ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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くぅ~疲れましたw これにて尸魂界篇、完結です!

今話は特に話が進むわけではありません。ちょっと謎を残しつつ、主人公が恥を晒すだけ。


追記
斬魄刀異聞篇を観るためにDVD買いました。ドラマCDも入手しました。
BLEACHミュージカルでの散財とDVD購入の請求が二回……来るぞ遊馬!




フローレンス・ナイチンゲールが由来で看護師が「白衣の天使」と呼ばれるようになったことは知っているね?

 

 side ?

 

 朧月夜の静寂に包まれた夜でした。

 

 その日の夜番であった私は、薄暗い廊下を忍足で歩き、順々に病室を巡回。そして最後に、彼の病室の前に立ったのです。

 

 窓際に据えられた寝台の上。月明かりに照らされた彼の横顔が静かに横たわり、窓から流れ込む夜風が、私と彼の頬を優しく撫でていく。

 

 炎昼(えんちゅう)の名残りが残る病室内で、その風は意外なほどに、冷たく肌を刺しました。思わずふるりと身体を震わせた私は、患者の体調を鑑みて、開いていた窓を静かに閉める。そして、僅かにずれていた掛け布団を直そうと、彼に身を寄せたのです。

 

 その瞬間でした。

 白いシーツの起伏に沈む蒼白な唇から、かすかな吐息と共に、何かが零れ落ちたのです。

 

 

 ──それは、言葉でした。

 名前のない、しかし確かに彼の心に深く刻まれているのであろう相手への、拙くも痛ましい懺悔。

 

 

 目を見開き、思わず後退る私。これは、何も知らない自分が聞いて良いものではないと、直感的に理解したからです。

 

 一体、誰に向かって懺悔しているのか。一体、魘される程、何をそんなに悔やんでいるのか……半端な姿勢でグルグルと考え詰める。

 そんな私の動揺を感じ取ったのでしょう。

 魘されていた彼は、一度、長い睫毛を微かに震わせたかと思うと、ゆっくりと重たげに目蓋を開き、そして、朦朧とした視線で、確かに私の輪郭を捉えたのです。

 

 天蓋から覗いた半月のような眼は、白眼との境を滲ませ、枕元に置かれた行燈(あんどう)の光だけを、鈍く、虚ろに反射する。彼の意識は、現実と夢の狭間を彷徨っているようでした。

 

 そんな彼の様子に、私は一抹の不安を抱きました。いや、不安というよりは、心の奥底に潜む恐怖に似た感情が胸を締めつけていました。

 

 普段の彼の瞳は、初夏の陽光を浴びて揺らめく緑葉のように、穏やかで温かい光を湛え、生命力に満ちていました。しかし、その日、彼の瞳はどこか胡乱で、澱んだ深い色へと変貌しており、その様子は、これまでの彼とはまったく対照的で、ありていに言えば恐ろしさすら感じさせたのです。

 

 目に見えて狼狽える情けない私へ、彼はゆっくりと、指先を持ち上げました。何かを手繰り寄せようとするかのように。迷子の幼子が母の温もりを求めるように。微かに、頼りなく。

 

 

 ──私は咄嗟に、その手を握り締めました。

 

 

 何故そうしたのか……言葉で説明することはできません。ただ、その冷たい指先に、深い悲しみを確かに見たから。

 その悲しみに寄り添いたいという衝動が、私の体を動かしたのです。理性を超えた、本能的な反応でした。

 

 私は、強く、確かに、その冷たい手を包み込みました。

 貴方の指先が温もりを帯びるその時まで、私はずっと、そうしていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

 ──知ってる天井だ。

 ……天丼は三回までだよね。俺、今後もこうやって目を覚ますの?

 

 

 

「……可城丸三席? 良かった、目を覚まされたんですね!」

 

 すさまじいデジャブ、というよりもはや懐かしさを覚える白い病室の天井を見上げていた俺。その霞んだ視界にひょっこりと映りこんできたのは、花太郎くんの心配そうな顔だった。

 

「少々お待ちくださいね、今、卯ノ花隊長を呼んできますから」

 

 パタパタと慌ただしい足音をたてながら病室を後にする花太郎くん。そんな彼を見送った俺は、ぼんやりとする頭を回してなんとか状況を把握しようとする。

 

 

 えーと、何があったんだっけ?

