ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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エタ、エタ……エタらない!!
⚠挿し絵あり


人間関係解説
藍染「可城丸……彼は一体、どこまで読んでいるんだ?」(勘違い)
一護「よくも母ちゃんを……! 殺してやる、殺してやるぞ、藍染惣右介……!!」(勘違い)
可城丸「グェーッ死ぬンゴ!」(何も知らない)




勘違いは連鎖していくことを知っているね?

 

 ギィン──!

 

「……ほう?」

 

 冷たい金属音と共に、男の口角がわずかに上がる。その枯草色の瞳には、朽木ルキアと彼女を抱える阿散井恋次を庇うように、刀を受け止め振り払う、黒崎一護の姿が映っていた。

 

 双殛の崖の上。此度の元凶である男──藍染惣右介と初めて視線を交わした時、奇妙な感覚が一護に走る。

 

(この男、何処かで──……)

 

 黒い装束を着た茶髪で眼鏡をかけた男。その冷たく計算高そうな眼差しを、確かに何処かで見たことがある。

 一護は藍染を警戒しながらも距離を取り、記憶を辿ってみるが、しかし、霧の中を手探りするようなもどかしさだけが残ってしまう。

 

 そんな彼の様子を怪訝に思った恋次が、息を切らしながらも挑発するように問いかける。

 

「おい、一護。どうした?」

「いや……」

「ハッ、もう限界か?ルキアを連れて逃げてもいいんだぜ?」

「ンなワケねえだろ、舐めんな」

 

 藍染から一歩後退した彼らの会話は軽妙だったが、戦況は決して楽観視できるものではない。ここは戦場なのだと認識を改めた一護は、もどかしさを押し込めると、汗ばんだ拳を柄と共に握りしめて、毅然と敵に向き直る。

 

 緊張が漂う空気の中、藍染はただ静かに三人を見つめ、次の一手を待っているようだった。

 

「……一護」

「なんだ」

「俺が隙をつくる。お前はその隙を衝いてくれ」

「……!」

 

「藍染隊長は強えェ 出来る隙はほんのわずかかもしれねえが……頼んだぞ、一護」

「──わかった」

 

 頷いた一護を横目で見た恋次は、全身に力を込めて、刀を地面に突き刺しながら叫んだ。

 

「狒牙絶咬!」

 

 地響きを伴う轟音とともに、蛇尾丸の折れた破片が、無数の刃となって藍染に襲い掛かる。その隙に、巻き上がる土埃の中、一護は躊躇なく突き進んだ。藍染の懐へと滑り込み、全霊圧を込めた天鎖斬月を振り抜こうとした瞬間──

 

「──ッ!」

 

 一護の瞳が驚愕で見開かれる。

 

「おや、腰から下を切り落とすつもりだったが...残念ながら、浅かったようだ」

 

 まるで埃でも払うかのように、軽々と受け止められた刃。そして、空中に飛び散る真っ赤な液体。

 崩れ落ちる体躯からは鮮血が噴き出し、乾いた地面を紅く染めていく。

 

「ッ! いち──

 

ザンッ!

 

──がぁ!?」

 

 目にも留まらぬ速さで、藍染は瞬時に距離を詰めていた。一護に続いて、恋次もあっという間に切り捨てられたのだ。

 

「恋次! 一護……!!」

 

 静寂に包まれた戦場に、ルキアの悲痛な叫びだけが木霊していった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「可哀想に、まだ意識があるのか」

 

 激痛に苛まれ、朦朧とする意識の中、耳に届いたのは、形ばかりの同情を見せる藍染の声。その冷たい声音に、一護の胸は再びざわつき出した。

 

(やっぱり、コイツ どこかで見たことがある)

 

 脳裏で鳴り響く警鐘。それはまるで、深夜に付けたテレビに流れる試験電波のような異音。

 不愉快な幻聴に苛まれ、顔をしかめる一護を無視して、ひどく穏やかに、藍染は言葉を掛ける。

 

