ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

24 / 46


遅くなって大変申し訳無い。
今回はヨン様とジェネリックのお話がほとんどです……!




某推理漫画にて、探偵の眼鏡が光る描写で大体の犯人が予想できてしまうという事は知っているね?

 

「久しぶりだな、お前との修行」

「そう言われると確かに……急な誘いで悪いね」

「気にすんなよ」

 

 西流魂街、鯉伏にて相対する二人の男。

 可城丸秀朝と志波海燕は軽いストレッチで体を慣らしながら、雑談に興じていた。

 

「最近は書類仕事ばっかしてたからなァお前。腕が鈍ってんじゃねぇのか?」

 

 ツンツンと肘で(つつ)いてくる海燕を、苦笑いを浮かべながら押し退ける可城丸。彼は凝りをほぐすようにぐるぐると肩を回すと、溜め息混じりに答えた。

 

「仕方ないだろう? 副隊長代理になってから仕事量が尋常じゃないんだ。僕だって好き好んで書類仕事をしているわけじゃない」

「ハハッ、悪ィ悪ィ。……しかし、それにしても妙にやる気に溢れてンな」

 

 顎に手を添えた海燕は、探るような眼差しを可城丸に向ける。

 その鋭い視線から逃れるように少し身を引いた彼は「そうかな、別にいつもと変わりないんだけど……」と、戸惑いの声を小さく漏らした。

 

 しかし、そう言う可城丸自身も、どこか落ち着かない自分の心に気が付いていた。

 ちりちりと、じりじりと。何かに苛まれるような、妙な感覚が連日心をざわつかせている。その不快感を紛らわすために、彼は海燕を修行に誘ったのだ。

 

「……ははーん。さてはお前、ルキアが現世に行ったこと気にしてんのか?」

 

 

 ピタリ。

 軽く腕を伸ばしていた可城丸の動作が、海燕の言葉で静止する。

 

 ──ああ、なるほど。指摘されるまで気が付かなかった。

 

 胸の奥底でくすぶり続けていた小さな違和感。その正体が"焦燥感"であったと、可城丸は指摘されて初めて気が付いたのだ。

 

 自身の心の機微を親友に見抜かれた事に、何となく気恥ずかしさを感じた可城丸は頬をポリポリと掻く。その仕草には普段の冷静沈着な副隊長代理の姿は無かった。

 

 親友の思わぬ繊細な一面を意外に思い、驚きの色を隠せない海燕は少し苦笑いをすると、軽快に、しかし力強く言い放つ。

 

「ンな心配すんなよ。アイツの実力はお前が一番分かってるだろ?」

「俺達が出来るのは、アイツを信じて待つことだ」

 

 

(信じる、か)

 部下を見捨てた俺が

 

「……そうだね、お前の言う通りだ」

 

 可城丸はニッコリと微笑んでそう答えた。

 きりきりと痛む自身の心臓を無理やり押さえ込んで

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

「じゃあ、可城丸くん、一緒に行こうか」

 

 十三番隊の隊舎の前、振り返ったヨン……藍染隊長は温かな眼差しで俺にそう言った。

 どうしてこうなっちゃったんだろう……

 

「顔がひきつっているよ? どうかしたのかい?」

 

 アッ、なんでもないです!

 

 

 

 

 

 先週の事である。

 いつものように山積みの書類と格闘していた俺は、またしても浮竹隊長に呼び出された。

 嫌なデジャブに襲われながら、一歩踏み入れた室内には藍染隊長が優しげな微笑みを浮かべて座っていて……ウ、ウワーッ! 怖い、怖いよぉ!!

 

 

 うっ、おちつけ、落ち着け俺。これはもう過ぎたことなんだ……!(現在進行形で藍染隊長の隣を歩いている)

 

 

 とにかく、浮竹隊長に促されるがまま藍染隊長の前へと(本当に嫌々)座った俺に、彼は爽やかな笑みを浮かべてこう言ったのだ。

 

「真央霊術院の臨時講師にならないか?」と。

 

 曰く、真央霊術院の鬼道講師が産休に入った為、臨時講師をしてほしいと学院長から依頼されたそうだ。しかし、藍染隊長も多忙のため、どうしても出席できない日が出来てしまう。もう一人人材が必要だと考えた彼は、俺の噂を聞きつけて藁にもすがる思いで頼みに来たのだと言った。

 

「講師といってもそこまで畏まったものでは無いよ。主な指導は僕が行うから、可城丸くんには助手として僕の授業をサポートしてほしいんだ」

 

 ふーんなるほどね~……ぜってー嘘じゃん。

 

 そんなん雛森副隊長に頼めば良いだけの話だし。いや、隊長と副隊長が同時に隊を空けるのは組織運営上不味いって分かるんだけど、それでも怪しいもんは怪しい。つか噂ってなに?

