ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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雨刻さんリクエストありがとうございます。
【浮竹と京楽が、秀朝&海燕を語る話】です。
…書き終えてから読み返すと、浮竹と京楽の深堀の方が多i

完全な浮竹隊長目線の話は死神代行消失篇後に書きたい……!




閑話 浮竹隊長の美的センスが壊滅的なのはホントみたいだね

 

 昼の暑さが嘘のように和らいだ夏宵、湖面に映ろう満月が、微かな波紋を広げ、キラキラと煌めいている。

 そんな幻想的な風景の中、湖畔に掛かる桟橋にて、二人の男が酒を酌み交わしていた。

 ──護廷十三隊の隊長である浮竹十四郎と京楽春水だ。

 

「いやー、たまにはこういう場所で飲むのも良いね」

 

「ああ。過ごすのにもちょうど良い気温だしな」

 

 酒器を片手に、ゆっくりとした時間の流れを楽しむ二人。

 普段は賑やかな飲み屋で夜を明かすことが多い彼らだが、時折こうして風情あふれる景観を楽しみつつ、酒を酌み交わす情も持ち合わせていた。

 

 因みに、この湖畔には、初代護廷十三隊の隊長たちによる激しい喧嘩が原因で生まれたという、真偽不明の逸話が残っていたりするのだが、それを知るとせっかくの美しい景観が台無しに見えて

 

 そうして、酒もほどほどに進みほろ酔い加減になった彼らは、自身の部下の話題で盛り上がり始めていた。

 

「海燕に『うちの隊に可城丸秀朝という男を引き抜いてほしい』と頭を下げられた時は驚いたよ。……あの海燕がだぞ? 豪胆で、どこか謙遜しがちな海燕が、直接俺に頼みに来たんだ。だから──」

「はいはい、だから浮竹は卯ノ花さんに頼み込んで、秀朝くんを十三番隊に入隊させたんだろう? 君は酔っ払うたびにこの話をするよねえ」

 

「……そうだったか?」

「そうだよ。全く、そろそろ僕の耳にもタコができそうだ」

 

「うっ、……ゴホンッ! とにかく、可城丸を引き抜いて良かったよ。二人の共闘は見ていて爽快な気分になるからなあ」

 

 うんざりとした表情を浮かべた京楽。そのじっとりとした眼差しに息をつまらせた浮竹は、咳払いをした後、照れくさそうにそう呟いた。

 

 実際、彼の言う通り、志波海燕と可城丸秀朝のコンビネーションは傍目から見ても見事なものだった。

 海燕が豪快に敵を葬り去る一方で、可城丸は溢れた虚を逃さずに仕留め、サポート役へと徹する。事務仕事では、特に指示を出さなくとも海燕が必要なものを揃えて渡し、可城丸がそれを黙って受け取るという息の合ったやり取りを行うのだ。

 彼らの連携はどの場面、どの場所でも際立っていた。

 

「──それに、アイツらを見ていると、若い頃の俺たちを思い出すんだ」

「……!」

 

 微笑みながら、そう言葉を重ねた浮竹に、京楽は思わず目を細める。

 

 京楽自身、志波海燕と可城丸秀朝の二人を、若い頃の自分達と重ねて見ている節があった。

 しかし、浮竹の言葉を肯定するということは、自分たちも息の合ったコンビであると口に出す様なもので──、

 それを気恥ずかしく感じた彼はその言葉に返答せず、酒で相槌を流し込んだのだ。男同士の友情にはどこか面倒くさい所がある。

 

 そんな京楽の心情を知ってか知らずか、浮竹は次々と話題を変えていった。

 

「そういえばつい最近、可城丸が鬼道の臨時講師になったんだ」

「へぇ、それはまたどういう経緯で?」

「鬼道の講師が産休に入ったらしくてな、その代理として惣右介が可城丸を推薦したんだ」

「なるほど。 そういえば、惣右介くんも書道の特別講師をしていたね」

 

