ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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あんま難しい話しないでさっさと進みたいけどさぁ、でもオサレってこういうことでしょ?
そんなわけで卍解です。さっさと明かしてさっさと進める。

追記
上げ直ししました──済まぬ





人に頼るのもまた強さだという事を知っているね?

 

 浮竹隊長の容態が悪化している。いつもの穏やかな姿は鳴りを潜め、今や苦痛に歪んだ表情だけがその顔に浮かんでいた。

 

 原因は銀城空吾の一件だ。原作通り、綱彌代時灘*1の罠に嵌められた彼は、今や追われる身となった。その事実が浮竹隊長の心労となり、酷い体調不良を引き起こしている。

 

 俺に何かできたのだろうか。

 もし、俺が綱彌代時灘を止められていたら……

 

(いや、不可能だ)

 

 そもそも俺は、原作の詳しい時系列を覚えていない。銀城の事だってつい先程知ったのだ。そんな俺が行動したところで場を無闇に引っ掻き回すだけ。

 

(……原作知識を、誰かに共有していたら?)

 

 ──いいや、それこそ愚かな行いだろう。

 情報の漏洩元は予測不可能だ。藍染惣右介の策略も、見えざる帝国の監視の目も、俺にはそれらを回避する術がない。そんな状況で誰かに情報を漏らせば、その人までも危険に巻き込むことになる。やはり、何も出来ない。

 

 浮竹隊長が血反吐を吐く。慌てて口元に清潔な布を当てる。

 せめてもの慰めにと、背中を擦りながら回道を当てた。淡い緑色の光が薄暗い部屋を照らす。

 彼の温かく広い背中は、弱々しく震えていた。

 

「すまないな、可城丸」

 

 苦しいだろうに、辛いだろうに。それでも尚、他者を気遣う浮竹隊長の姿に酷く心が痛む。

 

 俺はただ黙って隊長の側に控えるだけで、何も出来ない。

 自分の無力さに、深い苛立ちを覚えながら、俺は努めて冷静に答えた。

 

 

 いいえ、浮竹隊長。どうか謝らないでください。

 

 

 ──俺は何もしてやれないのだから。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 今日は久しぶりの休日だ。……マジで久しぶりだな。何連勤してたんだ俺。十超えた辺りから数えてないんだけど……

 まあいいや、今日は朝起きて軽く自室の掃除をした後、いつもの修行場所に来た。

 最近はデスクワークばかりだったからね、身体が鈍ってしゃあないや。肩こりがドイヒ~。

 

 ぐるぐると首を回しながら、更木隊長との死闘を思い出す。いや死闘とも言えないか。あれは弱い者イジメです。

 あの後、結局卯ノ花隊長の所まで行ったけれど、めちゃくちゃじっと傷口を見つめられながら治療された。あれ無言の圧? 無言で怒られてた? すみません……!

 

 

 ……更木隊長にズタボロにされてつくづく思ったけど、俺って本当に霊圧が少ないんだな。いや、少なくはないか。平均よりちょっと上くらいなんだけどさ。

 とにかく、この先の事を考えると今の霊圧じゃ生き残れないと思う。

 

 かといって、霊圧を上げる方法なんて思い浮かばないんだよね~。剣術、鬼道、白打、歩法の技術なら進歩してると思うんだけど、霊圧に関しては全く分からん。そもそも何? 霊圧って。俺の身体には何が流れて……? 俺は、俺たち死神は一体、何者で……?

 

 いかんいかん、思想に走るな、冷静に考えよう。

 霊力が「魂魄が持つ、霊なるものに働きかける力」。

 霊圧が「霊体が発する霊的な圧力」。

 ……後半からこの二つ、霊圧に統合されて呼ばれるようになったよな。いや、今はそんなメタい事情どうでも良い。

 

 魂魄なら当たり前に持っているもので、死神には必要不可欠なもの。霊圧の高さ=戦闘能力の高さ。

 

 ……俺のイメージだと、霊圧ってもう一つの血液なんだよね。

 

 歳を取って身体が大きくなればなるほど、自然と増えるものじゃん血液って。霊圧もそんなイメージなんだよ。……ん? つまり、そう考えたら食事や運動を正しくとれば血液が増えるんだから、適度な食事に適度な修行をすれば霊圧が増えるってことじゃない!?

 

 

 ……それって結局、いつも通りってことだな。

 なんだよもぉ!! ミ◯かセノ◯ックでも飲めば良いのか!?

 俺の閃き力じゃ何も思い付かないよぉ~助けて相即不離~! 

