豊久が敵意を示さなくなり、ユウスケは安堵していたが、与一が間に入って声をかける。
「人が増えて今晩の鳥が新たに必要じゃ。羽を毟りなさい。」
新たに4人になった一行は変わらず、今日も羽を毟り肉を食べる。
幾日かが過ぎ、豊久の傷も癒えた頃、豊久は変わらぬ日常を感じて次のような言葉を言い出した。
「この敵もおらぬ世界では手柄をあげる事ができん。何か起こらんものかの。」
与一が言う。「豊久殿が不吉なことを言うから、本当に起きているではありませんか。皆さん、こちらに上がってくだされ。」
豊久は驚いて言う。「なんぞ、なんぞ戦か?」
信長が続ける。「なんだ?なんだ?」
4人は廃城の上階に上がり、与一が指さす方向を見る。
ユウスケが言う。「火の手が…」
与一が確認する。「あの方向は先日豊久殿を運んできた、エルフなる種族の村じゃな。」
信長は目を凝らし、「ありゃ、戦闘じゃないな。村が襲われておるんじゃろう。」
豊久が決意を固めて言う。「受けた恩は返す。」そう言うと、当たり前のように二階から飛び降り、村に向かって走り出す。
信長は驚いて叫ぶ。「あのバカ、何の相談もなしに突っ込んでいった!」
与一が言う。「流石に見捨てる訳にもいかないですし、行きましょう。」
ユウスケは戸惑いながら言う。「戦闘経験がないんですけど…」
そう言いつつも、信長に服を引っ張られながら走り出す。
信長が言う。「お前、身長が誰よりも高いんだから、戦えば強いだろ。これでも持ってろ!」
信長はモップほどの長さの棒をユウスケに渡してくる。
ユウスケは困惑しながら言う。「あの、これ、丸太…?」
信長が続ける。「いいぞ、それ。そこら辺にあるし、替えも効いて殴られると痛い。敵を殺したら武器やるから、それで我慢してろ!」
与一が言う。「二人とも、豊久殿に追いつきますよ!」
三人は豊久のもとへなんとか追いついた。
信長が声をかける。「おい、豊久!こちとらジイだぞ。速度を考えろ、速度!」
与一が追いかけながら言う。「豊久殿、ユウスケ殿はお年はいくつですか?」
豊久が答える。「30だ。」
ユウスケが続ける。「20です。」
与一は二人の年齢を聞くと、何故か勝ち誇ったような顔をして走り続けた。
豊久が前方を指さして叫ぶ。「おっ!おったあ!」
その豊久の目の先には、数日前に豊久を運んでくれた少年達がいた。そして、その何も持たない少年を追い、今にも斬りかりそうな兵士の姿があった。
豊久が叫ぶ。「くそ、この足じゃ間に合わん!」
悔しがる豊久の横で、信長が言う。「なら、俺が貰うぞ。」信長は使い慣れた短筒を構え、一発放つ。
火薬の力で放たれた鉄の弾は、敵兵の頭を貫いた。頭を貫かれた兵は指揮官だったのか、あるいは前の兵士が何に殺されたのか分からず、後続の兵士達は驚きのあまり固まっていた。
豊久はその兵士達を見据え、「お前達の相手は此処ぞ。」と言いながら、敵兵士を横一閃にて斬りつけた。驚いている場合ではないのは理解しているものの、自身が経験していない味方の死に様に身体が動かず、あっという間に二人目の兵士も斬り捨てられた。三人目の兵士は、ようやく恐怖に勝ち、自身の剣を前に出して豊久の攻撃を辛うじて耐えた。
敵兵士は「お前は誰だ?」と言いたげに言葉を発するが、異なる言語のため、豊久には通じなかった。何を言っているのか分からず、もどかしさを感じる豊久は敵に詰め寄る。「お前、何言ってる?日本語を話せ、日本語! 話せんのなら死ね!」と叫びながら、敵と刀を合わせる。
刀を合わせている間、わざわざ話す時間を作られたと言わんばかりに、豊久は敵の言葉を最後まで聞き終え、剣ごと敵を斬り裂いた。
ユウスケが呻く。「いくら日本刀でも、あれほど切れ味なのか…」
信長が頷きながら言う。「いや、コイツラの剣を見よ。」信長は死んだ兵士の中から一つの剣を引き抜き、ユウスケに見せる。
「こいつらの剣、どうやら刀ほど丁寧には作られておらんらしい。耐久性はあるが切れ味は悪く、まるで鈍器だな。軍隊であろうがどうやら後方待機の新兵。まだ丸太の方が役に立つぞ。あとは豊久の才だろうな。」
ユウスケはその剣を見ながら、信長の言葉に納得する。「つまり、敵は武器の扱いにも慣れていないということですか。」
「その通りじゃ。だから狙いを定めて、素早く倒すのが重要だ。お前勝ち目はある。」信長は周囲を見渡し、注意を促す。
「ほら、逃げ遅れがそこにおるだろ。ユウスケ、やってみよ。」
信長はよい練習相手を見つけたが如くの目をして敵兵を見つめる。
どうやらユウスケの最初の相手が決まったようだ。
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