ユウスケは、次弾装填しながら心の中で考えを巡らせた。
「致命傷は避けられたが、効果あるならこのまま、、押せるか。」
黒王は怒りを露わにし、杖を成長させた。
「舐めるな!先に潰せばいいだけだ!!」
彼の杖が、次の瞬間、ジャンヌとユウスケの心臓を狙って突き出る。ジャンヌの背中にいたユウスケは黒王の攻撃に気づいていなかったが、直視していたジャンヌはその危機を察知し、ユウスケを引き寄せる。
互いに貫かれ、手に小さくない傷を受けるが、まだ意識は保たれていた。
「幸い装填は出来た。これで当たれよ。」ユウスケは震える手で狙いを定める。
その時、信長が横から銃身を握り支える。
「それじゃ狙いがブレる。支えてやるからそのまま撃て。」
信長の支えを得て、ユウスケは安心感を抱きながら銃を放った。その瞬間、放たれた弾丸が黒王の心臓を捉える。
黒王は急いで杖を盾にしようとしたが、キリストの力を受け継いだ杖は悲鳴を上げ、遂に砕け散る。
「杖が、、、私の杖が、、、」
彼は絶望の表情を浮かべ、無力感に苛まれる。
信長が冷静に尋ねる。
「まだ動ける奴はおるか?」
ユウスケは痛みにこらえながら答えた。
「ジャンヌと俺は生きてるが、動けない。」
その瞬間、豊久が重い身体をゆっくりと起こしながら言った。
「生きとるぞノブ。」
信長は状況を見極め、冷静に状況を分析する。
「もう黒王は普通の人だ。ラスプーチンの能力はあるだろうが、アレには制約がある。誰でも彼でも操れるならドリフに自殺させればいいだけだしな。」
黒王は無力感の中で苦悶した表情を浮かべる。
「これではもう奇跡が、使えない。生き延びても民を救えない。殺れ。」
信長は冷静な語調で問いかけた。
「黒王、、お前は奇跡に固執したが、本当に必要だったのか?」
黒王は驚き、少し警戒しながら尋ねた。
「どういう意味だ?」
信長はその意味を噛み砕くように言った。
「奇跡など起こさずとも人の腹は減るし、欲が起こる。その欲のために働き続ける。欲こそが人間の動力源なのに、奇跡を起こしその欲を満たしたとしても、欲は永遠に終わらぬ。」
彼は黒王をじっと見つめ続ける。
「貴様も終わらぬ欲に限度があるから、バケモノに農業を教えようとしたんだろう。」
信長は続ける。
「仮に神がいるとして奇跡を起こしたのなら、それは人間に欲を与えたことに他ならない。何も持たない人が欲のために動き出したのだ。」
「奇跡は既に起こされていて、貴様が行ったのは奇跡を模した逆の行動だ。」
黒王は思慮にふけり、呟いた。
「キリストの奇跡を起こさぬ答えは既にあったからということか。」
その瞬間、豊久が割り込む。
「もうえか?クビ貰うぞ。」
黒王は何も言わず、毅然とした様子で応じた。
「構わん。神が人に干渉するのは間違いという訳か。」
豊久が静かに一振りし、黒王はその刃を受けて倒れた。
世界が瞬間的に変わり、豊久が黒王を倒した直後に、石の扉が出現した。ドリフたちと生き残ったエンズたちは、その扉に吸い込まれていく。
扉の中に入ると、ユウスケ、信長、豊久、与一、キッド、ブッチ、サン・ジェルマン、菅野直、山口多聞、ジャンヌ、アナスタシア、源義経、ハンニバル、スキピオ、アレスタ、フラメルが集まっていた。
与一が目を丸くしながら言った。
「おや、ここは。最初の空間。」
菅野は苛立ちを隠せずに叫ぶ。
「どういう事だ馬鹿野郎!!」
源義経は驚きながら言う。
「互いに勢ぞろいだね。」
ドリフたちが戸惑いの表情を浮かべる中、正面には紫とEASYの二人が拍手していた。
紫が笑顔で言う。
「お疲れ様。」
EASYが続けて言う。
「お疲れちゃん。」
サン・ジェルマンが二人に向き直り、微笑む。
「久しぶりね、紫にEASY。」
信長は不安を隠せずに尋ねる。
「知り合いかお前ら?」
サン・ジェルマンは首を振る。
「嫌ね。前回の時に会っただけよ。」
EASYが眉をひそめて言う。
「うっさいわね、殺されたいの?」
紫は腕を組みながら言った。
「EASY、少なくとも今の君には何も決まらないだろ。」
EASYは少し考え込み、ため息をつく。
「そうね、とっておきを殺されたんだから。」
豊久が気になって尋ねる。
「どういう事だ?」
アナスタシアは混乱し、戸惑いながら言う。
「なんで私は生きてるの?」
与一は少し困った顔をして答える。
