ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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⚠挿し絵あり

挿し絵描いてたら遅れちゃった……(n回目)
今回はこの世界線の原作を読んでいる読者視点で書いてます。主人公の悪役感が酷い。




濡れ衣の語源は佐野近世の後妻による「釣り衣を盗んだ」という噂で殺された先妻の娘が亡霊になって無実を訴えたという逸話から来ていることは知っているね?

 

【ユーハバッハの聖別を止める手段は、現段階では無い】

 

相即不離()は、能力を行使している者に刀身を当てると、能力を千切ることが出来る。言い換えてしまえば、刀身を当てた者の能力を強制的に解除出来るんだ】

 

【つまり、聖別を防ぐにはそれを行使するユーハバッハに刀身を当てなければならない。……うん、無理だね】

 

【真咲とユーハバッハとの繋がりを千切る? ……それも、難しいな】

 

【千二百年前に誕生した滅却師の始祖であるユーハバッハ。彼より後に生まれた滅却師には例外なく彼の血が流れている。千二百年もの間続く、ユーハバッハと滅却師の血の繋がりを千切る事は僕達には不可能だ】

 

【ただ、ひとつだけ、黒崎真咲を救う方法がある】

 

【それは──】

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

 雨の中、手を繋いで歩く親子。

 

 傘と雨合羽に当たる雨粒が、ぽつぽつと軽快な音を立てている。そこに、未成熟な少年と、穏やかな女性の声音が混ざり合う。

 

 繋いだ手をユラユラと揺らしながら、一日の出来事を声高らかに話す少年─黒崎一護。その話に相槌を打ちながら、愛おしそうに息子を見つめる母親──黒崎真咲。

 

 

 いつも通りの帰り道を歩いていた。

 いつも通りの帰り道の、はずだった。

 

 

 微笑む母親の顔を見上げていた一護。その視界に入ったのは、傘も差さずフラフラと川べりに立つ女の子。

 一護は目を見開き、驚愕する。そして、駆け出した。

 母親も、生まれた妹たちも、もっともっとたくさんのものを守りたいと願うようになった彼の想いが、その行為へと駆り立てたのだ。

 そうして女の子に手を伸ばそうとしたその時、突如、左側から衝撃が走り、一護は弾かれるようにして河原に倒れ込んだ。

 ──黒崎一護の記憶はここで途切れている。

 

 

 

 

 

 息子を引き留めんと、傘を放り捨て駆け出す真咲。彼女には分かっていた。──その少女が、虚の罠であると。

 

 

「だめ! 一護!!」

 

 

 そして、息子の小さな手が少女へと届きそうになったその瞬間。

 

 一護の体は見えない力によって弾かれ、かすかに青白い煙を上げながら、まるで手毬のように転がっていったのだ。その光景に青ざめながら一護の側へと駆け寄る真咲。

 

 小さな体を抱き上げ、一護の名前を呼ぶと、かすかに呻き声を上げた。目立った外傷はなく、単に突然の衝撃で気絶してしまっただけのようで、思わず真咲はほっと安堵の息を吐いた。しかし、その安堵もつかの間、彼女は突き刺すような鋭い霊圧を感じ取る。

 

「ひひひひひっ惜しいのぉ、もう少しで喰ろうてやるところだったのに」

 

 悪辣な笑みを浮かべる虚──グランドフィッシャー。愉しそうに声を上げながら、歪んだ表情を見せるそれに、彼女の背筋が総毛立つ。

 

 真咲は咄嗟に、長年の訓練で身についた動きで神聖弓と静血装を展開させようとした。

 

 しかし、その瞬間、全身から力が抜けていくような感覚に襲われる。まるで生命力そのものが吸い取られていくようなその感覚に、彼女は膝から崩れ落ちた。

 

 

 何故──!

 何故、この瞬間に──ッ! 

