幼い頃から憧れている女性は母の親友   作:雅鳳飛恋

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第7話 駄目男製造機

「――それで氷室君の好きな下着はどういうの?」

 

 すっかり話が逸れてしまったが、いま有坂が軌道修正した質問が本来の話題だったな……。

 

「わたしに似合いそうな下着でもいいよ?」

「俺が好きなのはセクシーなやつだな。なんなら思いっきりエロいやつでもいい」

「相変わらず正直だね……」

 

 包み隠さずに真顔で答えると、有坂は呆れたように苦笑する。

 

「今更お前に性癖を隠す必要なんてないだろ?」

「確かにそうだけど、堂々としすぎでさすがに面食らうよ……」

 

 セフレとしていろいろヤっているのだから、この期に及んで恥ずかしがるようなことなどなに一つとしてない。

 

「有坂なら色は黒がいいんじゃないか? 俺も好きだし」

「黒かぁ~」

「不満か?」

「ううん。ただ、黒のえっちな下着って、わたしにはまだ早いんじゃないかな、と思っただけ」

「似合うと思うけどな」

「そう?」

「ああ。俺の見立てに間違いはない」

 

 一見すると、有坂は清楚な印象がある。外見だけの話ではなく、内面も含めてだ。

 そんな彼女がセクシーな下着を身に付けていたら、ギャップがあって堪らないだろう。

 

 衣服の下に隠れていて普段は見ることが叶わないからこそ、神秘に満ち溢れていて男心を(くすぐ)られるはずだ。思春期真っ只中の男の妄想力は凄いからな。()()()()に直結するから尚のこと。

 

「正直言うと、セクシーな下着を身に付けているお前の姿を見てみたいと思った」

「それは……いつものわたしだと不満ってこと?」

「いや、もちろん普段着ている下着も好きだが、いつもとは違う姿のお前を見てみたいという贅沢な欲望だ」

 

 窺うような視線を向けてくる有坂に、俺は首を左右に振りながら答える。

 

 有坂が普段身に付けている下着は、俺が好きなエロいやつではない。わりとセクシーな下着の時もあるが、そこまであからさまな物は持っていない。――彼女が持っている全ての下着を把握しているわけではないから断言はできないが。

 

「あ~、マンネリ防止ってやつ?」

「……俺に見せる前提なのか?」

「あれぇ、見たくないのかな~?」

「――見たいに決まってるだろ」

 

 有坂がコテンと小首を傾げたと同時にそう答えると――

 

「――そ、そんな食い気味に返されるとは思わなかった」

 

 気圧された彼女が目を(しばた)いた。

 

「それにマンネリ防止って言われると、俺がお前に飽きてると思われているみたいなんだが……」

「ふうん、飽きてないの?」

「飽きるわけがない」

「……氷室君って、思いの(ほか)わたしに夢中だったりする?」

 

 俺が力強く断言すると、有坂は先程とは反対方向に首を傾げながら意外そうな顔で呟いた。

 

 確かに自分でも意外なほど反射的に答えていたが、男なら誰だって俺と同じ反応をするのではないだろうか?

 有坂ほどの美少女に飽きる男なんているはずがない。女性ですら見惚れてしまうような美少女だぞ?

 

 恋愛対象として好意があるかないかは別にして、彼女に飽きてしまう男がいるなんてことは到底想像がつかない。

 

 いや、恋愛感情が介在しないほうが飽きないのかもしれない。恋愛はいろいろと面倒事がつきまとうから、(わずら)わしい関係や感情がないほうが、余計なことを考えずに純粋に楽しめるのではないだろうか?

 

 恋愛を(こじ)らせている俺にとっては、有坂との都合のいい関係を余計な手間なく堪能できるのだから、尚更飽きる要素なんて存在しないのだ。

 

 だからこそ彼女に溺れてしまっていて倦怠期とは無縁なのかもしれない。――まあ、罪悪感は募る一方だが。

 

「そうだな。少なくとも今はお前がいないと俺は現状に耐えられん」

「ふふ、困った人だね」

 

 俺はクズ男の定番のような言葉を口にするが、有坂は軽蔑することなく、微笑みながら慈愛の籠った眼差しを向けてくれる。

 

 その温かみのある視線が、クズな自分を肯定してくれているような気がして少し心が軽くなった。

 とはいえ、クズなのは変わらないので勘違いしてはいけない。彼女は肯定してくれていたとしても、世間一般的な価値観では間違いなくクズなのだから。

 

「じゃあ、そんな氷室君のために悩殺できるような下着を選んであげる」

 

 有坂は軽快さと妖艶さを兼ね備えた口調でそう言うと――

 

「たまには趣向を変えてみるのも一興ってね」

 

 とウインクを飛ばしながら言葉を付け加えた。

 

「……」

 

 百戦錬磨のサキュバスに心を囚われてしまったような夢心地の気分に陥った俺は、なにも口にすることができずに押し黙ってしまう。

 

 まんまと魅了の魔法に掛かった俺の様子に、有坂は気づいているのかいないのかわからないが、一見すると気に留めていないように見受けられる。

 

 そんな彼女は軽く髪を掻き上げた後に、再び口を開く。

 

「でも、氷室君が求めるような下着がこのお店に置いているかはわからないから、あまり期待はしないでね~」

 

 そう言葉を残すと、軽い足取りで店内を散策し始めた。

 

 俺が言うのはなんだが、有坂って駄目男製造機じゃね……? 

 

 泥沼に嵌まっていくような感覚が癖になりそうで、クズ男への道を突き進むことに抵抗感が薄れていく。

 

 これではますます彼女に溺れてしまいそうだ。本当に彼女なしでは生きられなくなってしまうかもしれない。

 

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