ジェネリック藍染が生き足掻く話   作:榛眞

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水蓮寺巴さんリクエストありがとうございます。
【吉良くん目線のギンと主人公の絡み】です。

何故かイヅルがしっとりとしてしまいました……申し訳ない……




閑話 BLEACHの登場人物は大概面倒くさいと知っているね?

 

 俺が昏睡してる間に、一護たちは現世へ戻ったと浮竹隊長から聞かされた。

 

 彼らにろくに感謝の言葉も伝えられず、別れてしまったことを悔やんでいる。振り返れば、現世組との交流もあまりできずじまいだったし。……まあ、あの慌ただしい状況では仕方がなかったのかもしれないが。

 

 

 

 

 

~閑話休題~

 

 騒動が収まった瀞霊廷では、今や修復と再建に大忙しの様子。未だにベッドとお友だち状態の俺は、見舞いに訪れる海燕やルキア、隊長ガチ勢コンビから瀞霊廷内の様子を聞いていた。

 

 そう、俺はまだ入院中。負った傷は完治したのだが、診察を担当した卯ノ花隊長からこう告げられたのだ。

 

「可城丸三席、貴方の身体にはこれまでの疲労が蓄積しています。この調子だと過労死してしまう恐れがありますので、入院は継続です」

 

 まさかの過労。

 ……死神に過労死なんてあるの? まあ確かに、今回の動乱で相当動き回っていたから疲労が溜まるのも無理はない……のかなぁ?

 

 そんなわけで、流石に過労死は避けたかった俺は、お言葉に甘えてしばらく休養をとることにしたのだ。

 ……本当は、入院を断って仕事に復帰しようとしたんだけど、卯ノ花隊長の菩薩スマイルで圧され、諦めてベッドに戻るという一幕があったりするが、これは割愛。

 

 

 連日、病室を訪れる隊士たちから一日の話を聞く。というよりほぼ愚痴だ。俺の病室は駆け込み寺になっている。

 

 やれ、「十一番隊が仕事を四番隊に押し付けてサボる」だの、やれ、「新しく出来た茶屋の白玉ぜんざいが絶品で、連日行列ができている」だの、やれ「十一番隊の奴らを蹴っ飛ばして自力で修繕させたんだが、アイツら逆に塀にデッケー穴開けやがった。修繕の意味をわかってねぇのか」だの。

 「斑目が仕上げた塀の塗装を、やちるの嬢ちゃんが乾かないうちに触って手形をつけまくるもんだから、十一番隊までの通りが随分可愛らしくなってたぜ」とも言ってたな。

 

 ……思い返したら話題のほとんどが十一番隊だ。ヤダなむさ苦しい。

 

 

 ああ、そういえば。日番谷隊長もわざわざ見舞いに来てくれたんだよ。ただ、見舞いというより、謝罪の訪問だったんだけど……

 どうも彼、俺を藍染惣右介の殺害犯だと誤解していたらしく、その勘違いをわざわざ詫びに来てくれたんだわ。

 

 どう考えても、誤解を招くような俺の態度が悪かったから、日番谷隊長には何の非もないんだが。

 ……てか、妙な距離感で詰め寄ってきたギンが悪くない? いや、よく考えれば全部ヨン様が悪いわ。全部ヨン様のせいってことにしよう。おのれ藍染惣右介!!

 

 

 まあ、そんな感じで誤魔化して、全部をナアナアにした。別に嘘は言ってないし、むしろ事実だもんね。

 

【そうかもしれないけれど、君の勢いには日番谷冬獅郎も面食らっていたようだったよ】

 

 しゃーない。隊長に頭を下げさせるような真似をさせるくらいなら、勢いに任せて誤魔化してしまった方がよっぽどマシ!

 

【手口が詐欺師のそれだ……】

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 退院~!

 からの書類仕事!!

 

 

 十三番隊舎に出社(出舎?)し、久しぶりの仕事にテンションあがってぶっ続けで仕事してたら、いつの間にか職務室で派手に気絶してたみたいでね、あっという間に詰所に出戻りですよ。

 卯ノ花隊長からはお叱りの言葉と、チョークスリーパーを頂いた。隊長の優しさと厳しさが同時に詰まった特別なプレゼントだね、とても首が痛いです。

 

「マラーの死みたいだったぞ、あの時のオマエ」

 

 と言うのは、職務室で果てた俺の第一発見者の海燕談である。

 シャルロット・コルデーに暗殺された覚えは無い! てか海燕、絵画とか知ってるんだ、意外だ……*1

 

