次回予告で「藍染惣右介 死す」と言ったな。
あれは鏡花水月だ。
(チャンイチ達との会話で文字数を消費しました。本当にすみません。多分、次回こそは藍染惣右介を藍染磔に出来ます)
「なるほどのう、あらかじめ協力者として可城丸を呼んでおったのか。 ……しかし海燕、何故そのことを儂らに説明せず相見あわせたのだ」
薄暗い和室に映るのは、床に敷かれた座布団に腰を下ろす人影。──可城丸秀朝と、志波海燕、四楓院夜一だ。
つい先ほどまで、この二人と一匹は、黒崎一護たちを交えて話をしていたのだが、途中、織姫が疲れからか、こくりこくりとうたた寝し始めた為、高校生組は早々に別室で休ませることになった。
因みに、志波空鶴と志波岩鷲は瀞霊廷に一護たちを送り込むための準備で席を外している。
タシタシとしなやかな尻尾を畳に打ちつけながら「おかげで
その様子を横から見ていた可城丸は、半目になりながら肩を竦めて、諦めたような口調で告げた。
「いや、僕も何も説明されていませんよ」
「なぬっ! ?」
「『今から俺の家に来いよ』と言われただけです。 まともな説明もないまま、こんな夜更けに不意に呼び出され、挙句の果てに旅禍を紹介された僕の気持ちが分かりますか?」
「おおう……」
うんざりとした表情を浮かべながら早口で吐き出す可城丸に、夜一は気圧される。
双方どちらにも詳しい説明をせずに可城丸を呼び出した
「しかし、十分な説明も受けていない状況で、よくもまあ儂らを受け入れたものだな」
「海燕が彼らを指差しながら『ルキアを助けるために来た』と言っていましたからね。そこから、夜一さん達と共にルキア救出の協力体制を築き、その中に僕も加えようとしているんだと推測しました」
夜一の疑問に、軽やかに答える可城丸。
実際のところ、それは原作の知識を基にした可城丸の大まかな推測に過ぎなかったのだが、そこは割愛しよう。
「おーおー、まさにその通りだわ。いやー、理解が早くて助かるね!」
可城丸の推測を聞いた海燕は、屈託のない笑顔を浮かべ、声を弾ませていた。その軽薄とも取れる態度に、可城丸の顔には怒りとも、諦めともつかない、なんとも微妙な表情が浮かぶ。眉間にしわを寄せながらも、どこか冷静さを保とうとしている彼の様子に、夜一は耳をピルピルと動かしていた。
しばらくの沈黙の後、可城丸は静かに口を開いて、ポツリと言葉を溢す。
「──まあ、それだけが理由ではないのでしょうけど」
「……!」
「……ふむ。 何故、そう思うた?」
微かな彼の声音には、確信と推理に裏打ちされた冷静さが滲んでいた。
途端に冷えた空気の中、可城丸は、二人の反応を確認するかのように、ゆっくりと話を続けていく。
「……罪に問われた貴方を、朽木ルキアの救出だけのために受け入れるほど、海燕は浅はかな男ではないですよ」
「夜一さん。貴方、海燕が協力せざるを得ないような何かを背負っているんじゃないですか? それも、101年前、貴方達が現世へと追放された事に関係するような……」
「──ほう」
室内の空気が凍りついたかのように冷え渡る。
どこか険しい雰囲気を纏った夜一は、警戒が混ざった金色の瞳を可城丸へと向け、ひとつの相づちを打った。
可城丸はそれを気にする事もなく、ただ淡々と自身の考えを述べ続けていく。
「夜一さんの人となりについて、僕は詳しく知りません。貴方との関係は、人伝いのもので、深いものではありませんでしたから」
「しかし、その僅かな関わりの中でも、貴方が何の考えもなく浦原喜助の逃走を
「情報が厳しく統制されていた当時、ただの一般隊士であった僕には、詳細な情報を得ることは不可能でした」
一息吐いた可城丸は、真っ直ぐに夜一の目を見つめ、静かに言う。
