オルミーヌと連絡を取る十月機関の長、北方砦にいる安倍晴明は、現実を受け入れたくない思いを胸に抱きながらも、目の前に迫る危機を無視するわけにはいかなかった。
「来たか?」晴明は緊張を孕んだ声で問いかけた。
「まだ見えませんが、かなりの気を感じます。」十月機関の部下が答える。その言葉には、不安が色濃く滲んでいた。
砦の兵士は不敵に笑いながら言った。「カルネアデス砦は今まで落ちたことはない。十月機関の方々は何を心配しているのか!」
「奴らが向こうに追いやられて数百年、あいつらに何ができるというのだ?」別の兵士が同調し、侮蔑の眼差しを向けた。
晴明は内心でため息をつき、周囲の状況を見渡しながら、言葉を続けた。「ここはだめだな、こいつら。やはりドリフがでなくては。」彼の意図は明瞭だった。
「指揮所の方へ?」部下が確認する。
「ああ、ドリフが指揮を取らねば滅ぶ。」晴明は確信を持って答えた。
指揮所では、不穏な怒号が十月機関に飛んでいた。「馬鹿を言うな!何故我々の指揮をそいつらに渡さねばならぬ!」砦の指揮官は憤怒の声を上げる。
「しかし、渡さねば負けます。」十月機関の部下は焦燥感を含めて反論するが、指揮官は聞く耳を持たない。
「ただの魔導結社ごときが、こんな小汚いジジイに何ができる?」不屈の意志を感じさせる発言だった。
その時、古代ローマの服を着た金髪の男、スキピオ・アフリカヌスが口を挟んだ。「お前らは一体なにで揉めてるんだ?」
「ここの指揮権を貴方がたに渡そうと。」十月機関の部下が告げる。
スキピオは驚きながらも冷静に言った。「そんなの無理だろ。俺はこいつらにとって無関係な人間だ。」
その瞬間、戦の準備が進む中、片目を隠した老人ハンニバル・バルカが唐突に言い出す。「おしっこ出そう。」
「バカっ、我慢しろ。そんなみっともないもの見せんな!」スキピオは思わず声を荒げた。
しかし、ハンニバルは我慢できずに、つい漏らしてしまった。その様子を目にした砦の指揮官は笑いを堪えきれず、声を響かせる。「まだ弓兵一部隊なら指揮させようかとも考えたが、そんな痴呆老人には何も出来まい。」
ハンニバルは下を向き、周囲の嘲笑を耐えるしかなかった。
しかしスキピオは堪忍袋の緒が切れ、指揮官の胸ぐらを掴み言い返す。「こいつはなおお前が笑っていい相手ではないんだ。こいつはな、100万の敵をも恐れぬ最強国家を一人で恐怖に叩き落とした凄えやつなんだ!」
その言葉が場に重くのしかかり、指揮官は無言になり、場が静まり返った。安倍晴明がその静寂を裂くように口を開く。「これ以上は無駄のようだ。避難しましょう。」
晴明がドリフたちの避難を決定した刹那、報告が入ってきた。しかし、その内容は何故か途切れ途切れで、まともに聞くことはできなかった。
「魔導妨害だ!来るぞ!」晴明は焦燥感を隠さずに叫んだ。
彼が地面に目をやると、そこには大地を埋め尽くすほどの規模の軍隊が押し寄せていた。コボルトやオークの大軍勢が、獰猛な気配を放ちながら迫っている。空を見上げれば、飛竜たちがその翼を広げ、戦闘の準備を整えていた。
辺りには逆さ十字、新選組、ロマノフ王朝、さらにはフランスの旗まで確認でき、その壮絶な光景に晴明も息を呑む。「これは…!」彼は急いで状況を整理しようとした。
その時、黒王鳥の声が響いた。「御親征、御親征!黒王陛下の御親征。御親征の時来たり!」彼の声は、周囲の空気を一層引き締めた。「耳あるものは聞け!目あるものは見よ!口あるものは吼えよ!」
晴明はその言葉に怒りを覚えつも冷静さを保ち、黒王を睨みつけた。「そんなに憎いか、黒王。ドリフも、世界も何もかも。」
黒王は手を前に突き出し、指を指して人類を示した。「死を。」その言葉と共に、全軍勢が一斉に砦へ向かって襲いかってきた。
「土方、ジャンヌ・ダルク、アナスタシア。行け。お前は好きにせよ、源義経。」黒王は命令を下し、士気を鼓舞する。
義経は冷静に答えた。「そうさせてもらうよ。」
砦に向かう黒王の恐ろしい姿を、晴明の視界の隅で、ワイルドパンチ強盗団の2人が目撃していた。
「あーあ、終わりだなこの砦。もう俺らだけで逃げるか?」ブッチが無気力に呟く。
「そのつもりはないんでしょう。」キッドは肩をすくめる。
「いやもう終わりだ。最後に煙草が吸いてぇ。寄越せよ。」ブッチは不満を漏らした。
「やれやれ、それが理由ですか。それに、とっくに無くなりましたよ。」キッドは冷たく返す。
「嘘だテメェ。最後の二本隠してんだろ。いつ終わるか分かんねえんだからいいだろ。ワイルドパンチ強盗団には今日しかねえ。」ブッチは必死に言い募った。
そんな会話をしていると、急いで駆け抜けてきた安倍晴明とスキピオ、ハンニバルが姿を見せた。
「もはや一刻の猶予もない。ハンニバルとスキピオさん、馬車に乗ってください。キッド、ブッチさん、よろしくお願いします。」晴明は命令口調で叫ぶ。
「荒々しいけど我慢しろよ。」ブッチは不安そうに言った。
ドリフたちは、迫り来る敵の波を背に脱出を図る。
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