 

 

【ん〜そうだね……なら、卍解を修得しようか】

 

 お手上げとばかりに地面へと寝っ転がった俺へ、具現化した相即不離がそう告げる。

 

 今、このタイミングで……?

 

【うん。それじゃあ、君の精神世界に行こう】

「え?」

 

 俺の精神世界なんてあるの? 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

 穏やかな風が髪を揺らし、草木の柔らかい香りを運んでくる。

 

 鮮やかな朱色の鳥居は、所々塗装が剥げており、赤褐色へと変化している。長い年月を雨風にさらされたような本殿の前には、古ぼけた賽銭箱が据えられている。が、その中にお賽銭が入っている様な気配は全く感じられない。

 

 青々とした木々の中には、注連縄が巻かれたご神木が聳え立っている。その巨木は境内の中でも一際目を引く存在であり、植物に詳しくない可城丸でも、松の木だと分かった。

 

 境内へと繋がる長い階段の下を覗き込んだ可城丸は、その先がぼやけているのを見て「ゲームのマップ外みたいだ」と考える。

 

 

「……田舎の神社って感じだね」

【居心地が良くて助かるよ】

 

 (俺の精神世界がこんなに穏やかだなんて……何か、違和感があるな)と、妙な恥ずかしさを感じている可城丸に、相即不離が話し掛けた。

 

【卍解の取得に必要なものは?】

「斬魄刀の具現化と、屈服」

【そうだね。……君は僕の具現化も出来ているし、僕自身、君の事を認めているからね、屈服の必要もないんだ。……どうしようか】

「ええ……?」

 

 何の考えもなく連れてこられたのかと少し呆れる可城丸。その声には戸惑いが滲んでいる。

 しかし、相即不離はそんな彼の様子を気にする事なく、本殿の小さな階段にゆったりと腰を下ろした。そうして、空いた隣をポンポンと叩き、可城丸を促す。その仕草に少し躊躇いながら、可城丸はその誘いに甘えて相即不離の隣へと腰を下ろす。

 

 二人が並んで座ると、相即不離はゴソゴソと死覇装を探り始めた。その動きに、可城丸は首を傾げる。そして、小さな包みを取り出して可城丸に手渡した。

 

「飴?」

 

 渡されたのは橙色の飴玉。周りには白糖の層がキラキラと輝いており、太陽の光を受けて宝石のように輝いていた。

 幼い頃の記憶が蘇る。祖母の家を訪れた際に舌鼓を打った飴に酷く似ている。確か、ザラメ飴だったか。

 前世での懐かしい記憶が甦る中、可城丸の中で疑問が膨らむ。どこからこんなものを持ってきたのだろう? 

 

【この場所ならある程度融通が利くんだよ】

 

 可城丸の疑念を察したかのように、相即不離は軽快に言葉を紡ぐ。そして彼は、もう一つ緑色の飴を取り出すと、そのまま口の中へと放り込んだ。可城丸は心の中で「(……よもつへぐいみたいにならないよな?)」と思いつつ、恐る恐る飴を頬張る。口の中に広がるのは懐かしい甘さ。特に問題はなさそうだ。

 

 

【──前に話したね】

【たとえ君が僕の力を用いて、『死亡フラグ』を断ち切れたとしても、その糸は完全に消滅しない。いつか、再び僕達へ結び直される、と】

 

 境内を包む静寂を破るように、相即不離の言葉が響く。可城丸は彼の横顔をそっと見やった。なびく風と共に、重たい雰囲気が流れてくるような感覚がする。

 

【僕の卍解は、千切ったものを契り直す能力だ。例えば、物と物同士を、例えば人と人との縁を】

 

 

「……つまり、概念的強化スティッキィ・フィンガーズってこと?」*2

【身も蓋もない事を……まあそうだね】

 

 雰囲気を台無しにする可城丸に、苦笑いを浮かべながら相即不離は肯定する。記憶や知識を共有している彼だけにしかこの例えは伝わらないだろう。

 

【強固な縁は何度千切っても直される。けれど、卍解を使えばそれを他者へと契る事が出来てしまう】

【簡単に言ってしまえば、他者へと死の運命を押し付けることが出来るんだ】

【まあ色々と制限はあるけどね。人間の縁なら人間に結び付けなければならないとか】

 

「あ~、恋愛縁を人間と動物とで繋いだら最悪なことになるもんな」

【最悪な例えをありがとう。そういう事だから出来ないんだよね。出来ちゃダメと言うか。まあうん、そういう感じ】

 

 サラッと畜生なことを言う可城丸に内心ドン引きしながら、相即不離はさっさと話を進める。この話題を掘り下げたくなかったのだ。そういう癖がない限り、聞きたくないのは当たり前だ。

