遅れました……申し訳ない……
空を飛ぶ道具は外出中の夜一さんが持ったままだし、懺罪宮に行く手段がそもそも無かったんだけど。
まあ、岩鷲君たちの事は予め海燕に任せておいたし、心配しなくても大丈夫。
実際、後に海燕から「ルキア奪還に来た岩鷲と阿散井、ブチギレ白哉にボコボコにされてて草。白哉は浮竹隊長と俺とで抑えたし、花太郎とアイツらも回収しといたぞ。あっ、ルキアは若干痩せてたけどまあ元気そうだった」(超意訳)なんて連絡を受けたからね。
阿散井副隊長、どこに居るんだと思ってたら、岩鷲君たちと共に懺罪宮へ行ってたのか。あれ、ってことは阿散井副隊長、ルキアの目の前で朽木隊長にズタボロにされたって事? うわ、三人にとって最悪すぎる……
因みに、岩鷲君について、朽木隊長から何か言われなかったのかと海燕に確認したところ、どうやら彼は海燕に迷惑をかけないように、覆面を被って瀞霊廷に侵入したらしい。名乗るなんてもっての他、なるべく声を出さないようにヒソヒソと行動していたんだってさ。だから、朽木隊長にも志波家の者だとバレていないんだと。
そんなんで誤魔化せちゃうんだ……。まあ確かに、朽木隊長が岩鷲君に会ったのなんて海燕と都さんの結婚式以来だろうし、気付かないのも仕方ない……のかな?
「そもそも、海燕さんと岩鷲って似てねぇし、覆面とか意味ねぇんじゃねぇの」
とは一護談である。
そうかな~? 俺から見たらあの二人、結構似てると思うけど。特に下まつ毛とか。
さて、紆余曲折あり、一護はめでたく卍解を会得したわけですが……三日間の修行、どうする?
夜一さんが戻ってきた後、人工的な青空の下で、俺たち三人は円状に座り、頭を抱えていた。
作中、ルキア処刑までの三日間、ギリッギリまで卍解の会得に励んでいたハズの一護は、既に卍解に至っているし、何なら虚化までしちゃってるし。何でなの?
「うーむ、まさかこれを使わずに卍解を会得するとは、完全に予想外じゃったな……」
黒い布で覆われた大きな物体を前足でポンポンと叩き、驚いた様子を見せる夜一さん。
ね〜俺もビックリ(他人事)。
マジでどうしよっか~と唸っている時、「……おお!」と、天啓を得たかのように、夜一さんが突然声を上げた。何すか、なんか思い付いたんすか?
「丁度良い。秀朝、貴様が一護の面倒を見ろ」
……って何で俺くんが!?(誤用)
「月牙天衝ーーーッ!」
うおおおお!!! ナマの月牙天衝だァァァァァァ!!!!!!
【構えて! 感嘆する前に構えてくれ!! アアッ来る、斬撃が来るよ!!】
アッヤベ。うおおおお!!!
というわけで、一護と修行中です。
夜一さんが面倒見れば良いんじゃないの? って言ったんだけどさ、「儂は斬魄刀をあまり使わんからのう」と断られてしまった。……ただ面倒くさかっただけでは?
俺より強い一護に何を教えろってんだと思いつつ、何度か打ち合った後に剣術の改善点を指摘したり、霊圧操作の強化に取り組むことにした。基礎は大切だからね。
斬月のオッサンが栓をしているせいもあるのか、一護の霊圧操作はマジで壊滅的。とは言え、抑制された状態でも、一護の斬撃の威力は凄まじく、下手すれば腕を斬り落とされかねないんだけど。
【そこまで分析しといて、さっきはあんな油断を……?】
生の月牙天衝にはBLEACH好きなら興奮しちゃうでしょ!? 主人公の必殺技だよ!? 今は通常技みたいに連打されてますけどね!!
