ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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更新遅れてすみません。実生活が忙しいのだ……


カラブリを手に入れました。初めての電子書籍♪
色々と小ネタが知れて面白いです。浮竹隊長が京楽隊長より知力が高いのが個人的にビックリ。




ずっと考え続けていると段々訳が分からなくなっていく事は知っているね?

 

 小さな枠に綴じられた言葉。

 大義、正義、秩序、善。

 それらについて丁寧に書き記された文からは、書き手の揺るぎない信念が滲んでいる。

 

 正しくて、崇高で、清らかで。力強く訴えかけるその文章は、磨がれた刃物のような鋭利さを持っていた。

 

 正しい、確かにこの考え方は正しいのだろう。しかし、これ以外の道はないと断言するようなその言葉に、どうしようもない不安を抱く。

 

 

(この言葉は、他者を断罪する杭であり、自身を架ける十字架なのではないか?)

 

 

 正義が何か解らない。それは俺だけの話ではなく、大半の者がそう思うだろう。

 表面的な知識は在ろうとも、それが具体的に何を指し示し、何を許容するのか、人は皆、掴みかねている。

 

 

(正義の反対は不義であり、善の反対は悪だ。つまり、善ではない正義も存在しうるし、悪ではない不義も在る)

 

 

「大義無き正義」

 

 

 人差し指で覆い隠してしまえるほどの大きさの文字の羅列。それを爪先で(なぞ)りながら、俺は考える。

 

 大義、人がふみ行うべき最高の道義。

 正義、正しい道理。

 

 辞書に簡潔に記されるその言葉。しかし、やはり良く解らない。

 

 大義がなければ正義は成り立たないのだろうか?

 ──いや、違う。

 

 泣いている人にハンカチを手渡すように。

 転んだ人に手を差し伸べるように。

 そういった、一般的に「善」とされる行為を、「大義」や「正義」と意識して行おうとする者は少ないだろう。

 

 「大義」や「正義」という言葉は、ある行為に対して後付けで与えられるラベル(指標)に過ぎない。本能的な反応として湧き上がるこうした行為こそが、人間の魂に宿る本質的な「善」なのだと俺は信じている。

 

 

(もし、自分の行為を正義だと高らかに主張する者がいるのなら、それは、自らが正しくありたいという願望の表れ。あるいは、そう思い込むことで自己を慰め、戒める意思表示なのだろう)

 

 

 進むべき道を血の滴るような決意で定めた彼。

 復讐に身を窶し、怨嗟の炎を纏い、その瞳に地獄の業火を宿した彼。

 安寧を受け入れる事を、赦される事を、救われる事を頑なに否とした彼。

 

 何が出来る? 何も持たぬ俺に一体何が出来る? 

 彼を納得させるほどの言葉を持ち合わせていない。新たな光明を示せるほどのカリスマ性も持ち合わせていない。そんな無力な自分に何が出来る? 

 

 

(深い皺の刻まれた、記憶の中の暖かな両手が、脳裏に過る)

 

 

 ──嗚呼、それでも。

 筆を執る。文字を書く。

 名もなき読者として、彼へと宛てた匿名のメッセージ。

 

 この行為に何の意味があるのだろうか。ただ、彼の癒えぬ傷口を抉るだけの、惨たらしい行為なのではないか。

 

 それでも、理解できないからと、諦めてしまいたくない。

 

 

(105mm×148mmのハガキの中、小さな枠に記した俺の言葉)

 

 

 識ろうとすることは、悪ではないと信じているから。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 今日は四番隊の手伝いに来たぜ。

 

「可城丸三席、今日も来てくださったんですか……! お手伝いありがとうございます」

 

 笑顔で駆け寄ってくる花太郎くんに、俺は軽く手を振り返す。俺の雑な対応にも彼は眠たげな瞳をキラキラと輝かせて喜んでいた。本当に良い子だなァ……飴ちゃん上げちゃう。

 

 余談だが、前世の俺が好きだった斬魄刀は、山田花太郎()の持つ瓠丸だ。斬りつけた相手の傷を取り込み癒すという治癒能力を持ち、さらには心の傷さえも癒してしまうという優しい斬魄刀。その能力は、使い手である花太郎くんの優しい性格そのものを映し出しているよう。

 

 勿論、今の俺は相即不離が一番好きだ。これは不動の順位ね。

 

 

 さて、そんな花太郎くんに案内されて、俺は四番隊舎へと足を踏み入れた。清潔な空気の中に漂う、消毒液の匂いが鼻を擽る。ここに来る度に、保健室のベッドで寝転んでいた小学生時代を思い出すわ。

 

「今日は夕食の準備の手伝いをお願いします」

 

 通された場所には大量の野菜とそれを切り分ける四番隊の皆さん。オッケー、任せろ。自炊生活で磨き上げた俺の包丁捌きを見せてやる!