「夜一さん、僕にも教えてくださいませんか。101年前のあの日、貴方達の身に何が起きたのかを」
・
・・
・・・
・・・・
・・・・・
昨日は志波邸に泊まった。いくつになってもお泊まりってドキドキするよね。俺の場合は別の意味で胸がドキドキしていたけど……おかげでほとんど眠れなかったわ。
翌朝、皆と朝食を済ませ、昨日なあなあで終わってしまったチャンイチ一行との挨拶を改めて交わした後、今後の動き等を詰めていく。
その時、雨竜君にじっと顔を見つめられたんだけど、なんだったんだろうなあれ。眼鏡族のシンパシーでも感じたのかな。
そういえば、この作戦会議の時に、原作よりも早く一護たちが志波邸に到着していた理由が分かった。
なんでも、岩鷲君が志波邸まで彼らを案内したらしい。ルキアの処刑を阻止しようと現世から尸魂界へと駆けつけた彼らの男気に心打たれたのだとかなんだとか。
あと、単純に海燕と顔が似ている一護を、兄貴の隠し子かもしれないと勘違いしたとも言っていた。
実際は一護の父親が海燕たちの叔父で、つまり一護は、海燕たちにとっての従兄弟だった訳だが……
海燕すげーキレてたな〜。勘違いした岩鷲君にも、失踪したと思ったら現世でちゃっかり家庭を持っていた一心隊長にも。
「諸々落ち着いたら現世に殴り込みに行く」って指を鳴らしていた海燕に、一護はひきつった顔を向けていた。南無三、一心隊長……(合掌)
そんなドタバタ劇もあってか、岩鷲君と早々に仲良くなった一護は、彼からコツを教わり、原作よりも早く霊珠核の制御を習得していた。
これもバタフライエフェクトってやつなのか……? 良い方に傾いて何よりなんだけど、先のことを考えると、この原作解離がちょっぴり怖い。
瀞霊廷への突入は砲台の微調整のために翌日まで延期された。
この空いた時間を有効活用しようと、夜一さんは織姫と茶渡、海燕は雨竜、そして俺は一護の修行の面倒を見ることに。
清音には就業開始前に午前休を取ると伝えておいたから、時間的には問題はないんだけどね、
よりによってなんで俺が一護担当……?
虚由来の死神の力を滅却師の技術で使っている一護。そんなハイブリッドキメラに、俺が何をどう教えればいいのかと頭を抱えたくなったが、とりあえず死神の基本を教えることにした。
志波邸にある地下の一室、練武場で机と筆記用具を借りて、座学を行い、斬魄刀、始解、卍解、鬼道など……死神としての基本を徹底的に叩き込む。
オラッ! 正しい知識を身に付けるんだよ!! オラッ!!
「へえ~斬魄刀って元は浅打っていう無名の刀なんだな」
そうだよ~。
決して護廷十三隊に入れない下級死神の持つ名もなき斬魄刀じゃありません。そんな大嘘つく人は王悦さんに謝ってください。
「ん? なら、俺の斬魄刀って一体……」
ん……? あ゛ッ!! う、うーん、なんだろうね? ルキアの死神の力が影響してるんじゃないかな?(すっとぼけ)
まあ、中には浅打が配布される前から、斬魄刀の能力を宿しているかのような人も居るからね。もしかしたら、一護もその人と似通ったもので、力そのものが形となって刀になっているのかもネ!
「なるほど……」
そんな感じで雑に誤魔化しながら、斬魄刀については流した。後はメゾンドチャンイチで説明を受けるでしょ。
……実際、俺も斬魄刀のことを完全に理解しているわけじゃない。斬魄刀は持ち主の魂を反映し、それぞれ固有の能力を持つようだけど、日番谷隊長は浅打を授かる前から冷気を放っていた。それを踏まえると、斬魄刀は元々持ち主に備わっていた能力を顕在化させる触媒の様なものなのかな。
……よくわからん。こういう考察は、相即不離の担当なんで。
よし、理論は十分だね。それじゃあ、今度は実技に移ろうか!
