ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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更新遅れてゴメン……難産でした。

今回の意訳
浦原「何がしたいんだ藍染」
藍染「何がしたいんだコイツ」
主人公「お団子美味しい」
ギン「ひゃー笑」




一仕事を終えた後の一服は至高だという事を知っているね?

 

「真咲サンをアナタ達ご家族の元に帰すことは出来ません」

 

「竜弦サンのおかげで真咲サンの容態は安定していますが、彼女は滅却師としての力をほぼ全て失ってしまっています」

 

「虚化する滅却師。それと相反する人間化した死神が力を送り続ける事で、真咲サンの内部に巣くう虚を何とか抑え続けていました」

 

「しかし、彼女が滅却師の力を失い、均衡が崩れた今、何がきっかけで内部の虚が暴走するか分かりません」

 

「分かりやすく言いましょうか。現在の真咲サンは、人間の肉体を持ちながら、虚化した死神の魂魄を持つ存在へと化しているんス」

 

「幸いにも、僅かに残った滅却師の力と、真咲さん自身の魂魄がワクチンとして作用し、魂魄自殺を未然に防ぐ事は出来ました。……が、このバランスがひとたび崩れてしまえば、最悪の事態を引き起こす可能性があります」

 

「──内なる虚の暴走。アナタの愛する奥サンが、息子サンや娘サンを喰らう姿なんて見たくないでしょう?」

 

「どうするのかって? なあに、簡単ですよ。真咲サンが虚を制御すれば良いんです」

 

「ええ、虚化を身に付けさせましょう。アタシにツテがあります」

 

「その方々は虚化のエキスパートと言っても過言じゃないッスからね。真咲サンもきっと何とかなりますよ♪」

 

「ん? 奥さんを任せる相手の詳細が知りたい? ……アナタもご存知だと思いますが……まあ、そうっスね、明日にでも会いに行きましょうか」

 

「……しかし、藍染は何を考えているんスかねぇ。何故今さら介入を……」

 

「──いや、もしかしたら藍染ではなく」

 

「イイエ、何でもありませんよ。ただの独り言っスから」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

「ヘックション!」

「おっ、風邪引いたん?」

「いや、至って健康だけど……花粉症かな」

「ふうん、誰かがキミの事を噂しとるんちゃう? 秀朝クンって人気者やし」

「はは、ギンにそう言われるとゾッとするよ」

「喧嘩売っとる?」

 

 

 いつもの茶屋の個室にて、相席するギンと可城丸。

 もはやこの店の常連と化した二人は、店員と目が合えば、無言の了解のもと、個室へと案内されるようになっていた。晴れた日には茶屋の軒下で茶を嗜むこともあるが、大抵は人目を避けるように個室を選ぶ。

 

 可城丸は「密談場所が普通の茶屋で良いのか?」と疑問を抱いていたが、「まあ、ここのみたらし団子美味しいからいっか」と楽観的に思考を停止した。

 

 ……系統の違う二人のイケメンが、人目を憚るように個室で談笑する姿に、ある種の背徳的な楽しみを見出す店員もいるが、これについては割愛しよう。

 

 

「──ああ、そうだ。これありがとう、おかげで助かったよ」

 

 爽やかな微笑みと共に手渡されたのは黒い外套。つい先週、ギンが可城丸に貸したものだ。丁寧に畳まれたそれは、彼の几帳面な性格を如実に語っている。

 

「ああ、ええよ、ええよ。言うてこの外套ボクのモンでもあらへんし」

 

 ひらひらと手を振りながら軽快に笑うギン。

 可城丸は「やっぱり浦原さんの所からパクったんだ」と察した。手癖の悪い藍染一行に内心ドン引きしながらも、黙ってお茶を啜り、何も聞かなかった事にする。薮蛇をつつく趣味は彼には無い。

 

 渡された外套に顔を近づけたギンは、眉を少し上げて目を瞬かせる。

 