 

 こんな見え透いた罠にかかりたくないなぁ……

 というより、最近は業務が落ち着いているとはいえ、これ以上仕事が増えるのは勘弁願いたい。だから隣に座る浮竹隊長に横目で視線を送って助けを求めたのに──

 

「可城丸、仕事は俺達に任せろ。お前は今のうちに優秀な死神見習いをはんてぃんぐしてきてくれ!」

 

 わかってましたよ……こうなるってのはなァ!!

 

 

 

 

 

~閑話休題~

 

 そんなこんなで震えて寝る日々を過ごして、ついに今日、その約束の日になった。……今更だけど教育免許って必要ないのか? 

 

 

「緊張しているのかい?」

 

 そうですね~(色々な意味で)緊張してます。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。生徒達は皆、素直だからね」

 

 

 突然耳元で優しく話しかけられ、思わず肩を震わせた俺に、藍染隊長は落ち着かせるようにそう言った。

 ……こうして会話をしていると良い人だなぁって思うんだけどな~。でも裏切る(私天する)んでしょ? その二面性が怖い。

 

「ところで可城丸くん」

 

 俺の複雑な心境をよそに、藍染隊長は口許に微笑みを携えながら話し出す。こういう笑顔、何て言うんだっけ……マニアックスマイル? *1

 

「君は、副隊長の業務をこなしながら、他の隊士に指導する一方で、四番隊の手伝いもしているそうじゃないか。十三番隊の三席は、勤勉だと五番隊でも評判になっているよ」

 

 ああ~先週言ってた噂ってそれか。鬼道のコツを軽く教えてるだけだし、なんなら海燕だってやってた事だから、そんな大したことはしてないんだけど……

 

「ははっ、聞いた通り、君は謙遜しがちな性格らしいね」

 

 少し苦笑いをしてそう言う藍染隊長。つい最近、同じことを誰かに言われたような……? 気のせいか。

 

 妙な既視感を覚えながら、ちっとも心が休まらない軽い雑談を繰り返して石畳の道を歩いて行った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ご多忙の中、臨時講師を引き受けて頂きありがとうございます」

 

「ああそんな、頭を上げて下さい。ここにいる生徒達は護廷十三隊を担う未来の隊士ですからね、先輩として出来る限りサポートをするのは当然のことですよ」

 

「おお……藍染隊長にそう言っていただけると私たち教員も心強いですなぁ。可城丸副隊長もありがとうございます」

 

 いえいえそんな……俺は副隊長代理です(訂正)。

 

 門前に待ち構えていた教員に丁重に案内され、霊術院内の古びた木目の廊下を歩いていく。

 懐かしいな~……何百年前のことだから良く覚えていないけど、この埃っぽい匂いは変わってないんだ。

 

 アッ、あそこの楓の木に鬼道をぶちこんで、盛大に怒られたことは覚えてるわ。あれ、学院長が苗木から丹精込めて育てたやつなんだよね。不本意だったとはいえ、それ聞いたときはバリ反省した。でもあれは海燕がちょっかいかけてきたのが悪いし……

 

 そんな甘酸っぱい思い出に浸っているうちに、いつの間にか目的地へと到着する。うわ、ここ海燕が倒壊させた道場じゃん。建て直されたから、この道場だけ異様に綺麗なんだ。

 

 重厚な扉をガラリと開き、藍染隊長が凛とした姿勢で道場へと入室し、それに続くように俺も中へと足を踏み入れた。

 

 

「藍染隊長!? 嘘、なんで鬼道の授業に……!」「もしかして臨時の鬼道の講師って藍染隊長!?」「咲洲先生の代わりね」「マジか~!」「隣の人って誰?」「嬉しい!」「目が幸せ……」

 

