聖騎士の一人として、燻っていた当時の自分。

そんな自分の手を取り、広い世界へ連れ出してくれた聖女の姿。

彼女が連れ出してくれたからこそ、様々な出会いを経験することが出来た。

 

聖女に守られてばかりだった弱い自分。

そんな自分に、守る者としての戦い方を教えてくれた、仲間思いの女騎士。

 

凝り固まった正義感に囚われていた当時の自分。

そんな自分に、高潔なる悪こそが、時として真の正義を生む礎になることもあるのだと、そう語った偉大なる魔法使い。

 

そして、純銀の聖騎士は教えてくれた。

聖騎士として、自分が進むべき道を───。

 

「………」

 

アルフォスは目を開き、三人を見詰めた。

 

彼等は嘘をつかなかった。

失望されるのが嫌なら、真実を語らなければよかったのだ。アルフォスは軽い気持ちで質問したのだから、嘘をつかれても深く追及はしない。

彼等が悪に属する者でないことは、聖騎士としての直感でわかっている。嘘だと察したとしても、何か理由があったのだと、納得するつもりでいた。

 

しかし、彼等は正直に全てを答えたのだ。

そこにこそ、彼等の根っこの性格が、善性が表れていた。

 

「褒められた行いではない───だが、君達が望んでそのようなことをしているわけではない、ということはわかっている。民を犠牲にする必要性に駆られるほど、人類そのものが追い詰められている……そうだろう?」

「っ!お、仰る通りです……!」

 

期待に声を弾ませる三人に対し、アルフォスは強く頷いた。

 

「軽蔑などしないさ。むしろ、こちらの認識が甘かったと思い知らされた。人類には最早、一刻の猶予もないとわかった……私も是非、人類を守るために君達に協力させてほしい」

 

その言葉を聞き、三人は深く頭を下げるのだった。

 

 

 

 

 


 

【登場人物紹介・ユグドラシル】

 

・聖女

プレイヤー。アルフォスを連れ出した人。

信仰系魔法詠唱者(マジック・キャスター)を極めており、最高位天使も召喚可能。

サポートはアルフォスに任せているので、実は攻撃系の魔法を豊富に取得している超攻撃特化聖女。現実(リアル)で護身術を習った経験もあるため、近接戦闘も得意な聖なる女ゴリラ。

 

イケメンに守られる自分、という状況に幸福を感じながら、敵をガンガンしばき倒す。

 

彼氏いない歴=年齢の人。

見た目が某聖棍棒聖王女とちょっぴり似ている。

 

・仲間思いの女騎士

プレイヤー。聖女の知り合い。

アルフォスに戦い方を教えてくれた……というのはアルフォス側の認識。

実際は、アルフォスの戦闘AIを組む際に色々と助言してくれた、というのが真実。両手に盾の戦闘スタイルも彼女から受け継いでいる。

 

昔使っていた盾を聖女に譲り、それが現在のアルフォスが持つ左手のタワーシールドの素材となっている。

 

・偉大なる魔法使い

プレイヤー。当時は酷い中二病を拗らせていた。

聖女と女騎士がガールズトークしている時に通りがかり、聞いてもないのに勝手に語り散らかして去っていった人。

この人のおかげでアルフォスは視野が広くなり、悪党相手でもまずは対話から入る、というスタイルになった。

 

・純銀の聖騎士

プレイヤー。人助け大好きな聖騎士。

聖女と女騎士がガールズトークしている時に通りがかり、聞いてもないのに勝手に語り散らかして去っていった人。

聖騎士として進むべき道……つまり、アルフォスの今後の職業構成について、聖女に好き勝手助言した。その際にお古の鎧を譲っている。

 

 

 

 

 

【装備紹介②】

 

[ブレッザ・マリーナ]

 

神器級(ゴッズ)のタワーシールド。

戦闘中に盾で敵を一定回数殴ると、HPの最大値を一時的に増やす能力を持つ。

こちらも全身鎧と同じくデータ容量が絶妙に少ないが、性能はアルフォスの戦闘スタイルと噛み合っているため、神器級(ゴッズ)としてそれなりの性能を誇る。

 

元は二つの盾を素材として作られており、仲間思いの女騎士から譲り受けたものである。

 

 

 

 

 

*1
リ・エスティーゼ王国

*2
バハルス帝国

*3
ローブル聖王国

*4
いわゆる土下座

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