「うっす!」
剣術も大切ではあるが、その前に霊圧制御の基礎として鬼道を試させることにする。霊圧を上手く操作できれば、斬魄刀の強度を増すことだって出来るし、ビル並みのクソデカ斬魄刀も自在に作れちゃうからね。
事前に用意しておいた丸太を少し離れた場所に置き、それに向けて「縛道の四 這縄」をお手本として放つ。俺の両手から放たれた黄色い光の束が、グルリと丸太に絡みつき、力強く締め上げていった。
「おおっ、すげぇ……!!」
目を輝かせながらその様子を見ている一護に、縛道の利点を説明する。
縛道は、相手を傷つけることなく戦闘不能にできるからね、チョコラテの一護には、ぜひとも欲しい能力だろうさ。
……因みに、この鬼道は込める霊圧の量によって縄の太さも自由に調整できる。だから、タコ糸が無いときのチャーシュー作りにも使えたりするんだよ。実際、俺も何度か挑戦してみたけど結構上手くいった。
さて、じゃあ一護、君も挑戦してみよう! コツは、両手から糸を伸ばすイメージをしっかり持つこと。スパイダーマンになったつもりで、思い切りやってみて!
「お、おう! えーと……縛道の四 這縄!!」
拙い口調で一護に詠唱された縛道。そして放たれたのは、想像をはるかに超える極太の光の束だった。
まるでアナコンダのようなぶっとい光が、轟音とともに丸太へと絡みつく。そして次の瞬間──圧縮力に耐えられなくなった丸太は木っ端微塵に砕け散った。無数の木片が四方八方に飛び散る中、丸太の側に座っていた俺の目に、鋭い破片が突き刺さる。
ぎゃあああっ! 目がぁぁぁ!! 目がぁぁぁ!!
「す、すまねぇ可城丸サン! 大丈夫か!?」
ぼやける視界の中、一護がワタワタと手を動かしているのが見える。そんな彼を左手で制止しながら、俺は内心恐怖していた。
縛道の四でこの威力!? こんなの人に向けたら、チャーシューどころかサイコロステーキになっちまうぞ……!?
こ、この様じゃ、一護の鬼道習得は到底不可能なんじゃ……ッいや、いやいやいや! もしかしたら縛道だけが苦手で、破道は得意の可能性がある。希望を捨てるな一護、生徒に見きりをつけるな俺!
破道の一、破道の一を詠唱しよう。予備の丸太がもう一つあるから!
「オッオス! ……破道の一 衝!」
──ッ!? ウォーッ断空!!