「浦原喜助の後始末、ご苦労だったね」

「──あと、しまつ?」

「……なんだその顔は。君たちは浦原喜助の命令で、朽木ルキアの奪還に来たのではないのか?」

「……ど、どういう……」

 

 その意味が理解できず、一護の顔に困惑の色が広がる。藍染は首を少し傾げ、訝しげな表情を見せた後、納得したように相槌をうった。

 

「……なるほど、どうやら何も聞かされてはいないようだね。 ……まあ良い、僕が教えておこう」

 

 そうして語られたのは、死神の”可能性”。

 死神と虚──相反する二つの存在。その境界を取り払い、さらなる高みへと到達する方法。それが"虚化"だった。

 この力を可能としたのは、元十二番隊隊長の浦原喜助。彼が創り出した物体こそが、死神と虚の境界を完全に取り除く力を秘めた"崩玉"であった。

 しかし、その力の危険性を悟った彼は、破壊できなかった崩玉を隠すという決断を下す。そして、彼が選んだ隠し場所こそが、朽木ルキアの魂魄だったのだ。

 

 明かされた事実に、動揺で震える一護とルキア。彼らの耳に、藍染の冷徹な声が容赦なく続く。

 

「魂魄に直接埋め込まれた異物質を取り出す方法は、二つしかない」

 

 一つ目の方法は、超々高度の熱破壊能力で外殻である魂魄を蒸発させること。だから藍染は、ルキアを双殛で処刑しようとしたのだ。

 しかし、一護たちの介入でそれが阻止される可能性が生じた。そこで彼は、もうひとつの方法として、魂魄組成に直接介入し、強制的に分離させるすべを模索した。

 

「魂魄への異物質埋没は浦原喜助の編み出した技術だ」

 

 その言葉とともに、藍染は胸元から小さな筒を取り出し、カチリとスイッチを押す。 

 

「ならば それを取り出す技術も 彼の過去の研究に必ず隠れていると読んだ ……そう」

 

 小筒が機械仕掛けのように分解し、藍染の手の中で複雑な形へと変化していく。彼らの周りには鋭い刺のような物質が円形に出現し、まるで牢獄のように彼らを取り囲む。

 

「これがその

「待──!」

(こたえ)だ」

 

 制止の叫びも虚しく、藍染はその手をルキアの胸に突き立てた。

 ズルリと、彼女の奥底に秘められていた"崩玉"が、まるでルキアの魂そのものであるかのように、引きずり出されていく。

 

「ルキア……!」

 

 悲鳴すら上げる間もなく、ドサリと崩れ落ちるルキアの姿。それを目の当たりにした一護の心中で激動が波打ち、そして遂に──

 

 

 ──長年膿み続けていた記憶が、決壊した。

 

 

「──ぇが……」

「……!」

 

 感情の奔流が、制御不能な霊圧となって周囲に広がり、空気そのものを震わせる。藍染はわずかに眉をひそめながらも、興味深そうに一護の変化を観察し続けた。

 

「ふむ、まだそんな余力を残していたのか。しかし、その身体で一体何が──」

 

「お前が 母ちゃんを殺したのか」

 

 ポツリ。と

 少年の口から溢れた言葉に、藍染は一瞬、虚を突かれたような表情を見せる。

 

「何を──」

「惚けんじゃねぇ! 十年前のあの日、お前が母ちゃんを殺しただろう? 俺は見た、見てたんだ……!!」

 

 彼の脳裏に幾度も再生されるのは、あの日の悪夢。

 動かせない体、ひきつる喉。無力な自分の目の前で、大切な人が冷たい刃に貫かれる姿。その全てが、過去の記憶とリンクする。

 

 時間という薄い瘡蓋で、辛うじて隠されていた心の傷口を抉られるような、酷い苦痛に苛まれる一護の剥き出しの激情とその怒号に直面した当の本人である藍染は──

 

 

「……(何の事だ?)」

【挿絵表示】

 

 

 

 動揺していた。

 それもそのはず。幼い一護が目撃した惨劇は、可城丸秀朝による犯行であり、藍染自身は直接関与していない。つまり──完全な誤解、冤罪だった。

 