 

 

 焦りと焦燥感が胸の内で渦巻く。

 

 それでも、彼女は両腕に抱える息子を離さなかった。己の体で小さな息子を覆い隠さんと、震える両手で、冷たく悴む指先で必死に抱き締める。母性本能と守護の意志が、彼女の勇気を後押ししていた。

 

 

「何をしようとした……? まあいい、無駄な足掻きは止めて、大人しく喰われろ」

 

 

 虚の悪辣な笑みがさらに広がり、歪んだ目尻がより一層つり上がる。大きく開かれた口が、目の前の親子を丸呑みにせんと牙をむく。

 そうして伸ばされる怪腕、禍々しい手が親子に触れようとしたその瞬間──

 

 

「グゥ!?」

「きゃあっ!」

 

 

 突如として、眩い何かが彼らの間を裂くように降り注いだ。グランドフィッシャーは咄嗟に身を翻し、真咲は思わず目を伏せる。

 

 

 そして、眼を開いた真咲の瞳に映るのは、──謎の黒い影。

 

 

「貴方は……」

 

 

 親子を庇うように巨大な虚と対峙する黒い外套を纏うその人物。

 まるで夜そのものが実体化したかのようで、性別も、表情も、その正体さえも掴めない。ただ、その存在感だけが、場の空気を一変させたのだ。

 

 

「貴様、死神かぁ!? ならば何故、霊圧を探知できない……!?」

 

 

 戸惑いと怒りが混じったグランドフィッシャーの咆哮に、黒衣の人物は無言で応える。

 彼は腰に佩く太刀を抜刀すると、長い刀身を高く掲げ、凄まじい勢いで振り下ろした。

 

 一閃。

 

 

「ギィァアアアアアア!!!」

「すごい……!」

 

 

 紅い閃光が虚空を切り裂き、己を庇うように掲げたグランドフィッシャーの右腕ごと、その巨体を引き裂く。

 聞くに堪えない悲鳴が、辺りに響き渡り、大地を、木々を揺らす。

 

 

「き、貴様ぁッよくもわしの腕を、身体をォオオオ!!」

 

 

 痛みにもがきながら、牙をむき出しにして狂乱するグランドフィッシャー。

 狂暴な怒りを露わにして、目の前の敵を排除しようと鋭い舌を伸ばす。しかし、黒衣の人物の動きは、それ以上に速く、正確だった。

 

 

「ギィアッ!」

 

 

 彼は迫り来る舌を斬り払うと、太刀を一振し、細かい斬撃をグランドフィッシャーへと放つ。弾幕のように降り注ぐ斬撃になすすべなく、その巨体には、次々と傷が増えていく。

 

 

「ァァアアア……!!」

 

 

 そしてとうとう、圧倒的な実力の差に蹂躙されたグランドフィッシャーは、惨めに地へと崩れ落ちたのだった。

 

 

「ばはーーーっばはーーーっ……」

 

 

 グランドフィッシャーの呻き声は、弱々しく、諦念に満ちている。その姿は、かつての傲慢さとは程遠い、哀れな存在そのもの。

 

 

「ばはーーーっばはーーーっ(クソ、クソ、クソ、逃げるしかない、逃げるしかない!!)」

 

 

 戦意を失い、この場から逃げ出そうとするグランドフィッシャーは、自身のもう一つの本体である疑似餌へ逃げ込もうと、虫のように地を這う。

 そうして、残った片方の手を前へと伸ばしたその瞬間。ドスリ。鈍い音を立てながら、少女の皮を纏った疑似餌に冷たい刀身が突き立てられた。

 

 

「な、ぁ……!?」

 

 

 絶望と驚愕が入り混じった声が喉から絞り出される。

 

 地に伏せるグランドフィッシャーを無言で見下ろしながら、黒衣の人物は静かに刀を引き抜く。刀身に付いた土を振り払うように刀を振ると、彼はゆっくりとグランドフィッシャーへと詰め寄った。

 

 

「ヒィ、ヒイッ! やめろ、やめろやめろわしに近寄るなぁぁぁぁ!!」

 

 

 狂乱し、残った腕を形振り構わず振り回すグランドフィッシャー。が、そんな出鱈目な攻撃が当たるわけもなく、それらは全て無意味な抵抗として軽く一蹴される。

 記憶を読むための手も失い、疑似餌というもうひとつの本体をも貫かれたグランドフィッシャーに、もはや逃げ場はない。

 