丸太へ放たれた極太ビームに、俺は咄嗟の判断で、一護の破道を阻む縛道を発動する。半端じゃない霊圧を纏った衝撃と、急遽展開した不完全な黒い防壁が激しく衝突し、轟音とともに建物全体が揺れ動いた。
埃が舞う中、俺と一護は顔を見合わせ、呆然と立ち尽くす。辺りには、ひきつった空笑いだけが木霊して──ガハハ!やってらんねぇ……
「なんだ今の音は!」
「地震か?」
「
「避難しよう黒崎くん!!」
「なんじゃなんじゃ、せっかく気持ち良く寝ておったのに……」
轟音と振動に驚いたのだろう、別室にいた仲間たちがぞろぞろと集まって来た。
彼らは、俺の疲れきった表情と、冷や汗をだらだらと垂らしている一護の表情を見て、何となく原因を察したのか、呆れたように溜め息を吐き出す。
「またやったのか一護……」
「本当に君は霊圧の調整が下手だね」
「ウルセェッ! わざとじゃねぇんだよ!!」
「……ッ! ……ッ!!」
「ね、姉ちゃん、落ち着いて……」
「おい秀朝! 戸がねぇぞ!!」
散々と一護を詰る高校生組。わなわなと拳を震わせる空鶴さんに、そんな姉の様子をおろおろと見つめる岩鷲君。そして、戸枠を指差しながら叫ぶ海燕。ははは、廊下に散乱してる木片が扉だったモノだよ海燕クン。
「あっ、ここの壁、ヒビが入ってる」
「おお、見事な縦ヒビじゃの」
「パテ塗ればなんとかなるか?」
「いや、地下室のひび割れは倒壊の恐れがあるんじゃ……」
「げえっ! まじかよ」
「クソガキ! どうしてくれんだよこれ!!」
「イテテテ! 悪かった、いや、すみませんでした!!」
次々と被害状況が明らかになっていく中、ついに憤りを抑えきれなくなった空鶴さんは、一護にヘッドロックを極め始めた。一護は必死に謝罪しながら、苦痛に顔を歪め踠く。あーあ……痛そう。
「他人事みてぇな面してんじゃねぇぞ、秀朝! 元はと言えばテメェの監督不行き届きが原因だろうが!!」
え、俺!? アタタタ、ごめんなさい、ごめんなさい、すみませんでした!
でもさぁ、小さいゴジラと修行をしてるんだもん、こうなるのは仕方なくない!?
メゾンドチャンイチの人達、本当に一護の霊圧調整出来てる? 蛇口ガバガバじゃない? クラ◯アン呼ぶぞテメーッ!
空鶴さんに首をヘッドロックで極められ、バタバタとあがく俺たちを尻目に、おずおずと織姫が小さな声で手を上げた。
「あのぉ……私なら壁、直せるかもしれないです」
「マジか!」
「イテェッ!」
アタッ!
その言葉に歓喜の声を上げた空鶴さんは、俺たちを無造作に床へと投げ捨て、いそいそと織姫に近寄って行く。ぐあーっ、首が痛い!
一護との修行を一時中断し、織姫は神妙な面持ちで壁の修繕に取り掛かった。彼女の「双天帰盾」から淡い光が漏れ、壊れた壁が徐々に直っていく。貴重な能力をこんなことで使ってさぁ……
ビリリリリリッ!!
「ウオッ!」
「うわっ!」
「きゃあっ!」
「今度はなんだよ!」
その光景を複雑な感情で見守っている最中、突然、大きな着信音が俺たちの周囲に響き渡った。その予想だにしなかった音に、全員が肩を跳ね上げさせて驚きの声を上げる。何だよもう、誰の携帯だよ……って俺のだったわ、すまん。
少しばつの悪い思いで画面を開くと、表示されているのはキヨネの名前。
もしもし~どしたん、何かあった?
《可城丸三席! 緊急の隊首会が開かれています。すぐに一番隊本部に向かってください!!》
隊首会……? あっ、忘れてた。
メゾンドチャンイチ内
ユ「浅打とはそういうものだったのか。てっきり下級死神の持つ矮小な斬魄刀かと」
白「おいおい、ボケてきたのかよオッサン。同居人の介護なんて、俺は御免だからな。」
ユ「ム……」
白「あの野郎!余計なこと言いやがった!!」
ユ「処すか? 彼奴を今のうちに処すか?」
白「いやそこまではいかねぇけどよ……」
小話(というより、疑問)
原作で、岩鷲がチャンイチの顔を見てなんの反応も示さなかったのは、志波海燕の顔を忘れてしまっていたからなんですかね?
もしくは、自身の兄の顔よりも、兄を殺した死神(ルキア)の顔が強く印象に残ってしまったのか。
岩鷲の回想シーンでも、海燕の顔は描かれていなかったような……? 演出と言われてしまえばおしまいなんですけど。
斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。
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尸魂界篇後
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破面篇後
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本編終了後
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斬魄刀異聞篇を書かない
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他に何かご意見があれば活動報告の方へ