 

 

「……契る、ね」

 

【……君はどうする? 卍解を手に入れたのなら、君はそれをどう振るう?】

【僕達に課せられた運命を、他者へと契るかい?】

 

 相即不離は穏やかな口調でそう問いかける。

 可城丸は口の中でゆっくりと飴を転がしながら、遠い目をしてボンヤリと考えていた。死の縁を他人に結び直す。死の運命を他人に擦り付ける。

 

「──俺は、死ぬという事がどれ程苦しくて、寂しくて、辛いものかを良く知っている」

 

 そうして、可城丸は静かに語り始めた。

 

「あの欠けていく、削がれていく感覚を、この身で味わった」

 

 彼の声には、過去の苦痛が滲んでいる。あの時の痛み、置いてきた家族。それらを思い出す度に、彼は胃の中が引っくり返るような、頭がキンキンと痛むような。そんな感覚に陥る。

 

「自分が死ぬのは絶対に嫌だ」

「けれど、他人にあの思いを味わわせるのも、同じくらい耐えられない」

 

「俺は、俺の手で運命を切り開く。どんなに困難でも、どんなに苦しくても、他者を犠牲にして生き延びるのだけは嫌だ」

 

 これは俺の意地であり、我儘かもしれない。それでも。

 

 青空へと向けていた視線を横に逸らし、相即不離の眼を見つめ返す。可城丸の眼には、揺るぎない決意の光が、鋭く輝いていた。

 

「俺の運命なら、俺がケリをつけるのが筋だ。他人にそれを背負わせるのは、真っ平ごめんだよ」

 

 そう言い切った可城丸に、相即不離は優しい、しかし誇らしげな笑みを浮かべる。その表情には、傍目から見てもわかるほど、深い喜びの色が宿っていた。まるで、長年の懸念が晴れたかのような安堵感すら感じさせる。

 

【うん、君ならそう言ってくれると信じていた】

 

 風が吹き抜ける。二人の間に、静寂が、しかし、緊密な信頼感で満たされた空気が流れる。

 

【僕の力は計り知れない、強大なものだ。君が何も省みず、安易に振るえば、多くの人の人生を狂わせるほどの力だ。どうか、その事を決して忘れないで欲しい】

「ああ、解ったよ」

 

 深く頷く可城丸。その姿を満足そうに見やった相即不離は、彼に真名を告げた。

 

 

【僕の名前は、相続否離(そうぞくふうり) 相樹之陰(あいじゅのかげ)

 

 

 穏やかな風の中、可城丸秀朝はついに卍解を手にしたのだ。その瞬間、彼の周囲には、まるで祝福かのように霊圧の揺らぎが生じる。

 そんな幻想的な光景の中、相即不離は夢をブチ壊すようにこう告げた。

 

 

 

【まあ、そもそも霊圧が足らないんだけどね】

「ですよね~!」

 

 

 

 残念、現実は無情である。

 

 

 

 

 

*1
実際は綱彌代家本家が引き起こした事件だが、主人公の原作知識がフワッとしているため、そう思い込んでいる。

*2
第5部「黄金の風」のキャラクター、ブローノ・ブチャラティのスタンド。「拳で触れた対象にジッパーを取り付ける」能力。強度を無視した切断、切開を無条件に許し、別々の物体同士を結合することも可能。ブチャラティはカッコいい。ジョジョラーの皆なら当たり前に知っているね?




解号 千切れ《ちぎれ》→契れ
卍解 相続否離 相樹之陰《そうぞくふうり あいじゅのかげ》

己の斬魄刀で触れたモノを千切り、刀身を突き立てたモノへと契る能力。
千切った物同士を契り合わせたり(くっ付けたり)、千切った感情を他者へと契る(結び直す)ことで、関心を移すことも出来る。その人に課せられた運命を他者へと契る(背負わせる)ことも出来るので、ある意味、因果を操る能力とも言える。

ただし、全く異なる物質を契ったり(結合させたり)、人間同士の縁を、動物へと契る(結び直す)のは不可能。色々と制約がある。

利便のきく能力だが、千切るのにも、契るのにも多大な霊圧を消費するため、主人公は殆ど活用できない。宝の持ち腐れ(いつもの)

尸魂界に存在する草木や、岩などを千切る分にはそこまでの霊圧を消費しない。
草木「5」を千切ったとしたら、主人公の消費霊圧は「1」 ※あくまで例え



「霊圧、霊圧ねぇ……千切る、霊圧、契る、契……アッ」
【ん?】
「良いこと考えちゃった」



次回
可城丸秀朝 実家に帰る。
可城丸秀朝 飲み会する。

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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