「ごめんね」
「唯……先輩?」
「ごめんね。あずにゃんにそんなことがおこってるなんて全然知らなかった。いや、知ろうとしてなかった。しっかりしてるから大丈夫って。決め付けてたんだ」
私の告白に全員が戸惑ってる。
けど続けなきゃいけない。
「連絡ないのだって忙しいからなんだろうなって勝手に決め付けちゃってさ」
あずにゃんの顔を見ると泣きそうな顔で私を睨んでいた。
「そんなに。強くないです。私」
「うん。知ってた」
そう告げて、
「私ね。昔からよく人のことは見てた。例えばりっちゃんはよくバカなことしてるって見られてたけど、でもいつもみんなのこと引っ張ってってくれてた」
「澪ちゃんはそんなりっちゃんが間違いそうになったら自分がストッパーになって止めてたし、ムギちゃんはそんな私たちを調節してくれてたよね」
「で、あずにゃんはさ。意地っ張りで結構悩み事とかを抱え込んじゃう」
ハッとなって私の顔を見たあずにゃんの目をみて
「だから今回の件も誰にも話してなかったんだよね。今みたいに少しでもこっちから連絡すればちゃんと話してくれてたハズったのに」
そう言って〆る。
「だからごめん。けど一つだけ訂正させて」
さっきあずにゃんが言った言葉を抜き出して、
「歌は、人を楽しませてあげられるよ」
いつの間にか澪ちゃんもりっちゃんもムギちゃんも少しクスッと笑ってて
「そうだな。私たち5人でやったライブでもみんなを楽しませてあげられてた」
「もしかしたら私たちの演奏で誰かを救ってあげられてたかもしれないな」
「だから今回も救ってあげられる」
「あずにゃん。話してくれてありがとう。次は私たちから」
私たちは学校に戻ってきていた。
見慣れた音楽室。
見慣れたソファーにあずにゃんを座らせて。
「あずにゃん。私ね多分、この軽音部、入ってなかったら今のこの人生はなかったと思うんだ。そういう意味では私も救われてたんだ」
「……」
長い間使われてなかったギー太をケースから取り出してチューニングする。
「いくよあずにゃん」
本当にみんなで演奏するのは久しぶりだった。
でも手が、ちゃんと覚えていて次にどうするのかを分かっているみたいだった。
「どう!?」
演奏が終わって私が聞くとあずにゃんは
「昔より下手になってませんか」
涙ながらに笑ってくれた。
「先輩たちの演奏みてたらなんだか元気になってきました」
多分その言葉は本心からでたものだったんだろう。けどそう簡単に元気になるわけがない。
「よし、折角だし、講堂で演奏しちゃおうぜ?」
りっちゃんが言うと、
「それは無理があるんじゃ……」
澪ちゃんが止める。
「大丈夫よ~。気合があればできるわ!」
でもムギちゃんが後押しするから、
「ばれないように運ぶぞ」
澪ちゃんは自分もやる気になる。
「おーい!唯もはやくしなってー!」
りっちゃんが声をかけてきた。
「うん!いま行くよ~」
三人がそれぞれの楽器を持って出て行った。残ったのは私とあずにゃんだけ。
「唯先輩」
「なーに?」
「私。これからどうすればいいんでしょうか」
あずにゃんの顔は不安で曇ってた。
「私さ、さっき偉そうにあずにゃんに言ったけどさ、どうすればいいかなんて私はわかんない」
「なら……」
「でもね!」
あずにゃんが抗議の言葉を言う前に私は続ける。
「私たちは一緒に放課後ティータイムってバンドを組んでた。それだけは事実なんだよ」
「思い出がいくら風化しても事実だけは消えない。だからこうしてまた会えてる。つまりはさ……みんなで話し合えばいいってことだよ。
例え薬をやってたとしてもね」
「っ!!」
「まずは病院いってさ、ちゃんと治ったらそのとき考えればいいよ。私たちは永遠だよ」
「気づいてたんですね」
エヘヘと笑うあずにゃんに、
「講堂だよ!行こう?」
「は、はい」
「あ、唯、遅かったな。空いてたぞ、どうする?」
「演奏します!あずにゃんのために!!」
「さっきやったじゃないか」
「ううん。昔やろうとしたやつだよ」
「あ、あぁ。結局できなかったやつ、か」
「できるかな」
「できるよ」
私たちは楽器をセットする。私の左側は空けて。