久しぶりなので初投稿です。
てゆんぬさん、柚子檸檬さんリクエストありがとうございます!【男性死神協会と可城丸秀朝】です。
追記
感想への返信が遅れてしまい、申し訳ありません。必ずお返事させていただきますので、感想を残していただけると嬉しいです!
「現世での捜査のために購入した衣服ねぇ……ルキア、日帰り任務で買ったウサギ柄の寝間着は、流石に経費で落とせないよ……」
机上に高く積み上げられた書類の山。その一部を手に取った男が、苦笑いで赤筆を走らせる。
今日も今日とて書類仕事に勤しむ可城丸秀朝は、机上に積まれた書類とかれこれ数時間格闘していた。
「なんだこの大きな出費! 訓練場の壁を修繕だぁ~? ……海燕の野郎、またやらかしやがったな?」
再び山の一部を切り崩した彼は、苛立ちを隠そうともせず、乱暴に×印を書き込む。
日中の光が差し込む執務室には、紙が擦れる音と、可城丸の小さな呟きだけが木霊していた。
──しかし、そんな穏やかな空気を切り裂くように、突如として執務室のドアが勢い良く開かれた。思わず肩をビクつかせた可城丸へ、崩れ込むように入室してきた若い部下がこう告げる。
「可城丸三席! 七番隊の射場副隊長と、四番隊の伊江村三席、それに六番隊の荻堂六席がお見えになっています!」
「は?」
──何だそのメンツ。ユーたちは何しに俺の元へ……?
射場、伊江村、荻堂……普段は顔を合わせる機会の少ない、別々の隊の幹部たちが、なぜ俺に?
湧き上がる数々の疑問を押し殺しつつ、可城丸は手にしていた書類を置いて、部下に促されるがままに、指定された客間へと向かったのだった。
「失礼しますゥオッ」
「おう、来よったか」
「どうも、可城丸三席」
「こんにちは~」
客間の襖を開けた瞬間、可城丸の視界に入ったのは室内にどっかりと居座る三人の男衆。
それだけならまだしも、何よりも異様なのは、その三人が漆黒の黒いサングラスをかけていることだった。
どう見てもカタギには見えない。この一室だけが任侠映画の世界観のようである。
彼らから発せられる重い威圧感に気圧されながらも、可城丸はぎこちなく会釈をして、正面のソファに腰を下ろした。
その様子をじっと見つめていた射場が、その厳つい顔を少しだけ歪め、申し訳なさそうな表情で口を開く。
「済まんのォ、可城丸三席。忙しいだろうにわざわざ時間を空けて貰って。事務処理に追われとるんじゃろ?」
「いえいえ、とんでもありません。以前よりは、幾分か落ち着いてきておりますので」
射場の慰労に可城丸は苦笑いを返した。
確かに、彼のデスクの上には、崩れ落ちそうなほど大量の書類が鎮座している。しかし、あの悪夢のような繁忙期に比べれば、仕事の流れがほんの少しだけ穏やかになっているのは紛れもない事実だった。
その言葉を聞いた射場は、強張っていた表情を和らげて「ほうか、ほいならよかった」とそう一言だけ呟いた。
「えーと、それで……本日は一体どのようなご用件でしょうか?」
「む、そうじゃな」
雑談もほどほどに、本題を問うた可城丸の言葉を聞くや否や、正面に鎮座する男たちは無言のまま視線を交わし合った。黒いサングラスの奥で、幾つもの瞳が何かを合図しあうように動いている。
そうして、腹を括ったかのように、こちらへと向き直った伊江村が、真剣な眼差しで口を開いた。
「可城丸三席……どうか、どうか男性死神協会に入会してください!!」
「は?」
予想外の言葉に思わず間の抜けた声を漏らした可城丸へ、彼らは矢継ぎ早に説明をし始める。
「先の藍染惣右介の策略を、誰よりも早く見抜いた可城丸三席……! そんなアンタの抜きん出た頭脳を生かし、男性死神協会の参謀として、ワシら男性死神の地位を向上させて欲しいんじゃけぇ! アンタの知恵がありゃあ、きっと協会も一段と発展するはずじゃ!」