 藍染隊長の姿を認識した途端、ズラリと並んだ生徒たちが一斉にざわめき出す。海外アイドルが来日した時のような反応されててウケる。それに比べてアウェーな俺よ……シンプルに帰りたくなってきた。

 

「静粛に! 諸君らの為に護廷十三隊から──」

 

 かくかくしかじか。案内役の教師から丁寧な説明を受けた生徒たちは、期待に満ちた面持ちで俺らに視線を向けてくる。

 その眼差しに少しばかり気圧されながら軽く自己紹介を済ませ、そうしていよいよ授業が始まった。

 

 

「可城丸先生、破道が的からずれてしまうのですが、これの改善点はありますか?」

 

 一人の生徒が自信なさげに声をかけてくる。先生呼びされると何か照れくさいな……

 的に当てる方法ね~あるよ。腕を真っ直ぐに伸ばして、しっかりと構えて。そうそう良い感じ、良い感じ。

 ここからが重要でね、自分の放った鬼道の威力に負けないように足腰に力を入れて、最後まで的を見据えるんだ。よしよし、そこからは全力で鬼道を放つ!

 

「君臨者よ、血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ。焦熱と争乱、海隔て逆巻き南へと歩を進めよ。 破道の三十一 赤火砲!」

 

 彼の両手から放たれた火炎は、真っ直ぐとした軌道を描き、的を貫通する。うーん、綺麗……これ俺より上手いんじゃない? 

 

「できた……! 可城丸先生、ありがとうございます!」

 

 嬉しさを隠しきれない様子でそう言う生徒に、胸がほっこりする。いえいえ~上手く出来て良かったね。

 

 

 まあ大体こんな感じで、藍染隊長が手を空けられない時に、俺が代わりに生徒に声をかけたり声をかけられたりして、授業は進んでいった。

 途中、腹黒眼鏡の仕組んだ罠(藍染隊長の計らい)により、俺の始解を見せるイベントが唐突に挟まれたりもしたが、それ以外は大過なく授業を終えることができた。俺が警戒していた意味……

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 霊術院から隊舎へと戻る道すがら。

 夕暮れが迫る分かれ道で解散となったとき、藍染隊長は柔らかな微笑みを浮かべ、軽やかな口調で話し出した。

 

「今日はお疲れ様。院生達の相手をするのは大変だったろう?」

 

 いえいえ、なかなか楽しかったですよ。

 

「それは何よりだ。……しかし、今日一日で、君のことが良く理解できた気がするよ」

 

 エ"ッそれってどういう──

 

「それじゃあ、また次の授業の時に会おう」

 

 アッ、お疲れ様でした~……

 

 遠ざかっていく藍染隊長の背中を見送りながら、俺は内心で震えていた。俺のことを理解したって何? ……まさか、始解の能力全部バレた? それとも、取るに足らない雑魚認定されたのか?

 

 エーン、怖いよー!

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

【今回の授業のアンケート】

・藍染隊長の話が分かりやすかった。

・苦手だった縛道がお二方の丁寧な指導のおかげで出来るようになった。

・二人とも、とても眼鏡が似合ってました。

・可城丸先生の指導で赤火砲が的に当たるようになりました。卒業後は可城丸先生の居る隊に入隊したいです。

・藍染先生と可城丸さんって似てますよね。

・新しい講師の声が聞き取りやすかった。

・可城丸殿が屈んだときに、左胸に刺青が彫られているのが見えて僕は、俺は、私は……

・可城丸先生と藍染隊長はご兄弟なんですか?

 

 

「……」

 

「藍染隊長、藍染隊長~腹黒眼鏡隊長~……あっ居た」

「……変な顔してはるけど、こんな薄暗い場所で何しとるん?」

 

「ギン、ひとつ聞きたいのだけれど」

 

「はぁ」

 

「私と可城丸秀朝はそんなに似ているのかな?」

 

「は?」

 

 

 

 

 

*1
正しくはアルカイック・スマイル アルカイックはフランス語で古風で素朴なさまを意味すると知っているね? 






Q.藍染惣右介が何の備えもなく始解を見るのは不自然では?
A.ある程度能力の推測が出来ているなら見る。自分なら何をされても対処できるとか思ってそうだし。

次回
掲示板 【BLEACHの初めの方ってさ……】

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。