 確か、一護と別れた後、清浄塔居林に行って、ヨン様がいて、ギンがいて、雛森副隊長を抱えて、日番谷隊長が来て……?

 

 

 ああ、そうだ俺、ギンに刺されたんじゃん。

 

 

 上体をゆっくりと起こし、幾重にも巻かれた包帯の覆う胸を撫でる。

 一応、急所には相即不離を用いた結界を事前に張っておいたけどさ、霊圧の関係上、全身には張れなくて、急所以外は攻撃を喰らっちゃうんだよね。まじで痛かったな〜ギンの一撃。

 

 

 ……ッハ! そうだ日番谷隊長、日番谷隊長は無事!? 雛森副隊長は!?

 

「どちらも無事ですよ。日番谷隊長は貴方より先に目を覚まされましたし、雛森副隊長も目立った外傷はありません」

 

 卯ノ花隊長! よ、良かった~……

 

 ガラリと音を立て開かれた戸と共に、優しく声をかけてきたのは卯ノ花隊長。嫋やかな笑みを浮かべる彼女のその言葉に、俺は思わず安堵の溜息をつく。

 そんな俺に視線を向けて、彼女は言葉を続けた。

 

「……可城丸三席が昏睡している間、私たちは志波海燕さんから、貴方達の策動について伺いました」

 

 策動?……ああ、一護たちと協力関係を築いていたことについてですか。

 

「はい。本来であれば、旅禍と共謀したこと等は重罪ですが……今回は多くの事情が絡んでいましたからね。 この一件は不問とするそうです」

 

 ……それはまた、ずいぶんと寛大な判断だな。正直、何らかの処罰を覚悟していたのだけれど。

 ああ、そっか。中央四十六室が壊滅してしまった事で、総隊長に全権が委任されているのか。だから裁判もなく、こうした措置に。うーん、運が良いんだか悪いんだか。

 

 とにかく、温情あるご配慮に深く感謝します。と、そう頭を下げた俺を見て、卯ノ花隊長は優しく微笑んだ。しかし、その微笑みは一瞬のことで、次には真剣そのものの眼差しへと変わっていた。

 

「……ここからが本題です。日番谷隊長が清浄塔居林に到着するまでの間に、一体何があったのか、具体的な経緯を詳しく説明していただけますか?」

 

 は、はい。えーと……

 

 

 一護と別れた後、原作で刺傷されてしまう雛森副隊長のことがどうにも気にかかり、俺は彼女を助けようと単身で現場へと急行した。

 幸いにも、彼女が刺される直前に間に合い、無傷で救出することができた。しかし、避難のために彼女を抱き上げたその瞬間、予想もしなかった事態が発生したのだ。

 

 雛森副隊長が激しく抵抗し、俺の腕の中で暴れ回ったのだ。興奮状態に陥った彼女に言葉は通じず、状況は悪化する一方。そこで、俺はやむを得ず、白伏を使った。

 

 ……あの時の雛森副隊長にとって俺は、愛する隊長との仲を無理矢理引き裂いた間男みたいなものだったんだろう。……「間男」って表現は間違ってるか。しかし、仕方ないとはいえ、あの恨み顔は結構ショックだったぞ。

 

 とにかく、そのまま俺は、一人で藍染惣右介と市丸ギンに対峙することになり……ナイスタイミングで日番谷隊長が到着したってところかな。

 

 

 そんな感じで、所々誤魔化しながらも、できるだけ簡潔にあの日の顛末を説明する。それを聞いた卯ノ花隊長は静かに頷いた。

 

「なるほど、その様なことが。 ……分かりました。この事は私から総隊長にお伝えしておきます。寝起き早々、説明に疲れたでしょう。どうぞ、ゆっくりとお休みください」

 

 やんわりと微笑む卯ノ花隊長にお礼を言いつつ、その背を見送る。しかし、ふと扉の前で立ち止まったかと思うと、振り返った隊長が唐突に言ったのだ。

 

「ああ、そうそう。勇音が貴方を気にかけていたので、もし、機会があれば勇音の元に足を運んであげてください」

 

 勇音副隊長が……? わ、分かりました。

 

「ウフフ、よろしくお願いしますね。では、失礼します」

 

 アッハイ、ありがとうございました~。

 ……卯ノ花隊長、何であんなに上機嫌なんだ?

