「それは僕から全ての喜びを奪った」
「また何かに影響されたのか?」
妹は何かに影響されやすい奴だった、だからたまに脈絡もなくこんな事を言ってきてた。
そんなことを今、思い出した。
「ねぇ、お兄ちゃんはさ」
「死んだら何処に行くと思う?」
「さぁな、お前は?」
「私?私はね─────」
あの時、お前はなんて言ったっけか。
どうしても思い出せないよ。
けど、良かった。
その答えのひとつに俺は辿り着いたらしい。
次にあった時にでも話してみようと思う。
妹よ。
「うぉぉぉぉぉおおぉおおおああああああああぁぁぁ!!!!!!」
───死んだら、異世界の上空へと転生するらしい。
「あんのクソ女神!何が転生だ!」
こういうのって大抵街の中とか、新しく生まれるとか、兎に角地上で目が覚めんのが定石じゃないのか!?
……とにかく、今は生きることを考えよう。
あたりは一面木ばかり、木をクッションにするか?
「けどこの高さじゃな…」
それにそんな漫画みたいな事出来るわけが…
…そういえば、あのクソ女神、この世界には魔法があるって言ってたよな。
「…翼よ!生えろ!」
シーーーーン………
「ダメか!なら浮け!飛べ!うぉぉぉぉ!!!」
だ、ダメだぁ…、ぶつかるぅ…俺の2度目の人生終わるぅ…まだ妹を探すとかじゃない所で死ぬぅ…
──────────あ、地面が。
ドグッオオオオ…ン!
「べげ!」
そうして空から降ってきた少年は木に捕まる、なんてできるはずもなく。
思いっきり地面へと激突した。
◆◆◆◆◆
「──き──」
「…うっ…」
「おき──さ」
うるさいな…もう少し…寝させて…
「起きなさ─」
…こっちは散々な目にあって疲れてんだ、もうちょい寝させてくれても…
「起きなさい」
「うげ!」
バチコーン!と。
少年の頬にほうきの棒が勢い良く叩きつけられた。
「な、何が…あれ?俺は…」
死んだはずじゃ…
「…どうでもいいけど、早く出なさい」
透き通るような少女の声に少年は応える。
「あ、ああ…って、えぇ!なんじゃこりゃ!」
見事に、と言うべきかは分からないが。
少年の体、より具体的に言えば頭より下全部が地面の中にすっぽりと埋まっていた。
「うぐぐ…抜け、ねぇぇぇ…」
「…魔法、使えば?」
「使えねぇぇんだ…よ」
「魔法が使えない?」
魔法が使えない、そう言った途端に少女の声は困惑の声に変わった。
まだ分からないけど、もしかしたら魔法はこの世界では結構一般的なものだったり?
「…なるほどね」
少女は何か納得したような声を上げると、その直後に指を回し何かを唱えた。
「デイクス」
少女が唱えた直後、少年の周りの岩や土が振動する。
グゴゴゴゴ…と、音を響かせながらいつの間にか少年を中心に円型の穴が出来ていた。
「ほら、これで出れるでしょう」
「あ、ありがとう…」
「礼には及ばないわ。
そんな事より、あなた本当に魔法を知らないの?」
三角帽子に、長い神々しさを感じられる白い髪、そして手に持つほうき。
まるで魔女と言われても不思議では無い少女はこちらに尋ねた。
「知らない、そもそもこの世界には今来たんだ」
「……」
「それは嘘ね」
はぁ?いきなりなんなんだこいつ。
「いや嘘って…確かに信じられないかもだけど…」
「その剣、後ろの剣よ」
「…剣?」
…確かに、今まで必死だったからか背中の重さに気づけずにいた。
確かに少年が背負っていたそれは見事なまでに白く、美しい刀身をした物、剣だった。
「それに魔力を感じるの、それも私に似た」
「答えて、貴方は誰?その剣を何処で手に入れたの?」
「返答次第じゃ…貴方を殺すわ」
「ちょ、ちょっと待てよ!そんないきなり…っ!」
前の人生では喧嘩とか殺し合いもした事ない俺でも分かるほどの殺気…!?まるで見定めてるみたいだ…!
「……」
以前少女は箒の先端を少年に向けている、魔法か何かで少年をいつでも殺せるように。
逃げるか…?だけどあのクソ女神はモンスターだか魔獣だかが居ると言っていた、逃げたらどっちみち殺されるかもしれない。
………自己紹介、するか。
「…俺の名前は真川、真川光輝(まがわ こうき)、1度死んで、この世界に召喚?転移?転生?…まぁなんでもいいか、とにかくこの世界へと今来た者だ」
「この剣は多分、その時に貰った物…なんだと思う」
「魔法も知らないし、この世界の事も何も知らない、とにかくその箒を下ろして話を聞いてくれないか?」
どうだ…一応、全部正直に喋ったつもりだが…。
「…嘘は言ってない、本当にここへと来たばかりのようね…」
「いいわ、とりあえず貴方を殺すのは辞める。悪いことをしたわね」
「あ、あぁ」
何とか誤解は溶けたようだ…それにしても、いきなり殺すだなんて物騒だな…。
この世界では疑わしきは罰せよが行き過ぎてるのかもしれない。
「そういえば、貴方行く宛てはあるの?」
「無いのならお詫びも兼ねて我が家に来るのはどうかしら」
……正直、ありがたい。
この世界について分からないことだらけだし、ここら辺にはこの人以外人は居なさそうだし。
「いいのか?」
「ええ、貴方のことも気になるし、ね」
◆◆◆◆◆
「そーいや、あんた名前は?」
「…セフト・キャロール=ベネット」
「キャロル、ベネットどっちでもいいわ、そう呼んでちょうだい」
「分かったよ、ベネットさん」
「敬語はいらないわ、よろしくねコーキ」
こうして。
ひと悶着あったけれども、私真川光輝は新たな人生を進んでいくのだった。
まずはこの世界について知らないといけない、それに魔王や妹の事も探さないと。
まだまだやる事はいっぱいある、が。
少年は確実な一歩を踏み出した。
ベネットがここに来た理由は自身に似た魔力を感じたからです。