黒王との戦いに進展がある一方、ラスプーチンの方ではアナスタシアとユウスケの意見に相違が生じていた。
アナスタシアは、洗脳されている安倍晴明に手をかざし、氷漬けにしようとする。
ユウスケは見かねて、アナスタシアの手を掴んだ。
「何をするの?」とアナスタシアが問う。
「晴明を殺すつもりなのか?」とユウスケが返す。
「だって、自分の意思じゃないとはいえ、攻撃しようとしている。殺すしかないでしょう。」と彼女は反論する。
「晴明を殺せば、次は私かアナスタシアのどちらかが操られる可能性がある。無闇に殺せば状況が悪化するだけだ。」とユウスケは言う。
「、、。わかったわよ。仕方ないわね。」アナスタシアは能力の発動を止める。
横から見ていたラスプーチンが口を開いた。
「おや、殺らないのですか?わざわざ待っていたのに。」
ユウスケは応じる。「仲間を殺したところで、次はアナスタシアを洗脳操作するんだろ。」
ラスプーチンは冷笑しながら言った。「もっとドロドロした味方同士の殺し合いを見たかったのですが、仕方ありませんね。やってしまいなさい、晴明。」
「御意。」洗脳された晴明はユウスケとアナスタシアの前に立つ。
晴明は大量の札を飛ばし、ユウスケたちに向かって襲いかる。ユウスケは懐から火炎瓶を取り出して投げるが、燃やせたのはわずかな札だけで、多くの札が彼の方に迫る。アナスタシアはそれを助けんとばかりに、札一帯を凍結させた。
アナスタシアは息を切らしながら言った。「かなり体力を使ったから疲れた。私のやり方を止めたんだから、何か方法はないの?」
ユウスケは彼女を見つめて答えた。「急所は外すから、悪く思うなよ。」そう言って、ユウスケは晴明に狙いを定め、銃を放つ。
銃弾は晴明の肩に当たり、彼は倒れた。
ラスプーチンは嘲笑しながら言った。「あら、十月機関の長は案外脆いのか。」
ユウスケは走り寄り、晴明の身体を拘束しようとする。所持していたロープで縛ろうとしたが、晴明は異常なほど何の抵抗もしなかった。
疑問に思ったユウスケが見てみると、彼の銃弾の傷からは血が流れず、代わりにホロリホロリと彼の身体を構成する紙が崩れ落ちてきた。
「紙?いや、札か。」とユウスケは呟く。
ラスプーチンが続ける。「分身か。本体はどこに。」
晴明が嘲笑を浮かべ、言った。「全く。あの程度の術で私を洗脳操作したと思われるとは、随分と下に見られたものだ。」そう言って、彼はラスプーチンの横に落ちていた札から突如として現れた。
ラスプーチン「なっ!お前なんで動ける。」
晴明「君が洗脳したと思っていたのは、紙で作った私の人形だ。」
ラスプーチン「そうですか、、、わざわざ説明してくれてありがとうございます。」
ラスプーチンは隣にいる晴明に持っていたナイフで襲いかる。
晴明「君がやるか?」
アナスタシア「ありがとう。ラスプーチン、死になさい。」
アナスタシアはラスプーチンが晴明に襲いかる前に素早く凍結させた。
ユウスケ「終わった?」
アナスタシア「残りの力を使って凍らせたわよ。死んでる筈。」
ユウスケ「、、、念の為壊しておくか。」
ユウスケは凍ったラスプーチンの方へ近づく。
ユウスケ「ピクリとも動いてないや。イチモツだけでなく、次は全身が博物館にて保存されるのか。」
そんなことを考えていると、周囲に何か落ちる音がする。
皆がその方向を向くと、煙玉があった。
晴明「ラスプーチンだ!そいつは塩になってない!」
忠告の直後、煙があたりを覆う。
視界がない中、不用意に動かずにいたが、煙の向こうからアナスタシアの声がする。
アナスタシア「止めろ!このクソメガネ!」
煙が晴れると、そこにはアナスタシアを盾としてナイフを彼女の首筋に立てるラスプーチンがいた。
ラスプーチン「晴明!あなたとあろう人が気づくのに遅れたようですね!」
「あなたも分身の保険をかけたようですけど、私もなんですよ!」
晴明「クソっ!やられた。」
ラスプーチン「さあ皇女様!このま黒王様の元に行き、その身を捧げてもらいましょうか!」
アナスタシア「能力が使えれば私ごと凍らせるのに!殺せ!殺して!こんな奴の思い通りになるなら死んだ方がマシよ!」
ラスプーチン「暴れますね。アレクセイはもうちょっと聞き分けがよかったですよ。」
晴明「ユウスケ、私の分身のように撃ってあげてください。」
ユウスケ「晴明、何を言って、、、」
晴明「仕方ないじゃないですか!彼女が黒王に吸収されたらまた手のつけようがなくなる!急所を外せばいい。撃って!」
ユウスケ「すまない、すまない。」
ラスプーチン「正気ですか?彼女ごと撃っても私を一撃で倒せはしないんですよ。」
アナスタシア「構うな!撃って!こいつの側にはもういたくもない!」
ユウスケはラスプーチンをアナスタシアごと撃つ。
両者の身体に一つの銃創が出来る。
ラスプーチン「このまま黒王様の元に連れて行くのは無理か。ならばせめて死んでいただきますよ、皇女様!」
ラスプーチンはアナスタシアにナイフを突き立てる。
彼女は両手で顔を覆おうとしたため、ラスプーチンはお腹を刺す。
アナスタシア「ただで、、、ただでやられるか!!」
アナスタシアは刺されながらも手でラスプーチンの顔を掴む。
ラスプーチン「掴むな、もう死ぬんだよ!」
ラスプーチンは自身を掴んでくる手を何度か刺し、アナスタシアは手を引いてしまう。
最後にクビを刺そうとするが、ようやくユウスケと晴明が間に合い、ラスプーチンを蹴飛ばす。
ユウスケ「大丈夫か?」
ユウスケはアナスタシアに話しかける。
アナスタシア「大丈夫に見える?」
ユウスケ「いや。治療しようにも時間がない。」
アナスタシア「私もここまで遂に死ねるのね。最後は酷い姿だけど。」
ユウスケ「全身血塗れだが、最後まで意志を貫き、家族の恨みを晴らそうとした綺麗な姿じゃないか。」
アナスタシア「、、、。ありがとう。ほら、手土産よ。血、飲んで。私の能力あげるわ。」
ユウスケはアナスタシアにゆっくりと差し出された血濡れた手を取り、口にする。
その時、ユウスケの中には彼女の能力が入ってくる。
ユウスケ「ありがとう。」
アナスタシア「さあ、行って。まだ黒王が残ってるわよ。」
ユウスケ「ああ。終わったら必ず来る。せめてこれでちょっとでも持ち堪えてくれ。」
ユウスケは新たに授かった能力を使い、アナスタシアの刺し傷を凍結させて出血を防ぐ。
アナスタシアは去りゆく晴明とユウスケの背中を見つめながら、静かに目を閉じた。彼女の心には複雑な感情が渦巻いている。
「家族以外の誰かと、こんなにも深く繋がれるなんて。地獄に行くのは確定しているけど、願わくはもうちょっといたかったわね。」
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