ユウスケは、心中に後悔を感じながらも、豊久の決意を無駄にしない覚悟を胸に、先を見据えていた。「今からでも帰りたい。だがもう馬車に乗ってしまったからな。」
ユウスケの用意した馬車は、2両の構成で、それぞれ6頭の鎧を付けた馬が引いていた。簡易的な漆喰の壁を用いた設計はまるで小さな城砦のようだ。
(馬車の様子はドリフターズ3巻162ページ参照)
先頭のユウスケの馬車は、屋根を外してガトリング砲を設置。複数の者が上に登り、周囲を見下ろしながら射撃できる状態に仕上げられていた。
「そらいけ!突っ込め!」豊久の指示で、2両の馬車は敵兵の群れに果敢に突入する。
「2人ほど給弾頼む!他の兵は正面の敵は俺がやるから馬車に近づく兵を頼む!」とユウスケが指示を飛ばす中、ガトリング砲を回して前方の敵を粉砕していく。
槍を構えたコボルト兵は次々と倒れ、馬車は弱った彼らを容赦なく踏みつぶしながら進む。
「おーやるの。敵兵が倒れゆくぞ。何処まで行くかの。」豊久はその姿に感嘆の声を漏らす。
「クロスボウ!馬をやれ!」とコボルト兵たちは叫び、クロスボウを構えて馬車の馬を狙う。しかし、鎧に守られた馬たちが多くの矢を弾き、馬車はなおも走り続けた。
「黒王様の元へいかせるな!」とオークたちが声を張り上げ、必死の防戦を試みる。
その光景を見ながら、エンズの面々は殿の様子を伺っている。
土方歳三は「ガトリングか、、退却先で使えばいいのにわざわざ突っ込んで来るなんて無駄遣い。あの島津の馬鹿がやってんのか、、、羨ましい。」と呟く。一瞬、函館の戦いの自分と、孤独に戦った過去を思い出す。
一方、明智光秀は「騎馬が突っ込んできている?そんなの敗残兵無視だ!あの魔王信長を追え!」と冷徹に指示を出す。
ジャンヌ・ダルクは遠くを見つめ、「遠くてよく見えないが、あの先頭の馬車ユウスケか?逃がしてやったのに帰ってくるとは。せめて楽に殺してやる。兵ども、私は戻る!勝手にしてろ。」
アナスタシアは仲間たちの異様な様子に気づく。「ジャンヌの様子が変ね。まさか戻る気?私は追撃を行うけど。」
それぞれが複雑な思いと決意を抱きながら、事態はます混沌とし、戦場の緊張感が高まっていった。
ユウスケらが真っ直ぐこちらに来るのを見て黒王は指示を下す。
黒王は、馬車を効果的に止めるべく指示を下していた。「馬にクロスボウを射ちかけ、車輪には槍を投げよ。機動力が無くなれば大した事ない。」
敵兵の動きが変わり、ユウスケはその意図に気づく。「明らかに馬と車輪を狙い出したな。」
戦場中央に差し掛かったとき、黒王軍の攻撃が馬車の機動を弱らせていく。精鋭兵が報告する。「投槍で車輪が1つやられたぞ!」
「1つだけなら問題ない!」とユウスケは前進を続けるが、馬車の馬がクロスボウに射たれ、一頭が耐えきれず落伍してしまう。
「ダメだ!落伍した馬の縄を切れ!」精鋭兵の指示が飛び、ユウスケの馬車の動きが徐々に鈍くなっていった。
「このまじゃジリ貧だな。」ユウスケは焦りをにじませる。
それを見かねた豊久が、ユウスケに声をかける。「ユウスケ、後はおいがやる!交代じゃ!」豊久の馬車が先頭に立ち、敵の注意を引き寄せる。
「ユウスケさん。豊久さんのお陰で敵兵がいなくなってます。あっ!」精鋭兵が驚きの声を上げた。
「どうした?あっ!」ユウスケがその視線を追うと、投槍で車輪が完全に壊れた豊久の馬車が見えた。
「不味い!幸いこっちはまだ動く。回収しに行くぞ!」ユウスケは馬車の向きを変えようと試みるが、豊久の声が戦場に響く。
「構うな!黒王の首取り行け!おいも後ろから行く!」豊久は自らの道を見定めた。