「わざわざ洗ってくれたん? エエ匂いするわ」

「迷惑だったかな。現世の洗剤を使ってみたんだけど……好みの匂いじゃなければ済まないね」

「いや、嫌いじゃあらへんよ」

「それなら良かった」

 

 現世へと赴いたついでに、可城丸は洗濯用洗剤を購入した。某大手日用品メーカーから発売されたばかりの粉末洗剤だ。

 

 霊体である彼は、霊力を持たぬ人間の目には映らない。そのため、レジに現世の硬貨を置き、洗剤を持ち去るという、倫理的にややグレーな行為を行ったが、まあこれは置いておこう。

 

 大掛かりな暗躍の後とは思えない、何気ない買い物。だが、可城丸がこの洗剤を購入したのには、ちょっとした理由があった。

 

 尸魂界の洗濯は、依然として手洗いが主流で、灰汁から作られた素朴な固形石鹸が一般的に用いられている。

 その洗浄力は、令和の価値観を引きずっている可城丸にとっては物足りないものであり、その為、せめてもの抵抗として、彼は洗浄力の高い現世の洗剤に頼っていた。

 

 尸魂界でも現世の物品を入手する事は可能だが、中間業者を経由するため、価格が現世よりも高騰している。それなりの給与を得ている可城丸でさえ、その値段にはためらいを覚える程だ。

 

 しかし、現世の洗剤は確かに洗浄力は高いものの、手洗いでは酷い手荒れを引き起こす。実際、可城丸の手もすでに幾度となくその犠牲になっているが、尸魂界には「回道」という便利な術がある為、特に問題視していなかった(彼は回道の事をキズパワーパッ○か何かと勘違いしている)。

 

 ……因みに、可城丸が外套を手洗いした際、すすいだ水が赤黒く濁った色をしていたことについて、彼はギンに触れなかった。触れないったら触れない。わざわざ藪をつつく趣味は可城丸には無いのだ。

 

 

「で、これ何に使ったん?」

 

 フローラルな香りがする外套をポンポンと叩きながら、わざとらしく尋ねるギン。その軽薄な様子とは裏腹に、鋭い視線が可城丸を貫いていた。

 

「……わざわざ分かりきったことを聞くのかい? どうせ見ていたんだろう」

「──ああ、やっぱり秀朝クン怖いなァ」

 

 可城丸は呆れたように目を細めると、投げやりにそう答える。それを聞いたギンはニンマリと口端を歪め、正面に座る可城丸へと顔を近づけたと思えば、ヒソヒソとこう囁いた。

 

「黒い外套を羽織った正体不明の人物。虚を圧倒し、滅却師へと接触したと思うたらいきなり刺突。そして逃走。こんなん気にならん方が可笑しいやろ」

 

 ギクリと肩を揺らした可城丸は、その場で頭を抱えたい衝動に駆られる。

 分かっていたけれど、直接言われるとやはり頭が痛くなる。と言うか、思ったより見られていたな。藍染一行はどうして俺達を見てたんです? チャンイチへのストーキングか? 怖……。

 

 自問自答を繰り返し、ぐるぐると目を回す可城丸の様子を見ながら、ギンは追い討ちをかけるように更に言葉を重ねた。

 

「あん人ら、当日休暇中やった隊士のこと、洗いよるんやて」

 

 ギンのタレコミに、可城丸はさらに顔をしかめる。その額にしわを寄せ、口をへの字に曲げた表情を見て、ギンはついに声を抑えきれず、腹を抱えて大笑いした。

 そんなギンを恨めしげに見つめる可城丸に、ふと、一つの懸念が頭を過る。

 

「ギンは大丈夫なのかい? ほら、外套を借りたし」

 

 可城丸は不安を隠せない声色で尋ねる。その瞳には心配の色が浮かんでいた。

 

 ギンの仲間には盲目である東仙要がいる。そういった人は往々にして他の五感が鋭くなっていることが多い。もし、洗剤の匂いをきっかけにギンとの関係がバレたら……と考え、今更ながら勝手に外套を洗ってしまったことを彼は後悔し始めていた。

 