 

 

 

 

~閑話休題~

 

 離反したヨン様(藍染)DJ要(東仙)愉悦部員(ギン)の隊長三人。彼らが抜けた穴は五番隊は十番隊が、九番隊は七番隊が支えている。

 そして、三番隊の山積みの書類仕事……これがまた厄介なことに、ギンは書類仕事を溜めに溜めていたようで、他二人の隊に比べ量が尋常じゃない。

 

 もはや紙の山脈が出来上がっているこの途方もない量の書類処理を、十三番隊が預かったのだが──

 

「可城丸三席……此方の書類の確認を……お願い致します……」

 あっ、はい。お預かりします……

 

 物憂げな声を発したのは吉良副隊長。

 彼は三番隊から十三番隊まで足を運び、書類を届けてくれる。仕事を手伝ってくれるのは非常にありがたいのだが、吉良副隊長の風貌は、まるで侘助に斬り付けられたかのように肩を落とし、沈鬱さを全身に纏っていた。

 

 ……まあ、こうなってしまうのも仕方がないのかもしれない。

 彼が敬愛していた隊長は、突然の離反を遂げてしまったのだから。

 吉良副隊長が受けたショックは想像に難くないし、その心の傷も容易に癒えるものではないだろう。

 

 ……いや、待てよ? 松本副隊長と酒を酌み交わした時、彼はへべれけになって、ギンの愚痴を言うほどには精神的に持ち直していなかったか? どうして俺の前でだけこんな様相に? 

 

 

 内心で疑問を抱きつつ、彼から書類を受け取る。

 何か励ましの言葉でもかけようかと思ったが、適切な言葉が思い浮かばない……ので、とりあえず感謝の気持ちだけでも伝えようと、いつもサンガツ! なんて気さくに言ってみたが──

 

「ハァ……いえ……」

 

 世界中の憂鬱を一身に背負っているかのような溜め息と、聞こえるか聞こえないかくらいの声量でこう返されてしまった。

 

 

 吉良副隊長とのコミュニケーション、わっっっかんねぇ~!

 

 

 

 

 

 

 

 

・・

・・・

・・・・

・・・・・

 

 

 

 

 

 side 吉良イヅル

 

 三番隊舎の庭には、隊長が自ら植え育てた、一本の柿の木がある。

 

 秋空がひときわ青く澄む季節になると、その枝々には見事なまでに鮮やかな橙色の実がたわわに実り、隊長は毎年きまって、これらの実を一つ一つ丁寧に収穫して干し柿を作るのだ。

 

 自身の業務をほとんど僕に任せ、柿を干す作業に没頭するその姿は、普段の胡散な表情とは打って変わって、穏やかで集中した様子だった。

 

 そうして、約一ヶ月後、熟して乾燥しきった干し柿が完成する。

 隊長お手製の干し柿は隊員たちに配られ、皆でその甘味を分かち合うことが、三番隊の恒例行事となっていた。

 

 

 

 ──それが何年のことだったかは、はっきりと覚えていない。

 その年もまた、隊長はお手製の干し柿を部下たちに配っていた。そんな中、たまたまその場を通りかかった可城丸三席に、市丸隊長が声をかけたのだ。

 

「ああ、可城丸クンやないか。干し柿作ったんやけど、君も食べる?」

「どうも市丸隊長。干し柿ですか? 是非、頂きます。 ……ん、甘くて美味しい。良くできていますね」

「せやろ~! けどなァ、今年の冬は雨が多くて湿気て、いくつかカビてもうてなァ。残念やわ」

「そうなんですか。……確か、霧吹きで焼酎を柿の全体に吹きかけると、カビ対策になるって聞いたことがありますよ」

「へェ、初めて聞いたわ。やっぱ物知りなんやなァ可城丸クンって。……よい分別は老人に問え、やな」

「そんな大したものではなくて、これはおばあちゃんの知恵袋的な……いや、誰が老人だって?」

 

 そんな二人の会話を、僕は鮮明に覚えている。

 特に何かが気になるような会話ではなかった。単純に、あの人の声には、普段の皮肉めいた調子とは異なり、純粋な親しみが込められていたように思えて、それが何とも珍しく、心に残ったのだ。

 それに、あの人に臆することなく対等な調子で会話をしている可城丸三席の姿にも、僕は少なからず驚きを覚えていた。

 

 しかし、当時の僕は、あの二人の仲がそこまで深いとは思っておらず、彼らの会話も、ただの世間話の延長線上にあるものだと考えていて……

 

