難産故遅刻……故侘助……
ルキアが尸魂界へと帰還した。
ルキアの霊圧が現世で観測されてからは早かった。
原作通り、総隊長から指令を受けた朽木隊長と阿散井副隊長は、空座町へと急行し、ルキアを捕縛。死神の力を譲渡された人間も処理したとの事。
送還後、直ちに六番隊の牢屋へ収監されたルキア。彼女に下された判決は、第一級重禍罪。殛刑宣告だった。
その判決に、十三番隊内は荒れに荒れた。
「朽木が殛刑……!? どういう事ですか、あまりにも刑が重すぎます!!」
「そ、そうですよ! 朽木さんが殛刑だなんて……納得できません!」
「ああ、明らかに刑罰が重い。しかし、ここから判決を覆すのは……」
「白哉は何もしなかったんすか!? ──ッアノヤロウ!!」
清音と仙太郎は声を荒らげて反抗し、浮竹隊長は拳をきつく握り締めている。
特に海燕なんかは、怒髪天を衝く勢いで激怒し、何も行動を起こさない朽木隊長への怒りを露わにして、六番隊舎へと殴り込みに行こうとまでした。流石に俺たちが全力で止めたけれど。
取り敢えず、十三番隊の総意として、この不当な判決には断固拒否する姿勢を示し、中央四十六室へ朽木ルキアの減刑を嘆願する書簡を送るという結論に、一応は落ち着いた。
現状、これくらいしか俺たちにできることはない。このまま乗り込んだところで、あのボンクr……老がi……ご老人共が納得するわけもなく、下手をすればルキアの立場をさらに悪化させるだけだと理解しているからね。
それでも、
……まあ、中央四十六室は藍染一派のせいでもう壊滅してるだろうから、示談もカチコミも受理されることはないだろう。
それでも、全く無意味ってわけでもない。
何もできずにやきもきするよりかは、何か行動を起こしている方が隊士たちの気持ちも紛れるはずだ。いや、むしろ、何もしないままだと海燕がカチコミに行ってしまう。やっぱ
「これで進言が通らなきゃ、双殛をぶっ壊してでもルキアを助け出すか」
諸々の話が一段落したところで、腕を組みどっしりと構えた海燕が力強く言い放った。
うーん、発言に主人公の血筋を強く感じる。いや、この場合、チャンイチが海燕に似ているのか?
「最悪の場合、それもアリっすね……!」
「ええ、最悪の場合、それもありです!!」
仙太郎と清音も、海燕に便乗するかのように、身を乗り出して大声で賛同し出した。
そんなことを隊長の前で堂々と口にしても良いのかよ、と内心怪訝に思っていたのだが──
「お前ら、俺の前で堂々となぁ……まあ、最悪の場合、それも視野に入れないとな」
俺の心配をよそに、浮竹隊長はやれやれと肩をすくめつつも、その意見に同意した様子を見せた。……気のせいかなあ、なんかさ。
十三番隊、原作よりも野蛮になってない……?
