昨日寝落ちしちゃった……
というわけで今日中にもう1話だけあげます。
「聞きましたよ。現世でおかしな虚に襲われたって」
「げっ、もう噂になってんのか?」
「いえ、一心隊長が戦った場所は十三番隊の管轄ですから、副隊長代理の僕に報告が入ったんです」
「ああー、そういやそんなこと言ってたな……」
風が少し冷たくなり、秋の気配を感じるそんな夜。俺たちは小さな屋台に腰を下ろしていた。
お世辞にも綺麗とは言えないその店内は、不思議と温かみを感じさせ、店の奥に流れる古い歌謡曲が耳に馴染む。
朗らかで、それでいて揺るがぬ落ち着きをたたえたその人柄は、この場所の空気と不思議なほど調和している。提灯の暖かな光が、隣に座る彼の顔をやわらかく照らしているのが、妙に印象的だった。
「怪我は大丈夫ですか?」
「おう、バッチリだ!」
卯ノ花隊長サマサマだなぁ~と、彼は陽気に笑い声を上げる。その無邪気な様子を見て、俺は心底安心していた。
おでんをつまみに酒を呷り、賑やかな談笑を続ける最中、酒のせいで少し赤みがかった頬をした彼は、ポツリと呟いた。
「現世で、ちと気になることがあるんだが……」
「気になること?」
「あの時の女……いや」
酔いの勢いで、つい口をついて出た言葉だったのだろう。次の瞬間、彼はばつが悪そうにおでんを頬張り、「アツッ!」と声を上げて騒ぎ出した。
俺は軽くため息をつき、空になったお猪口に再び酒を注いで手渡す。それを一気にあおると、彼は慌てて口の中を冷やしてしまう。
「あー、熱かった……口ん中ヤケドしたかも」
「一気に食べるからですよ」
ハフハフと息を吐くその様子に呆れつつ、「それで、何を言おうとしたんですか?」と問いただす。だが彼は、「えーと……忘れちった」と言った。
下手な誤魔化しだ、と思いながらも、俺は「そうですか」と、何も知らないふりをした。
「いやぁ、食った飲んだ! 俺はもう満足だ」
「ええ、僕もです」
ぽんぽんと太鼓腹を叩く彼を横目に、俺も背もたれに体を預け、ゆっくりと息を吐く。
だらだらと続いたサシ飲みも、いよいよ終わりが見えてきた。解散前特有の、どこか気の抜けた空気が、冷えた皿の上にたゆたっている。
そんなアルコールの余熱に浸る中、ニヤリと笑った彼は、空になったグラスを指先でつまみ、俺の眼前で軽く左右に揺らすと、
「また一緒に飲もうや」
そう言った。軽い調子の、けれど妙に耳に残る声だった。俺はわずかに目を見張り、しかしすぐに笑みを返す。
「ええ、ぜひ」
──その翌日、志波一心は失踪した。
海燕とルキアを誘って料亭に来た。俺の奢りでね!
この料亭は、飲み会の時に朽木隊長を誘ったところだ。
酔いの席の勢いで俺から朽木隊長を誘ってみたけどさ~、内心ドキドキだったよ。
開店と同時に予約一杯になるくらいには人気の店だったし、俺も美味しく感じたから、これはイケるぞ! と確信はしていたんだけどね。
朽木隊長も食べた時に「うむ」って言ってたから美味しいと感じてくれたんだと思う。あの人案外顔に出るし、不味いと思ったらすぐ箸を置くから。
このタイミングしかないなと思って、「ここのお店のメニューを制覇しに通いませんか?」なんて、ファミレス通いの男子高校生みたいなことを言ってしまった。でもこれで、やっと一方的な奢られを回避出来るぞ!
……だってさぁ、流石に奢られ続けるのは遠慮したかったんだよ。老舗の高級店ばっか連れて行かれるから、舌ばっかり肥えてしまって、そこらの飯屋じゃ満足出来なくなっちゃったんだから。まったく……責任とってよね♡
そんなこんなで、ここはめでたく五大貴族お墨付きの料亭になったわけだ。まあ朽木隊長にとったらファーストフード店みたいなもんなんだろうけど……
「本当に良いのですか? こんな立派な料亭で……」
「いーんだよルキア。破産させる勢いで食ってやれ」
ルキアは良い子だなぁ~! 海燕は後でグーパンね。
俺は鯖の塩焼き定食を、ルキアはお刺身定食を、海燕はうな丼定食を選んだ。
今は昼時でランチメニューしか無いが、今度は朽木隊長と食べたフルコースを二人に食べさせたいな。
さすが朽木家の令嬢と言うべきか、隣に座るルキアは一口一口を丁寧に運んでいる。その所作は上品で、美しい。
一方、俺の正面に座る海燕は、左手で器用に箸を操っていた。……コイツ、利き手を失ってから、たったの一週間で左手に慣れてたからな。こんなところでも才能マンぶりを発揮するんだって結構ビビった。さす志波だな(流石志波海燕の略)。
一度だけ、義手を使わねぇの? と聞いてみたが、「蒸れるからヤダ」とあっさり一蹴された。本人がそう言うなら、いいんだけど……
そんな事を思い出しつつ、付け合わせのキュウリを食べる。
うおっこの漬け物ウマッ。ルキアも食べる? キュウリ好きだったよね。ここは箸付けてないから良かったら食べな。
「良いのですか? 頂きます。……ウマッ! 」
「そんなにか? 俺にもくれよ。……ウマッ! 」
二人して目をキラキラさせながらウマウマとキュウリを頬張っている。反応一緒でウケる~、兄妹みたいで可愛いね。……こんなこと言ったら、朽木隊長に刺されそう。
「オマエいつもこんな良いもん食ってんのか? 流石高給取り」
ニヨ〜なんて効果音がつきそうな笑顔を浮かべてそう聞いてくる海燕。んな訳ない。俺だってこんな良いところ月一くらいの頻度じゃい!