 だからこそ、東大聖壁での出来事は、僕の目を疑わせるには十分だった。

 市丸隊長が可城丸三席へ、肩と肩がかすかに触れ合いそうな距離感まで近づいていく様子。その光景は、酷く不自然で、違和感の塊そのもので……(今になって思えば、あれも隊長の策略の一環だったのだろう。場の空気を掻き乱し、懐疑の視線を集める為の演技)

 

 ──だが、その虚構の中には、嘘だけでなく、何か秘められたものがあったのではないかと、最近考えるようになった。

 

 

 

 

 

「可城丸三席は、市丸隊長と仲が良かったんですか?」

 

 事務作業の途中、僕の唐突な質問に、可城丸三席の表情が一瞬凍りつく。

 

「へ、ギ……ンンッ、市丸隊長と? う、うーん、仲かぁ……」

「すみません、突然、変なことを聞いてしまって」

「いや、大丈夫ですよ。 えーと、そうですね。……案外、話は合ったかも」

 

 可城丸三席は、あの人に致命傷を負わされた者とは思えない、穏やかな笑顔で答えた。

 

「え、そうなんですか……?」

「はい。……まあ、話といっても、殆ど揶揄われるだけでしたが」

 

 笑いながら、彼は自嘲気味に付け加えた。その笑い声は、決して悲壮感や諦念を含んだものではなく、むしろ清々しい明るさに満ちていた。

 その姿に、僕は妙な既視感を覚えた。

 

(ああ、そうだ。この笑顔──)

 

 彼の笑うその顔に、市丸隊長の顔が重なった。

 

 いや、全く似ていない。市丸隊長の、人を喰った蛇のような笑みと、可城丸三席の温かく優しい笑顔は、まるで光と影のように対照的だ。

 比較すること自体が不自然で、似ているはずがない。それ揺るぎない事実で──

 

 しかし、やはり心の奥底で、何かが違和を唱えている。

 場をなごませるように、自然で、しかしどこか、本当を覆うようなその微笑みに、僕はどうしても市丸隊長の影を重ねてしまうのだ。

 

 ……この思いは、僕の単なる思い過ごしで、憶測に過ぎないのだろう。

 

 結局のところ、僕は市丸隊長に心酔し、盲目的に崇拝していただけだったし、彼の本当の姿や、本心など計れやしなかった。そう、あれほど部下として側にいながら、何一つ理解していなかったのだ(「理解」などという傲慢な言葉を使うこと自体が、僕の浅はかさを露呈している)。

 

 そもそも、可城丸三席との交流は浅く、彼の人となりを深く知るには、情報が圧倒的に不足している(表面的な印象だけで、二人の本質を語ろうとする自分の傲慢さに、激しい自己嫌悪を抱く)。

 

 

 ──それでも。 この二人を繋ぐ、目に見えない糸のような、共通項のようなものの存在を、僕は完全に否定することは出来なかった。

 

 

「ハァ……」

「ええ、なんで溜め息……僕、何かしちゃいました?」

「いえ。違うんです、ただ、……ハァ」

「何なのぉ?」

 

 ヘラヘラと笑いながら冷や汗をかく彼を横目に、僕は机上の書類を見下ろす。

 

 

 二人の間に存在する仄暗い共通点のようなものが、何故か、” ましい″と、僕は思っていた。

 

 

 

 

 

*1
ジャック=ルイ・ダヴィッドによって製作された絵画。この絵は、シャルロット・コルデーによって暗殺されたジャン=ポール・マラーが浴槽に横たわっている場面を捉えたもの。エドヴァルド・ムンクも「マラーの死」をテーマにした作品を描いていることは知っているね?






意訳
イヅル→自分が理解できなかった上司と「話が合う」なんて宣う可城丸に違和感を抱いたり、可城丸とギンの間に希少な共通点を見つけたりして苛立ちを覚えたり、そんな自分を嫌悪したり……
主人公→俺またなんかやっちゃいました?
ギン→オモロ笑

イヅルのギンに対する一筋縄ではいかない感情を上手く表現しようとしましたが、どうしてもしっとりとした文になって……もっとフラットに書きたいですね。でもBLEACHの登場人物ってみ~んな重いじゃん。(暴論)

次回
男性死神うんたらかんたら
雛森と可城丸とメガネとクッキーと

斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。

  • 尸魂界篇後
  • 破面篇後
  • 本編終了後
  • 斬魄刀異聞篇を書かない
  • 他に何かご意見があれば活動報告の方へ
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