「よう、ルキア! 何だお前、しけた面してんなあ」
久しぶり~ちゃんとご飯食べてる? ちょっと痩せたように見えるけど……
「海燕殿に、秀朝殿!? どうしてここに……」
殺風景な牢獄の真ん中で、一人ポツンと椅子に座るルキアに、俺達は軽く手を上げた。
本来なら面会なんて簡単には許可されないんだけどね、でも、俺達が総隊長に直談判をして、なかば強引に許可を得てきたんだよ。
あの時の総隊長の顔、マジで面白かったな~。ふふふ、怖いか? 何百歳の男達が全力で駄々を捏ねる姿が……
さて、やつれているルキアのために、俺達は小さな差し入れを持参した。白玉ぜんざいだ。
本当は牢に差し入れを持ち込むのは禁止されてるんだけどね。清掃係の花太郎君から、ルキアがほとんど食事をとっていないというタレコミを得たからさ~、好物なら少しは食べられるかなと思って持ってきちゃった。
手にしたぜんざいを見て、ルキアの瞳にわずかながら輝きが戻る。彼女はいそいそと椅子を鉄柵の前まで運び、腰を下ろすと、器を抱えるようにしてぜんざいをちまちまと口に運び始めた。
その様子を見守りながら、俺たちはルキアの前に立ち、さりげなく牢番の視界を遮る。そうして、小声で近況を話し始めた。外の世界のちょっとした出来事や、みんなの様子なんかを。
最初は青白い顔をしていたルキアも、甘い白玉と海燕の快活な声のおかげか、次第にいつもの生気を取り戻してきた。牢獄の冷たい空気も、ほんの少しだけ温もりを帯びてきたような気がする。
食べ終えたぜんざいの器を回収した後、俺達は身をかがめてルキアに小声で告げた。
──今、本部へとルキアの減刑を請うていること。そして、最悪の場合、たとえ処刑を力づくで中断させてでも、ルキアを助け出すつもりだということを。
その言葉を聞いて、目を見開いて驚愕するルキアに、俺は言葉を続ける。
「死ぬ覚悟を決めるな、どんな状況でも生き抜く気概を見せろ」──と。
酷なことを要求しているのは理解している。ただ、これには、ルキアの生きたいという意志を、彼女の身に宿る崩玉が汲み取るかもしれないという打算も含めているのだ。
ただでさえ原作から乖離しているからね、猫の手もとい崩玉の力でも借りたいほど切羽詰まっているんだよこっちは。
そもそもの元凶だし、出すもん出せよな玉ッコロって話である。
……まあ、俺が死の覚悟を決めた部下の顔なんてみたくないってのが一番の理由なんだけど。
そんな身勝手な俺の懇願に、ルキアは俯いたまま、微かに肩を震わせていた。
「……!」
「……」
うわ、終わった。
ルキアとの面会を終えたあと、六番隊舎から退出する途中で、バッタリと朽木隊長に遭遇した。途端、纏う雰囲気をひりつかせる海燕。
今この瞬間、一番会わせたくない二人が最悪のタイミングで鉢合わせてしまったのだ。
自由奔放で勇壮な気質の海燕と、生真面目で規律に厳しく冷徹な朽木隊長。この二人の相性はハッキリ言って最悪。
普段ですら微妙な仲なのに、ルキアの切迫した状況を考えると、今ここで出くわすのは火薬庫に火を近づけるようなもの。どうか何事も起こりませんように……とお祈りしながら通り過ぎる。
「──白哉。お前はルキアのために何かしてやらなかったのか?」
あぁ〜^開戦の音〜^
俺の祈りもむなしく、喧嘩を売りにいった海燕。その言葉に、朽木隊長は無表情のまま、冷ややかな視線をこちらに向ける。途端に周囲の空気が重くなった。
「これは朽木家の問題だ。兄には関係ない」
「関係あるに決まってんだろ!? アイツは俺の部下だぞ!」
俺を挟んで激しく言い合う二人。緊張が頂点に達し、今にも取っ組み合いになりそうな雰囲気である。
ヤメテ……ヤメテ……!!
「掟を軽んじる兄には理解できないだろうな」
「掟だァ……? そんなモンの為に、テメェは自分の妹を見捨てるってのかよ!!」
朽木隊長の胸ぐらを掴もうと突進する海燕を必死に抑えながら、俺は心の中で泣き叫ぶ。
怖~ッ! この間に挟まれるのくっそ怖いんですけど!! マジでやめてくんねぇかな!?
朽木隊長も立場上、難しい事情を抱えているってのは理解しているんだけど、口下手なところが災いして、全方向ファイヤーになっちゃってるし。
一方の海燕も、素直すぎる性格ゆえに、朽木隊長の言葉にすぐさま感情的に反応して、余計に事態を悪化させてるし……!
この一触即発の修羅場をどうにか収めようと、頭をフル回転させ、二人を宥める。
お二方~周り見てください。こんな通路のど真ん中で口喧嘩するのは辞めましょうよ。隊士達も萎縮しちゃってますし、一旦終わりにしましょ? ねっ? ねっ?
