ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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サブタイトル「大嘘です。勝手に言いました」

分かりにくいので最初に言ってしまうと、羨望、嫉妬、不理解、裏切り込みの共犯の二人です。ギンの湿度が割り増し……





愁雨の中、地を這う蛇は頼りを求めて聳える大樹にとぐろを巻くという事は知っているね? side 市丸ギン

 

 一人、また一人と死んで逝く。

 スクリーンに映し出されるのは、たった今、まさに進行形で起きている惨劇。たくさんの魂が散る様をこの眼に焼き付ける。

 

(可哀想になァ)

 他人事のようにそう思う。

 

 これを観る度に、命ってホンマに脆くて、ちゃちなもんやなって思う。いくら強くなったって、何も知らんかったら、こうやって顔も分からん奴らに利用されて殺される。

 

(哀れやなァ)

 他人事のようにそう思う。

 

 

 「データは取れた」言うて、あの人らはさっさと席を立っていった。

 最後に残ったんは、もう息も絶え絶えの女と、虚にイジメ倒されとる男。そうしてそれを、客席で観るだけのボクだけ。

 

 

『最期を看取ってやろうなんて思うてへんかったよ。ただ、自分がナニに関わっとるのか、ちゃあんと理解しとこうと思うただけや』

 

 

「あの男、確か志波家の嫡子と仲良うしとったな」

 

 頬杖をついて、記憶を呼び起こす。

 一度だけすれ違った覚えがある。そん時この男は、誰かと楽しそうに話しとった。人当たりが良さそうやなと少し思うたくらいで、何処にでも居る平凡な男やったと思う。 けれど今じゃ、こんな有り様。

 

 

 貫かれて絶叫。折られて、絶叫。砕かれて、絶叫。抉られて、絶叫。絶叫。絶叫。絶叫。絶叫──

 

 

(惨めやなァ)

 玩具みたいに嬲られて、弄ばれて。そして最期は放り棄てられる。男の姿は観るに堪えんほど惨めやった。段々と気分が悪くなってきたボクが、画面を消そうとしたその時──ボクは観た。

 

 最期の足掻きとばっかりに、なんもあらへん所に斬魄刀を振り下ろしたその男。その瞬間、別の画面に映っとった救助隊が、まるで瞬間移動したみたいに、男の所までの距離を急速に縮めとった。思わず目ぇ見開いて画面を凝視する。

 

「距離を縮めたんか……?」

 

 そないな便利な力があるんなら、なんで最初から使わへんかったんやろ? って考えて、メタスタシアの能力を思い出す。

 ──まさかコイツ、知っとってんか? 

 

「いや、ありえへんやろ」

 

 席官でもあらへん、こないな下っ端の男がそんなん解るわけあらへんやろって、一人で納得した。でも、どうしても引っかかる。この違和感。何か見落としとるんちゃうか? 妙な違和感を拭いきれんかったボクは、じっと観る。

 

 

『……ずうっと見とった。画面越しに、アンタの事を』

 

 

 画面に映っとるんは、満身創痍の男が無様に這い蹲る様子。

 身体は全部めちゃくちゃで、どこもかしこも血塗れで。何で動けるん? てか、何で死なへんの? なんて思う。

 

 泥を啜りながら這いずって、血反吐を吐きながら這い寄って。足掻いて、呻いて、踠いて、爪を立てて、その女に近づいて。

 ──そうして男は、女に回道を当て始めた。

 

「何でや」

 

 思わず独り言が漏れる。信じられへんかった。

 目の前の映像は、フィクションなんやあらへんか思うた。

 

(何で、他人のためにそないにできるん?)

 アンタが治しとるんは、アンタのもんちゃうよ?

 アンタが大切なんは、その女のオトコやろ?

 他人やろ、その女は。

 まさか、その女に懸想しとるんか?

 

 

《ザッ……ッな、しぬな、死ぬな、死ぬな……死んじゃダメだ……置いていっちゃダメだッ……!》

 

 

 集音マイクが拾う男の呟き。何度も繰り返される《死ぬな》の単語。もしかしてこの男、単純に。

 

 

 ──ただ目の前で死なれるのがイヤやから、救けとるんか。

 

 

 ……自分を顧みずに?

「……頭おかしいんとちゃう?」

 

 そないな風にバカにして、ほんでもボクは、なんでか画面から目ぇ離せんかった。

 

 

『あん時からアンタの事、気になっとったんや』

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「彼ら、生きていたね」

 

唐突に告げられたその言葉に首を傾げる。「十三番隊の志波都と、可城丸秀朝の事だよ」と続けられる話にああ、と思い起こす。

 

「あのままであれば、志波都は救助が間に合わず命を落としていただろうに、彼が何かをしたのかな。ギンは知っているかい?」

「ええ? 何でボクが」

 

「──君は最後まで映像を観ていただろう?」

 

 ドキリと、心臓が早鐘を打つ。

 見られていた? 何処まで? いや、この口振りなら、ボクが最後まであの場にいたことを指しとるんやないか?

