ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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遅くなった挙げ句、文字数も多くなってしまい大変申し訳ありません。これもサービスってことで……


お気に入り、しおり、感想、評価、ここ好き、誤字報告ありがとうございます。とても励みになっております!
某Xにて、読了報告を拝見し、とても嬉しく思いました!この場を借りて感謝を申し上げます。




頼られると嬉しくなって自分の予想以上に力を貸してしまう事があるのは知っているね?

 

side 黒崎一護

 

 (死にたくねえ! 死にたくねえ! 死にたくねえッ!)

 

 貫かれた胸の傷から鮮血が溢れ、地面を紅く染めていく。

 地に這いつくばったまま、指の一本すら動かせやしない。

 ヤツに斬りかかるどころか、目の前で揺れる羽織の裾さえ掴むことも出来ず、遠退く背中を、俺はただ見つめていた。

 

 (何も……何も変わっちゃいねぇ、あの日から何も!)

 

 徐々に暗くなっていく視界の中、脳裏に蘇るのは、母親を失ったあの冷たい雨の日。そして、ルキアを連れていかれた月明かりの夜のこと。

 

 (畜生、また俺は、誰も護れねぇのか!?)

 

 何のために手に入れた力だ? あの7日間の意味は? 俺が握りしめるこの刀は、俺と共に戦ってくれている斬月は、一体何の為にある? 

 

 (動けよ、動けよ体……! 止まれよ血ッ!! 俺が、俺が……!)

 

 「ルキアを助けなきゃいけねえんだ……ッ!!」

 

 

 

「チッ、仕方ねえなァ……!」

 

 ──その時、何処かで声が聞こえた気がした。

 

 

 

 突如、現実世界から意識が引き離される。身体が宙に浮いているような感覚と共に、周囲の景色が霞んでいく。

 思わず閉じた瞼を開けると、大量のビルが空と平行に立ち並ぶ、あべこべな世界が視界に飛び込んできた。

 

「ここは──」

 

 間違いない、ここは俺の心象世界だ。

 曇り空を反射した無数の窓。その一つに足を据えた俺は、目眩を感じながら辺りを見回す。

 風が頬を撫でる感覚さえも、どこか現実離れしていると思っていたその矢先、一つの声が辺りに響き渡った。

 

「見てらんねぇな、一護ォ……」

「……!」

 

 その声に振り返ると、二つの姿が目に入る。

 

「斬月、白いの……」

 

 黒衣を纏う老齢の男の姿をした斬月と、俺自身を反転させたかのような白い存在が此方に歩み寄ってくる。

 

 死覇装を靡かせながら、白い俺が口を開く。

 

「お前、斬魄刀(俺たち)のことを気にもせずに、一人で戦っていやがったな?」

「違う……! 俺は──!」

「違わねぇだろ? お前が一人で突っ走った結果があれだ」

 

 白い俺は、眉間にしわを寄せながら、苛立ちを露わにして俺を詰る。対照的に、斬月のオッサンは無言で佇み、ただ静かに、俺たちのやり取りを見つめていた。

 

 自分自身の弱さと向き合わされているような居心地の悪さを感じ、思わず目線を下ろす。その態度が気に障ったのか、白い俺は、俺の胸元を掴みあげると、冷淡な口調でこう言った。

 

「俺が出る。代われ」

「──!」

 

 その言葉に、俺は、正直心が揺れた。

 

 白い俺は、俺自身よりもはるかに斬月を理解している。その戦い方、扱い方、全てにおいて俺を凌駕しているのだ。確かに、コイツに任せれば、あの男に勝てるかもしれない。けれど──、

 

(それで、本当にいいのか?)

 

 脳裏に浮かぶのは、俺が護れなかった人々の顔。

 

「──いや、いい」

「あ?」

 

 ──気づけば、掴まれていた手を振り払っていた。

 

 眼下に広がる都市の風景。ビル群の無数の窓が、澄み切った青空を鏡のように映し出している。その光景を一瞥した後、これまで伏せていた顔を勢いよく上げた俺は、真っ直ぐに二人の顔を見据えた。

 

「俺が……俺が勝たなきゃ意味がねぇんだ!!」

 

 声に込めた激しい感情が、周囲の空気を震わせる。自分の意思で、自分の力を振るい戦わなければならない。そうしなければ、いつまでも逃げ続け、大切なものを何も護れないまま、この世界に埋もれていく。その恐れが、俺の心を強く突き動かしていた。

 

 そんな俺の返答に、白い俺は顰めていた眉をピクリと上げると、軽蔑と苛立ちを滲ませた声で言い返してくる。

 

「勝つ、だぁ……? 血塗れになって、地面に()せるだけのお前が、誰に勝てるってんだよ!!」

 

 コイツの言っていることは事実だ。それでも──

 