馬車からドワーフたちが降り、勇敢にも敵に突撃をかける。「鋒矢!」豊久の指示で一行は突き進む。
敵の中央を割るように白兵突撃を行う豊久とドワーフたちは勢いを増し、道を切り開いていく。
「側面に構うな!周りこませい!後に構うな!追うてこさせい!我ら好き好んで敵中に孤立す!!我も主らも死に損ない!晴れ舞台じゃのう!」
ドワーフの一人が冗句を投げかける。「お前さんどうしてドワーフに産まれてこなんだ!」
豊久が周囲を見ると、丘の上から信長と与一が見守っていた。「このまユウスケに追いついて黒王の首貰いに、、、ん?あそこにおるのはノブと与一か!退け言うたのにらしくない。」
豊久は笑顔で言う。「皆!手を振れ!達者でのー!」豊久とドワーフたちは手を振り、最後の挨拶を交わした。
丘の上の信長と与一は、その光景を見守り「、、見事。」とつぶやいた。彼らは、豊久の勇敢な行動に感銘を受け、ギリギリまでその姿を目に焼き付けた。
ユウスケは安堵しながらも緊張を維持していた。「とりあえずまだ生きてるようでよかった。」
黒王の本陣に近づいたユウスケらは、豊久のおかげで少ない敵を相手に、順調に進んでいた。
「豊久さんのお陰で兵は少ない。いけますぞ!!」精鋭兵たちは確信を持って進軍を続けた。
ユウスケは敵の本陣を見つけ、「あれが黒王の天幕か?」と静かに呟いた。彼らの目標は目前にあり、決戦のときが迫っていた。
黒王の天幕が近づく中、ユウスケと少しの兵が馬車から降り、残りの兵は馬車に残し囮として、走らせた。黒王本陣の兵たちは馬車の進入を阻むべく、追いかけてきていった。
ユウスケは少数の兵士たちを引き連れ、何もない本陣へと突入する。内部には静寂が広がり、緊張感が漂う。
「来たか。敗残兵達。」黒王は悠然とした声で迎えた。
「一人なのに余裕そうだな。」ユウスケは、黒王の冷静さに対して警戒を強めた。
「なに、銃を持っているとはいえ慌てる時間ではない。」黒王は余裕を見せつける。
ユウスケはその言葉を無視し、銃を撃つ。弾は黒王に命中するが、彼は微動だにしない。「何故だ。何故倒れない。」
「やはり、いいものだな主の能力は。」黒王の笑い声が響く。
ユウスケはその言葉を聞き、腑に落ちない気持ちを抑えきれなかった。「まさかと思うが、黒王お前は誰だ?何故そんな便利な能力がある?」
黒王は笑みを浮かべながら、「冥土の土産に教えてやろう。私の正体は」と言い、深く被っていたフードを脱いだ。彼の顔が月明かりに照らされ、ユウスケはその姿に驚愕する。
「赤毛?の外国人、誰だ?」ユウスケは一瞬、思考が停止する。
「まあ、現代の書物では紀元前の頃の資料などほぼ残ってないからな、仕方ない。私の名は、主、イエス・キリストの弟子の一人、ユダだ。」黒王は、自らの正体を公表する。
ユウスケはその言葉に衝撃を受ける。何が起こっているのか、混乱が広がった。「ユダ…?それは……」
「そうだ。裏切り者として名を馳せた私だが、未だに生きている。」黒王は自信満々に話し続けた。
ユウスケは頭の中で様々な情報が錯綜する。信じられない事実に直面しつつ黒王と対峙する。
ユウスケは黒王の正体に驚きながらも、その言葉を冷静に受け止めようとした。「キリストの弟子とてただの人だろ?」
黒王は静かに頷いた。「確かに私もただの人であった。主、イエス・キリストを喰らうまではな。」
その言葉を聞いた瞬間、ユウスケの身体から血の気が引き、背筋が凍る思いがした。ユウスケはキリスト教徒ではなかったが、キリストを喰らったと言い出す黒王に足をつけ絶望しながら話を聞き続けた。
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