菅野は、零戦を豪快に胴体着陸させ、その衝撃でコボルトたちを次々と引き倒しながら機体を停止させた。零戦はバラバラになりながらも、その姿勢はまるで何事もなかったかのようだ。
菅野は機体から勢いよく飛び出し、堂々と名を叫ぶ。「戦闘301空『新選組』隊長!菅野直!見参!!」
その余りにも唐突な登場に、周囲の面々は呆気に取られてしまう。空から降りてきた奇天烈な存在に、誰もが言葉を失っていた。
豊久は呆然としながらも、「ドワーフ親方どん、一体何が起きちょる。」と訊ねる。
ドワーフも困惑した様子で、「全く分からん。」と答える。
土方は不意に冷たい目で菅野を見やり、「新選組だと?お前がそんな訳が、、」と不信感を露わにする。
途中で言葉を切られた土方に対して、菅野は突然に返した。「あ?新選組知らねーのかバカヤロウ!日本刀持ってるのになんだオメーこの野郎。」
土方は心の中で苛立ちを隠せない。(俺らの新選組を名乗りやがって…殺す。)
菅野はなおも熱っぽく続けた。「新選組つーのはな。近藤勇率いる幕末の京の都を守ってたなんか凄い強くてかっこいい無敵剣士です。京の都を地獄に変えるフテーローシ軍団をバッタバッタと倒して小説にも映画にもなってるだろうが!子供だって知ってるぞ。」
これには、土方の召喚した煙の新選組たちも微妙な表情を隠せない。彼ら自身も感慨深く、この場に立っていた。
「そのクソ強い新選組にあやかって御国の空を守るウチが名付けられたってわけよ!!」菅野は誇らしげに、戦闘機の名前の由来を披露する。
彼の熱狂的な演説の中、コボルトたちは痺れを切らし、菅野を取り囲みにかる。
「ん?なんだテメーら!!やんのか!謎の言葉で話してんじゃねーよコラ!日本語話せないなら死ね!!」と、菅野はその勢いそのまにコボルトたちに立ち向かう。
「のらくろ兵団出撃!!」その掛け声と共に、菅野は新たに意気込んで戦場に飛び込む。
菅野の合図で、零戦から犬族と猫族の兵士たちが飛び出してきた。彼らは日本兵の服をまとい、三八式歩兵銃や十一年式軽機関銃を手にしている。
「ワンニャン軍団!攻撃開始!」菅野の号令で、犬族猫族は一斉に現代火器を用いて攻撃を開始し、コボルト兵たちを次々に制圧していく。
戦闘員の黒猫も銃器を構え、戦場を駆け巡る。その勇ましい姿に目を奪われる中、一人の煙の新選組が近づいてきた。それは沖田だった。
「黒猫、、、不吉、、斬る!」沖田は鋭い目つきで黒猫に向かい、声を上げる。
その様子に、土方は戸惑い、「沖田いるのか!」と何度も呼びかけるものの、沖田の注意は新しい戦況へと向いていた。
それに気づいた菅野は、土方に向かって声を荒げる。「お前のお化けウチの猫に何してんだ!」
二人の間で意見の応酬が始まる中、戦場の緊張感は一層増していく。
豊久は薄れゆく意識の中で、周囲の騒がしさに疑問を抱く。「なんじゃお前ら騒がしくしゅうて(鹿児島弁)」と、かすれた声で問いかける。
それを聞いた菅野は驚いた表情を浮かべる。「むぅ?鹿児島人?鹿屋かよここ。」
豊久は続けて、「やっと捨てがまれて死ねると思うたのに何邪魔してくれとる。」と呟いた。
この言葉に菅野は激情を抑えきれず、「あっ?お前今なんつった?やっと死ねるだ?コノヤロウ!!」と、怒りをあらわにする。
菅野は、豊久の発言に苛立ち、頭を思いっきり蹴る。「こちとら死にたくなくて死んだ奴散々見てきたんだぞコノヤロウ!!」その言葉には、菅野自身が抱える過去の重さが滲んでいた。