 納得したように頷く京楽へ、自身の部下を自慢するように深く頷く浮竹。

 しかし、その満足げな表情を彼はすぐに曇らせた。

 

「それで、可城丸の業務を他の隊員に振り分けることにしたんだがな、その量が想像以上に多くて……」

「あらら、それはまた……」

 

 浮竹は、可城丸が抱える仕事の量を把握しているつもりだった。

 実際、オーバーワーク気味の彼を心配して、仕事の軽減策を設けたこともあったのだが、「お気遣いありがとうございます。しかし、もう慣れましたので大丈夫ですよ」と穏やかな口調で可城丸本人に断られてしまったのだ。

 

 当時の浮竹は、可城丸の意思を尊重し、渋々提案を引っ込めた。しかし今、改めて可城丸の業務量を正しく理解した彼は、自身の過去の判断を後悔しつつあった。

 

 最初の満足げな表情はどこへやら、眉間に深い皺を寄せ、額に手を当てる浮竹は「書類仕事の振り分けを、もっと真面目に考えるべきだった」と自責の念に駆られている。その様子を傍らで見ていた京楽は、やれやれと首を横に振った。

 

「真面目だねえ秀朝くんは。僕みたいに、たまには羽を伸ばせばいいのに」

「京楽、お前はサボりすぎだぞ……」

 

 じっとりとした目線に刺されたサボり魔は、コツンと頭に拳を置いて舌をペロリと出す。

 反省の色を一つも見せないふざけたオッサンの態度に呆れ返った浮竹は、深い溜め息を吐き出した後、ゆっくりと続きを話し出した。

 

「まあ、それを知った海燕が可城丸の事を叱って以来、ひとりで仕事を抱え込むことは無くなったんだがな」

「ははっ、海燕くんが良いストッパーになっているワケだ。……二人は統学院時代からの友人なんだっけ?」

「ああ。アイツらの院生時代の話を聞くと面白いんだぞ」

「ふうん、例えば?」

 

 興味深そうに問い掛けた京楽へ、浮竹は楽しそうに話し出す。

 

「最近聞いたのは、学院長の育てた楓の木に鬼道を放って燃やした話だな。学院長直々に叱られたと嘆いていたよ」

「おっと、想像以上のやんちゃっぷりだ! 彼ら、そんな非行少年だったのかい?」

「故意ではないらしいんだがな。俺はそれを聞いて、お前が元柳斎先生の盆栽を壊した時のことを思い出してだな」

「ああ~、あったねえそんなことも」

 

 浮竹が思い出したのは、京楽が山本元柳斎重國の愛でる盆栽の一枝を誤って折ってしまった出来事。

 当時の京楽は、その失態を隠すために盆栽の手入れが趣味の浮竹へと助けを求めたのだ。しかし、美的センスが壊滅的な浮竹は更に盆栽をめちゃくちゃにしただけで、結局、二人とも山本にこっぴどく叱られることになった。……若輩二人の何とも苦々しい院生時代の思い出だ。

 

 巻き込まれた事に対する当時の怒りの感情が蘇った浮竹は、恨めしげに京楽を睨み付ける。

 その恨めしげな視線にびくりと肩を揺らした戦犯は、そろそろと目を逸らして「まあまあ、ボクたちの過去は置いておいて、今は秀朝くんと海燕くんについて話そうよ!」とわざとらしく話題をすり替えた。

 「安い誤魔化しだなあ……」と浮竹は呆れながらも、何も言わずに注がれた酒を呷る。

 

「いつもは気丈夫な海燕も、可城丸の前だと妙に子供っぽくなるんだ。 この前なんかは、粉砂糖を可城丸のお茶に仕込んだ海燕が、首極め腕卍固めを極められていたぞ」*1

「海燕くんはいたずらっ子だね~。 ……待って、くびきめうでまんじがためってナニ?」

 