てか、貴族のお前がそれを言うのかよ、五大貴族のお前がさ。
「あー、うち没落したからな。もう五大貴族じゃねぇわ」
は? 「え?」
あっけらかんとそう言い放つ海燕。俺とルキアは思わず箸を落とす。
「どどどどう言うことです海燕殿! 没落……!?」
めちゃくちゃ動揺してるルキアに同意するよう、俺もこくこくと頷く。マジでどう言うこと? 何も聞いてないんスけど?
「いや、ほら。叔父貴……志波隊長の件が響いてな」
海燕の話では、もとより不安定だった貴族としての地位は、自身の斬魄刀の喪失と右手の欠損という、現当主たる彼の痛手によって大きく揺らいだらしい。さらに分家筋の志波一心の失踪が決定打となり、志波家はついに没落へと至ったという。
「まあ元々、貴族連中には疎まれてたからな~」
ハハハッと笑いながらそう言う海燕の姿に、俺達は思わず脱力した。
オマエさ、何でそういう重要な事を、さらっと言っちゃうかなぁ……
通路を歩いている途中、まさかの人に遭遇した。
ハァイ!? 何でこんなところに居るんですかねェ!?
思わず後ずさった俺に、彼はニコニコと穏和な笑みを浮かべて近寄ってくる。何で!?
うわっ、話し掛けられた! 怖い怖い怖い、どうしよう、どう対処すれば良い、ゴマでも擦れば良いのか? へへッ今日もイカした前髪でやんすね。
アッ、壁際に追い込まれた! イヤーッ!!
助けて相即不離!(置いてきた)
助けて海燕!(居ない)
助けて浮竹隊長!(居ない)
助けてママ〜〜〜ッッッ!!(居たとしてもどうにも出来ない)
え? みっともない? うるせぇ!! 相手は
綱彌代時灘サマとお茶ナウDEATH★
……前もこんなことあったよな。俺もうお茶飲むのやめようかな。お茶アンチです今日から。
表面上は穏やかに会話しているが、俺は彼の一挙手一投足にビビり散らかしている。ガチで怖い。
「志波海燕の友人がどんな人か気になったうんぬんかんぬん……」と綱彌代時灘は言っていたが、絶対に嘘だと思う。そんな理由でわざわざ俺に会いに来るわけない。きっと俺の
「いやしかし、君も残念だったね」
ひきつる頬を必死に押さえながら「俺は無敵」「俺は最強」と心の中で暗示をかけている最中、酷く労わしげな口調でそんな言葉を投げかけられた。
はぇっ、何がッスか?
「せっかく
──は?
先程までの穏やかな態度とは一変し、綱彌代時灘は悪辣な笑みを浮かべると、心底愉快そうにくどくどと一方的に話し出した。
彼の話を要約してしまえば「せっかく五大貴族に擦り寄ったのに、志波家没落しちゃったねw無意味だったね君のごますりw ねぇ今どんな気持ち?w どんな気持ち?w」である。
……何の話?
ごますり? 俺が、海燕に? ……な、なんで?
俺の困惑した表情に気を良くしたのか、綱彌代時灘はその下劣な笑みを深めると、聞くに耐えない言葉を更に重ねていく。……あー、この人には俺と海燕の仲が
なんだか訂正するのも面倒になった俺は、財布から金を取り出し、机の上に置く。そして、せやね~だから親友として俺が支えていかなきゃッスね。じゃっ、俺はこれで。とだけ言い残し、その場を後にした。もうこないからね~
まじでなんなのあの人。何がしたかったの?
まさか俺を煽る為だけにわざわざ護廷十三隊に来たのか?
は~時間管理が得意なんどすね~!
毒漬けどないどす?
あー、ほんとに全部が無駄だったな。
……もしかしたら志波家の人達に迷惑が掛かるかもしれない。後で言っとこ。
「……ああ、綱彌代様は、そのような付き合いしかご存じないのですね」
「いえ、お気を悪くされたのなら申し訳ありません。ただ……少々、残念に思いまして」
「井の中の蛙ですら、星の輝きは識っているというのに。……はは、他意はございませんよ」
「お代はこれで足りておりますよね。では、これにて失礼いたします」
↑親友バカにされてそれなりに(かなり)怒っている人
斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。
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尸魂界篇後
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破面篇後
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本編終了後
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斬魄刀異聞篇を書かない
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他に何かご意見があれば活動報告の方へ