「それに、可城丸三席は、けしからんことに女性死神とも非常に親睦が深いと伺っております! どうか、我らと女性死神協会との間を取り持っていただき、集会場を便所などではなくマトモな場所に……いえ、ゆくゆくは、立派な専用会館を建設することも夢ではありません! 可城丸三席、どうか我らの希望の星、救世主となってください!」
射場と伊江村の前のめりな熱弁。
二人のあまりの勢いに完全に圧倒されていた可城丸は、ふと、最後に残ったメンバーである荻堂六席の方へ視線を移す。その目線を受け取った彼は、どこ吹く風といった様子で肩をすくめながらこう言った。
「あっ、僕はただ見学しに来ただけです。面白そうなんで」
「帰れ(暇なんですか?)」
「本音と建前が逆では?」
「あっ、すみません」
思わず漏れてしまった本音にバツの悪さを覚えながらも、可城丸はジト目で彼らを見つめる。
──なんだかなぁ、藍染事変以来、俺の評価が異常なまでに跳ね上がっている気がして、どうにも落ち着かない。
彼の脳裏をよぎるのは、最近護廷十三隊内で囁かれている奇妙な噂の数々。
曰く、「可城丸三席は藍染惣右介の悪行を誰よりも早く見抜いた慧眼の持ち主」「隊長格と互角に渡り合った凄腕の三席」「兄である藍染惣右介の野望を阻止すべく、弟の可城丸秀朝が単身で立ち向かった」など。
まるで誰かが書き散らした三流小説のような荒唐無稽の噂話が、護廷内でまことしやかに広まっているのだ。後半に関しては完全にふざけているし、風評被害も甚だしい。
──計画を阻止できたわけでも、藍染を打ち破ったわけでもないのに、なぜここまで話が誇張されているのか。
飲みの席でそんな愚痴をこぼした可城丸へ、海燕はどこか他人事のように、「まあ、真偽はともかく、席官と元隊長が直接対峙したっていう話が内情を知らない隊士たちにとって、格好の話題だったんだろうよ」と返した。
可城丸にとっては迷惑千万な話であり、むしろ黒歴史を盛大に拡散されているようで、気が狂いそうな話ではあるが。
閑話休題。
そんな可城丸の複雑な胸中など知る由もない男性死神協会の刺客たちは、尚も食い下がってくる。
「先っちょだけでも! ほんの、本当に先っちょだけでも良いんです! ね?」
「入会に先っちょも何もないでしょう……」
「可城丸三席、どうか、どうかワシらをお救いください!」
「射場副隊長の望むようなことは、僕にはできませんよ……」
「今ならもれなくスタイリッシュな黒縁サングラスに加えて、冷えやすいお腹に優しい、温かい腹巻きまで支給されますよ~」
「要りません」
しつこいウォーターサーバーの勧誘員のような男たちを、可城丸は穏やかな笑顔を浮かべ、しかし断固として押し退け続けていた。
「どうして断るのですか! 男性死神協会は、決して可城丸三席の貴重な時間を無駄にはいたしません!」
「集会があったとしても、大体三十分から一時間程度で終わりますし」
なぜこれほどまでに魅力的な誘いを断るのか理解できないといった表情を浮かべる彼ら。その必死な様子に苦笑しながら、可城丸は理由を述べた。
「あー……えーと、その……、申し訳ありませんが、僕は副隊長代理の仕事の他に、別隊の仕事にも従事しているので……協会活動に参加するための時間がどうしても見合わないんですよ」
「なにっ!?」
「ぐっ」
「ああ、確かに。よくウチの隊舎に出入りしてますよね」
「ええ。ですから、男性死神協会に入会したくても、スケジュールの関係上、出来ないんですよね……」
──否、嘘である。
実際、可城丸がここまで頑なに男性死神協会への入会を拒む理由は、至って単純明快であり恣意的なもの。
「(男性死神協会に入会したら、ろくな目に遭わない気がするんだよなぁ)」
そう、可城丸は自身のギャグキャラ化を警戒していたのだ。
メタ的な話をすると、男性死神協会は女性死神協会に何かと冷遇され、不憫な目に遭うことが多い。アニメオリジナル回などでは、特に悲惨な扱いを受けている。
只でさえ「顔がヨン様に似ている」と一部で囁かれている可城丸は、これ以上変な属性をつけられたら、きっと酷い目に遭うだろうと、漠然とした危機感を抱いていた。