「やっぱり、剣八ん時よりも威力が出ねぇ……」
相即不離へ必死に弁明している俺の耳に、少し息を切らした一護の独り言が微かに届く。その表情には不満と焦りが浮かび、さらに僅かに挫折感も混ざっているのが見て取れた。
いや、威力については充分だと思うけど。それに、ピンチになったらメゾンドチャンイチの二人が一護の霊圧を上げるだろうから、あんまり心配しなくて良いんじゃないかなぁ。
「可城丸さん、もう一本……!」
そんなことをぼんやりと考えていると、ふらふらの一護が追加の稽古を頼んできた。彼の目は相変わらず闘志に満ちていて、若さゆえの尽きることのないエネルギーを感じ少し羨ましく思う。……まあでも、そろそろ止めにした方が良いだろうね。日がな一日戦ってるし。
「俺はまだいける!」
一護がイケても俺が限界だから。正直、足が生まれたての小鹿みたいになっててぇ……
「お、おう……」
それに、あんまり根を詰めすぎても、身体に負担をかけるだけだからね。どうしても何かをしていたいなら、刃禅で斬魄刀と対話してみたら? 俺が言った改善点以外にも、斬魄刀自身から何か気付きがあるかもしれないよ。
「なるほど……」
俺の言葉に納得したのか、一護は数尺先の岩場を指差すと、「あそこで刃禅組んでくる!」なんて言いながら、そちらへと駆けて行った。ホントに元気ね~……
「──随分と過保護じゃのう」
一護の様子を見ていると、突如背後から聞こえた声に、思わず肩を震わせてしまった。振り返ると、夜一さんがからかうような微笑みを浮かべて立っていて……、いつの間に?
そうですかね? わりと正攻法の修行だと思いますけど。なんて答えてみたが、彼女は大きな溜め息を吐いてから、俺の肩に肘を置く。
「あやつにはああ言っとったが、まだまだ余力を残しとるじゃろ?」
どこか挑発するように片眉を上げてそう問いかけてくる夜一さん。やだなぁ、買い被りすぎですよ。
「はんっどうだか。……大体、貴様の鍛練は刺激が足らん。鍛練というものはもっとこう、ガッとやって、ドゴーンってもんじゃろうに」
何て?
片腕をブンブンと振り回しながらそんなことを言う彼女に少しビビる。野蛮すぎない?
てか、激弱の俺が一護にガッとやって、ドゴーンなんてしたら、俺がザンッとなってパカーンになっちゃうから。
……そう言えば、海燕もわりとめちゃくちゃな鍛練をしていたな。もしかして、貴族の稽古って肉体言語のみなのか? 貴族やべぇな。
「しかしあやつ、儂との決め事を忘れ、ポンポンと虚化するとは……! 一度痛い目に遭わせてやらんと分からんのかのう?」
まあ、一護本人も制御が利かないらしいですからね。
「──悪意がないと言うのが、何とも信じられんな」
夜一さんは呆れたように、眉間に皺を寄せながら言う。その鋭い視線には、一護への苛立ちと心配が入り混じっているようだった。
そう──上記の会話の通り、俺は一護の虚化についてとりあえず夜一さんには報告しておいたのだ。
その話を聞いた夜一さんは、最初こそ驚愕した様子を見せたものの、すぐに一護を厳しく問い詰め始めた。そして案の定、「それは二度と行うな」ときっぱり忠告した。しかし、一護本人はルキアを助けるために力を欲していることもあり、その忠言に反発する。
険悪な空気が漂う二人の間に割って入った俺は、なんとか場を宥めることに成功したが、一護の内心には複雑な思いが渦巻いているようだった。
そんな二人の様子を見て、何かもう色々と面倒くさくなった俺は、虚化事件について、ついつい軽く話してしまったのである(犯人や、真相は言っていない)。
俺の話を聞いた一護は、ホワイトさんを「斬月」だと認識しつつも、その力がどこか異様だと悟っているようで、自分の力が虚由来ではないかという不安を抱いてしまったようだ。
まあ、「一護を護ろうとしている気持ちは本物みたいだし、一護自身の直感を信じてみれば?」と軽く励ましたら、彼は一瞬考え込んだ後、吹っ切れたように虚化の訓練を始めたんだけど。……俺が言うのも何だけど、そんな軽い感じで大丈夫なのか?
結局のところ、夜一さんの懸念と一護の願いを取り入れた折衷案として、一護には「緊急時のみ虚化を許可する」という規則を設けることで、話は終わった。
ちなみに、勝手に百年前の事件について一護に話してしまった件で、夜一さんには少し怒られた。
すみません……でもどうせ後々藍染惣右介にバラされるんだから、今言っちゃっても良くないですか?