「答えろ、藍染……!!」

「……」

 

 しかし、一護はそれに気付かない。訂正するのが簡単だということも理解している藍染だが、知ったかぶりの癖のせいで、その場では無言を貫き、ただ考え込むことしかできなかった。

 ……まあ、弁明できるほどの信用がないので何を言っても無駄な気もする。単純にこの男には余罪が多すぎる。

 

 そんなアンジャッシュを繰り広げている彼らを、東仙要と市丸ギンは遠巻きに見つめていた。

 

「……?」

「……!……ッ!!」

 

 半ば空気と化している東仙は状況を理解できずに首をかしげる。一方、ギンだけがこの致命的な勘違いに気づき、腹を抱えて笑い出したくなるのを必死に堪えていた。

 

 シリアスな場面は一瞬にして滑稽な雰囲気に変わってしまうが、状況は容赦なく、そして足早に変化していく。

 

「ふむ、まあ良い ──殺せ、ギン」

 

 面倒になったのだろうか。今だ喚き続ける一護から視線をそらした藍染は、用済みとなったルキアの始末を腹心に下命する。

 

「ッ! ゴホッ、ゴホッ う゛うん! ……しゃあないなァ」

 

 名を呼ばれたギンは、少しむせながらも、荒い呼吸を整え、命令通り藍染の手元にぶら下がる少女を貫こうとした。その瞬間──

 

 

ギィンッ!

 

「ッ兄様、海燕殿!? どうしてここに……!」

 

 駆けつけた朽木白哉と志波海燕が彼女を守るために立ちはだかり、共にその凶刃を受け止めた。目を見開くルキアに、彼等は答える。

 

「おいおい、言っただろう? どんな手を使ってでも助けに来るってさ」

「……無事で何よりだ、ルキア」

 

「──兄様……」

 

「ハッ、やっと素直になったのかよ、オニイチャン」

「黙れ 貴様から叩き斬るぞ」

 

 麗しい兄妹愛を茶化す海燕。しかし、その軽薄な言葉とは裏腹に、その瞳には確かな怒りの炎が燃え、ギンを鋭く睨みつけている。

 

 その鋭い視線を受けたギンは、「(おお、怖。秀朝くんのこと、根に持っとるんかな?)」と見当をつけた。

 

 

 

 

 ──その後、他の隊長たちも次々と双殛へ集結し、まるで原典通り、状況は目まぐるしく変化していった。

 

 隊長達に四方を囲まれ、窮地に立たされていた藍染達だったが、突如として現れた大虚によって、反膜の中へと取り込まれる。そして、泉ガーデンタワーのエレベーターさながらに、彼等は悠々と天へと昇っていった。

 

 空高く浮かぶ藍染の宣誓が、地上の者たちに向かって響き渡る。

 

 

「最初から誰も、天に立ってなどいない」

「だが、その耐え難い天の座の空白も終わる。 これからは──」

 

「私が天に立つ」

 

 

「──ッ待て、藍染!」

「一護、叫ぶな! 傷が開くぞ!」

「くそっ、ふざけるな! 逃げるんじゃねえ! 降りてこい、藍染! アイゼェェェン!!」

 

 少年の怒号は青空に木霊し、その叫び声は藍染たちの去り際を飾る、凱旋歌のように響き渡る。

 残されたのは、無力感と怒りに打ちのめされた死神達と、戦いの余韻だけが漂う静寂に包まれた荒涼とした戦場だけだった。

 

 

 

 

 

「藍染様、あの人間の言っていたことは一体──」

「……何、だろうね?」

「えっ」

「──ッ!……ッ、ッ!」

「……どうしてお前は、先程から小刻みに震えているんだ?」

 

 

 

 

 






狛村隊長と黒棺は?→原作よりバイブス上がってる剣八がそこにいるでしょ?そういうことだよ。(剣八と戦い、ダウンしてましたが、私天するギリギリに到着しました。はしょっているが狛さんはDJ要に原作通り物申している)
海燕何してたの?→雀副隊長とバトってました。

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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