もちろん、そんな理由を目の前の熱心な勧誘員たちに打ち明けるわけにはいかず、「忙しい」という、いかにも多忙な彼らしい言い訳を使ったのである。
……まあ、日々の隊務に加え、最近では何かと理由をつけて三番隊の書類仕事まで半ば押し付けられるように引き受けている現状を鑑みれば、全くの嘘というわけでもない。彼のスケジュールは、すでに悲鳴を上げていると言っても過言ではなかった。
この状況で協会に入会しても、ただの名ばかりの幽霊部員、いや、幽霊隊士になるのが目に見えているだろう。
そんな可城丸のもっともらしい主張を聞いた目の前の男たちは、露骨に落胆の色を隠せず、揃って呻き声を上げた。
「ぐぬぬ……まともな理由だ……!」
「強引に押し切れば何とかなると思っていたが、なかなか手強い!」
「可城丸さんって、真面目すぎませんか? もっと肩の力を抜いて、適当に付き合ってもいいと思うんですけど」
「いやぁ……僕のような若輩者が少しでも気を抜いたら、あっさりと死んでしまいますからね」
「可城丸さんが若輩者なら、僕は一体……」
「死ぬは言いすぎでは?」
そんなこんなで、可城丸は男性死神協会の勧誘をなんとか追い返すことに成功した。
彼らは去り際、「くっ、これで終わりだと思うなよ……! 必ずや、第二、第三の刺客を送ってやるからな~!! それまで首を洗って待っていろ!!」などと、どこかの三下のような捨て台詞を吐き捨て、「とりあえず、これだけでも受け取ってください。それでは、本日は失礼しました~」と、小包を半ば強引に押し付けてきたりしたが。
「……何だ『第二の刺客』って。これで終わりじゃないのか」
彼らの後ろ姿を門の外まで見送った可城丸は、先ほどの騒がしさが嘘だったかのように静まり返った空間で小さく呟いた。
──ちなみに、彼らが半ば強引に押し付けてきた小包の中身は、上質な肌触りの腹巻きと、やけにイカついデザインのサングラスだった。
蛇足
「可城丸三席、九番隊の檜佐木副隊長がおみえになってなます」
「こんにちは、突然すみません。実は瀞霊廷通信の件についてちょっと話が──」
「第二の刺客にしては早すぎませんか?」
「えっ、何の話……?」
可城丸「そもそも集会場が男子便所っていうのがなぁ~…… ほら、俺って休日は四番隊に出入りして、食事の準備とか手伝ってるじゃん? だから衛生面にはかなり気を遣ってて……まあ、四番隊の隊士である荻堂くんや、伊江村三席が協会に入会しているなら、最低限の衛生管理はされているのかもしれないけど」
相即不離「至極真っ当な理由だね」
久しぶりの更新なのに話がほぼ進んでないっていうね……ごめんなさい! 何でもするから許してください! 次々回には破面篇へ入りますから!
次回
「勇音ちゃんとデート(仮)」
斬魄刀異聞篇を書くにあたり、アンケートというより質問があります。本エピソードは破面篇の途中で挟まれたアニメオリジナルですが、私の執筆技量ではそのような高度な構成は難しいと感じています。そこで、尸魂界篇の後、破面篇の後、あるいは物語完結後の番外編として書く案を考えているのですが、読者の皆様としてはどのタイミングが最適だと思われますか? ぜひご意見をお聞かせいただけると幸いです。
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尸魂界篇後
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破面篇後
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本編終了後
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斬魄刀異聞篇を書かない
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他に何かご意見があれば活動報告の方へ