「……チッ」
「……」
海燕が舌打ちし、目を逸らす。朽木隊長は無言のまま、わずかに顎を上げた。
本当に相性悪いなコイツら……俺を挟んで会話するの二度とやめろ
激しい舌戦がようやく収まり、感情を露にしたまま、海燕はドスドスと足音を立て、俺を置いて先へと進む。朽木隊長に軽い会釈をしてから、慌ててその背を追いかけようとしたその瞬間──、
「兄も、私の行いが間違いだと思うか?」
突然、朽木隊長が俺に問いかけてきた。
えっ、なんで俺に話を振ってくるの? しかも今このタイミングで?
俺の困惑をよそに、黙って見つめてくる朽木隊長。普段の冷たさとは違う、何かを求めるようなその眼差しに、俺は答えを模索する。
……あーと、そうっすね。何のしがらみもない俺から言わせて貰えば、その掟って、朽木隊長が苦しんでまで守るような価値があるものじゃないと思いますよ。
「何……?」
怪訝そうな表情を浮かべる朽木隊長。
あー地雷だよねこれ。でもいいや、この際だから思ってること全部言っちゃお。
そもそも、掟というものは、秩序を維持するために制定・運用されてきた制度だ。つまり、社会全体のため、もっと言えば人々のために存在するものだと俺は考えている。
その観点から見て、今回の判決はどうだろう?
犯罪とはいえ、人々を守るために、自らの力を人間に貸し、死神としての職務を全うしようとしたルキアが、情状酌量の余地もなく極刑を宣告されるなんて、どう考えてもおかしい。……いやまあ、今回の判決はヨン様が下したものであって、正当なものではないんだけれど。でもそういう理不尽な裁判は過去にも沢山あっただろう?
とにかく、こんな判決が肯定される法制度や、それに従わなければならないと定める掟。──そんな狂った指針に俺達が従う義理があるのかって話である。
……しかし、ここまで長々と語ったが、ただの部外者の俺だからこそ、こんなことが言えるのだ。
朽木家の重責を背負う隊長にとっては、そう簡単に決められる様な問題じゃないだろう。
朽木緋真の件もあるからな……そこら辺の複雑な貴族事情は、正直言って一般家庭出身の俺にはよく分からん。
守りたいものも、貫きたい意思も人それぞれ異なるものだし、朽木隊長の掟遵守の考えを間違いだと俺は否定したくない。ていうか、出来ない。ルキアを死地に送った俺が、それを否定するなんて。
……ただ、もし、朽木隊長がルキアの減刑に協力してくれたら、すごく助かるな~なんて俺は思いますよ。
「──そうか」
俺の拙い持論を聞いた朽木隊長は、相変わらずの無表情のまま、ただ一言だけ、そう言った。
いや、どういう意味……? 朽木隊長の思いを汲み取れるほど、そこまで万能なワードじゃないんですけどそれ。
そんなこんなで、色々と気がかりに思いつつも、俺は好き勝手に言い残して、足早にその場を後にしたのだった。
「ねぇ、相即不離」
【うん?】
「朽木隊長の「……そうか」に、「生意気なこと言ってんじゃねぇぞ、自意識過剰丸が」って意味が含まれてたらどうしよう。……想像しただけで泣きそうなんだけど」
【いや、流石にそれは無いと思うよ】
「そうかなぁ、そうだと良いなぁ……」
朽木白哉に対する主人公の科白抜粋
「朽木隊長、貴方は『掟』を如何に捉えられておりますか?」
「『掟』を守ることは、隊士の規律を保ち、社会の安寧と人道徳の維持に不可欠なものであると存じます」
「しかしながら、その『掟』が理不尽かつ不義理であるならば、僕はそれに従順であるべきではないと思うのです」
「僕たちは、『掟』を盲信するのではなく、その崇高な理念と同時に、脆さと欺瞞性を見極めねばなりません」
「重ねて問います。朽木隊長、貴方が固く守らんとするその『掟』は、貴方の誇りを汚してまで守るに値するものですか?」
↑意訳「こんなくそみたいなルールに従うのバカらしくないっすか?」
次回
主人公、チャンイチ一行に会う
斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。
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尸魂界篇後
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破面篇後
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本編終了後
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斬魄刀異聞篇を書かない
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他に何かご意見があれば活動報告の方へ