 

 

 ──護廷十三隊内で、一番忙しい隊は四番隊だと思う。

 治療や補給を主としながら活動する四番隊は、食堂で出される食事の準備や、病床に使うシーツや掛け布団の洗濯に、解れ直し作業、そして他隊での物品整理に、瀞霊廷内の美化管理など、本当に四番隊の方々には頭が上がらない。

 

 そんな激務の中、勇音副隊長は俺に回道の手解きまでしてくれるのだ。頭上がらないどころじゃなくて地中に沈めなきゃいけないレベルだよ。

 

 え? 「なんでそうなったのか」って……? きっかけはあれだ、彼女の実妹であり、俺の部下でもある清音くんだ。

 

 真央霊術院での授業以来、ほとんど我流で回道を使い続けてきた俺だったが、そんな手癖まみれの回道を浮竹隊長に当てるのがいよいよ申し訳なくなりまして……

 

 そこで、霊術院時代に回道の成績がトップだった(らしい)清音くんに指導をお願いしたのだが、「私よりも現場で実際に使っている姉さんに教わった方がいいですよ!」との言葉を受けて、彼女の実姉である勇音副隊長を紹介して貰うことになった。

 

 勇音副隊長の多忙ぶりは知っていたので、負担にならないかと直接本人に聞いてみたが──

 

「全然、ぜんっぜん大丈夫です!! むしろ好都合と言うか……いえ、何でもないです! あたしで良ければ任せてください!!」

 

 なんか若干聞き取れない部分もあったが、まあ本人がこう言っているので、お言葉に甘えて、月に二、三回程度、手解きを受けている。

 

 食堂での一件以降、勇音副隊長とはちょくちょく交流を図るようになっていたからね、全く知らない人から教わるよりはずっと気が楽だったからありがたい。

 ……正直、ちょっと嬉しい。スマン、俺も男の子なんだわ。

 

 

 まあそんなわけで、そのお礼も込めて業務が早く片付いた日には四番隊の手伝いに顔を出すことにしている。おかげで四番隊の皆さんともすっかり顔見知りだ。

 

「あら、可城丸三席。いらしてたんですね? いつもありがとうございます」

 

 食材を切り終え、食器を洗っている最中、そう声を掛けてきたのは卯ノ花隊長。

 いやぁ四番隊の皆さんには良くお世話になってますんでね、特に勇音副隊長には……むしろ全然返し足らないくらいっすよ~! なんて軽く返す俺に、卯ノ花隊長は「あらあら」と優しく微笑む。

 かと思えば、急にすっと真顔になって、妙な言葉を口にした。

 

「──勇音の事を泣かせないでくださいね?」

 

 おしとやかながらも、どこか冷たく、鋭い棘を感じさせる口調。

 えっ唐突に何? そもそも俺が勇音副隊長を泣かせるっていうシチュエーションが謎なんですけど……?

 

 しかし、有無を言わさぬ様なその圧に押し負けて、俺は小さく頷いてしまうのだった。取り敢えず肝に銘じとこう……

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「可城丸、ちょっと良いか?」

 

 十三番隊隊舎。山積みの書類に埋もれながら日々の業務に身を窶していた俺は、ふと聞こえてきた浮竹隊長の柔らかな声に顔を上げた。隊長は穏やかな笑みを浮かべながら、俺を手招きしている。何事かと思いつつも、俺は立ち上がり隊長の後に続いて客室へと足を運んだ。

 

 そうして告げられたのは「可城丸にインタビューの依頼が来ている」という話。インタビュー? なんのこっちゃと首をかしげた俺に、浮竹隊長は心底楽しそうにこう答える。

 

()()から()()に頼まれてな。是非、可城丸から()()話を聞きたいそうだ」

 

 は? 東仙隊長直々の取材……?