 そうして、最後の望みを託すかのように、グランドフィッシャーは震える声で懇願した。

 

 

「あ、あ、見逃して、見逃してください、みのが……!」

 

 

 しかし、その哀れな命乞いの言葉が最後まで発せられることはなかった。黒衣の人物の刀がグランドフィッシャーへと振り下ろされる。

 

 ──それが、数多の魂を弄び、無慈悲に食い尽くしてきた虚の最期だった。

 

 

 

 

 全身の力が抜け落ち、心臓の鼓動が耳鳴りのように脳に響き渡る。意識が遠のき、視界は霞んでいく。

 身体に当たる雨粒が酷く冷たい。肌を刺すようなその感覚に身を震わせる。

 腕に抱いた息子の体温を確かめるよう、きつく抱き締めた。そのぬくもりだけが、真咲に生きている実感をもたらしていたのだ。

 

 

「……」

「──ッ!」

 

 

 正面に立つ黒衣の人物が、ゆっくりと近寄ってくる。雨粒に当たりながら歩く彼の姿は、影の様で酷く恐ろしい。

 

 真咲は震える両手で、悴んだ指先で、息子を抱きしめた。強く、強く、強く。

 この小さな命を、自身の命に代えてでも守り抜くと誓うかのように。

 

 そうして黒衣の人物は、真咲の前に膝を突いた。まるで騎士が忠誠を誓うかのように、無言で此方を見つめてくる。

 

 その行動に困惑する真咲は、フードから覗くその顔を見て、ようやくこの人物が男性であると知ったのだ。

 

 

「……」

「……」

 

 

 無言で見つめ合う二人。彼の眼には、深い悲しみと静かな決意に満ちていた。彼の心に何が渦巻いているのか、真咲には分からなかったが、その重みだけは確かに感じ取ることができた。

 

 

「僕を、信じてほしい」

 

 

 唐突に告げられたその言葉に目を見開く。

 

 御伽話で語られるような死神の影を纏う彼。フードの隙間から覗く、レンズ越しに見えるその眼差しは、言葉以上に多くのことを語っていた。

 

 心の底に不安を抱えながらも、真咲は考える。絶望の淵から彼女を引き上げたこの男の事を。

 

 彼女は逡巡し、そして答えた。

 

 

「お願い……助けて……!」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「う、ん……」

 

 目を覚ました黒崎一護は顔をしかめた。

 

 顔には冷たい雨粒が降りかかり、背中にはグイグイと小石が食い込み鈍く痛む。

 まるで鉛のように重い体は、思うように動かせない。頭の中は霞がかかったようにぼんやりとし、視界も上手く定まらない。

 どうして自分はここで寝転がっているのだろう? 混乱する頭の中で、少年はどうにか唯一動かせた首をゆっくりと横に向けた。

 

 

「───ッ!?」

 

 

 そして、少年の視界に飛び込んできたのは、護りたかった母が、見知らぬ誰かに無惨にも刺されている姿。

 

 

 

 

「……ッ!? ……!!」

 

 

 動かない身体。声が出せない。衝撃と恐怖に見開いた目だけが、悲劇的な光景を鮮明に刻んでいく。はくはくと、金魚のように口を動かしながら、一護はその光景を脳裏に焼き付けた。

 

(黒い服、男、茶髪、眼鏡)

 

 フードの影から覗く、その男の横顔を。

 

(黒い服、男、茶髪、眼鏡)

 

 繰り返し、繰り返し、何度も何度も、深く脳裏に焼き付けていく。

 

(黒い服、男、茶髪、眼鏡)

 

 許さない。赦さない、赦さない、許さない、赦さない、赦さない、赦さない。

 

(黒い服、男、茶髪、眼鏡)

 

 激しい怒りが胸の奥底から溢れ出す。

 

(黒い服、男、茶髪、眼鏡)

 

 ──無情にも流れ続ける雨の中で、当時九歳の黒崎一護が出来たのは、ただそれだけだった。

 

 

 

 

 






ヨン様「無実です」

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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