「可城丸が海燕にスピニング・レッグロックをして、それを朽木がカウントダウンするなんて事もあったなあ……」*2

「朽木家のご令嬢に何をさせているのかなあ!?」

 

 聞きなれない単語に首をかしげ、耳を疑うようなエピソードに驚愕する京楽。

 

 訓練の一環ではなく、コミュニケーション(?)の延長線として、一般家庭出身の平民が元五大貴族の末裔にプロレス技をしかける。挙げ句の果てに、それを四大貴族である朽木家の令嬢が審判するという……聞く人によっては卒倒してしまうようなエピソードを、まるで十三番隊での日常を語るかのように浮竹はのほほんと話すのだ。

 

「(おかしいな、十三番隊ってこんなに野蛮だったっけ?)」

 

 流石の京楽もこれには絶句し、大量の冷や汗を流しながら、内心で疑問に思った。

 ……一応弁明しておくが、浮竹十四郎と、朽木ルキアと、志波海燕と、可城丸秀朝が異常なだけで、十三番隊の隊士全員がこんな感じなワケではない。何なら見慣れていない他の隊士達はドン引きしている。

 

 

「あーなんというか……十三番隊は随分と賑やかみたいだねえ」

「ああ、皆、日々仲良くやっているよ」

 

 

 穏やかな瞳で、微笑みを浮かべる浮竹。──しかし、その目に僅かな翳りが宿る。

 

「──朽木も、早く戻ってくると良いんだがな……」

 

 ポツリ、と。

 静寂を切り裂くように呟かれたその言葉は、夜の闇に溶け込んで消えていく。

 

 一月前、突如として連絡が途絶え、霊圧さえも探知できなくなった部下。

 朽木ルキアの失踪は、十三番隊の隊士たちと、彼女を慕う者たちの心に、どうしようもない不安と焦燥を植え付けていた。

 浮竹自身も例外ではない。胸に圧し掛かる重圧は、まるで深い闇のように、彼の心を日々深く覆い隠していく。

 

 隣に座る京楽は、友の沈痛な様子を見やると、静かに酒を一口含んだ後、穏やかに話す。

 

「……きっと無事に戻ってくるさ」

 

 その言葉は根拠も確信もない、ただの慰めに過ぎなかった。それでも、その言葉は確かに、浮竹の心を僅かながら軽くしたのだ。

 

「そう、だな。……信じて待つしかないか」

 

 彼は微かに頷き、その言葉を心の奥深くに刻みつける。二人の視線の先、静かな水面には、満ち足りた月が揺らめいていた。

 

 

 

 

 

蛇足

「……最近、その……卯ノ花さんに詰められる事が多いんだ」

「え゛一体何をしでかしたんだい浮竹!? 君、死ぬぞ!!」

「何で俺がしでかした前提なんだ? ……いや、それがどうも、可城丸が非番の日に四番隊へと手伝いに行っているらしくてな。その様子を見た卯ノ花隊長が、『可城丸三席を今からでも四番隊に異動させませんか?』と……」

「ああ、なるほど……」

「毎回断るんだが、その度に『可城丸三席は元々四番隊を志願していたんですよ? こんなに献身的で賢明な隊士を四番隊から引き抜いたのは浮竹隊長ですよね?』なんて圧をかけられてだな。最近は四番隊の副隊長にも懇願されて……何とかこう、穏便に断る方法は無いだろうか?」

「御愁傷様」

「見捨てるのが早いぞ京楽……!」

 

 

 

 

 

*1
相手の両腕をロックした状態で首を締め上げる変形のフロントスリーパー。 良い子の皆は決して真似をしてはいけないともちろん知っているね? 

*2
足4の字固めの事。 良い子の皆は決して真似をしてはいけな(ry






小話
本作品の主人公である可城丸秀朝は、京楽春水との方が話が合います。思想も似通っている節がある。

次回 ルッキャ、尸魂界へ帰宅

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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