 

「いややなァ藍染隊長。覗いとったんですか?」

「いや、あの場に居残っていたのはギンだけだったからね。もしかしたら最後まで観ていたんじゃないかと思って」

 

「……偶々なんとちゃいます? 特になんもしとらんかったよあん人。ただ地面に転がっとっただけやったわ」

 

 言葉がスルリと口から滑り落ちる。浮かべた微笑みには何の責任もない風を装い、「何もなかった」と軽やかな調子で嘘を吐く。

 ボクの答えに、藍染隊長は静かに「そうか」と呟くと、うっすらとした微笑を浮かべた。その薄気味悪い表情に、バレてしまったのかと内心冷や汗をかく。

 そんなボクの焦りを気に留めず、藍染隊長はこう言った。

 

「ギン、頼んで良いかい?」

 

 遠回しな、探りを入れてこいという命令。

 内心「イヤやな」と思う。脳裏に去来するんは、あの日の記憶。日溜まりの中で微笑む男、人を救うために泥を啜った男。「これ以上、あの男に関わりとうない」ボクはそう思とった。

 自分と全く価値観の異なる存在との関わりは、はっきり言うて疲れるから。

 

 

『……ぶれるから、自分の譲れんもんが』

 

 

 そんな自分の本音を無視して、ボクは「分かりました」とゆっくり頷く。心の奥底で何かが軋むような音がした気がした。でも、それも押し殺して、いつもの笑顔を浮かべて立ち上がった。

 

 

『藍染はんはボクの気持ちを見透かして、命令してきよったんやろね。嗚呼、ホンマ厭な人』

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「なあなあ、ボクと友達にならへん?」

「え?」

 

 隊首会が終わってそのまま話し掛けた。呆けた顔をするアンタにぐいぐいと詰め寄る。

 職務中だとか何だとか言うアンタを、まあまあと丸め込んで茶屋へと引き摺って。

 「浮竹隊長に許可はとったし別に気にせんでもエエやろ? 随分と真面目さんなんやね」っておちょくると、アンタはしょっぱい顔をして押し黙った。その面で腹芸苦手なん? おもろ。

 

「キライなもんとかある?」

「いや、無いですけど……あの、どうして僕を」

「ほなみたらし団子と三色団子頼みましょか。すみませぇ~ん」

「ええ……?」

 

 茶屋の個室に腰を下ろして、ボクは団子とお茶を二つずつ頼む。 そうして会話をし始めた。この急な状況にまだ慣れていないのか、アンタは変な顔をしてボクと話しとった。気のせいじゃなければ、終始困惑しとったと思う。

 「てかボクの方が年下なんやし、タメ口でエエよ」って言うたら、「いえ、隊長にそんな失礼なことは……ギンと呼んでも?」とかほざいてきよった。何なんその切り替えの早さ、ほんまおもろい。

 

「君、三席さんを助けるために命はったんやろ?」

「はぁ」

「流石やなァ、ボクには真似できへんわ」

「ありがとう……?」

 

 「褒められてる気がしないな……?」なんてぼやいとるアンタを、口八丁で誤魔化しながら、ボクはそぅっと眼を細めた。

 

 ズタボロや。視るに堪えんくらい。

 死覇装から覗く素肌、そこらじゅう包帯でグルグル巻き。てか、そんなんで職務復帰するもんか? ぼんやりそんなこと考えとったら、つい口に出してしまった。

 

「なんでそこまでして助けたん?」

 

 ポロッと漏れた本音。(あ、しもうた)って少し焦った。

 「何でって……」戸惑うアンタは首をかしげて眉を顰める。

 なんでもないって誤魔化そうとしたボクを遮るように、アンタは言った。

 

「君なら、解ると思うけどな」

 

 ──当たり前のように、当然の事のようにアンタはそう言う。思わず肩をびく付かせたボクの胸中に、段々と、理不尽な怒りが込み上げてきた。

 

 アンタの事なんか解るわけないやろ。

 アンタはボクと違う。

 アンタみたいな

 ボクはアンタみたいに──!

 

 そうして感情のまま、アンタの顔を睨みつけようとしたその時、ボクの怒りは四散した。

 ボクを見つめるその眼は、まるでそよ風に揺れる大樹のように穏やかで、思わず息を呑む。

 

(何なん。ホントに、何なん?)

 

 何でそんな目ェしとるん?

 アンタは何を視て、ボクの何を識っとるんや。

 

 遠い昔に切り捨てた、彼らを思い出す。

 あの日食べた、甘い干し柿の味を思い出す。

 雪原の中、置いてきた大切を思い出す。

 

 ぐるぐると何かが腹の中で暴れまわる様な、顔を覆ってしまいたい様な、めちゃくちゃな気持ちが身体中に渦巻く。耐えきれんくなって、顔を伏せた。

 

 

『今思うとアレは、■■やったんやな』

 

 

 「そんな眼で視るな」と叫びそうになった時、アンタは悠然とした態度で答えた。

 

「友達の件」

()()()()()で、僕と友達になりたいと言うのなら、吝かでもないよ」

 

 その言葉に放心して、そして頬を吊り上げる。─ああ、なんや。アンタ、全部解っとるんか。

 

「秀朝くん」

 

 僕は蛇や。

 肌は冷やい 情は無い 舌先で獲物捜して這い回って 気に入った奴をまる呑みにする そういう生きものや。

 でもアンタなら、どんなに風に吹かれても、どんな嵐が襲っても変わらずそこに居続ける大樹みたいなアンタなら、巻き付いても締め付けても噛みついてもびくともせえへんやろなって。

 

「ボクと友達になってや」

 

 ならちょうど良い。泥を這うのに疲れ、雨水が染みる酷い日には、少し雨宿りをさせて貰おう。──なんて、そんなことを思うた。

 

 

 

 

 

「早速友人として相談したいことがあるんだけどね。僕の藍染隊長化が止まらないんだ。どうすれば良いと思う?」

「ひゃ~笑 遺伝子はどうしようもないと思うで」

「魂魄にも遺伝子情報ってあるのか……?」

 

 

 

 

 







『なあ、ボクとアンタってまだ友達?』
「──友達だよ、ずっとね」


ギン→一人の大切の為に■んだ男
主人公→自分の為に…とか言いながら他人の為に■にかける男 

やったねギンちゃん! 共犯者を手に入れたよ!!
使えるのかコイツ?

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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