勢いで瀕死の豊久に鉄拳制裁を加え始める菅野を見かねたドワーフが、「あの、瀕死なんで止めてあげてくだされ」と、やんわりと諫める。
しかし、菅野は止まらない。「命を大事にしないやつは全員殺す!」と叫びつ、豊久を諭すためにほぼ制裁を加え続けた。
土方はその場に座り込み、懐かしい日々を思い出していた。「騒がしい、昔を思い出すな。騒がしくてバカらしくて、騒乱と喧騒の時代。なあ勇さん。俺達はどこでしくじったのかな。」と呟く。
その時、周囲ではドリフやエンズがそれぞれ思い思いに行動を起こしている。そこに犬族が息を切らせて報告に来た。「空神様!そろそろやばいです。敵がどんどん来る。」
猫族も慌てた様子で、「空飛ぶ鉄の舟で逃げましょう。」と提案する。
菅野は即座に反論する。「あ?降りる時にめちゃくちゃにしたんだから飛べるわけないだろう!」
猫族が反論する。「じゃあなんで無茶降りしたにゃ!」
「ノリだよ!バカヤロウ!!」と菅野が怒鳴る。
周囲の混乱の中で、ドワーフが叫ぶ。「やべえぞ!豊久こいつはバカだ!」
菅野はさらに怒る。「初対面の人間にバカとはなんだコノヤロウ!」
そんな声が飛び交う中、コボルト兵たちが迫ってくる。だが、土方は冷静にその場を見ると、自ら刀を抜き、次々とコボルト兵を斬っていく。
「新選組がいつしくじったか、妙な知恵つけてバカを止めた時さ。」土方は、少し笑顔を浮かべて述べた。その口元には、仲間たちとの日々を懐かしむような表情が浮かんでいる。
周囲の混乱とは裏腹に、彼の心の中には新選組の誇りと、仲間たちへの思いが生き続けていた。再び立ち上がり、戦闘の場へ向かう土方の姿には、昔の決意が色濃く宿っていた。
土方の背後にいるコボルトたちが、次々と吹き飛ばされる。皆がその方向に振り向くと、そこには晴明の洗脳によって操られている竜が姿を現した。
「たつお!生きてたんかワレ!」豊久は驚きの声を上げた。
その瞬間、豊久と菅野は可能性を見出し、同時に竜に乗り込む。「なんじゃ貴様!たつおはおいの馬やぞ。」と豊久が言うと、菅野は「なんだテメェ。空飛ぶものは全部オレのだ!」と反論。
菅野は豊久を蹴り飛ばし、手綱を奪い取った。「瀕死の奴に任せられるか!全員乗れ!ズラかるぞ。」菅野の指示に従って、犬族猫族、豊久、そしてドワーフたちが竜に乗る。
豊久は飛び立つ前に土方に問いかける。「来るか?」
土方は冷静に答えた。「行くわけねえだろ。」
「んだな。またな土方歳三!」豊久は竜の準備を整えながら笑顔で言う。
菅野は叫ぶ。「行け竜公!」
菅野の操縦のもと、竜はゆっくりと空に飛び立ち、戦場から脱出していく。空から見下ろすと、先ほどまで豊久と一緒にいたドワーフの遺体や、塹壕に横たわる人間やエルフの姿が目に入った。
豊久は心の底から謝罪の気持ちを抱き、「すまんの兵士ら死に損なった。」と呟く。
一方、土方はこの一連の光景を見つめていた。彼は静かに笑みを浮かべながら、「もう新選組が使われるのはうんざりだ。どこの誰にも。」と心の中で決意する。
土方は誰もいない方向へと歩みを進め、彼の背中は徐々に小さくなっていった。彼の存在は、いつしか影となり、忘れ去られていくのかもしれない。戦場の騒がしさが遠くに去っていく中、土方の心は新たな道を探し始めていた。
原作読んでる?
-
読んでる
-
読んでない