「ああ、映像からは霊圧の揺らぎなんて分からんからな。霊圧遮断の外套だとは気付かれてへんよ」

「それに、匂いなんていくらでも誤魔化せるし……気にしすぎやで秀朝クン」

 

 可城丸の心配なんて何のそのとばかりに、軽やかな口調でそう答えたギンに、可城丸はホッと安堵の溜め息を吐く。

 

 ただでさえ立場が危ういギン。自分の軽率な行いで、彼に迷惑を掛けるわけにはいかない。「今後の振る舞いには細心の注意を払わなければならないな」と可城丸は改めて自身を戒めた。

 

 

 

 

 

~閑話休題~

 

「そう言えば、妙に簡単に外套を貸してくれたよね。何か企んでいたりするのかな?」

「イヤやなぁ、友達を助けるのは当たり前やろ? ……まあ、お返しは楽しみにしとるけど」

「おっと、頼る相手を間違えたか……」

 

 可城丸は、自らの軽率さを悟りちょっぴり後悔した。あちゃ〜と額を押さえる彼に、ギンは両手を擦り合わせながら「頼みますで旦那〜」と冗談めかして言う。

 どこの昭和喜劇だと頬を引きつらせた可城丸だが、「まあ良いか」と思考を放り投げた。別に悪いようにはならんだろうと楽観的に考えたのだ。楽観的過ぎる。

 

「……まあ、秀朝クンなら悪いことには使わへんやろな~って思ったんよ」

 

 擦っていた手を下ろし、テーブルの上の湯呑みへと手を伸ばしたギンは、お茶をすすりながら、突如として真面目な口調でそう言った。その予想外の言葉に可城丸は目を見開く。

 

「えっ、君、そんなに僕の事を信用してたのかい?」

「えっ、気付いてへんかったん? こんなに仲良うしてるのに……ずっとボクの片想いやったってこと? 嘘やろ、悲しいわぁ……」

 

 およよと泣いたフリをするギンに動揺しつつ、可城丸はまた口を滑らせる。

 

「す、済まない。でも、糸目に京都弁は信用するのにちょっと勇気がいると言うか……」

「ツラに関しては秀朝クンだけには言われとうないで」

「それはライン越え(禁句)だよ」

 

 やんややんやと言い合いをする二人だが、双方共に怪しい顔をしているのでこの問答に全く意味は無い。

 

 そんなこんなで、無意味な問答を続けていたギンはケロリと泣き真似をやめると、疲れきった様子で団子を食べる可城丸に向かって、さらりと質問を投げかけた。

 

「ところで秀朝クン」

「うん?」

 

「キミ、人妻ばかり助けとるよな。ぶっちゃけそういう趣味?」

「──ッ!?」

 

 その瞬間、可城丸は気管に餅を詰まらせた。ゲホゲホと激しく咳き込み、顔を真っ青にして瀕死の状態になる。

 ギンは肩をプルプルと震わせながら、笑いをこらえてお茶を差し出した。可城丸はそれを一気に飲み干し、ようやく息を整えると、顔を真っ赤にして大声で否定した。

 

「違う!!!!!!!!」

「うわ、うるさっ。必死すぎへんか? 何か逆に怪しいで」

「違う……!!!!!!!!!!」

 

 わざとらしく耳をふさいだギンに、可城丸は再び強く叫んだ。その純粋な反応を見たギンはニヤリと笑い、さらにからかい続ける。

 そんな二人のやり取りはギンが飽きるまで続き、いつものように平穏な時間が流れていくのであった。

 

 

 

 

 






「秀朝クン、あの滅却師のナカに何が居るんか解っとたんやろ? なのに何でそれを放っといたん?」
「うーん……あんなに混ざり合っていると離すのが難しくてね。──まあ、一番の理由は勘かな」
「勘?」
「うん、これが一番良い方法だと思ったんだよ。」
「ふーん……秀朝クンって、案外悪い子なんやね」
「何を今さら! 君と友達をやってる時点で分かりきったことじゃないか」

↑わりとちゃんと友達してる二人。

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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