与一が城に来るものの死角から弓を構えていると、少年が誰かをおぶって連れてきていた。
ユウスケ「あれは…」
信長「武者のようだな。」
与一が少年達に尋ねる。「何用だ?」
少年は与一の問いに理解しつ、恐る恐る答える。「これ、あんたらの仲間だろ?おい、連れて行くぞ。」
与一は少年に対し、「おい、置いて行け。帰れ。」と返答して少年達を帰らせた。
信長「あの倒れている武者を連れてこい。ユウスケ。」
ユウスケ「分かりました。信長さん。」
ユウスケは「役立たずだから捨て駒にされてるな」と思いながら、倒れている武者に近づく。
ユウスケはその武者の家紋を見る。「島津家のものか。血だらけだな。」
ユウスケは急いで担ぎながら与一と信長の部屋に戻る。
与一「重傷ですね。槍の傷が多く、このまでは失血死だ。血を塞がねば。」
信長「おい、未来人。治療できるか?」
ユウスケ「いえ、服の補修用に糸と針はありますが、傷を縫ったことはないですね。」
与一「こんなに細い針で身体の傷を縫えるのか…。」
ユウスケ「衣類用なので人の皮膚に使えるかは分かりませんが、何もしないよりましでしょう。信長さん、水の用意をお願いします。」
信長「あいよ。第六天魔王が小間使いみたいなことをするとは…無念。」
信長は文句を言いつつ、水を用意してくれる。
ユウスケ「与一さんは、水で濡らした布で傷を抉らない程度に拭いてください。」
与一「はい。」
ユウスケ「さて…と。」
ユウスケは人の治療などしたことがなかったが、ここに医師はいないため、仕方なく治療を行う。
幸いにも槍で切られた傷だけだったため、長時間かりながらも多くの傷を縫い終えた。
ユウスケ「裁縫すらあまりしないから、かなり雑になりましたね。後はこの武者の治癒力を信じましょう。内臓をやられていたら、どうしようもありません。」
信長「詳しいことは知らんが、馬糞とか傷口に塗らなくて大丈夫か?」
ユウスケ「未来の薬を塗ったので大丈夫です。(消毒液)」
ユウスケの荒い治療はなんとか終わり、その日はみな手術の疲れからか、寝静まった。
数時間後、ユウスケは叩かれて起こされる。
?「おい、起きんか。」
ユウスケは目を覚ますと、少し前に治療した武者が起き上がっていた。
それだけなら良かったが、その武者は刀を手に持ってこちらを向けている。
?「おまんは誰ぞ?」
ユウスケ「大学生のユウスケです。」
?「大学生?なんぞそれは?武者か?農民か?商人か?身なりは良さそうだから公家か?そうだろ?」
ユウスケ「いえ、勉学を修めているものです。」
?「えい、まどろこしい。勉学を生業としているなら学者だろ?そう言いばよか!」
ユウスケ「そんなことより、傷は大事ないですか?それに意識もこの数時間でよく回復しましたね。」
?「あ、この傷の手当てはおまんがやったのか。それについては礼を申す。」
武者は頭を下げると再び刀を向け、「ここはどこぞ?」と問う。
ユウスケは「私もよく分からない」と答えるが、武者は「知らんわけがなかろう。おまんは住んでいるんじゃろ?」と厳しく問い詰める。
ユウスケがその武者のやり取りに困っていると、後ろから信長が声をかける。
信長「まあ、そうかっかするな。若武者。そいつが言っていることは本当ぞ。それに命を助けてもらったんだから、もう少し優しくしてやれ。」
武者は信長の言葉に目を向け、再びターゲットを信長に変えて問う。「おまんは誰じゃ…ん?おまんの後ろにある家紋。織田の桔梗紋じゃな?お前、織田の残党か?」
信長「クッ、残党か。いや、俺が本物の織田ぞ。」
武者は信長の言葉に疑いの目を向ける。「何を言っておる。信長はかなり前に死んだはずじゃ。」
信長「それは何故か分からんが、今ここにいるんだよな。それにお前が少し前に死んだ俺に驚くなら、他にも驚くべき人がいるだろう。そこにおるだろ。」
与一「数年、数十年。そんなことで驚いてもらったら困りますよ。私は那須与一です。」
武者は驚き、さらに問いかける。「そんな、那須与一いうたら源平合戦の頃の武者じゃなか。」
与一「それに、あなたが最初に話しかけた御人も名前を言ってあげてください。」
ユウスケ「ユウスケです。信長さんの時代から400年ほど後からきました。」
武者は混乱しながら言う。「よんひゃくねん?織田と与一は亡霊で話がつくが、未来人とは、もしかして俺が亡霊か?」
信長「こいつは馬鹿か?まあいい。お主は誰だ?」
武者は誇らしげに言う。「おいは島津豊久。」
信長「島津か?あの九州の端っこ大名の?」
豊久「あー、おま、今薩摩のこと馬鹿にしただろ。」
信長はユウスケに向かって言う。「おい、コイツのこと知っているか?」
ユウスケ「はい、島津家久の子ども、島津豊久です。初陣は沖田畷の戦いで武功を上げ、関ヶ原の戦いでは叔父の義弘と共に日本史でも稀有の敵中突破の退却を完遂した武者です。ただ、豊久はそこで討死しているはずですが。」
豊久は興味深そうにユウスケを見つめ、「お前、なんで関ヶ原の戦いについて知っている?さっき井伊直政に鉄砲を浴びせたところよ。」
信長は軽く笑いながら言う。「だから言うたであろう。そいつは俺の時代から400年くらい後だと。お主が本能寺の後を知っているのと同じじゃ。」
豊久は信長の発言を無視してユウスケを真剣な眼差しで見つめ、「おい、ユウスケとやら。先ほど義弘どんが退却を完遂したと言ったが、真か?」
ユウスケは頷きながら言う。「はい、関ヶ原の戦いの後、島津家は数を減らしつ薩摩に帰還しています。貴方の母親に豊久はなぜ死なせたのか問い詰められたらしいですが、豊久さんは確か、死体は見つかっていないが島津の家臣に血に塗れた愛馬が見つかり、それにより死亡したと判断されているようです。」
豊久は嬉しそうに言う。「よか、やりおったか叔父義弘どん。義弘どんが薩摩に帰られたなら、我らの勝ちや!」
豊久は義弘が薩摩に無事帰還したのを知ると敵意以外の感情を皆の前で表してたためユウスケはホッとしていた。
原作読んでる?
-
読んでる
-
読んでない