「記憶にないですか?私が気絶していたあなたの傷を縫っていたのですけど」
信長は彼らのやり取りに苛立ちを感じ、声を上げた。
「あーもー!お前ら黙れ!」
彼は皆の注意を引くように言った。
「せっかく、黒王を倒したんだ。教えろよ。この世界の事を。」
紫が話し始め、全員の注目を集める。
「いいだろう。この世界についてを。」
「神は奇跡を起こし、大地に生命や緑を創り出していった。しかし、神はしばらく人に預言や奇跡を与え、人間を見守っていた。しかし、ある時、終わりのない状況に気づいた。」
「そのため、神は人間に欲を与え、自立を試みた。結果として、人間は不器用ではあるが試行錯誤を繰り返し、繁栄していった。」
EASYが話を加える。
「だけど、愚かにも人間が身内同士で争い始めたから、神は再度介入するべきか迷った。」
紫は続ける。
「その時に判断を任されたのが私と彼女だ。このま人間を争わせるか、神の介入を入れるかで。」
EASYが言う。
「私たちも判断に迷ったけれど、実験を行うことにした。別世界を用意して、神に準じた存在を投入した。」
EASYは強調する。
「私と紫の最高傑作にして、あんたらの言う最初のエンズ、イエス・キリスト。神に近しい能力を持っていたわよ。」
紫が続く。
「彼はドリフ世界において悪い影響をもたらした。その対の存在として、奇跡とは真逆の存在、ドリフを同時に投入した。」
EASYは思い出して言う。
「始めはドリフもエンズも争ったけど、今ほど凄惨ではなかったかしらね。」
紫が判断を示す。
「神の世界への介入はなしだと判断し、私は一度元の世界に返した。」
ジャンヌが加わるように言った。
「それが私たちの世界のイエス・キリスト。ドリフ世界ではいい結果は出なかったが、こちらでは人々を救った。」
紫は語る。
「再度、検証を図るためにキリストを呼び寄せた。だが、、、」
EASYは続けて言う。
「来たのはユダって訳。最初は驚いたけど、私はありだと判断した。」
紫は反論する。
「私は無しだと判断した。簒奪された力などあり得ない。」
EASYが押し問答する。
「固いわね。キリストで失敗したのは人の目につかないように力を振るったからで、ユダなら上手くやると思ったのよ。」
紫はユダの扱いについて説明する。
「異質の存在であるユダを私たちは生死の介入ができず、ドリフ世界に留め置き、ユダを殺すためにドリフを投入した。」
EASYが逆転の発想を披露する。
「私は逆にエンズを招集して力を与えた。ユダ以降の能力者が彼ほどの力でないのは紫の力が入ってないからよ。」
紫はその後の展開を語る。
「その後、君たちも知っての通りだ。能力を持たない人間の知恵であるドリフと、能力を持つ神の恩恵を受けた存在のエンズ。争いが始まった。」
EASYが残念そうにため息をつく。
「エンズが纏まって動いてくれたら良かったんだけど。」
紫が冷静に答える。
「彼らは駒ではない。1人の人間だ。私たち神に準ずる者の制御は意味をなさなかったという事だEASY。」
ユウスケが疑問を投げかける。
「死んだドリフやエンズはどうなったんだ?」
EASYは明快に答える。
「エンズもドリフも向こうで死んだようなものだから、こちらで死んだらもう終わりね。極楽浄土という奴よ。」
紫が補足する。
「逆に生き残ったなら再度帰る事も可能だ。」
サン・ジェルマンが問いかける。
「でもそれって、その代償があるんでしょう?」
紫は頷く。
「代償として、元の世界の今の期日にしか帰還できない。帰る場所も選べない。」
サン・ジェルマンは深く考える。
「あんたらも無責任よね。使うだけ使って、帰す時には時間も場所も、知らない所で、今地球は何年なの?」
紫が冷静に答える。
「西暦で言うなら2025年だ。」
サン・ジェルマンは驚いて言う。
「みんなに分かりやすく言うと、1000年だったり数百年後と言うわけよね。」
ユウスケが真剣な表情で続ける。
「ガチガチの社会制度に固められた現代に帰還したら、どうなるんだ?」
サン・ジェルマンは肩をすくめながら言う。
「浮浪者や無戸籍でしょうね。確実に。黒王やラスプーチン、私なんかはまだ戸籍制度もなかったり、ゆるゆるだったりしたから帰る選択肢もあったけど。」
ユウスケは自分の状況を考えます。
「選ぶとしたら、残留だな。」