「分かってる、今の俺じゃアイツには勝てねぇ……」

「なら」

「でも、俺は一人じゃねぇ!」

 

 この白い存在が何者なのか、正確には分からない。それでも、その不器用ながらに俺を慮る意思を、心の奥底で確かに感じ取れていた。

 

「俺には、斬月とお前がいる。だから」

 

 言葉を詰まらせながらも、心の底から湧き上がる感情を、精一杯の言葉に乗せる。

 

「だから、力を貸してくれ。斬月!!」

 

 俺の叫びに目を見開いた二人は、複雑な、そして幾分奇妙な表情で俺を見返した後、呆れたように長い溜め息を吐き出した。

 

「いいだろう。お前の覚悟、確かに受け取った」

「チッ、また死にかけたら、俺が身体を乗っとるからな」

 

 斬月は、かすかな笑みを浮かべ、白い男は、相変わらず不満げな表情をしながらも、俺に応える。

 

 

「良いか、一度しか言わねえ。しっかり聞け」

「俺/私たちの名は───」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

 瞬歩、瞬歩、瞬歩と息を切らしながら繰り返し、何とか現場に辿り着いた頃には、全てが終わっていた。

 

 周囲に飛び散る鮮血と、激戦の痕跡を残す瓦礫。その中央に倒れる一護の姿を見た瞬間、俺は心底ゾッとした。

 急いで側に駆け寄り、口許に手を当てて呼吸を確認すると、かすかではあるが息をしていた。思わず安堵の溜め息を漏らした俺は、取りあえず持てる知識を総動員して応急手当を施し、何とか一護の容態を安定させる。

 

 後に合流してきた夜一さんの案内のもと、ぐったりとした一護を背負いながら、瀞霊廷内を移動する。そうして辿り着いたのは、双極の崖下にある岩棚だった。

 簡素な木柵を開き、中へと足を踏み入れる。そこには荒々しい岩肌に縁取られた洞穴のような空間が広がっていた。

 

 中央に敷いた布団へ一護を寝かせ、医療用の結界を張る。彼の呼吸が落ち着いてきたのを確認してから、俺と夜一さんは情報を交換した。

 一護関係のイレギュラーを除き、大体は原作と同じ展開を辿っているようだ。あー、良かった。これでチャドの霊圧が(ガチで)消えてたら腹切って詫びるしかないと思ってたからさ……

 

 

 情報共有が済んだ後、夜一さんは「では、儂は少し外に出てくる。それまで其奴のことを頼んだぞ」と言い残して、外へ駆け出していった。 部屋に残されたのは、横たわって荒い息をしている一護と俺だけ。

 

 一護の額に手を当て、体温を確かめる。彼の熱はまだ下がる様子がない。水で湿らせたタオルを絞り、彼の額に載せ、俺は夜一さんが戻ってくるのを待ちながら、黙々と一護を看病し続けた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 BLEACHのアニメオリジナル回って、この世界で起こるのかな? 俺、アニメの話、ざっくりとしか知らないんだけど……

 

【もしかして君、BLEACHのアニメを見ていないのかい?】

 

 うん、単行本と小説しか読んでない。千年血戦篇の第一クールを途中から見て、アニメに興味を持つようになったんだけどさ、第二クールが始まる前に死んじゃったから、結局見れずじまいなんだよね。

 

【ああ……道理で君の記憶の中に、アニメーション映像がほとんど残っていなかったわけだ】

 

 記憶? ……もしかして、相即不離って、俺の前世の記憶とか覗けたりする? 

 

【君が完全に忘却した記憶や、当時抱いていた感情までは読み取れないけれど、まあ大体はね】

 

 え゛ッ!

 

【……言っておくけど、君のプライバシーに関する記憶は覗いていないよ?】

 

 良かった~……いや、やましいことは何もないんだけどね? 何も、何もないよ!! 信じてね? ねっ!?

 

「ううん……」

 

 ん? 【おや】

 

 

 木箱に腰掛けながら、抱えた相即不離と軽い雑談を交わしていると、布が擦れる音が耳に届いた。その直後、一護が低く呻き始める。

 結界の外から、小さな声で一護の名を呼んでみる。すると、ゆっくりとまぶたが震え、開かれた茶色の瞳が俺を見上げてきた。

 

 おはようオニイチャン♡

 どこか具合が悪いところはありますか?

 

「──ッ!」

 

 うぉい、急に起き上がんなよ!! 傷は回道でくっつけたとはいえ、血液はぜんっぜん足りてないんだからな!?

 

「──……可城丸、さん?」

 

 急に飛び起きたかと思えば、困惑した様子で瞬きを繰り返し、俺を凝視する一護。……何、誰かと間違えたの? あ、メガネ掛けてるから分かんなかった?