 ファーッ!これあれだろ。ヨン様からの遠回しの探りだろ。ああだめだ、もうおしまいだぁ……

 

 絶句し冷や汗を垂らす俺と、ニコニコ笑う浮竹隊長とで温度差が酷い。なんで、どうして……ハッ!

 

 因みにお断りって出来たりは!?

 

「断るのか? もう来てもらっているんだが……」

「可城丸三席、今日はよろしく頼む」

 

 あっ、ふーん

 

 

 「じゃ、後は二人でゆっくり話してくれ」と微笑みながら退出していく浮竹隊長。そして無情にも閉まる扉。客室に取り残される東仙隊長と、絶望する俺。……二人っきりだね♡

 

「急に済まない。前々から君への取材を行いたいと思っていたんだが……迷惑だっただろうか?」

 

 荒れ狂う自分の心音で若干吐き気がしてきた俺に、東仙隊長はそう話しかける。

 目元を覆うグラサン? サンバイザー? のせいでうまく表情は読み取れないが、その声音からは申し訳なさがじんわりと伝わってくる。

 この聞き方ずるくね? 断れねぇじゃんもう。ぐ、ぐう……俺で良ければお受けします……

 

 

 

「好きな食べ物は?」

 

 美味しいものです。

 

「嫌いな食べ物は?」

 

 特にないです。

 

「趣味は?」

 

 写真……ですかね。

 

「写真?」

 

 写ルン……、あーと、現世で販売されている使い捨てのレンズ付きフィルムで写真を撮るんです。

 

「ふむ、わざわざ使い捨てのカメラを使う理由は? 今はほら、でじかめが在るだろう?」

 

 現像するまで撮った写真がどんな風に写っているのかわからないんです。それが、なんというか、ワクワクするみたいな……後はあれですね、一瞬の出来事をその場で直ぐに撮れるのが個人的に好きです。

 

「なるほど。君は一瞬一瞬を大切にする性格なんだな」

 

 いやいや、そんな大層な意味はないですよ。

 

「ははっ謙遜しがちでもあるらしい。……次の質問に移ろうか、君の特技は?」

 

 えっと、特技は──

 

 

 

 何だこのやり取り?

 東仙隊長の質問に対して俺が簡潔に答えるという形式で進むこの状況、まるで面接と小学生の自己紹介が混じり合ったような、一問一答が続いている。

 「もっとリラックスして貰っても良いんだが……」と苦笑いされたけど、よその隊長、それもほぼ初対面の人、しかもヨン様の信奉者相手にそんなことできるワケなくない?

 

 そもそも、取材って編集長自らがやるものなのか? 常識的に考えれば違うだろ。やっぱりヨン様の探り……?

 

 しかし、内心ガチガチにビっていた俺とは裏腹に、東仙隊長は軽い質問をしつつ、少し雑談を挟むだけでスムーズに会話を進ませた。

 インタビューに関係なさそうな正義観について深く聞かれたりはしたが、斬魄刀の詳細を聞かれることもなく、深く探りを入れられた感じもしない。……ヨン様の探りじゃないのか?

 

 ……疑ってた俺がバカみたいじゃないですかヤダーッ!

 

 

 肩透かしをくらいつつも、心底ほっとした俺は、東仙隊長をエスコートして隊舎の外まで見送る。

 爽やかな風が頬を撫でる中、隊長が「……あ、そういえば」と何かを思い出したように声を上げた。

 そうして彼は、はてなを浮かべる俺の方を振り返ると、これから雑談でもするかのような、本当に軽い口調でこう告げたのだ。

 

 

「君からの()()、いつも楽しみにしているよ」

 

 

 ……俺、あのアンケート、匿名で答えてるんすけど?

 

 

 

 

 






主人公と東仙要の価値観は根本的に異なるので、分かり合うことは無い。

「親友の願いを汲んでやりたいけど、それはそうとして世界が憎い。苦しい……なら自分が正義になれば良いんだ!」って極論に到ったのに、「新しい世界に自分は相応しくないんで殺してください」ってヨン様に頼むDJ要。この人の救いって何ですか?

次回
ルッキャさん、現世に行く。

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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