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「可城丸さんも剣八と戦ったことがあるのか?」
休憩中、黒崎一護と可城丸秀朝は、巌の一つに腰を下ろし、緩やかな談笑を楽しんでいた。周囲には無骨な石岩と枯れ果てた草木だけの侘しい風景が広がっており、二人の発する声だけがこの死んだような空間に生気を吹き込んでいる。
初めの頃、一護は地下深くにひっそりと贋造されたこの地下訓練場に感嘆していた。しかし、終日、刀を交え起居する二人にとって、この無機質な風景の単調さは、飽きを感じさせる要因となっていったのである。
特に可城丸は、原作の描写から大体の場所を予測して、この地下を無断で使用し卍解の修行を進めていた為、更に辟易としていた。
そんな彼らにとっての娯楽は、主に会話であった。あまり集中しすぎると、一護の精神に負担がかるのではないかという懸念から、可城丸が雑談の時間を設けることにしたのがきっかけであり、思いのほか、これが双方の精神安定に効果をもたらしていた。
一護の問いかけに、可城丸はぱしぱしと目を瞬かせると少し目を細め、空を見上げる。
「アハハ、戦うと言っても、毎回一方的に叩きのめされるだけなんだけどね……」
「毎回? すげぇな、可城丸さん。あんなヤツと何度も戦ってるのか」
可城丸は汗ばんだ頬を掻きながら、少し気まずそうに答えた。その言葉に、一護は素直に感心する。
一護にとって更木剣八は、辛勝と恐怖の記憶を刻み込まれた相手だった。
酷く刃こぼれした斬魄刀から放たれる斬撃は、飢えた獣の牙のごとく。戦闘中の痛みすらもスパイスと捉え、血をまとい、心底楽しげに刃を振るうその姿は、一護の心に深いトラウマとして刻まれていた。だからこそ、そんな相手と幾度も交戦したであろう可城丸に、一護は深い尊敬を抱いたのである。
「俺は二度とアイツと戦いたくねぇよ……」
「うん。その気持ちはよく分かるよ、本当に」
その時の恐怖を思い出してか、ぐっと顔をしかめる一護の様子を見て、可城丸は少し苦笑いを浮かべながら、理解を示した。そして、慎重な声で問いかけた。
「けれど、更木隊長との戦いは、決して無駄ではなかっただろう?」
一護はその言葉の意味を反芻するように、静かに考え込んだ。そうして、眉間にかすかな皺を寄せながら、小さく、但し確かな意志を込めて頷いた。
あの激烈な戦いを経て、学んだことを鮮明に思い出していた。例えば、力の使い方、自分の限界。激しい剣戟の中でそれらを少しずつ掴むことができたのだ。そして何より──
「アイツの剣は、真っ直ぐだった」
一護の言葉がポツリと溢れる。剣八の刀筋には、余計な雑念はなく、ただ目の前にある戦いを心から楽しむ、晴れ晴れとした純粋さがあった。戦うことへの揺るぎない、戦士としての心構え。強烈に見せつけられたそれが、一護の心に深く刻まれたのである。
一護の言葉に可城丸は一瞬目を見開いた後、破顔した。
「そうだろうね。あの人ほど素直な剣筋の持ち主は僕も見たことがないよ」
どこか得意げに、しかし深い敬意を込めて可城丸は言い、袴についた埃を軽く払いながらゆっくりと立ち上がった。そして一護の方に向き直り、少し物悲しさの混じった笑みを浮かべて言う。
「よし、休憩は終わり。修行を再開しようか」
「ウッス!」
「あっそうそう。今度こそ白い仮面を被った状態で月牙天衝を打ってこないでね? あれ本当に危ないから。僕死んじゃうから」
「うっ、テンション上がるとつい……」
「そんなついうっかりみたいなノリで言われても、相手をしている僕にとっちゃ堪ったもんじゃないんだから」
「善処します」
「それ社会人の常套句じゃないか……ってちょっと一護、目線をそらさないで、此方を向きなさ「よっし、一丁やるかァ!」おいコラ、一護!」
一護→火力ごり押し脳筋戦法
可城丸→小手先卑劣戦法
小話
一護が可城丸さんと呼んでいるのは、初対面時の警戒心の名残であり、今さら呼び方を変えるのも心情的に抵抗があるからです。
次回 ジェネリック刺される
斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。
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尸魂界篇後
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破面篇後
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本編終了後
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斬魄刀異聞篇を書かない
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他に何かご意見があれば活動報告の方へ