 

「いや……」

 

 何だその煮えきらない返事は。まあ良いや、深くは聞かないから取り敢えず横になっときなさい。

 

 一護の肩に手を置き、無理に起き上がった身体を布団の中へ戻しながら、俺は、一護の気持ちを落ち着かせようと、できる限り丁寧に現在の状況を伝える。

 俺の説明を聞いた一護は「良かった……」と一言呟き、安堵の雰囲気を纏う。

 

 ……ごめんね、助けに行けなくて。途中でちょっとハプニングがあってさ。いやぁ、しかし。よく更木隊長相手に生き残ったな! すごいね一護。偉いぞ一護。

 

 謝罪を込めてそう言うと、一護は一瞬、驚きで目を丸く見開いた。そして、ゆっくりと口角を上げ、照れくさそうに、しかしどこか誇らしげな笑みを浮かべて、こう答えたのだ。

 

「斬月たちの名前を聞いて、卍解して何とか……」

 

 そっか、卍解か。なるほどね~! ……ん?

 

 

 ……卍解?

 

 …………卍解??

 

 卍解!?

 

 ちょちょちょ、ちょっと待って、卍解? 何で!?

 予想外の単語に頭が混乱している俺に、さらに衝撃的な言葉が追い打ちをかける。

 

「それに、白い仮面を着けたら力が湧き上がってきたんだ」

 

 虚化まで!?!?!?

 

 何で、どう言うことですか!? 詳しく説明して下さい。今、僕は冷静さを欠こうとしています。いやマジで、真面目に誰か説明してくだしあ

 

 

 

 

 

~~~

 

 重要な単語ばかりがポンポン飛び出てくることに動揺して、一護の話を半分も覚えていられなかったが、つまり、要約すると、三日間の修行もなしに、更木隊長との戦闘の土壇場で卍解を解放した後、駄目押しとばかりに虚化までしたらしい。

 

 ……更木隊長生きてるよね? いや、霊圧は感じるし、殺しても死ななそうなあの人なら絶対に生きてるって確信はあるんだけど。……むしろ、虚化状態の卍解月牙天衝を食らってよく生きてるな。やっぱおかしいよあの人。

 

 

 いつの間にホワイトさんと仲良くなったのかと疑問に思い、尋ねてみると「可城丸さんに言われた通り、刃禅ってのを組むようにしたらよ、斬月のオッサンの他に、なんか白いヤツも出てくるようになって……」と一護に返された。

 

 刃禅……なるほどね~更木隊長との闘いの前に、既に斬月さん達と会ってたのか。大分初めから原作乖離してんじゃん。

 ……あれ、でもさ、一護は斬月さんと最初から面識あったんでしょ? ならその白いヤツのには違和感を持たなかったの?

 

「そりゃ最初は『なんだコイツ』って思ったぜ。すぐ斬りかかってくるし、口を開けば暴言ばっかだし。でも、アイツが言ってることは間違いじゃないって気づいて……それにアイツ、口は悪いけど、多分、俺のこと心配してんだよな」

 

 へぇ~、ホワイトさん、ちゃんと兄貴分として一護に寄り添ってるんだ。一護もそれをきちんと理解してるみたいだし。

 原作との違いに、思わずほっこりした俺を置いて、一護は話を続けていく。

 

「それにアイツ、自分のことを『斬月だ』って名乗ってたんだ」

「最初は嘘をついてるんだと思ってたけどよ、可城丸さんが『尸魂界には二振りの斬魄刀を持つ死神もいる』って言ってたのを思い出して、一つの斬魄刀の中に二人いるってのもあり得るのかなって……」

 

 「まあ俺も良くわかんねぇけどさ、アイツは悪いヤツじゃないと思うぜ」と一護は照れくさそうに締めくくった。

 

 そっか、一護はホワイトさんのことも、斬月だと認識し始めているのか。 はぇ〜……この原作乖離って俺のせいなんですかね?

 

 うーん、まあ、あれだ。原作と少し違うかもしれないけど、一護の心労が減ったなら良かった。

 一護と仮面の軍勢との関わりはどうなるんだろうとか考えちゃうけど……まあ、何とかなるでしょ! うん、良かった、良かった! 良かったってことにしとく!!

 

 

 

 

 






白いの「俺と変われ一護ォ! アイツの霊圧可笑しいから! アイツバケモンだから! 俺が変わる、俺がやる!!」
オッサン「このままでは死んでしまうぞ一護……!」

一護「俺がやる、俺がやるから!! だから力を貸してくれよ斬月ゥ!!」
お兄ちゃん「グゥゥゥ……しょうがねぇなぁ!!」
オッサン「くっ……」


小話
更木戦を見返して気づいたのですが、一護は死にたくないと嘆くことはあれど、逃げたいとは1度も言わないんですね。高校生になんて覚悟をさせてんだよ……

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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