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 一人になった静かな病室で、俺は窓の外に広がる景色をぼんやりと眺めながら、あの時の事を思い返していた。

 

 雛森副隊長の悲哀に満ちた表情、日番谷隊長の怒りに震える声、そして藍染惣右介の傲慢な態度と、市丸ギンの嘲笑……

 

 

 ン゜ワ゛ーッ!

 

【ウワッ、急にどうしたんだい!?】

 

 顔を両手で覆い、バジェットガエルのような叫び声をあげた俺へ、枕元に立て掛けられていた相即不離が、心配そうな声を掛けてくる。

 

 別に心配するようなことじゃないんだよ。ただ、ヨン様に俺の隠していた筈の警戒心を、全部見破られていた事。それを俺の実力だと良い感じに勘違いされて解釈されたのが、恥ずかしくて居たたまれないだけなんだ…!!

 

【ああ、そういう……】

 

 ギンもギンだよ。なんで茶席で雑談混じりに指摘してくるのさ! もう少し真面目なトーンで言ってくれれば直したのに……!

 ……そういえば、俺を刺す直前のギンの顔、あれ完全に笑いを堪えてる表情だったな。……アノヤロウ、生死を分ける状況で愉悦してやがった!

 

【(君に、というより、勘違いを膨らませ続ける藍染惣右介を面白がっていたような)……まあまあ、そう取り乱さないで。目先の脅威は退けたわけだし、そこまで自分を卑下することはないよ】

 

 穏やかに宥める相即不離の言葉を聞きながら、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

 確かに、相即不離の言う通りだ。偶然とはいえ藍染惣右介からの予想外の暗殺を回避できたのは僥倖中の僥倖だし。

 それに、最大の目的であった()()()()()()()も、()()とはいえ()()したからな。考えてみれば、わりと善戦した方かもしれない。うん、俺たちスゴい。

 

【そうだね、よく頑張ったよ。……けれど、あの捨て身の作戦はもう二度とやめてくれないか。()()は君にも、僕自身にも負担が大き過ぎるから】

 

 ごめん、本当にありがとう。俺のために身を粉にして尽くしてくれて。

 しかし、あそこまで極端な手段を取らないと藍染惣右介の鏡花水月を千切れないとは……というよりヨン様、相即不離を徹底的に避けていたような気がしてならない。

 ……なんでその並外れた警戒心と知力を持ちながら、俺の事を過剰に評価してるんだ。警戒心が強すぎるが故に?

 

 ン゜ァ゛ーッ!やっぱり厄介な相手!!

 

【ああ、せっかく宥めたのに、情緒が振り出しに戻った……! ちょっ、目を覚まして早々、海老反りなんてしないでくれ、君の胸には穴が開いたんだぞ!?】

 

 

「ヨース! 卯ノ花隊長から目を覚ましたって聞いたから見舞いに来てやったぜ……って、何してるんだお前?」

 

 うわ! 海燕!?

 

 

 

 

 






相擗(しょうり)
→市丸ギンの一撃を防いだ技。
相即不離の原理を利用した特殊な結界を造り出す技。断絶された結果内は、外部からの攻撃をすり抜けるように通過させ、内部への影響を完全に防ぐ。
しかし、主人公の霊圧上、全身を覆うことは不可能な為、防御範囲は限定的となる。例えば、上半身のみを護る、あるいは特定の部位にのみ結界を展開するといった運用をすることが多い。

主人公はこの技の原理を完全に理解しておらず、無敵バリアだと思っている。相即不離は説明を諦めた。諦めるな。


????
→藍染惣右介の鏡花水月を解除した技。


次回 勘違いスレ民

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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