サン・ジェルマンは同意するように頷く。
「そうよね、ユウスケあんたならまだ数年後だから、帰れるんじゃないの?」
ユウスケが苦笑いしながら答える。
「いや、現代日本なら既に僕に関係あるものは処分されてるだろう。」
残りのドリフたちも、それぞれに思いを巡らせる。
「私たちが帰ったとき、どんな世界が待っているんだろう?」
「選択肢はあったけど、どうするべきか…」
少しした後、全員が残留の道を選んだ。多くの者は、ガチガチの社会制度の中で生きていくのは無理と判断した。
サン・ジェルマンはユウスケに向かって言った。
「アンタも残留でよかったの。今なら行方不明者扱いだから戸籍もあるし、海外でも大使館に言えば帰還出来るじゃない。」
ユウスケは少し考え込むように目を細めた。
「帰れるかもしれないですが、この世界で関わってきたみんなもいるんです。新しく生きていきますよ。」
サン・ジェルマンは肩をすくめつ、冷静に続ける。
「そう、ドリフ世界でもこの後は悲惨よ?崩壊しているオルテに各勢力の諸部族連合国家、古代中国並にカオスね。」
ドリフの仲間たちは互いの顔を見合わせ、少しの間話し合った後、元いたドリフ世界へと戻された。
信長は仲間の無事を確認し、嬉しそうに言った。
「傷が癒えてるな。お前らも無事か?」
豊久は穏やかな表情で返答した。
「おう。結局、晴明は亡くなったようじゃの。供養してやるか。」
しばらく待機していると、与一の兵士たちが姿を見せた。
与一が明るい声で呼びかける。
「おーい!無事でしたか。帰還したんじゃないかとちょっとだけヒヤヒヤしてましたよ。」
同じく軍にいたオルミーヌは、晴明の遺体を見て駆け寄る。そして、ユウスケが周囲に目をやる。
「これからどうします?」
信長は考え込みながら口を開いた。
「オルテの解体、領土の縮小に、国の再建に、、、やる事が多すぎる。」
与一が明るい声で答える。
「まあ、何とかなりますよ!」
豊久は自信に満ちた声で応じる。
「ノブ!まかせたぞ!」
信長はため息をつきながら言った。
「なんで俺だけだよ!ユウスケお前も来い!ミルズも呼んで作戦会議だ!」
ユウスケは肩をすくめつ呟く。
「黒王を倒したのに、やる事が尽きなさそうだ。」
その賑わう様子にユウスケは少しの落ち着きを見せる。
その時、アナスタシアが彼を呼んだ。
「ユウスケ。」
ユウスケは微笑みを浮かべて返す。
「アナスタシア、無事だったか。」
アナスタシアは真剣な眼差しで続けた。
「うん。あのね。私の血、あなた飲んだでしょ。だから、あなたも私と同じようなもの、血を分けた者同士。だから一緒にいるべき。」
ユウスケは混乱しながら言った。
「ちょっと何を言っているか分からない。」
その様子を見てジャンヌが笑いながら言った。
「ユウスケ、とりあえずYESと言ってやれ。アナスタシアを泣かせたら斬る。」
ユウスケは渋々、頷く。
アナスタシアは喜びを浮かべながら言った。
「これで、、私達一緒、もう離さない。」
彼女はユウスケの腕を強く握りしめた。
彼らの運命がどのようになるのかは分からないが、死を迎え1人になる恐怖からは、一時の間、離れられるだろう。仲間と共に忙しくしながらユウスケのこれか、は続いていく。
EASYは紫を見つめ、疑問をぶつけた。
「紫、結局あの男誰なの?元の世界では何もなしてない人間じゃない。」
紫は静かに思索し、そして答える。
「何もなしてない人物でも、ここまで変化をもたらした。欲の存在が、人間を完成されたものとしたのだろう。その証明のための何もなしてない彼であった。」
EASYは思わず口元を緩ませる。
「ふーん。とっておきの黒王は死んだけど次は負けないんだから!」
紫は微笑みを浮かべ、肯定的に頷く。
「そうだな。検証のためには複数回の実験が必要だ。」
ご愛読ありがとうございました。
当初はここまで読者が増えるのを想定していませんでした。
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お気に入り、コメント、読むだけでもここまでありがとうございました。
小説はここで終わりですが、この世界の設定などを更新予定です。
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